概要
1960年代の怪獣ブームの後、水木しげるの『悪魔くん』の特撮ドラマ化、『ゲゲゲの鬼太郎』のアニメ化及び、少年誌で妖怪画が連載されたことによって、1960年代から1970年代にかけて妖怪ブームが起ったといわれている。
そんな中の1972年に怪奇作家佐藤有文によって、立風書房のジャガーバックスから怪獣ブーム期に発売されていた他社の『怪獣図鑑』の形式を用いて編纂、刊行されたのがこの書物である。実は『いちばんくわしい』は宣伝文句で『日本妖怪図鑑』が書名としては正しい。
水木によって紹介されていた妖怪のみならず、民話や日本神話、怪談映画に登場する化け物、同業の怪奇作家たち(斎藤守弘ら)によって浮世絵などを元に雑誌用に創作された妖怪も網羅した力作であり、石原豪人、木俣清史、河内功、直野祥子ら明治時代の絵物語から活躍していた者もいるというそうそうたる面々のインパクト大な挿絵とともに児童向けの解説がなされた。
上記のように昭和期の創作も多い児童向けの娯楽本という体裁であったが、この書物はベストセラーとなって重版され、さらに佐藤が執筆したものを含めた類似本で溢れたたために、読んで育った世代によって信じられた内容が、以降の特撮作品や漫画のキャラクター設定、ロールプレイングゲームのモンスターなどとして採用されることとなった。
続刊として世界の神話伝承に登場する、幻獣や魔神などを紹介した『世界妖怪図鑑』も刊行され好評を博している。
専門資料として使うには問題大ありな書物であるが、独特で怪しい魅力は色あせておらず文化資料として再評価さえされ、2016年には復刊ドットコムで復刻された。
関連イラスト
※びろ~ん・はらだし
※女郎蜘蛛・目の手