混同:ゾフィーとは異なります。
※本記事は、現在公開中の映画『シン・ウルトラマン』の重大なネタバレを含むので、作品鑑賞後の閲覧をお勧めします。
「君がこの男の生命を奪ったのか、リピアー。いや、この星に合わせ"ウルトラマン"と呼ぼう」
CV:山寺宏一
概要
映画『シン・ウルトラマン』に登場するもう1人の光の星からの使者。
人間と融合する禁忌を犯したリピアー(=ウルトラマン)に代わって地球と現生人類の監視者兼裁定者となり、地球へと降着する。
名前は過去のウルトラシリーズに登場したゾフィーを想起させるが、その役回りは大きく異なっている。
外見
複数のキャラクターを複合したような見た目をしている。
身体の模様は『ウルトラマン』に登場したゾフィーをアレンジしたものであるが、カラーリングは成田亨氏が晩年携わった『ネクスト』(もしくは『ウルトラマン神変』)をモチーフとした金と黒となっており、その印象は大きく異なる。
また、本作のウルトラマンと同様カラータイマーは無く、ゾフィーのシンボルとして知られているスターマークとウルトラブレスターもないが、『ウルトラマン』当時の彼の特徴だった頭の黒い鶏冠は再現されている。
マスク部分の3Dデータは、ゾフィーのものを流用したとされる初期のウルトラマンジャックのものが使われている。
よく見ると目の形や口元などが左右非対称になっており、正面から見ると微妙に歪んでいる。
この為ウルトラマンと殆ど同じ顔でありながら、見る者や見方によっては異様な違和感や不安感、不気味さを感じさせるものになっている。
ウルトラマンのように巨大化はせず、終始人間と同じ大きさで活動していた。
性格
ウルトラマンが語っているとおり、「光の星の掟に忠実」であり、一方的な判断で地球人を滅ぼそうとする苛烈さを持つ。後述する最終兵器を起動する直前には、「光の星が確認している知的生命体は130億近く存在する。その中の一つが消えたところで、宇宙は何も変わらない」と言い放ち、ウルトラマンにも「無駄な抵抗は止め、静かに人類の粛清の時を待て」と通告する。
一方、ウルトラマンや地球人による決死の戦いを受けて考えを改めたり、死に瀕したウルトラマンを救出するなど、(地球人のそれとは大きく異なるものの)情に篤い面も見せている。
作中での動向
ウルトラマン(リピアー)とメフィラスの戦闘シーンから登場。事態の経過を監視しており、このことに勘づいたメフィラスは戦況が有利だったにもかかわらず即座に地球侵略を放棄、地球から手を引くこととなる。
メフィラスの撤退後に本格的に活動を開始、森に安置された神永の遺体を眺めているウルトラマンと接触。メフィラスの策略によってベーターボックスを用いる事で、「人類が光の星の戦士と同等の戦力を秘めた兵器に転用可能」であることがマルチバース全域に広まってしまったことを危険視し、人類根絶のためにゼットンを起動する。
その後、ゼットン撃破により発生した異空間への穴に飲み込まれつつあったウルトラマンを救出。ゼットンを倒す方法を思いついた人類の英知と勇気に感銘を受け、地球人類をこのままにしておくことを決定する。
ゾーフィとしてはウルトラマンを生かして光の星へ連れ帰り、掟を破った責任を償うべきと考えていたのだが、ウルトラマンの必死の願いを聞き入れたことで考えを変え、神永にウルトラマンの命を与えた上で2人の肉体を分離させ、神永を地球に帰還させた。
賛否両論の裁定者
M78星雲の光の国と『シン・ウルトラマン』における光の星は別の存在であるため、単純に比較することはできないのだが、それでも劇中のゾーフィの行動は光の国のウルトラマンなら絶対にやらない方法である。
ウルトラ戦士にとって、他の天体の文明に過剰に干渉したりすることは禁忌であり、ましてや独断で天体ごと消滅させるなど以ての外である。というか危険だから滅ぼすというのは、ウルトラシリーズで度々出てくる侵略者達の理屈である。近年のウルトラシリーズでは特にこの内政不干渉の原則は顕著であり、1/3人前とまで言われた新人でさえも地球人の政治には口出しするのを憚っていたり、光の国と全面戦争をしていたはずの異星人ですら殲滅はされておらず後の作品で同族が登場している。しかもその弊害として怪獣による人的及び金銭的被害が出ているにも拘らず内政不干渉を徹底し、その結果被害を拡大させてしまった世界線も存在する程である。
※(一応、あるウルトラマンが天体ごと敵を葬った例として、要塞・マレブランデス、ビートスター天球、サイバー惑星クシアの例があるが、それらの天体の住人はほぼ全員が戦闘用のロボット怪獣であり、非戦闘員の市民は居住していないと思われる。加えて、それらの 天体の 主人は 作中では敵対している文明や生態系への絶滅作戦の真っ最中であり、交渉や停戦の余地は無かった。)
作中で何度もマルチバースの存在に言及していたように、彼らはM78星雲のウルトラ戦士とは全く別の天体人と見るべきだろう。
ある意味、『シン・ウルトラマン』という作品に於ける光の巨人がどういう存在であるかを如実に表したキャラクターである。”地球を守る守護神”である『光の国』の住人とは明確に異なる、”宇宙の秩序を守る裁定者”、それがゾーフィら『光の星』の住人なのである。地球人にしてみれば、彼等もまた地球の存在を脅かす侵略者と言って良い。それを暗示するように、シン・ウルトラマンの本名であるリピアーの由来と思われるリピアは、生態系に甚大な被害をもたらすおそれのある外来種の花(ヒメイワダレソウ)の別名である。
元ネタ
上述のとおり、劇中での役割はウルトラマンのゾフィー+ゼットン星人であり、ウルトラマンでありながらゼットンを使って人類を滅ぼそうとするという意表を突いた展開でファンに衝撃を与えた。
元々ゾーフィは、ゾフィーとゼットン星人の情報が錯綜した結果児童誌に誤報として「宇宙人ゾーフィ」の名で掲載された存在であり、ウルトラマンファンの間ではマイナーなネタとして知られていたが、本作で公式なキャラクターとして登場したことでファンを驚かせた(相違点は悪ではないこと)。しかも、当該児童誌には「宇宙恐龍ゼットンをあやつって大あばれをする。」と書かれており、本作でゼットンを持ち込んだのもその設定に由来している。
※加えて、オリジナルとはほぼ別人とも言える上に、劇中におけるやむを得ない事情込みであっても、既にウルトラヒーローとして深く認知されたゾフィー(に似たキャラクター)が、ゼットンを使い人類を滅ぼそうとした描写だけでも衝撃的な展開と言えよう。
ちなみに企画・脚本等を担当する庵野秀明氏は十数年前に知人に教えてもらうまでこのネタを知らなかったらしい。「最後は同族と対峙するのも面白い」ということで、このマニアックすぎるネタが採用されたのである。
余談
- オリジナルのゾフィーといえば「私は命を二つ持ってきた」というインパクトのある台詞で有名だが、本作のウルトラマンは死亡までは至ってなかったためゾーフィは口にしておらず、似た台詞としては「私は執行者として、天体制圧用最終兵器を伴ってきた」というものがある。
- 本作のキャッチコピーである「そんなに人間が好きになったのか」は、『ウルトラマン』でゾフィーが発した「そんなに地球人が好きになったのか」という台詞が元になっており、本作のゾーフィも終盤で口にしている。
- 声を演じた山寺宏一は『ウルトラマンG』でロイド・ワイルダー隊員、『ウルトラマンオーブ 絆の力、おかりします!』でガピヤ星人サデス、『ザ・ウルトラマン』のショートアニメでゾフィー、メロス、ジャッカル他を演じるなど、ウルトラシリーズに複数回にわたって出演している。
- 山寺氏もオファーを受けた当初は、マネージャーがゾフィーと間違えてるんじゃないかと勘違いしていたらしく、再度マネージャーに確認したところ本当にゾーフィ役でのオファーだと知り、驚いたという。
- ちなみに、山寺は映画の公開の翌日に、自身のTwitter上にスペシウム光線のポーズを取っている写真を掲載し、間接的にではあるが『シン・ウルトラマン』への出演を仄めかしている(出演したことを直接言及していないのは演じたキャラの存在そのものが大きなネタバレであるため、それに配慮したのだと思われる)。
- 『シン・ウルトラマン』のスピンオフ作品である『シン・ウルトラファイト』はナレーションが山寺宏一である為、しばしばウルトラマンが戦う様子をゾーフィが実況しているとネタにされることも。ちなみに、山寺氏によるとこちらの方のオファーが先だったらしい。
- 現在のゾフィーを演じている武内駿輔氏は山寺宏一のものまねを得意としている人物で同じくものまねを得意とする山寺氏とも交流があり、ウルトラマンとはまた違った意味で意外なキャスティングと言う声も多い。
- 上映開始から一週間と数日が経過した5月23日に情報が解禁。情報解禁と同時に2022年6月にソフビ人形やウルトラアクションフィギュアやS.H.Figuarts化が決定した。なお、ゾフィーとの混同を避けるために「ゾーフィ(シン・ウルトラマン)」というタイトルで発売される模様。S.H.Figuartsとソフビ人形は顔の左右非対称具合もしっかり再現されている。
- ゾーフィのカラーリングは上述のように「金と黒」であるが、映画内で「全身銀色」や「銀と青」のように見えていた人も多かったようで、フィギュア発売発表時の「金と黒」の姿に対する驚きの声も上がった。
- 上述した通り、異次元空間に落ちたウルトラマンを救出しているのだが、彼はこの作戦を実行するに当たって「二度と戻れないかもしれない異次元に飛ばされる」と忠告を受けている。そしてその通り、ウルトラマンは全力を出しても尚発生したワームホールから逃れる事が出来なかった。それを、いくらウルトラマンの生きたいという意志が信号として発せられていたとはいえ、彼を救出して且つゾーフィ自身もまた無事に元の宇宙へと帰還している事から、その能力の高さが伺える。
関連タグ
ウルトラマン神変:体の色が同じ。
ウルトラマンジャスティス:本作が放映された年にTV本編が21周年になるウルトラシリーズ作品の劇場版で登場した立ち位置の似たウルトラマン。こちらも当初は人類を危険視し人類を滅ぼそうとしたが、後に人類に対する考えを改めた点も共通している(ただし、ゾーフィはジャスティスと違い、上位者の方針に抗って対立することはなかったため、そういう意味ではリピアーとの共通点もあるといえる)。
平成ウルトラセブン:こちらの世界でも地球人側についたウルトラ戦士を光の国の同胞が断罪する展開がある。
メビウス(ウルトラマン):作品内で地球人が自分達と同じような種族であることに言及したウルトラマン。ただし彼は地球人が今の姿を捨てなくてもいい世界のために自分が戦うという道を選んでおり、元となった理屈こそ同じようなものだがたどり着いた結論はゾーフィとは正反対である。
惑星調査員アルマ:惑星の生命体の存在価値を調査し、不必要と判断した場合は強制的に消滅させる権限を持つという裁定者に近い役割を持つ。
空中棲息生物クリッター:『ティガ』に登場する生物。劇中の人類同様、「本人たちに落ち度はないが、外的要因により危険な存在に変貌するから」という理由で根絶されそうになった共通点を持つ。彼等を殲滅しようとしたのは他ならぬ人類だった。
アブソリューティアン:同時期の作品に登場する金と黒の種族。