「6つの命が目覚め、7つ目の命が訪れる時、青い惑星の運命が決まるだろう」
商品概要
1990年11月のゾイドの商品展開終了後、TOMYは次なる男児向けオリジナル玩具シリーズの展開を画策する。そして1991年、ゾイドの仕様(1/72スケール、関節キャップ使用)を踏襲する形で新たな組み立て式動力玩具のシリーズを開始する。それが「装甲巨神Zナイト」である。
1991年にはサンライズ製作のOVAも公開されたが、高価格がたたってか中心商品である「装甲巨神」はわずか3(+1)体でリリースを終了してしまう。その後は廉価キットである「メタルフット」シリーズでラインナップを固めたが、1993年度をもって展開終了となった。
その後、ユージン(現:タカラトミーアーツ)より展開されたカプセルトイシリーズ「ゾイドコレクション」にて、シークレットの形で装甲巨神がラインナップされる。存在のみが語られていた幻の機体が立体化された事で、かつてのファンだけでなく、Zナイトを知らない若い世代のゾイダー達をも驚かせた。
2004年にはトイズ・ドリーム・プロジェクト第10弾としてZナイトが単独で復刻販売され、2014年にはコトブキヤよりHMMシリーズとして1/100スケールのZナイトが発売された。HMMZナイトシリーズ第2弾としてマリンカイザーの発売がアナウンスされたが発売直前になって一転中止…となったものの、2015年12月に無事発売された。
ストーリー
ゾイド同様、装甲巨神Zナイトにもストーリーが存在する。ゾイド(いわゆるバトスト世界)と同じ世界の物語であり、「ゾイドバトルストーリー」の実質的な続編ともなっている。
24世紀、地球の汚染は著しく、すでに「青い星」は見る影もなかった。2330年、遂に人類は地球統一国家「ブルースターユニオン」(ブルースター連邦とも)を設立し、地球環境の回復と、宇宙開拓へと乗り出した。2365年、火星のテラフォーミングが始まる中1隻の宇宙船が銀河の反対側を目指して地球を発ち、そして消息を絶った。
西暦2409年、消息を絶っていた調査船「グローバリーⅢ」が外宇宙より帰還した。未知の惑星の人類2079名、そして6つの「メタルハート」と共に。
メタルハートの尋常ならざる力に注目した地球=ブルースターの科学者達は、人型戦闘兵器「アーマー」へのメタルハートの搭載を画策する。悪魔のプロジェクト、「Z・A計画」の幕開けであった。
やがて、ブルースターの一部軍人・エリート達は禁断の果実に手を伸ばしてしまう。ゾイドアーマーを用い、ブルースターの掌握を画策したのだ。完成したゾイドアーマー――――装甲巨神が実戦に投入され、そして地球環境は破壊しつくされた。荒廃と引き換えにブルースターを手に入れた特権階級の下で装甲巨神は封印され、装甲巨神を操る事の出来るゾイド人、そして「セカンド」への弾圧が始まった。
2600年、地球に巨大彗星が接近する。ブルースターの支配階級―――巨神を用いて世界を統べた者達の子孫は火星に逃れ、そして惑星国家「キルナ」を建国した。彗星の衝突によって荒廃を極めた地球に残された人々は、ブルースターユニオンの理念の下、土と水の浄化に努めた。
―――次第に地球の環境は安定し、ブルースターユニオンとキルナは別々の道を歩み始めた。…はずだった。
2997年。史上最大規模の太陽風が発生し、火星は甚大な環境被害を被った。皮肉にもこの太陽風によって、彗星衝突で汚染されていた地球の大気は浄化された。遂に地球―――ブルースターは本来の姿を取り戻したのだ。
ここに至って、下級国民の不満を力で押さえこんでいたキルナは、ブルースターへの侵攻を決断する。西暦2998年、装甲巨神の覚醒の時が近付いていた。
登場メカ
本作品には様々なカテゴリーの人型兵器が登場する。共通点として、「関節キャップ」の採用、「磁力ホバー」(マグネッサーシステム?)の搭載が挙げられる。
また、地味ながら戦車や戦闘機が登場している点にも注目である。
ゾイドアーマー(装甲巨神)
体内にメタルハート(ゾイドコア)を持つ人型兵器で、早い話『人型ゾイド』。基本的に地球人では制御しきれない。
Z・A03 TYPE-K Zナイト
騎士型の装甲巨神で、ノーザランド(ノルウェー?)に封印されていた。ビームソードとLM(ライブメタル)シールドを装備するほか、本体から電磁シールドを発生させる事も可能。ゼルダンの罠にはまり、キルナ艦隊の集中砲火を浴びて大破するが…。
メタルハートは甲殻類型。
Z・A01 TYPE-V マリンカイザー
バイキング型の装甲巨神で、最初に開発された装甲巨神にして唯一の水陸両用ゾイドアーマーである。ブリードキングダム(イギリス)の海底神殿に封印されていたが、キルナに奪われてしまう。Zナイトとの戦闘に敗れた後にブルースター連邦軍に奪還され、以降重要戦力として活躍する。
メタルハートは海竜型。
Z・A03II TYPE-KW グレートZナイト
大破したZナイトが再生進化(というより脱皮変態)を遂げた純白の騎士型装甲巨神。ガイムの復活に呼応して覚醒し、強化型ギルガと死闘を繰り広げる。その性能を危険視され、マリンカイザーともども封印されてしまうのだが・・・?
最終形態ではなんとあの禁断の魔獣すら打ち倒すというとんでもないものである。
ゼロス
クレタ島の闇神殿に封印されていた、悪魔型の装甲巨神。最強の装甲巨神とされている。キルナ軍の兵士の生命エネルギーを吸収して覚醒すると、どこへともなく飛び去っていった。本機とガイムはキットの試作が作られているが、路線変更から未発売に終わってしまった。
メタルハートは翼竜型。
ガイム
YAMATOユニオン(日本)に封印されていた、武者型の装甲巨神。操縦者のないまま覚醒し、グレートZナイトと強化型ギルガの戦闘に乱入する。
イーグルヘッド
ネイティブアメリカンのシャーマンを模したとおぼしき装甲巨神。詳細不明。
フレイムソル
エジプトの太陽神ホルスモチーフとおぼしき装甲巨神。イーグルヘッドと同じく詳細不明だが、どうやらエジプトに封印されているらしい。
バトルアーマー
西暦2419年に勃発した内戦の鎮圧のためにノーザナイツによって実戦投入され、以後急速に発展した人型兵器。いわゆる人型ロボットであり、メタルハートは搭載していない。ゾイドアーマーと比べてやや小型である。
A・A08 TYPE-S スカルバイパー
キルナ宇宙軍の最新鋭空挺バトルアーマー。陸自の空挺レイバーと似ているのは多分気のせい。アニメ冒頭の戦闘シーンは必見。
C・A13 TYPE-D デザートウォーカー
キルナで治安維持用に用いられていた機体を砂漠戦用に改良したバトルアーマー。巨大な爪(バトルドーザー)が印象的。厳密に言えば、キット化されたのは「C・A13-1 スコーピオン」である。
S・A11 TYPE-M エギール
火星の海洋作業用アーマーを改良した、キルナ宇宙軍の水陸両用バトルアーマー。マリンカイザー奪取の立役者だが、暴走したマリンカイザーの前にエギール部隊は壊滅してしまう。
カラウル
ブルースター連邦の主力バトルアーマー。宇宙用と地上用が存在するらしいが、外観などの差異は不明。アニメ冒頭スカルバイパー相手に宇宙戦を繰り広げるが、全く歯が立たなかった。
ボガトゥイリ
ブルースター連邦の水陸両用バトルアーマー。エギールの攻撃の前に、なすすべもなく全滅する。
ファイナルアーマー
対ゾイドアーマー用に開発された、大型のバトルアーマー。高性能ゆえに、バトルアーマーの一種といえども操縦は極めて難しい。
F・A01F ギルガ・メシュ
もっぱら略称の「ギルガ」で呼ばれる、キルナ宇宙軍の切り札。Zナイトに右腕を切り落とされ、「強化型ギルガ」(重装甲ギルガとも)へと改修される。
メタルフット
特殊金属「メティオリック」を用いた小型高性能バトルアーマーで、正式名称はメティオリックアーマー。ストライカーと呼ばれた時期もあったが、いつの間にかフェードアウトしていった。
Z・M03F ノーザグレイバー
装甲巨神の封印にともない、マリンカイザーによって撃破されたレッドスコーピオンの残骸を元に開発された騎士型メタルフット。Zナイトのメタルハートの破片が組み込まれた事もあり、デザインはグレートZナイトに酷似している。
Z・M01M ディバイキング
ノーザグレイバーと同様の経緯により、マリンカイザーのメタルハートの破片を組み込んで開発されたバイキング型メタルフット。
L・A11C 鎧武
ブルースターの武者型メタルフット。装甲巨神ガイムのメタルハートが埋め込まれているかは不明。
L・A42F ナイラス
ブルースターのファラオ型メタルフット。索敵性能に優れるという。
M・A09F デスドール
火星の反政府ゲリラ「カルド」の旗機。メタルフットの中では最高クラスの機動性を誇る。
M・A05C ガイザック
サソリの意匠が施されたカルドのメタルフット。レッドスコーピオン部隊の隊長機となる。名前が似ているサソリ型ゾイドはガイ「サ」ックであり、こちらはガイ「ザ」ックなので注意。
M・A05CS レッドスコーピオン
ガイザックをベースに開発された量産型メタルフット。ブラックホーネットと並びカルドの主力を担う。ブルースター連邦のメタルフットの開発にあたって本機が参考にされた。
M・A07AS ブラックホーネット
カルドの対艦メタルフット。一応セル設定画は存在するが、カラウル、ボガトゥイリ、レッドスコーピオンと同じくキット化はされなかった。
M・A07A メガホーネット
ブラックホーネットの強化型。蜂の意匠を与えられており、ブラックホーネット部隊の隊長機を務める。
M・A06C バイガス
クワガタムシの意匠を施されたカルドの新型メタルフット。ガイザックの改良型らしいが、共通する要素はフレームだけである(メタルフットは全てフレームが共通)。
M・AT10F ダークシザー
カマキリの意匠を持つカルドの新型メタルフット。顔が某改造人間のようだが、気にしてはいけない。
F・A05F ゼルガイア
ギルガのデザインを踏襲したメタルフット。ノーザグレイバーの前に立ちはだかる。
バトルメタルフット
メタルフットの中でも特に高性能な物は区別してこう呼ばれる。Zナイトシリーズ最後の商品である。
ZMX02-S ソルセイバー
地下深くから発掘された謎のメタルフット。そもそもいつから地下に埋められていたのかなど、謎が多い機体である。学年誌掲載のストーリーでは最終盤に登場した最強最悪の敵を前に……。
FBA98-D デスバトラー
キルナ軍の開発した最強のメタルフット。学年誌掲載のストーリーの最終盤では、前述の最強最悪の敵を相手にソルセイバーと共闘する事になるが…。
戦車
アーキラットⅡ
ブルースター連邦の主力戦車。アニメ劇中、デザートウォーカーに撃破されたのが本車である。
玩具としては、メタルフットをリモコン操作する(本シリーズの仕様上、前進と後退しか指示出来ないが)ための「メタルフットコントローラー」として立体化されてはいるが、そもそもリモコンとしての使用がメインの商品なので砲身がボディに張り付いているなど、造形は二の次である。
なおメタルフットコントローラーといっても受信機が単三電池型なので、装甲巨神やバトルアーマーは勿論、ゾイドどころか他社の電動玩具でも単三電池1本型なら使用可能(ただし有線接続なので電池ボックスが底面にある場合はケーブルが引っかかって動けなくなる可能性も)。
何気に単体版(本体青・ボタン黄)、ソルセイバー同梱版(本体黒鉄色・ボタン青)、デスバトラー同梱版(本体鉄色・ボタン赤)と3種類も発売されている(他にイベント配布用の先行版が存在するが、こちらはただの箱型で戦車型ではない)。
航空機
ブルースター連邦ブルースター太平洋艦隊の艦載機がギルガを迎撃したが、あえなく撃破されている。
アルバトロス
バトルアーマー5機を輸送可能なキルナの大型輸送機。元柔道少年が指揮していたり可能性の獣が翼の上で死闘を繰り広げていたのは気のせいである。
艦船
シドニー
ブルースター連邦太平洋艦隊旗艦。YAMATO奪還に向かうが、ギルガの前に撃沈されてしまう。
マニエル
キルナ宇宙軍地球方面軍旗艦。どことなく某宇宙戦艦にも似ている。航宙、航空、潜航が可能と、どこぞの大天使も真っ青の高性能を誇る。
フィッシュボーン
キルナのβ級輸送船。アニメ冒頭で次々にスカルバイパーを発艦させる姿が印象的な宇宙輸送船である。コンテナにはアルバトロス輸送機を積み込む事も可能。
主な登場キャラクター
ここでは、アニメに登場したキャラクターを取り上げる。
ブルースター連邦
ベル・ランス(cv.緑川光)
ノーザナイツ軍の若き中尉。スカルバイパーの攻撃で所属部隊は全滅し、彼だけが生き残る。地球人の父とゾイド人の母を持つセカンドである。
搭乗機体はカラウル→Zナイト→グレートZナイト→ノーザグレイバー→ソルセイバー→???
アディルス・オーディン(cv.堀内賢雄)
近衛師団「グレイヴ」所属の大尉でセカンド。奪還されたマリンカイザーのパイロットとなる。ランスの従兄。
登場機体はマリンカイザー→ディバイキング
オーラーブ・オーディン(cv.岸野一彦)
ノーザナイツ最高司令官。ブルースター連邦を構成するユニオンがノーザランド以外制圧される中、ブルースター解放のために徹底抗戦を決意する。ゾイド人を迫害から保護した高潔な人物。アディルスとサラの父であり、妻はゾイド人である。
サラ・オーディン(cv.平松晶子)
オーラーブの娘であり、アディルスの妹。本作のヒロインにあたる。Zナイトの心を感じる事が出来る。
キルナ
アルフレッド・ゼルダン(cv.目黒裕一)
キルナ宇宙軍の将軍にして、ブルースター方面作戦の司令官を務める。キルナの大統領をひそかに目指す野心家。装甲巨神奪取のため、自らギルガに乗り込み出撃する。
搭乗機体はギルガ→強化型ギルガ→ゼルガイア
クレスト・ギスカール(cv.島香裕)
キルナ第56代大統領。キルナを軍事国家として発展させた張本人である。実はゾイド人であり、ブルースター侵攻は自分達ゾイド人を迫害した地球人への復讐でもあった。
ルシェル・ギスカール(cv.天野由梨)
ギスカール大統領の娘にして、ゼルダンの婚約者。
エリック・ベルゲン(cv.星野充昭)
装甲巨神奪取のために設立された「グリオン小隊」のパイロット。奪取したマリンカイザーに乗り込むがコックピットの中で発狂、友軍に向かって攻撃を開始してしまう。
カルド
ギネビア
反政府組織カルドの女首領。ゼルダンと密かに協力関係にあり、ゼロス奪取のためにカルドを動かす。ゼルダンに想いを寄せている。
搭乗機体:デスドール
こぼれ話
- シリーズ開始時の学年誌の予告では思いっきり「新ゾイド登場!!」と書かれている。この時添えられたZナイトのイラストの色指定は、グレートZナイトに近い。
- 企画当初、主人公機はマリンカイザーとなる予定であり、Zナイトはデスナイトという悪役としてデザインされていた。Zナイトの頭部デザインに、悪役としてデザインされた名残がうかがえる。
- アニメの製作はサンライズが担当した。原画担当者の中には庵野秀明もおり、短編とはいえ非常にクオリティの高い作画が楽しめる。のちに静止画主体で構成された2話も製作されており、紙芝居とはいえ作画のレベルはこちらも非常に高い。
- アニメにてZナイトが装備しているLMシールドは、キット付属の物とはデザインが異なる。アニメに登場している物は、改造作例のシールドのデザインの流用である。
- 学年誌掲載ストーリーには、Zナイトがギルガを倒して完結する物も存在する。
- アニメや箱裏設定のストーリー上でゾイドとのつながりを仄めかしているが、なんと学年誌にはゾイドが直接登場する話が存在する。
●Zナイトが「メカパンサー」(改造デスキャット)を引き連れて森へと踏み込む。そして現れた「魔王」(ガン・ギャラドと対決。
●シールドライガーMk-ⅡがZナイトとギルガの戦闘に乱入。ギルガとの死闘の末敗れるが、コアがZナイトのメタルハートと融合する。
●学年誌における最終回で、キングゴジュラスが(いちおう別名義で)ラスボスとして登場。
- ディバイキングの広告写真には、(旧)ヘリック共和国軍のシールを貼られた物が存在する。
- 「7つ目の命」としてまことしやかに囁かれるキングゴジュラス(学年誌のストーリーのラスボスは確かに本機である)だが、アニメ制作時点(91年)でこれを想定していたかどうかは定かではない。6つの命=装甲巨神のうち、最終的にストーリーに登場したのは4機だけであった。「7つ目の命」は超大型の装甲巨神が予定されていたともいう。