概要
日本動画協会・正会員社。初代社長は岡田斗司夫
社会現象を巻き起こしたアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』や、『ふしぎの海のナディア』、『トップをねらえ!』などのアニメ作品を制作した。映像作品以外ではゲーム『プリンセスメーカー』シリーズなどのヒット作品も製作。
社名は島根県の東部、鳥取県の西部の方言(雲伯方言)で「大きい、凄い」という意味の「がいな」に、未知を表す「X」をつけたもの。
沿革
1981年の日本SF大会「DAICON 3」のオープニングアニメーションに関わった岡田斗司夫、武田康廣、赤井孝美、山賀博之、庵野秀明、村濱章司といった関西の学生らが、「DAICON FILM」として映像制作を行っていた。DAICON 3の後、岡田と武田は大学を中退しSFグッズショップ「ゼネラルプロダクツ」を設立。ゼネラルプロダクツは学生主体のDAICON FILMと密接な関係を持ちながら活動した。
なお上述のメンバーの大学時代における活動やエピソードなどは島本和彦の「アオイホノオ」に詳しく描かれている。
1984年秋に上京した岡田は『王立宇宙軍~オネアミスの翼』(王立宇宙軍)を企画し、同企画の制作にあたりガイナックスを設立した。岡田は『王立宇宙軍』のパイロットフィルムと企画書をバンダイの役員会に持ち込み、バンダイは投資を決断。1987年3月、『王立宇宙軍』は劇場用映画として公開された。
ガイナックスは当初『王立宇宙軍』が完成すると同時に解散する予定であったが、同作品の制作費が予定を大きく超過したため、超過分は借金となった。そのため借金を返済すべく経営を続け、OVA作品の『トップをねらえ!』を制作した。努力と根性とエッチを売りにした同作品は好評だったもののこちらにも過大な制作費をかけてしまったため、結果的に借金は膨らんだ。ガイナックスはさらに経営を続けざるを得なくなる。
1989年からは岡田の発案により、パソコン向けコンピュータゲーム制作にも乗り出しアニメと両輪の企画・制作を続けた。特に赤井が監督とキャラクターデザインを担当した1991年の『プリンセスメーカー』シリーズは育成シミュレーションゲームというジャンルの先駆けとなった。製造原価が低く済み、開発費も殆ど掛からなかった事からアニメ制作で出た赤字を補填し、当時会社にとって重要な収益になっていたという。
1988年からのOVA『トップをねらえ!』で注目を集め始め、TVアニメ『ふしぎの海のナディア』は1990年の最大の話題作となった。そして、1995年の『新世紀エヴァンゲリオン』はアニメの枠を越えて社会現象を巻き起こし、ガイナックスは一躍脚光を浴びた。
しかし、この「エヴァがもたらした利益」は後々、零細に等しかったガイナックスを放漫経営へと走らせる契機となり、種々の不祥事(後述)を引き起こす要因ともなった。
2004年にガイナックスは設立20周年を迎える。生誕20周年記念作品としてアニメーション作品『この醜くも美しい世界』、『忘却の旋律』を製作・公開。OVA『トップをねらえ2!』を制作。
2006年には庵野がガイナックスを離れる。
2007年には久しぶりとなるガイナックスオリジナルのアニメ作品『天元突破グレンラガン』が制作され、テレビ放送ののち翌年には劇場版も公開される。また、『新世紀エヴァンゲリオン』の劇場版リニューアル4部作『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』の製作が承認され、第1作『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』が劇場公開された。新劇場版より同シリーズの制作はガイナックスからスタジオカラーへと移った(スタジオカラーはTV版当時エヴァを作った主力スタッフとともに、庵野監督が立ち上げたスタジオである。ガイナックスは直接制作には関わっていない)。
2011年には『グレンラガン』座組であった今石洋之らが退社。スタジオTRIGGERを設立する。
2012年にはめだかボックスを制作、放送。この頃より経営が悪化の一途を辿る。
2015年1月19日に、福島県に「福島ガイナックス(現:ガイナ)」を設立すると発表。三春町にある閉校した中学校に制作スタジオとミュージアムを併設し、同年4月に開設した。この企業はガイナックスとは資本関係にない。同時期、地方に関連子会社を相次いで設立している。
2015年春に『放課後のプレアデス』を制作・放送。
同作品を最後に、2016年9月30日にはアニメーション制作部門が事実上廃止され(所属していたスタッフは福島ガイナックスの関連会社に全員引き取られている)、以後新たなアニメーション作品の制作は行っていない。
主な作品
テレビシリーズ
ふしぎの海のナディア(グループ・タック、世映動画と共同制作 1990-1991)
新世紀エヴァンゲリオン(タツノコプロと共同制作 1995-1996)
彼氏彼女の事情(J.C.STAFFと共同制作 1998-1999)
まほろまてぃっくシリーズ (シャフトと共同制作 2001-2003、2009)
アベノ橋魔法☆商店街(マッドハウスと共同制作 2002)
この醜くも美しい世界(シャフトと共同制作 2004)
これが私の御主人様(シャフトと共同制作 2005)
天元突破グレンラガン(2007)
はなまる幼稚園(2010)
パンティ&ストッキングwithガーターベルト(2010)
ダンタリアンの書架(2011)
めだかボックス (2012)
ステラ女学院高等科C3部(2013)
放課後のプレアデス(2015)
OVAシリーズ
トップをねらえ!(実制作はスタジオ・ファンタジア 1988-1989)
おたくのビデオ(1991)
炎の転校生(当初はレーザーディスクのみ 1991)
フリクリ(Production I.Gと共同制作 2000-2001)
Re:キューティーハニー(東映アニメーションと共同制作 2004)
トップをねらえ2!(2004-2006)
劇場作品
王立宇宙軍~オネアミスの翼(王立宇宙軍 オネアミスの翼)(1987)
新世紀エヴァンゲリオンシリーズ (1998-1998)
天元突破グレンラガンシリーズ (2008-2009)
Webアニメ
放課後のプレアデス(2011)※2015年にテレビシリーズとして放映
実写作品
ゲームソフト
電脳学園シリーズ
プリンセスメーカーシリーズ
ミュージッククリップ
Marionette/BOØWY(アニメーションパート 1987)
その他
アニメ店長PV(2002)
作品の特徴
サイエンス・フィクション(SF)ジャンルの作品世界構築や、いわゆる「美少女キャラクター」の登場人物造形を得意とするスタジオであった。
『トップをねらえ』、『天元突破グレンラガン』をはじめ、作品の始まりには地に足のついた描写からスタートしていたものが、終盤近くでは大幅に物語世界のスケールをインフレさせる作品作りは一つの特徴であると言える。
作品によっては視聴者を「突っぱねる」結末で終わる作品が少なからずあり(「視聴者突っぱねエンド」)、そうした点は賛否両論を生むことがある。
また初期の作品を中心に、パロディやオマージュを多用したことも特筆される。
不祥事
脱税事件
1999年11月に東京国税局から所得隠し15億6000万円と脱税5億8000万円(2年分)の告発を受ける。
後にこの時の社長であった澤村武伺が逮捕され、辞任に追い込まれた。
ファン侮辱
2007年4月、「天元突破グレンラガン」の第4話の表現方法に批判的なファンを侮辱・罵倒する内容の書き込みを社員が行っていたことが発覚、しかもその批判・罵倒の尻馬に乗ったかのような書き込みを重役の一人であった赤井孝美が書き込んだことで話が大きくなってしまう。結果赤井はガイナックス重役を辞任している。
社長による準強制わいせつ事件の発生、同事件のとばっちり、及び発覚したお家騒動
2019年12月5日、当時の社長であった巻智博が準強制わいせつ罪の容疑で逮捕される事件が起きた。
この事件の報道で「新世紀エヴァンゲリオンなどの制作会社」と一部報道されたことで、現在エヴァシリーズの諸権利を持つ株式会社カラーが、現在はガイナックスはエヴァンゲリオンの制作に関わっていないことと、件の社長が一度もエヴァンゲリオン作品に携わった事がない無関係の人物(※1)である旨の抗議文を公表(全文)。同じく資本関係にない「米子ガイナックス」「GAINAX京都」も同様に無関係であるとの断りをツイートしており(米子ガイナックスのツイート)(GAINAX京都のツイート)、とんだとばっちりを受けてしまっている。
本件の影響でスタジオカラーは営業的な不利益も被ることとなり(中にはカラーの不祥事あるいは庵野が逮捕されたという誤解まで起きたらしい)、対応に追われた。これを受けて庵野は改めて取材に応じ、彼がガイナックスから離れた経緯や長年の友人であった山賀との確執、同社の放漫経営ぶり(および製作資料から始まる知的財産権の散逸)を告発している。庵野による当該「特別寄稿」記事(※2)
この事件で報道がなされたのは、東京都武蔵野市に本社を置く企業である。それ以外のガイナックスを名乗る制作会社は資本関係がない別会社であって、厳密には子会社ではなく本社とは経営上無関係であるとされる。(なお、このことについても庵野は「ガイナックス」の名前を冠する「GAINAX京都」「米子ガイナックス」の二社は子会社でもないのに「ガイナックス」を名乗っていたがためにとばっちりを食らったのだといった苦言を呈している)
事件を受け、逮捕された巻は社長を退任している。
その後、2019年12月27日の臨時総会において役員の総入れ替えが行われ、全員が社外から選任された。翌2020年2月18日には新社長としてカラーの版権管理会社グランドワークス代表の神村靖宏が社長を兼任。取締役にはKADOKAWAアニメ事業局アニメ制作部部長の高石優子とキングレコード上席執行役員の森山敦、TRIGGER副社長の宇佐義大が就任。この体制下で現在、ガイナックスの資料、知的財産権の散逸状況確認が進んでいる。
この版権整理自体が具体的にどう進んでいるかは明かされていないが、『パンティ&ストッキングwithガーターベルト』はカラー(後にTRIGGER)に版権を移管していることが判明しており、裏ではしっかりと整理が進められている様子。
※1…巻が被害者に「エヴァンゲリオン制作に携わった」と騙ったとされる事によるもの。当時社長だった巻は元々はガイナックスの株主だったらしく、挙句は企業乗っ取り紛いのことをしていたらしい。
※2…この寄稿によれば、かつて「エヴァンゲリオン」関係のゲームにおいて庵野に話を通していない形で勝手に発売されたものがあったという。少なくとも庵野が監修したと判明している作品には「新世紀エヴァンゲリオン2」、またはクロスオーバー参戦の形での「スーパーロボット大戦シリーズ」がある。
関連イラスト
関連タグ
庵野秀明 貞本義行 岡田斗司夫 赤井孝美 山賀博之 摩砂雪 鶴巻和哉 樋口真嗣
愛国戦隊大日本:ある意味処女作。
GONZO 株式会社カラー ミルパンセ TRIGGER…かつてのスタッフが立ち上げた会社
NERV・ヴィレ…この二つの対立はガイナックスとカラー(含む元ガイナックスメンバー)の確執が裏モチーフではないかとの説がある。
円谷プロダクション…エヴァのリスペクト元の製作会社だが、「作品至上主義をお題目に掲げた放漫経営」「重要な知的財産権の勝手な売却」など社風が悪い意味で共通してしまっており、上述の庵野の取材を見たファンの間でも「かつての円谷プロを連想させる腐敗ぶりだ」という意見が出た。