あらすじ
1979年、地球の6000倍の質量をもつ黒色矮星ゴラスをパロマ天文台が発見した。
第一次土星探検に出発した宇宙艇JX-1隼号は協力要請を聞き、観測へ向かうが、ゴラスの引力に捉えられて吸収されてしまう。
しかもゴラスは、このままの進路では地球に衝突することが判明。
ゴラスを爆破するか、地球が逃げるかその二つしか手段はない。
そこで人類は南極大陸に巨大ジェットパイプを建設し、噴射力で地球の軌道を変更する「南極計画」を開始。
ついに地球は動き出すもゴラスは周りの星を吸収し、質量は増大。
運命の日が刻々と迫る……。
余談
- 地球を動かすという荒唐無稽なテーマだが、東京大学の教授にできるとして計算してもらい、地球を動かすのに必要な力660億メガトンや、ジェットパイプ噴射口の面積と噴射の威力、宇宙空間での慣性飛行、ゴラスの引力による天変地異など、「それらしさ」は満点。
- ただ、後に発売された「帰ってきた怪獣VOW」と「空想科学読本」によると、やはり科学的にはかなり無理のある話らしい。
- 田中友幸はハードSFに挑戦した力作であったものの怪獣映画ほどの興行成績は得られなかったと語っている。
- SF小説家山本弘は、架空の動力源は登場するものの今作のオマージュとして、科学的に動いた場合を考察した『地球移動作戦』という作品を執筆している。
- 劇中の挿入歌「おいら宇宙のパイロット」はユニークな歌なので、一度聞いてみると良い。(おバ歌謡にも選出)
- 本作には「マグマ」という怪獣が登場するが、数十秒しか出ない上、レーザー光線であっさり倒されてしまう。蛇足だと言うファンもいる模様。
- 実際東宝の上層部からの無茶ぶりで急遽出した怪獣だったらしい。
- 超星神グランセイザーに登場する怪獣キャブレオンが乗ってきた隕石はこの映画で使われたゴラスがそのまま使われている。
スタッフ
脚本 - 馬淵薫
原作 - 丘美丈二郎
製作 - 田中友幸
音楽 - 石井歓
編集 - 兼子玲子
配給 - 東宝
製作国 - 日本
キャスト
田沢博士 - 池部良
園田智子 - 白川由美
金井達麿(鳳号乗員) - 久保明
野村滝子 - 水野久美
若林(鳳号乗員) - 太刀川寛
遠藤艇長(鳳号) - 平田昭彦
斎木副長(鳳号) - 佐原健二
園田雷蔵艇長(隼号) - 田崎潤
河野博士 - 上原謙
園田謙介 - 志村喬
多田蔵相 - 河津清三郎
真田技師 - 三島耕
医師 - 堺左千夫
関総理 - 佐々木孝丸
村田宇宙省長官 - 西村晃
木南法相 - 小沢栄太郎
伊東(鳳号乗員) - 二瓶正典
宇宙ステーション観測長 - 野村浩三
秘書 - 佐多契子
キャバレーの客 - 天本英世
フーバーマン - ジョージ・ファーネス
ギブソン - ロス・ベネット
ガイド - 向井淳一郎
真鍋英夫副長(隼号) - 桐野洋雄
園田速男 - 坂下文夫
運転手 - 沢村いき雄
鳳号観測員 - 古田俊彦
鳳号計算員 - 上村幸之
鳳号機関員 - 緒方燐作
鳳号操縦員 - 佐藤功一
鳳号観測員 - 河辺昌義
鳳号通信員 - 松原靖
鳳号計算員 - 岡部正
新聞記者 - 宇野晃司
鳳号操縦員 - 権藤幸彦
鳳号機関員 - 丸山謙一郎
鳳号通信員 - 西条康彦
マグマ - 手塚勝己
隼号操縦員 - 鈴木孝次
隼号計算員 - 大前亘
新聞記者 - 三井紳平
隼号通信員 - 今井和雄
隼号計算員 - 由起卓也
隼号操縦員 - 石川浩二
隼号燃料員 - 鈴木友輔
閣僚 - 熊谷二良
マグマ - 中島春雄(ノンクレジット)
登場メカニック
土星探検船JX-1隼号
日本国宇宙省管轄の宇宙船で、JX型ロケットの1番機。乗員は39名で、建造には当時の価格で11兆6000億円がつぎ込まれた。単段式のロケットであり、内部に1人乗りの観測用小型ロケット『カプセル1号』を格納し、胴体側面から射出できる。
本来は土星探査用の宇宙船であったが、接近するゴラスを観測するために目的を変更。その結果、ゴラスが地球の6,000倍もの質量を持つことや、地球と衝突するという貴重なデータをもたらすが、
隼号自体がゴラスの引力圏に捉えられ、「万歳!」を連呼するクルーもろともゴラスに飲み込まれてしまった。
※MMDによる再現。
土星探検船JX-2鳳号
JX型ロケットの2番機。隼号と同型で、管轄も隼号と同じく日本国宇宙省。性能もほぼ同じ。隼号の任務を引き継ぎ、ゴラスの観測任務に付き、結果『ゴラスの破壊および進路変更は不可能』という結論に至る。
隼号との外見上の違いは、胴体側面に「JX-1 はやぶさ」「JX-2 おおとり」と描かれている以外に、隼号は銀色一色、鳳号は尾翼の補助エンジンから先の部分にオレンジ色の帯がペイントされている。
VTOLジェット機
国連南極基地が保有するVTOLジェット機。主翼とカナード翼の翼端に、ティルトジェット状のエンジンナセルを配置している。レーザー砲を装備。垂直尾翼には日の丸が描かれている。
ゴラスの接近に伴って発動された「地球移動計画」が行われている南極に現れた、怪獣マグマの捜索・攻撃を行った。
ミニチュアは、ブリキの叩き出し。
本作から四年後の1966年に放送開始した『ウルトラマン』に登場するジェットビートルに似ており、一部書籍では流用されたと記述があるが、実際は「木型を用いて新たに造形された」と言うのが正しい。
ちなみになんの偶然か金井たちが宇宙省に押し掛けるために搭乗し「おいら宇宙のパイロット」を機内で歌ったヘリコプターは『ウルトラQ』第20話および『ウルトラマン』第9話に登場した機体と同一のSE313アルウェットⅡ(機体番号JA9002)である。本作ではダークグリーン塗装だが、『ウルトラQ』登場時には赤を基調とした塗装に塗り替えられている。
また園田家で使用されているトライアンフTR-3も『ウルトラQ』に登場している。
他の作品への登場
ゴジラ FINAL WARS
2004年に公開された『ゴジラ FINAL WARS』でも、地球に接近する天体として登場する。
X星人はこの天体が接近していることを地球に警告し、この天体を破壊することを約束して友好的な宇宙人であるフリをしていた。しかし、後にこの妖星ゴラスはX星人が地球人に投影して見せていた単なる立体映像(ホログラム)に過ぎなかったことが判明する。
中盤、南極でガイガンがゴジラによって倒されたことを受け、統制官の命令によりなんと本物の妖星ゴラスが呼び寄せられ、地球へと接近してきた(とはいえ、サイズは原典のものと比べてかなり小さく、隕石程度であるが)。その正体はX星人の切り札であるモンスターX=カイザーギドラであり、地球到達後はゴジラや人類と激しい戦闘を展開した。
プロジェクト・メカゴジラ
2018年放映のGODZILLAのスピンオフ小説『プロジェクト・メカゴジラ』に登場。ここでもやっぱり地球に向かってくる。
2038年に発見。2040年には地球衝突が確実視され、衝突予定は発見から4年後の2042年とされた。
直径30kmで月と同等の質量(1c㎥当たり5t超)、光速の数パーセントの速度(恐竜を絶滅させた隕石ですら光速の7/1000パーセント)、これが諸々の影響を無視して地球にまっしぐらに向かってくるという従来の天文学の常識を遥かに超えた性質から「妖星」と恐れられ、生物の存続以前に地球の全壊すら危惧される事態となった。
作中の人類はエクシフやビルサルドといった異星人との邂逅を経て技術レベルが大幅に向上していたが、それでも対処は不可能とされ、地球脱出のための宇宙基地が建造され始めた(これは後の恒星間移民船の原型となる)。
しかし、これを粉砕してしまったのがゴジラである。
37年以降破壊活動を休止し、ひたすらエネルギーの蓄積を行った(他の怪獣を捕食したとも推測されている)ゴジラは、2042年初頭に北極の真下からゴラスを撃ち抜いた。その際の熱線の余波で北極は大きく融解、北極海中心部は煮え立ち、電磁パルスによって北半球全域の人工衛星が被害を受けたとされる。
そして、ゴジラが地球外への攻撃能力を見せつけてしまったことが人類がその後わざわざ太陽系を脱出して他の恒星系への逃亡を試みた遠因になったのだ、という見解も作中で示されている。
ゴラスの正体は最後まで不明のままだったが、明確な意思を以て地球へと接近していたとしか考えられない状況から、その正体は天体ではなく宇宙怪獣だったのではないかと推測されている。
「ゴジラが妖星ゴラスを熱戦で粉砕する」という展開は、上記の『ファイナルウォーズ』のオマージュと思われる。また、作中には『妖星ゴラス』のSF考証に協力した堀源一郎をもじったホリー・G・ロールズや前述の「おいら宇宙のパイロット」をもじったオイラー・U・プロウライトなる人物が登場している。
関連タグ
ウルトラマンA...妖星ゴランというパロディが登場した。こちらは怪獣ムルチを目覚めさせたりする。
アニメカービィ...「妖星ゲラス」というパロディが登場した。
トップをねらえ2!...「隕石型の超巨大な宇宙怪獣」への対抗策として、「地球にブースターを着けて動かす」という作戦が決行された。