概要
本項では、ゾイドとしての「オーガノイド」および「インターフェイス」と、ゾイドに搭載される特殊なシステムである「オーガノイドシステム」について解説する。シリーズ全体での初登場は漫画「機獣新世紀ZOIDS」であり、「オーガノイド」という単語は「ゾイド-ZOIDS-」の劇中にて登場した。両2作品ではともに主人公のパートナーとしての2メートルほどのゾイドとして描かれる。その後にゾイドの背景ストーリーである「ゾイドバトルストーリー」にゾイドを強化するシステム(プログラム)であるオーガノイドシステムが登場。いずれも融合または搭載したゾイドの戦闘力を増大させるが、その設定や扱いは異なっている。
機獣新世紀ZOIDS版
バトルストーリーで見られた「オーガノイドシステム」とは異なり、こちらは、『ゾイド-ZOIDS-』と『機獣新世紀ZOIDS』で導入された新しい概念と言える。
劇中でジークとシャドーの2種類が登場。パイロットを必要とせず、火器も持たないゾイドであり(内蔵型のブースターを持つ個体もいる)、野生ゾイドに近い外見をしているとも言える。他の(戦闘用として改造された)ゾイドと融合しその戦闘力を強化させる。バン・フライハイトがジークを初めて見た際には、ゾイドに憧れる彼が「なんて綺麗なんだ」と呟くほど洗練された姿を持っている。また、アニメ版と異なりジークは初期では人間(バン)を体内に格納して戦闘する場面が目立った。
また、胸部が展開してケーブルのような器官を伸ばして人間を格納する事も可能であるが、なぜこのような能力があるのかや、内部の構造がどうなっているのかなどの歴史的な部分は不明な点が多い。メカ生体の要であるゾイドコアも、一般的なゾイドのように胴体のどこかにあるのか、頭部など別の位置にあるのかは判っていない。
非常に小型だが、野良のガイサックや整備不良のセイバータイガーを撃破するほどの戦闘力も持ち合わせている。
パイロットと共にゾイドと分子レベルで融合することでその戦闘力を強化するとともに戦闘時の加速負荷さえも軽減する事が可能であり、その際は特殊な形状に変型する。(例:ジーク⇒ハート型、シャドー⇒鏃型)。また、合体した際には、ゾイドの頭部に特殊な模様が出現する。
また、ジークとシャドーでその効力もやや異なっており、ジークは融合したゾイドの頭部に特殊な模様を発生させ、それが休眠状態であれば復活させる事もできる。そして時にはその精神世界にも入り込む。対して、シャドーは融合したゾイドを黒色化し、戦闘力を限界以上に発揮させる。そのために、シャドーと融合した従来型ゾイドは死亡してしまうため、これに耐用するためにはゾイド生命核を7個備えたジェノザウラーのような専用ゾイドが必要となる。また、シャドーには「シャドー・キー」と呼ばれる、オーガノイドの能力を一部再現できる特殊な道具を生成する能力も持つが、これを使用すればゾイドを変貌させ戦闘力を増大させるが、たとえばデススティンガーの様な非常に強力なゾイドと言えども死亡してしまう。
当初はジークが背部のブースターで飛翔、シャドーは翼を持つ違いがあったが、「真の力」を発揮した際に、シークも新たに翼を生やした。
劇中にてジーク、シャドーはともに主人公とそのライバルとなるバンとレイヴンのパートナーとして活躍し、通常の戦闘用ゾイドが活躍する世界において、主役級に与えられた特別な力のガジェットとして扱われている。尚、本来はオーガノイドと古代ゾイド人がペアとなっていたらしく、ジークはゾイドエッグ(カプセル)に封印されていたフィーネがそれに対応する存在であったが、シャドーは該当の古代ゾイド人がすでに覚醒した状態にあった。
漫画版では「人の女性型の魂」が描写されたのも大きな特徴だが、魂が女性の姿なのは「すべてのゾイドが子を産める(コアの世代交代能力を持つ)」からで、オーガノイド特有の性質ではないらしい。また、ゾイドの外観とは別に「心」の姿を持ち合わせており、ジークの魂は銀髪猫耳幼女だった。他に登場していた古代ゾイドであるウェンディーヌ、オルーガ、ホウライもともに心の姿は女性となっている。
ゾイド-ZOIDS-版
こちらも主人公バンの相棒であるジーク、ライバルのレイヴンとともに行動するシャドーが登場。GF編以降はさらに2種類のオーガノイドが登場している。
古代ゾイド人と生活を共にしていた超小型ゾイドであり、外見・体色は個体ごとに大きく異なる。劇中では4つの個体が登場し、そのうち3種類はジーク(フィーネ)、アンビエント(ヒルツ)、リーゼ(スペキュラー)が対になっている(回想にて過去のアンビエントが黒色だったシーンも存在する)。ゾイドと融合し戦闘力を強化する点は機獣新世紀ZOIDSと同様だが、パイロットと分子レベルで融合しているわけではないらしく、バンはブレードライガーにてロケットブースター初使用時に加速負荷を受けている。また、あちらのようにシャドーがゾイドに負荷をかける設定はなく、セイバータイガーも複数回融合している。「機獣新世紀ZOIDS」のようにボディ内部に人間を格納する事も可能だが、これは戦闘用には使われず、もっぱらパイロットの脱出に使用されている。
メカ生体の要であるゾイドコアも、一般的なゾイドのように胴体のどこかにあるのか、頭部など別の位置にあるのかは判っていない。劇中でシャドーが死亡した際は他のゾイドと同様に石化している。
エネルギー源は不明であるが、シャドーはゾイドコアを「捕食」していたらしき描写がある。また、ジークが意識不明に陥った際は「ゾイマグナイト」という鉱石を口に入れることでエネルギーを取り込み復活した。
しかし、外見から簡単に通常の野生ゾイドと区別できる要素はないらしく、戦闘用ゾイドが身近な軍人でありオーガノイドの存在も知っているロブ・ハーマンやオコーネルも、初めてジークを見た時は単なる野生体ゾイドだと思い込んでいた。
一方でドクター・ディは一発でオーガノイドだと見抜いたため、見分けるべきポイントを知っていればすぐに判別できる模様。劇中では共和国・帝国がかなり以前から調査を行っていたようで、シャドーはバンやレイヴンが幼少の頃に大佐時代のプロイツェンが入手している。
自我や感情も豊かで性格も個体差が激しく、大人しく戦闘を好まない者もいれば、殺戮を好む者もいる。この辺りは、パートナーの人間の精神状態や周囲に環境にも影響されている可能性がある。劇中では、トーマの告白を誤解したジークが人間に好意を抱く場面もある。
体色に関しては、ジークは他作品の設定イラストなどに見られる白銀の身体に曲線的な外見の野生体ゾイド(の想像図)に近いが、シャドーなど他の個体は黒、青、赤とバリエーション豊かで、「オーガノイドに普遍的な体色」が存在するわけでもないと思われる。
- キャラクターデザインで言うと、パートナーとなる人間の髪色やイメージカラーに近い体色になっている傾向がある。
能力
一般的な野生体ゾイドにも戦闘機械獣としてのゾイドにも見られない特殊な能力を持ち、劇中では常識はずれの奇跡的な現象の数々を発生させた。その様はまるで「小型のゾイドイヴ」※のようでもある。
『機獣新世紀ZOIDS』では、バンは当初はジークと直接合体して戦闘を行っていた。バンが強烈なGや衝撃に悩まされている描写もないことから、合体した人間を外的ダメージから強力に守ることができると思われる。
アーバインいわく「普通のゾイドよりも知能が高い」らしいが、劇中の「普通のゾイド」は戦闘用のメカ生体ボディに改造された個体がほとんどであり、野生体との比較なのかははっきりしない。
また、戦闘機獣としてのゾイドの中にもオーガノイドに劣らないほどの豊かな感情や知性を感じさせるゾイドは何度か描写されているため、実際の優劣のほどは不明である。
また、体のサイズと比べて運動性能やボディーの強度が異様に高い。武装こそ搭載していないが、本気を出せば大型ゾイドさえ瞬時に破壊でき、シャドーは突撃してガンスナイパーやプテラスを撃破している。漫画版でもかなり動きまくったジークだが、アニメ版でも巡行する大型ゾイドに並走したり、時速305kmに達するスペックを持ったブレードライガーをある程度とはいえ追いかけたり、軽い頭突きでグスタフを揺らすといったパワーを見せていた。劇中では尻尾に棘状の装備を持つアンビエント以外、武器らしい武器を固定装備として持つオーガノイドは見受けられない。
獣脚類型は背中に展開式のブースターや翼があり、高速で空を飛ぶこともできる。
全てのオーガノイドが同じ能力を使えるかどうかは未知数だが、以下に、劇中で見られた能力の一部を挙げる。
- ゾイドコアと融合し、その搭載機を大幅に強化する。
- 合体したゾイドのコントロールを奪い、火器も操れる。
- パイロットの操縦を補佐する。
- 戦えないほど消耗したり負傷したゾイドに無理やり戦う力を与える。
- 仮死状態のゾイドを復活させる。明確に死亡(石化)した状態からでも、ほぼ万全な稼働状態に戻す。
- 合体時に失われているゾイドのパーツを瞬時に復元する。金属細胞だけでなく、弾薬やシートベルトなどの付属部品や燃料も復元できる。ただし、戦闘中に負った傷をすぐに治したりはできない。
- 「エヴォリューション・コクーン」と呼ばれる特殊なフィールド(繭)を作り出し、ゾイドを短期間で大幅に進化させる。劇中ではブレードライガーとジェノブレイカーがこれによって誕生している
- スペキュラーはゾイドや人間の精神を支配できるほか、ゾイド因子を利用して一瞬で何倍にも巨大化させる(例:ダブルソーダ)
- アンビエントはゾイドの外見や能力を一瞬で変化させ、新たな武装を発生させる(例:ステルスバイパーやガンスナイパー)
- パートナーの人間の記憶を数百年から数千年間に渡って保持できる。『ゾイド-ZOIDS-』でジークがバンを守るために格納した際には、本来はフィーネ・エレシーヌ・リネに渡すはずだった「忘れられていた記憶」の一部がバンに流れてしまうアクシデントが起きていた。
- 「ゾイドイヴ」の力を受けて動く点は他のゾイドと違いはないらしく、ゾイドイヴを停止すれば古代ゾイド人もろとも死滅する。また、ジークとフィーネはゾイドイヴを再活性、または停止させる能力を持っていた。劇中の最終盤では、フィーネたち古代人の真相にまつわるガジェットの一つとして扱われている。
※ゾイドイヴとは、劇中にて登場したゾイドコアの生成と、エネルギーの源となる女神像。これによって古代ゾイド人・ゾイドはともに動いており、埋もれた状態であってもそのエネルギーでゾイドたちの生命を維持している。近付くとゾイドは活性化し、デススティンガーは傷ついたボディさえ瞬く間に再生している。「機獣新世紀ZOIDS」でも登場するが、こちらでは遺伝的にすべてのゾイドの母となる原初のゾイドという扱い。
個体のリスト
獣脚類型
特定種のゾイドを指す言葉ではないため、外見は個体差が激しい。基本的には小型の獣脚類型や、場合によっては翼を持つドラゴンに近い外見の個体もいるが、中にはパルスの様な哺乳類型もいる。
ジーク、シャドー、アンビエントはバンの出身地ウインドコロニーの付近で発見されたようだ。
ウインドコロニーに住み着くことになったバンの父親と、その部下だったレオン神父はオーガノイドの調査に関わっていたらしいこと、レイヴンの両親も研究者としてウインドコロニー付近にいたらしいことが描写されている。
特にジークは遺跡の隠し部屋でカプセルに保管されている所が描写されており、フィーネともども遺跡を作った者の手で人工的かつ厳重に守られていたことが示唆されている。
ヒョウ型
- パルス
- ゲームオリジナルとして登場した哺乳類型のオーガノイド。ルーシュの相棒
オーガノイドが関与して生まれたゾイド
バトルストーリー
こちらでは「オーガノイドシステム」が主にクローズアップされるため、アニメの世界観に準拠する「生命体としてのオーガノイド」は登場しないが、「インターフェイス」と呼ばれるオーガノイドシステムをコントロールするための超小型ゾイドが設定されている。
オーガノイドシステム
バトルストーリー
「OS」と略した表記も多く見られる。作中では西方大陸北部のオリンポス山に所在する古代遺跡から発掘された、古代ゾイド人が遺した未知の技術として初登場。ガイロス帝国より持ち込まれたデスザウラーを復活させるために使用され、これが失敗に終わると共和国・帝国双方に技術が渡り、ゾイドの強化策として活用されていく。
その概要はゾイドの心臓部であるゾイドコアを活性化させ、戦闘力・敏捷性・回復力その他を向上させるというもの。代償としてゾイドは凶暴化し、操縦系統を介しパイロットにもその感情が流れ込み影響を及ぼす。OSを搭載されたゾイドは意図的に心を曲げられたその作用からシステムを憎悪しており、その感情がさらにOSの効力を増大させる。出力を制限すれば普及できるものの、それ故に戦闘力は低下し、凶暴性が高ければパイロットに負担を発生させるリスクを持つ。後にインターフェイスと呼ばれる小ゾイド(ジオラマで使われたプロップはシャドーのフィギュアであった)によってシステムの負担を肩代わりさせる技術が確立し、帝国陣営(正確には後にガイロス帝国から分離したネオゼネバス帝国)にて完全なコントロール下に置かれた。
劇中ではこうした事情からある日を境にOS搭載型から野生体や換装型のゾイドへとシフトされていき、OSはデスザウラーで活用されたように過去の強力ゾイドを復活させる技術として扱われていく。ウオディックによってこの運用法が確立されたあと、当時の帝国側では最強ゾイドであったデスザウラーの完全復活に成功。バトルストーリー内では主にゾイドの強化とそのデメリットにまつわるドラマ、そして旧来ゾイドの復活劇のために使われたガジェットとなる。
『リバースセンチュリー』では、古代ゾイド人の技術とキングゴジュラスをコントロールするシステムから「ダイレクト・リンク・システム(DLS)」という機構が開発されており、後のオーガノイドシステムの礎になったとされている。その後、ダークネシオスなど一部の非オーガノイドシステム搭載型ゾイドにも応用された。
アニメ
『ゾイド新世紀/ゼロ』では、ライガーゼロとバーサークフューラーが「アルティメットX」と呼ばれているが、これは「オーガノイドシステム」という「特殊な学習装置」を積んでいるからとされており、バトルストーリーとも異なる。
スティーブ・トロスが「オーガノイド」と略していた場面もあった。
本作では、OS搭載機とされるバーサークフューラーやジェノザウラーが古代遺跡から発掘されている。起源を考えるならば、後述するAI「ビーク」のように、オーガノイドをモチーフにした「オーガノイドシステム」が開発されたが技術としては後世に伝わらず、その効果や概念だけが伝承されているようだ。劇中の扱いから、搭載機の発見後もその詳細は解明されていない模様。
OS搭載と目されるアルティメットXの1機、ビット・クラウドのライガーゼロに関しては、フューラー同様の数百年から数千年前の発掘機だったのか、稼働状態のまま保存されていた機体だったのかなどは明らかになっていない。
少なくとも一介のバトルチームが手を出せる売買ルートに乗っており、気難しくて乗れるパイロットがいないかったと言われているため、大きな組織に目を付けられることがないまま、ある程度の期間は人間の管理下に入っていたようだ。CASのレプリカ品も作られており、まったく未知のゾイドになっていたという訳ではない模様。
オーガノイドシステムを搭載する機種の例(一部)
オーガノイドシステムを使って培養された機種の例(一部)
オーガノイドシステムによって生まれた特殊個体の例
- コマンドウルフ⇒ウォルターウルフ、サーベラス・エボルブ
- シャドーフォックス⇒ファイアーフォックス
- ゴジュラス⇒ゴジュラス・ジ・オーガ
その他
- 『機獣新世紀ZOIDS』では、ギュンター・プロイツェンは「超古代に誕生した人型ゾイド」とされており、自ら「シャドーキー」を生み出すなどオーガノイドとの関係を示す能力を持つ。
- 『ゾイド-ZOIDS-』でも、「ダークカイザー」に変貌した際はメカ生体と融合した人外になり果てていた。
- トーマ・リヒャルト・シュバルツは、オーガノイドを参考に特殊AI「ビーク」を完成させている。後の時代にはジャッジマンやベンジャミンやセバスチャンなど妙に高性能というか人間臭い人工知能が生み出されているが、彼らとの関係性は不明。
余談
- アンビエント以外のオーガノイドは、オコーネルと同じく鈴木琢磨氏が演じている。ヒルツとアンビエントは一人二役で、作中で唯一、死亡したオーガノイドとそのパートナーである(シャドーは復活している)。
- ジークが白く見えることと野生体ベースのライガーゼロやバーサークフューラーなどが白いことを「純粋さや独立性の象徴」のように関連付ける向きもあるが、野生体ベース機はCASの基本装備となるアーマーが白いだけで、素体はほぼ全身が黒一色。また、へリック共和国の主要民族である風族は象徴として青色や白色を好み、主力量産機のコマンドウルフなど、白いゾイドは珍しくない。
- そもそもジークはアニメ25話などで周囲から「銀色のオーガノイド」と呼ばれており、白くはない。
- バトルストーリーや『機獣新世紀ZOIDS』では、(装甲巨神Zナイトを考慮しなくても)古代ゾイド人と人型ゾイドとゾイドの境界が曖昧な部分があり、「すべてのゾイドの母」とされる「ゾイドイヴ」も人型であるため、どの程度の差かはともかく、生物的な繋がりを示唆していると考える人もいる。
後述する『機獣新世紀ZOIDS』で描写されたジークやホウライの「心」は人型であるため、彼らにとって「肉体がどのような外見か」は種や自己の判別にそこまで影響しないのかもしれない。
関連イラスト
外部リンク
関連タグ
フェニス・エヴォルト・ライジングライガー・ゼノレックス・ディアブロタイガー:類似した能力や機構を持つゾイドやシステムなどの事例。
ゴジラ:ゴジュラスやキングゴジュラスやデスザウラーのモチーフでもある。凄まじい生命力や「オルガナイザーG1」などの要素をオーガノイドとの類似性だと感じるゾイドファンもいるようだ。