ピクシブ百科事典は2024年5月28日付でプライバシーポリシーを改定しました。改訂履歴

カイザーギドラ

29

さいごにしてさいきょうのてき

東宝制作の特撮映画「ゴジラFINAL WARS」の登場怪獣で、同作のラスボスにあたる。

ネタバレ注意!

ここから先は、ゴジラファイナルウォーズのネタバレを含んでいます。ご注意ください。⚠

データ

別名怪獣帝王/宇宙最強超怪獣
身長140メートル
体長150メートル(尾を除く)
体重10万トン
スーツアクター中川素州小倉敏博
デザインモンスターX同様)寺田克也

概要

モンスターXの真の姿にして、ミレニアムシリーズの最後を飾った最強の怪獣。

かのギドラ族の頂点に立つギドラの『皇帝であり、を超えるギドラの最上位種。

怪獣の王たるゴジラに対して「怪獣の帝王」と称され、圧倒的な力で同作のラスボスを務めた。

ギドラ族の皇帝だけあって三つ首と翼を有するその姿はキングギドラに類似しているが、全体的に極めてマッシブかつ巨大

鋭利な装飾が生えた首、デスギドラを思わせる四足の脚はいずれも野太く、胴部も変身前とは比較にならないほど重厚であり、歴代最大級の体躯を持つ同作のゴジラが小さく見えるほどの途轍もない巨躯を持つ。

角の形状は3つの頭部でそれぞれ異なり、中央が王冠を思わせるW字型、右がシャープな三叉、左が刺々しいV字型となっている。

眼はモンスターXと同様に深紅に染まっており、瞳孔は存在しない。

体色は黒い縞模様が入った黄金色(劇中では背景の関係もあり濃い青に見える)で、キングギドラと異なり鱗は見られず甲殻に覆われている。

翼は胴体や脚と比較すると小さく見えるが、設定上は問題なく飛行も可能とされている。

劇中ではX星人切り札的存在であったモンスターXの本来の形態として登場。

マザーシップの自爆によりX星人が全滅した後、なおも互角の勝負を繰り広げるゴジラを前に変身を遂げる形でその正体を現した。

X星人が対ゴジラを期して呼び寄せた怪獣ではあるが、M塩基を通して彼らに操られている他の怪獣と違ってモンスターXと本種にはそうした記述や描写がない。

X星人が滅びても全く意に介さずゴジラとの戦闘を続行していることや、M塩基を駆逐するはずのG細胞を取り込んでも何ら異変を生じていない(=恐らくM塩基を保有していない)ことから、X星人の制御下にある怪獣ではないとも言える。

戦闘能力

最強の宇宙怪獣」と称され、公式で「キングギドラを遥かに上回る力を持つ」とされるその戦闘力は圧倒的。

歴代最強クラスのFWゴジラを圧倒し続け、一切の抵抗を許さず戦闘不能に追い込むほどで、数多の怪獣が登場する同作でも図抜けた凄まじいパワーを誇る。

主要な武器はその超巨体とエネルギー吸収能力と後述の反重力光線。

モンスターXが有していた俊敏さは失われたものの、強大な火力に任せた攻撃でひたすら敵を蹂躙する。

全長150m、体重10万トンの巨躯が生み出す膂力は絶大で、前脚の蹴りの一撃で5万トンを超えるゴジラの身体を軽く吹き飛ばしてビルに叩きつけ、三叉の首のみでゴジラを高々と持ち上げる怪力を持つ。

また後脚で身体を擡げ、前脚で踏みつける形で超重量級ボディプレスを繰り出すことも可能。

劇中では突進してゴジラに噛みつきを仕掛けるシーンもあり、その巨体に見合わない機動力も有している。

必殺技“反重力光線デストロイド・カイザー”は口内から黄金の稲妻を思わせるビームを放出するもので、撃ち合った放射熱線を押し返し、ゴジラを吹き飛ばしてダウンさせるほどの威力を誇る。

今作のゴジラの熱線はヘドラエビラ、そして100m以上はあろうビルをまとめて何百mも吹き飛ばした挙句跡形もなく消し飛ばす威力があるのだが、それを真正面から打ち破るパワーは反則的というほかない。

特筆すべき点として、このデストロイド・カイザーは単純な光線攻撃としてだけでなく、反重力”の性質によって照射した対象を拘束し、自在にコントロールできる

これによって対象を凄まじい勢いで弾き飛ばして建造物に激突させる、障害物を破壊しながら地面を引き摺り回す、空高く浮き上がらせてから叩き落とすといったえげつない攻撃が可能で、動くまでもなく遠距離から一方的に相手を制圧し続けられる。

ギドラが得意とする引力・斥力を操る重力制御能力であり、カイザーギドラは特にこの能力を用いた攻撃を好んで使用している。

前述の威力と性質に加えて連射性・持続性ともに高く、三つの首による撃ち分け、更に湾曲させる形での放出も可能。

それでいて溜めは殆どないという万能技であり、劇中では実質デストロイド・カイザーの連射だけでゴジラを圧倒し、ほぼ戦闘不能にせしめたあたりにそのチートぶりがうかがえよう。

更に対象に喰らい付くことでそのエネルギーを吸収する能力を持ち、劇中ではこれでゴジラを瀕死に追い込んでいる。

なお、G細胞やゴジラのエネルギーを取り込んだ歴代怪獣は肉体が変質する、新たな能力を獲得するなど少なからずその影響を受けていたのだが、カイザーギドラにそのような描写は見られなかった。

そのほか、『全ゴジラ完全超百科』などの書籍やゲーム作品では、ゴジラの熱線を防ぐバリアを張るとの記述が見られる。

劇中ではバリアを展開している描写はないため、劇中未使用の能力ではないかと思われる。

強いて弱点を挙げるなら、前述したデストロイド・カイザーの高すぎる攻撃力が仇になるケースがあることか。

劇中では復活したゴジラに軌道を逸らされたデストロイド・カイザーが自身の首を直撃・切断してしまい、自らの攻撃によって首を失う形で勝負を半ば決定づけるダメージを負う羽目になった。

劇中での活躍

X星人が全滅した後もお構いなしにゴジラと戦うモンスターXだったが、熱線と引力光線の撃ち合いが痛み分けに終わった直後に異変が発生。

メキメキと音を立てながら背部から翼が生えると外骨格が外れ、両肩にある縦半分の骸骨めいた装飾が頭部へと変形、凄まじい巨大化とともに三叉の首を持つカイザーギドラに変身を遂げる。

変身後、更に強大化した必殺技“反重力光線デストロイド・カイザー”でゴジラの放射熱線を打ち破って吹き飛ばす。

そしてダウンしたゴジラに対して反重力モードの光線を照射し、空中に持ち上げた後にビルに叩きつける、地面を引き摺り回して建物に激突させるなど、弄ぶかのように嬲り殺しにかかる(この際はゴジラの頭部に特に重点的にダメージを与える形で光線を操作しており、本種の知能と残虐性がうかがえる)。

それだけでは飽き足らずか、光線で至近距離に引き寄せてからのボディプレスや肉弾攻撃でゴジラをなおも圧倒し、最終的に三つ首で喰らい付いてエナジードレインでトドメを刺そうとする。

ゴジラも遂にこれまでかと思われたその時、地球人側の主人公であり覚醒したミュータントの“カイザー”・尾崎真一がゴジラをピンチから救うべく、自分の能力「カイザーエネルギー」により新・轟天号のメーサーをフルチャージ、G細胞の粒子モデルを粒子加速器で増幅・充填した「G粒子メーサー砲」をゴジラの背鰭に照射する(この武装は本来、M塩基を破壊するG細胞を粒子化し増幅した上でメーサーとして発射し、M塩基を持つ生物に致命傷を与えるための代物だった)。

結果、G粒子を吸収したゴジラはパワーアップを遂げて復活

噛み付いていたカイザーギドラに莫大なエネルギー(体内放射にも見える)を叩き込んで拘束を解除し地面に着地すると、反撃を開始する。

左の頭部を鷲掴みにしつつ右の頭部に食らい付くゴジラに対し、カイザーギドラは中央の頭部からデストロイド・カイザーを浴びせて噛み付きを退けるも、追撃の光線を放とうとした瞬間にすかさずゴジラが放った逆襲の放射熱線が炸裂。

強化された熱線を至近距離で浴びた中央の頭部は爆発とともに消し飛ばされる。

焦った左の首もゴジラ目掛けてデストロイド・カイザーを放とうとするが、ゴジラはとっさにその矛先を右の首に向けさせ、そのまま放たれた光線が直撃した右の首を切断する形で自滅。

結果、僅か十数秒で中央と右の首を失う大ダメージを被る。

その後は完全に攻守が逆転し、残った左の首を掴まれてそのまま背負い投げで地面に叩き付けられ尻尾掴みからの地面叩き付けを食らい、空高く投げ飛ばされた後、止めの一撃としてゴジラが放った、吸収したG粒子エネルギー全てを使った最強の放射熱線“バーニングGスパーク熱線”により大気圏外まで打ち上げられ、宇宙空間に届いたところで爆散。

地球外からも視認できるほどの大爆発とともに完全に滅び去った。

余談

  • 当初ゴジラシリーズの終幕を飾るラスボスとしてデザインされただけあり、数多の怪獣を鎧袖一触の勢いで退けた最強クラスのFWゴジラを終始圧倒し、反撃はおろか抵抗すら許さず瀕死に追いやる桁外れの戦闘力を誇る。“最強の宇宙怪獣”、“キングギドラを遥かに上回る”という設定に恥じない凶悪な怪獣と言えよう。上述した一方的な最期も、ひとえに人類のアシストでG粒子によってパワーアップしたゴジラが規格外すぎたが故である(映画的な尺の問題もあっただろう)。10万トンの巨体を玩具のように放り投げるデタラメな怪力の時点でまともに戦える相手ではないのは確か。またゴジラのエネルギーを直接吸収しながら、オルガビオランテデストロイアですら逃れ得なかったG細胞による変異を起こしていない点も特筆すべきか。
  • 割と有名な「変身時に外骨格が失われるため、モンスターXと比較して防御力が低下する」という情報は現在のところソース不詳で(海外コミックやゲームなどを含めてもそのような比較はない)、俗説であり公式設定ではない可能性がある。モンスターXが放射熱線でほぼノーダメージだったのに対し、カイザーギドラは首を吹き飛ばされるダメージを負った、という描写が根拠として摘示されるケースがあるが、カイザーギドラに反撃したゴジラはG粒子メーサーによりパワーアップを遂げた状態とされており、モンスターX戦とは状況が大きく異なることから単純比較はできない。むしろ巨大隕石を消し飛ばしたハイパースパイラル熱線をも上回る史上最強の熱線とされるバーニングGスパーク熱線をまともに食らいながら宇宙まで爆発四散せず肉体を保っていた辺り、巨大隕石以上の耐久力を誇っているとも解釈できる。
  • 上述のようにキングギドラの一族であるギドラ族の最上級怪獣として位置づけられている。より更に上のまさしく皇帝(ドイツ語:KAISER)である。
  • 能力によるものか不明だが、変身した際は周囲に黄金の落雷を発生させている。
  • プロット決定までは紆余曲折があり、キングギドラそのものとして登場する、キングギドラの後に真打として登場する、はたまた皇帝巨龍モンスターXというキメラ怪獣として登場するなど、様々な案があったようである。この関係もあって急遽登場が決まった怪獣だったらしく、デザイナーはモンスターX1体分のギャラでカイザーギドラまでデザインしてしまった事を明かしている。
  • モンスターXは劇場公開前に公表されたが、カイザーギドラは存在が秘密扱いで、公開前は公表されなかった(唯一、上映当時のハイパーホビーで玩具が先行公開されているが)。勘の良いファンはモンスターXの光線が稲妻状なのを見てギドラとしての正体を察したというが、カイザーの存在はまさにサプライズだった。
  • スーツアクターは前後に二人が入る着ぐるみになっている(いわゆるドドンゴ方式)。また、スーツは北村監督の指示で「とにかく圧倒的にデカく」を目標に制作されており、首を伸ばすとゴジラの2倍ほどの大きさになる代物である。スーツは2024年現在も現存しており、時折イベントで展示されその巨体をファンに披露している。

コメント

コメントが未記入です

pixivに投稿されたイラスト

すべて見る

pixivに投稿された小説

すべて見る
  • ゴジラ一族が幻想入り -SECOND TALE-

    第16話 新たなる脅威

    今回のあらすじ 突如里に襲来した褐色の巨鳥。人間を補食するこの怪物の正体は、永遠亭の者が知っているのではないかとカイザーは睨んだ。
    12,669文字pixiv小説作品
  • ゴジラ一族が幻想入り

    第33話 決着のギドラ族

    今回のあらすじ ギドラ族皇帝カイザーギドラ、ついに動く!そのカイザーに対す相手は完全生命体デストロイア!どちらもVSシリーズとミレニアムシリーズにおける最後の敵怪獣だ。最凶と最凶による対決が今始まった!vsギドラ族編、ついにラスト!
    11,361文字pixiv小説作品
  • ゴジラ一族が幻想入り -SECOND TALE-

    第8話 その男、皇帝龍

    チルノと大妖精は色々あって、太陽の精風見幽香の怒りをかってしまった。その状況にXは鉢合わせしてしまい、二人をかばって幽香と対決することに!
  • モンスターX(カイザ)の台詞集!!1

    今回はギドラ一族の最強と言われた1人モンスターX(カイザ)です!! 後日にモンスターXの自己紹介をします 苦手な方は見ない方がいいです(^^;
  • 皇帝龍幻想記

    皇帝龍幻想記~1話~

    カイザーギドラが幻想入りしちゃった♪
  • 皇帝龍幻想記

    皇帝龍幻想記~3話~

    今回はついに敵が登場、そしてカイザーギドラが遂に戦闘をします。それと私の中ではギドラ族のトップはカイザーギドラでそれの一つ下がグランドギドラだと思っています。(確か公式でカイザーギドラはギドラ族の最上位と言われてた気がする…※あくまで作者の記憶ですので本当かどうかは分かりません。)
  • ゴジラ一族が幻想入り

    第30話 初戦を飾れ

    今回のあらすじ ギドラタワーの最上階へと到達した三代目達。そこではギドラ族が集結していた。最初の対決は初代キングギドラと二代目ゴジラ。昭和VSシリーズでも一度戦ったことがある二人が再びぶつかり合う。
  • 怪獣雑談会

    怪獣雑談会!(という名の、何か。)

    この作品は、怪獣達が好き勝手する作品です!
  • ウルトラガール外伝

    第16話 「King of the Monsters」

    モンスターX カイザーギドラ 登場 tototoさんのウルトラガールを使った二次創作です。 詳しくは1ページ目の説明をご覧ください。 ウルトラガール・エールの設定はこちらを。 https://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=63314986 今回の戦闘シーンは、個人的には結構気に入ってます。
  • ゴジラ一族が幻想入り -SECOND TALE-

    第41話 王、訪問

    今回のあらすじ 遂にカイザーと対峙したドハティギドラ。しかし二人は利害の一致から一時的に協力することに。傲慢なドハギドに対してカイザーは四苦八苦するが.....
    21,815文字pixiv小説作品
  • 76 VSモンスターX(カイザーギドラ) ガイガン

    第76段は、ゴジラFINALWARSから、モンスターX…その正体のカイザーギドラと、ガイガンです!! …70回目の誕生日おめでとう、そしてありがとう怪獣王ゴジラ。 今日という日になんとか形にすることができました、多くの方が思い思いの形で祭りをされるはず。私は、少年時代に見た、20周年になるこの作品を選びました!! …あと1か、それとも2か 11/11、ゾーフィ兄さんとうてなちゃん、グランドギドラ、2体のジャガーさんを追加しました!! ポッキーの日に何をしてるんでしょうか僕は爆 …発言が過激すぎたので少し抑えました笑 11/12、すみません、即興じゃなくて即席でした汗 11/16、ベリアルとトレギアを追加。…それぞれの因縁の相手との直接対決前にアブソリューティアンと袂を分けたパターンを想定しました。…もっとどす黒くしたものを書こうかなと思いましたが…流石にやめました苦笑 11/18、ベムラーを追加しました。…ゲームで強制敗北イベントがあるならば、逆に勝利してあっと驚かせてやりたい。途中で「今日はこの辺にしといたるわ」と敵が逃げるなら、その前にお金と経験値とアイテムを置いていってもらおうかと搾り取りたい。敵が強いなら、ひっくり返してやりたいと思うのが私のあり方。色々やってみます そして、2004年、あの年に個人的に大きな印象を与えられたウルトラマンを5人追加しました…最後の1人、彼はどうしても放送時期とかの関係で展開を早めています 11/19、ドラゴンボールの悟空を追加しました!…X星人もYeah! Break! Care! Break! 思いっきりしないといけないほど追い詰められているかも…?
    12,887文字pixiv小説作品
  • モンスターX(カイザーギドラ) 紹介

    改めてモンスターX(カイザーギドラ)の紹介です
  • ご注文は悪夢でお決まりですか?

    呪霊レストランへようこそ 12

    安心してください、甘いですよ!(目逸らし) ・ ・ ・ 〜とある罪を犯した男の話〜 息を切らして真っ暗な森の中を駆け抜ける。後ろから追いかけてくる警察を振り切るため足をこれでもかというくらい動かした。 「はぁっ…はっ……ここまで来れば平気か……?」 立ち止まって木にもたれながらも辺りの警戒は止めない。ざわざわと揺れる木々の音を聞きながらゆっくり深呼吸をして息を整えながら、追ってきていた警察を思い出して苦い顔をする。 「ったくクソッ…動物殺したくらいで警察が出てくんじゃねぇよ」 お前らだって動物の1匹や2匹殺してんだろ、動物愛護団体がなんだ。この前車が猫轢き逃げしてんの見てんだからな。 「それにしても随分奥まで来ちまったな。今夜はどうすっか……おっ」 どうせ家は警察に張り込まれてる、今夜は野宿だなと諦めかけていた時に見えた人口の明かり。木々の間から漏れるその光は自分に馴染みのあるものでほっと安心を覚えた。まだ自分の顔はテレビとかで放映されていないだろうし今夜はそこにあるだろう建物に泊めてもらおう。 枝を掻き分けて光を目指し、やっと見えた先にあったのは大きな古い洋館だった。 中に誰かいるだろうか、声をかけてみるか、と足を踏み出したとき視界の端でひらりと何かが動いた。 視線を少し上にずらせば洋館の2階にあるテラスらしき場所に確かに何かがいる。 「………え」 目を凝らして見ると、そこにはヒラリヒラリとどこかぎこちなくも優雅に舞う少女の姿。少し遠いためシルエットしかわからないが確かに少女である。 こんな夜中に、しかも森の中で何で1人で踊ってるんだ。気でも狂ったか。 何か見てはいけないものを見ている気がして目を逸らしたいが視線は彼女に釘付けだ。そして思った。 彼女、どこかおかしい。 何がおかしいって、右手だけが空中に固定されて動いていないのだ。いや動いてはいる、だが不自然なのだ。 まるで誰かに手を繋がれているように。 いや違う。 何故だかわかる。 いるんだ。 誰かが隣にいるんだ。己には見えない誰かが。 誰だ、誰がそこにいるんだ。誰と踊っているんだ。 迫り上がってくる恐怖に怯える自分とは逆に少女は楽しそうに、幸せそうにステップを踏んでいる。その光景だけでももう吐き気がするくらい。 ダメだ、この洋館に行ってはいけない。音を立てないようにそっと後退り息を殺す。 だが次の瞬間、情けなくもヒィッと声を漏らした。 いつの間にか踊りをやめた少女がこちらを見ているのだ。 シルエットのため顔は見えない。だが間違いなくこちらを見ていた。右手は空中で留まったまま。少女とその隣にいる見えない誰かの2つの視線が痛いくらいに突き刺さり、恐怖で我慢が出来ずすぐさまその場から走り出す。 バレた、見てるのがバレてしまった。 少女が脅威だとは思わないが見えない誰かといる時点で関わろうとは到底思えない。しかも視線は未だに背中を突き刺している。何故だかその数は増えており、背筋を氷で固められたような恐怖で立っているのもやっとなくらいだ。 すると、前を何かがさっと通り過ぎた。 「ひっ」 思わず足を止めてしまう。それはまた前にやってきて自分の前で座る。小さなそれの正体を確認して心の底からホッとする。 「ニャア」 「………んだよ、猫かよ。ふっざけんなよ!!」 恐怖をもたらした腹いせに仔猫であろうその小さな体を思い切り蹴り上げた。紛らわしいことしてんじゃねぇよ獣風情が。 ブニャアッ!?と鳴いて吹き飛んだ仔猫を鼻で笑ったとき、耳元で無感情な声が響いた。 「何してるでしゅか」 「っうわああああ!!!!!」 思わず声を上げれば、自分の右肩から何かがピョーンと飛び上がる。仔猫の横に並んだその姿を見てワナワナと体を震わせた。存在するはずのないそれに言葉が出てこない。 「酷いことしましゅ」 「かっ……かっ、カッパ……」 「化け猫しゃんが怒りましゅよ」 「カカカカカッパが喋っ………!?」 「あ、でももう手遅れでしゅね」 「あ………?」 手遅れ?どういうことだ? あれ、そういえば風の音が聞こえない。木々の騒めきも聞こえない。目の前の小さなカッパの光のない目と無音の空間にタラリと冷や汗が流れ落ちる。 すると後ろからザッと足音が聞こえた。 誰かが来た。無言の圧迫感が矢のように脳に突き刺さったように何も考えられなくなった。 「おやまぁ、同胞の血の匂いがすると思えば…」 声が段々こちらに近づいて来て隣に並んできた。ブルブルと震わせているこちらに構わず声は続ける。 「君から臭って来ますにゃあ」 「アッ……アアッ……」 顔を覗き込んできたのは人間でも何でもなく、自分と同じ背丈の二足歩行の猫だった。ニタリと不気味に笑う猫の口は今にも自分を食らいそうだ。足に力が入らず腰が抜ける。 「クンクン……何と、これは驚いた。同胞だけではなく」 人間も1人殺してますにゃあ君。飼い主だった人かにゃ? 「な、ななななんで…」 「臭いでわかりますにゃ。それはそうとして僕の同胞をこんなに殺して…さぞ無念でしたにぇえ。………その無念、僕が晴らしますにゃ」 闇夜に光る金色の目が細められ殺されると思い体を引きずって逃げようとするも思うように動かない。 「無駄ですにゃよ。君は既に囲まれてますにゃ」 途端に警告音のように鳴る葉音。それに混じって聞こえてくる数多の笑い声。 ──アハハハハハハ ──ケタケタケタ ──フフフフフフフフ ──イヒヒヒヒヒヒ 笑い声が聞こえる頭上を恐る恐る見上げて悲鳴をあげる。 「うああああああああああ!!!」 そこには今にも喰らおうと不気味に笑う魑魅魍魎が目を光らせて見下ろしていた。 「それじゃあ………」 「やっやめ……来るな……!!」 いただきますにゃ ・ ・ ・ ・ 「ねぇ、アイツらどうしたの?揃いも揃って森の中行っちゃって」 「……ああ、どうやら一つ目シェフが酔っ払ってジュニアを森にぶん投げたらしい。探しに行ったんだろ」 「ヤバ。カパカパ怒ってんじゃないの?」 「そらもう激怒でしょうよ」 「私達も探しに行った方がいい?」 「あんだけの人数で行ったんだ、平気だろ」 「ふぅん……ねぇ、今何か聞こえなかった?悲鳴?」 「気のせいだ気のせい。………うっわぁ、化け猫さん怒ってんなぁ」 「え、何?」 「いーや。生き物は大切にしないとなって話。……あ、帰ってきた」 「野薔薇ー!」 「アンタも災難ね、ジュニア」 「………………………怖かったでしゅ」 「何があったのよ……」 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 猫は笑う。 口の周りを赤く濡らし、次なる獲物を舌舐めずりして待っている。金の眼は逃さない。猫の主食であるその罪を。 喰われたくなければ決して粗末に扱うな。 でないと骨の髄まで飲み込まれるぞ。 「ご馳走様でした…………にゃ」
    45,871文字pixiv小説作品

このタグがついたpixivの作品閲覧データ

カイザーギドラ
29
編集履歴
カイザーギドラ
29
編集履歴