「おや?中立だから…ですか?いけませんねぇ、それは。皆命を懸けて戦ってるというのに、人類の敵と…」
CV:檜山修之
概要
反コーディネイターを掲げる政治団体「ブルーコスモス」の盟主。古くから反コーディネイター運動に最大の出資をしてきたアズラエル財閥の御曹司でもある。また、国防産業連合理事の任にあり、デトロイトに本拠を置く大手軍需産業の経営者でもある。大西洋連邦政府及び同国軍に対して強い発言力を持ち、現場指揮官に直接命令を下すことすらある。家系の影響に加え、幼少期に同年代のコーディネイターにどうしても敵わず、軽くあしらわれて以来、彼らに対して激しいコンプレックスを持つようになった。
因みに親族(父親とも)と思われるブルーノ・アズラエルは、ロゴスのメンバーであり、ムルタ自身もロゴスのメンバーだと思われる。
年齢は30歳と、地位に対して非常に若い。作中には登場しないものの妻子持ちである。
軍需産業を指揮しているだけに洞察力は鋭く、最初にフリーダム、ジャスティスの戦闘を見た後に、両機が核エネルギーを使用している事を見抜いている。
ただし、普段はクールな皮肉屋を気取っているが根は短気で、余裕がなくなると感情的に怒鳴り散らすなど、特に物語後半では精神的な脆さを見せる場面が多い。
アラスカ基地の情報を提供する見返りにスピット・ブレイクの情報をバーターし、ザフトの攻撃部隊の8割と連合内の反対派閥を抹殺する事に成功。パナマ防衛が失敗した後は脆弱化したビクトリアを陥落させ、地球連合軍の宇宙進出を成功させた。その後色々な成行でNJCの技術を入手し、プラントへの核攻撃手段を手に入れる
…と功績を列挙すれば後任の盟主と違って結果を残しているのだが、最初のスピット・ブレイクの情報獲得時点でラウ・ル・クルーゼと通じており、結果的に地球内に閉じ込められていた連合軍の大規模宇宙進出による最終決戦の引き金となった。その後のニュートロンジャマーキャンセラーの入手さえも彼の計らいが多分に含まれており、最終的には相互確証破壊さえも無視した先制核攻撃を敢行し、怒りに燃えるパトリック・ザラにより、ミラージュコロイドによって隠匿されていたジェネシスの反撃を受け、多くの部隊と月面基地を失った上、最後の照準として地球を危機にさらしてしまう。
一連の行動は人類の滅亡を望むラウ・ル・クルーゼの思惑通りに進んでおり、アズラエルもまた仇敵=コーディネイターのトップであるパトリック・ザラ同様、仮面の男の掌の上で踊らされていた人間の一人であったのかもしれない。
やったこと自体は非道ではあるのだが、後述する理由からガンダムSEEDを代表する名悪役としてファンからの人気は高い。
中の人が某勇者などに出演していたため、ファンからの通称は「盟主王」
『第3次スーパーロボット大戦α』に登場した際はその某勇者と共演し、「あのライオンロボ……なんとなく、気に入りませんね」「勇気などという不確かなものに頼っていてはいつか敗北しますよ」などという声優ネタが見られる。
外伝作品「SEED ASTRAY」シリーズでは遺伝子操作によってナチュラルに服従する措置を施したコーディネイター兵であるソキウスが登場し(これらも研究の引き継ぎという形でブルーコスモスが関与していた)、スニーカー文庫版1巻ではブーステッドマンの導入によって不要となった彼らを演習の的にする等、コーディネイターに対して冷淡な面が強調されている。
尚、小説版「SEED」5巻によると、彼が盟主を務めるブルーコスモスには自身の遺伝子操作を憎悪したコーディネイターも在籍しているとの事であるが、それをアズラエル本人が感知していたかは不明。本編・外伝ともにコーディネイターとは交友した場面もなく、オーブ侵攻作戦の際は軍事協力とオーブの見逃しを打診したロンド・サハク姉弟に二枚舌を使った一面も見せている。
本編では初登場するやその言動(冒頭の台詞もその一つ)でブルーコスモスに属していない他の地球連合の高官から顰蹙を買う場面もあり、宇宙に上がってからもナタルと度々対立していた。
劇中での活躍
パナマ攻防戦において地球連合軍はマスドライバーを失い、宇宙への橋頭堡確保のため、マスドライバーを持つオーブへの侵攻を提案し、自ら指揮する。オーブへの侵攻とマスドライバーの奪取はオーブ側のマスドライバーを含む軍関連施設およびモルゲンレーテ社の自爆により失敗に終わったが、後期GAT-Xシリーズのカラミティ、フォビドゥン、レイダーを実戦投入するという、もう一つの目的は大きな戦果と共に達成された。
その後のアークエンジェル討伐戦では、フリーダムとジャスティスに核エンジンが搭載されている事を見抜き、捕獲を命令。
宇宙に上がってからは、ナタル・バジルールが艦長を務めるアークエンジェル級2番艦ドミニオンに乗り込み、民間人でありながら実質的な指揮官の座にあった。
本人曰く「あなたは確かにこの艦を指揮する艦長さんなのかも知れない。けどね、その上にはもっとこの戦争全体を見ながら考えたり指揮したりする人間がいるんですよ」とのこと。
ザフトから解放されたフレイ・アルスターの「戦争を終わらせる鍵を持っている」という言葉に関心を持ち彼女を救助し、ニュートロンジャマーキャンセラーのデータを手に入れ、それがクルーゼによる戦争どころか世界を終わらせる為の企みとも知らず狂喜した。
その後は地球へのエネルギー供給の優先を提案していた地球連合上層部を説き伏せ、Nジャマーキャンセラーを利用した核ミサイル搭載モビルアーマー部隊「ピースメーカー」を編成。ザフトの宇宙要塞ボアズを核攻撃で沈めた後、プラントに対しても核攻撃を行おうとする。
しかし、最終決戦である第二次ヤキン・ドゥーエ攻防戦において投入された核ミサイルは、キラ達によって全弾撃墜され、腹心であるウィリアムが戦死、主力の連合新型MSが2機も撃墜されパイロットのシャニとオルガも死亡するなど劣勢に追い込まれる。
同時に、かねてよりアズラエルの行動に疑問を抱いていたナタルが造反。フレイをはじめとする全クルーをアークエンジェルに投降させた後、心中を図るべくアズラエルを艦内に閉じ込める。
追い詰められたアズラエルはナタルの全身を拳銃で撃ち、自分の解放を強要。それが叶わぬと見るや、自分用の端末でドミニオンのコントロールを掌握しローエングリンを起動、アークエンジェルを沈めようとするがムウの犠牲により失敗。激昂したマリューが放ったアークエンジェルのローエングリンでナタルと共に最期を迎え、断末魔と共にアズラエルは宇宙の藻屑となって散っていった。
なお、この際にアークエンジェルのローエングリン発射より早くドミニオンのローエングリンを発射し、艦橋への直撃コースのそれを庇ったムウのストライクを結果的に撃墜しているが、本来武器管制や照準、艦隊姿勢等で複数名の連携が必要なそれを単身で行い(アークエンジェル型は少数運用出来るように設計されている戦艦であるとはいえ)、訓練を受けているマリュー達アークエンジェルクルーよりも先にこなした上で、前述の通り艦橋への直撃コースで放つという離れ業を披露している。意外とそっちの才能も有ったのだろうか。
ファンからの支持
劇中においては完全な悪役であり、落ち着きのない言動やラウ・ル・クルーゼに踊らされる姿から小物のイメージが定着しているが、戦争の本質を突いた正論を放つ場面も少なくなく、当時はザフトの全体的な人格面もやや悪かった所為か良くも悪くも熱血漢なためファンからの支持は厚い。
キラ・ヤマトやラクス・クラインといった主役陣が、完璧超人めいた人格で事あるごとに理想論を振りかざすのに対し、恵まれた立場にありながらコーディネイターへのコンプレックスにまみれた人間臭さや徹底した現実主義が共感を呼ぶのかもしれない。
戦争にさえ関わらなければ、優秀な経営者、もしくは政治家として大成できていた可能性が高い。
続編『DESTINY』において、彼の後釜として登場したロード・ジブリールが口先だけの小物であったことも、彼の評価を相対的に上げる要因となっている(どちらもユダヤ教の天使が名前の由来である点は共通している)。
総じて有能だが、それ故に器用に立ち回りきれない馬鹿という評価に落ち着くだろう。
声を演じた檜山修之氏にとってもアズラエルは特にお気に入りのキャラの1人であり、自身が担当したキャラの中でも「ヒーロー役の集大成」としている勇者王ガオガイガーの獅子王凱と対比する形でアズラエルを「悪役の集大成」と評したり、「自分が演じた代表的な悪役」とまで語るなど、かなり強い思い入れを持っている。
台詞
- 「言って分かればこの世に争いなんてなくなります。分からないから敵になるんでしょう?そして、敵は討たねば!」(第43話)
- 「無理を無理と言うことくらい誰にでも出来ますよ。それでもやり遂げるのが優秀な人物。これ、ビジネス界じゃ常識なのですけど?」(第45話)
- 「ビジネスだって同じですよ。貴女って、もしかして確実に勝てる戦しかしないタイプ?」(第45話)
- 「クハハハハッッ、アハハハハッッッ、ぃやったーー!!!!」(第46話)
- 「核は持ってりゃ嬉しいただのコレクションじゃあない!強力な兵器なんですよ?兵器は使わなきゃ。高い金かけて造ったのは使う為でしょう?」(第47話)
- 「勝ち目のない戦いに"死んでこい"って自分の部下を送る人たちより、僕の方がよっぽど優しいと思うけど?」(第47話)
- 「何がナチュラルの野蛮な核だ…!あそこからでも地球を撃てる奴らのこのとんでもない兵器の方がはるかに野蛮じゃないか!」(第48話)
- 「自軍の損失は最小限に!そして敵には最大の損害!戦争ってのは、そうやるもんだろ!?」(第49話)
- 「撃て!撃たなければ討たれるぞ!」(第49話)
- 「僕は勝つんだ!そうさ、いつだって…!」(第49話)
関連イラスト
関連タグ
シロー・アマダ…中の人繋がりでガンダムキャラ、性格や人望が真反対の熱血漢主人公。
アセチレン・ランプ…同期放送のTVアニメにおいて、ほぼ似たようなポジションを担当する悪役。中の人は某勇者の上司を演じた。
ラスタル・エリオン…同じく最終決戦で戦争の早期終結のために禁止兵器に手を出しているがこちらは成功している。
神風大将、ヴィラル…同じく「○○王」と言われている声が同じ悪役。
ヴィルヘルム…中の人&インテリ悪役繋がり。こちらはアズラエルとは逆に人間臭さが殆ど無い人物である。
ダーニック・プレストーン・ユグドミレニア…中の人繋がり。目的完遂のための行動自体は有能。普段はクールだが精神的余裕がなくなると冷静さを失うという共通点あり。またこちらもポジションとしては黒幕の掌で踊らされていたという部分も共通している。