概要
暫定首都ともいう。
戦争中の国家で首都が陥落したり、そこまででなくとも攻撃を受けて政府機能に支障が出る場合、政府機能を一時的に待避せざるを得ない。この退避先が臨時首都として機能する。
また分断国家では、首都と設定した都市が他国の主権下になってしまう場合がある。こうなると自国の主権が及ぶ別の都市に政府機能を置くことになり、そこが臨時首都となる。
もちろん前者の状況が固定化して後者になるケースもある。
遷都と違い、いずれは元の首都へ戻る前提の臨時措置で、法律上の首都を変更しない場合が多い。ただし長期化を受けて臨時首都を首都と宣言して、結果的に遷都となるケースはある。
これらとは別に、新首都を開発するまでの間、それまでの首都や別の都市を臨時首都にする場合もある。このパターンは建国から間もない国で見られる。
臨時首都の例
21世紀
政府が主張する首都はエルサレムだが、東エルサレムはパレスチナ主権下。
暫定自治政府が主張する首都は東エルサレムだが、西エルサレムがイスラエル主権下など政府機能を設置できる状況ではない。
2015年以降、首都サナアは内戦で陥落。
首都プリマスは1995年~1997年の火山噴火で壊滅し、新首都リトルベイを開発中。
20世紀以前
1949年(建国)~1990年(東西統一)、首都ベルリンのうち東ベルリンはドイツ民主共和国(東ドイツ)主権下。統一後に旧西ドイツ首都とベルリンのどちらを首都にするかで国内が対立しないように、あえて小都市を暫定首都に選んだとされる。
1948年(建国宣言)~1972年、首都ソウルは大韓民国主権下。1972年に憲法を改正して以降は名目上も平壌が首都となっている。
1958年~1962年、新首都イスラマバードの開発中。それまでは名目上も首都。
江界:北朝鮮
1950年~1953年の朝鮮戦争中のうち、首都ソウル、事実上の首都平壌ともに韓国により陥落していた間。
1950年~1953年の朝鮮戦争中のうち、首都ソウルが北朝鮮により陥落していた間。
1945年~1949年の独立戦争中の一時期。
1939年~1945年の第二次世界大戦中、首都東京からの退避先として計画された。
1937年~1945年の日中戦争中のうち、首都南京が日本により陥落していた間。
1939年~1945年の第二次世界大戦中に首都モスクワからの退避先として選ばれた。
1920年~1940年(ソ連へ併合)、首都ビリニュスはポーランド主権下。
1936年~1939年(共和国滅亡)の内戦中のうち、首都マドリード陥落後。
建国間もない1908年~1927年の新首都キャンベラ開発中。
広島:日本
1894年、日清戦争中に大本営が置かれ帝国議会も開かれた。首都東京からの退避や陥落によるものではなく、戦争で優勢な側がより前線に近い都市へ臨時首都を設置した珍しいケース。
1864年~1870年のパラグアイ戦争末期に、首都アスンシオンから退避。
1807年~1821年、フランス侵攻により首都リスボンから王室が疎開。なおこの疎開がリオデジャネイロを含むブラジル独立を招く。
1790年~1800年の首都コロンビア特別区(ワシントンD.C.)開発中。それ以前も独立戦争開始時1775年以降から事実上の首都であった。
ニューヨーク:アメリカ合衆国
独立戦争開始時1775年~1790年は首都は曖昧で、フィラデルフィアに代わり暫定首都として機能することが時々あった。
1336年(延元の乱・建武の乱)~1392年(南北朝統一)、南北朝時代(日本)。首都京都は北朝・室町幕府支配下。
1232年~1271年、モンゴル帝国侵攻により首都開城から退避。
1187年~1291年(滅亡)、首都エルサレムはアイユーブ朝により陥落。エルサレムは1250年以降はマムルーク朝の手に渡る。