怪獣図鑑
かいじゅうずかん
映画や特撮、アニメ等に登場するモンスターを写真、イラスト、文章などで紹介した書籍のこと。
ここでは怪人図鑑やヒーロー図鑑など似たフォーマットで作成されているメディアも同様のものとして取り上げる。
書籍以外ではゲーム内のシステム、インターネットの公式ウェブサイト上でのデータベース、カードゲームやシールの裏面(例:大怪獣バトルなど)、映像ソフトなど様々な形で存在する。
作中では一切語られていない裏設定などが詳細に載っている。モンスター以外にも、
他の図鑑と違うのは、出身地(一般的な図鑑の生息地に該当。一部の怪獣・宇宙人は出現地)や必殺技、弱点に至るまで詳細な情報が掲載されている。ドミノ星人はパンの味がするとか、スカイドンのうろこは1枚100tとか、ラドンのチョップはジャイアント馬場2万人分の威力だとか。
架空の生物種なのだから、既存の科学などの常識には囚われていないのである。
これについて空想科学読本著者の柳田理科雄氏は「空想科学世界の住人は、自分の情報を積極的に公開しなくてはいけない」という「掟」があると評した上で、「ジャイアント馬場」という基準に着目し、「ジャバ」という単位を独自に設定、
空想科学世界で最強の怪獣は誰なのかを真剣に考察している。
大伴昌司の登場後はメイン画像のように内部図解が描かれることも多くなった。
また「一兆度の火球」は彼の産物である。
また、図解では各部位に名称が与えられることが多く、現在も仮面ライダーシリーズの公式サイトでは積極的に用いられる手法の一つであり、年々設定がインフレと多様化の一途を辿っている。
とはいえ、記載されている設定が全て公式設定とは限らない為、特定の図鑑には載っているが、他の書籍では載っていないというパターンもザラ。例えば怪獣の設定が盛んに作られた昭和時代は児童誌で初めて出ては消えて行った設定の他にも誤植がかなり多く、「ゾーフィ」がこの代表格だと言える。インターネットがなかった時代なので情報の連携が上手くいっていなかったという側面もある。よって情報として信頼できるのは公式監修がなされた設定が記載された書籍ということになる。
しかし、そうしたおおらかさが怪獣図鑑の面白さを作り上げたのもまた事実であり、のちに逆輸入されて公式設定となったものもある(先述のゼットンの火球なんかもそれ)。
(悪い例)
怪獣図鑑でよく出てくる表現や用語
まず、はじめに怪獣図鑑によく出てくる用語や事象を纏める。
- インドゾウ
- 破壊力や致死性の比喩に用いられ、ポケモン図鑑でも引用された定番ネタ。
- 牛などの大型動物
- 怪獣などが食らう餌の量の喩えに用いられる(後述)。
- 新幹線
- スピードの比較対象に用いられる。
- 戦車やナパーム弾などの兵器/ダイヤモンドなどの鉱物/ダイナマイト
- 破壊力や耐久性の解説に用いられる(後述)。
- 太陽などの天体
- 太陽の場合は耐熱温度など様々な温度の比較対象に用いられる。
- 惑星の場合は破壊力や視力、移動距離などの解説で持ち出される。
- タンカー
- 重量物の代表格としてパワー比べなどで持ち出される乗り物(後述)。
- 地球上の全ての物体
- 切断力や破壊力の説明に用いられる。
- 東京タワー
- 跳躍力や破壊力の解説で持ち出される。
- t(トン)
- パンチ力やキック力の解説で持ち出される。『仮面ライダー』シリーズではインフレしやすい要素の一つ。
- 針
- 聴覚の説明に用いられる(後述)。
- プロレスラー
- 技の威力やパワーの比喩として用いられる。
- 昭和期ではよくジャイアント馬場が持ち出され、柳田理科雄が架空の単位「ジャバ」を提唱したほどの定番ネタ。
- X線/赤外線
- レントゲンの役割を果たすだの赤外線を視認できるだのと視力のスペック解説でよく用いられる。
怪獣腕
凄まじいパワーを有する。
有名な格闘家の○○倍の力!というのもよくあるが、
大体、その怪獣の体重はその格闘家の○○倍より重いので見掛け倒しである。
☆例
作品名 | キャラクター | 解説 |
---|---|---|
ウルトラマン | バルタン星人 | ハサミで厚さ50㎝の鉄板を切り裂く |
ウルトラマン | レッドキング | パンチはダイナマイト1万t(小型核並)の一斉起爆に匹敵する |
ウルトラマン | ギャンゴ | インドぞうを1千万頭持ち上げる |
ウルトラセブン | ウルトラセブン | 10万tタンカーを持ち上げられる |
帰ってきたウルトラマン | アーストロン | 片手で1000tの岩を握り潰し戦車7千台を引き摺れる |
帰ってきたウルトラマン | デットン | ブルドーザー2500台と相撲を取って勝てる。 |
帰ってきたウルトラマン | ナックル星人 | 一撃で黒部ダムに穴を開ける |
キングコング髑髏島の巨神 | キングコング | 腕がそれぞれ白鵬と稀勢の里50万人分の腕力(※) |
ゴジラVSコング | コング | パンチ一発でマグニチュード4.2の地震を起こす |
キン肉マン | キン肉スグル | ダイヤモンドを粉砕する |
※ちなみにコングの体重は白鵬の1026倍。
怪獣脚
上記のような無茶苦茶なパワーに加え、新幹線を凌駕するようなスピードを持つ。
仮に映像作品では足が遅くても。
☆例
作品名 | キャラクター | 解説 |
---|---|---|
ウルトラマン | ドドンゴ | マッハ1.8で走る |
ウルトラマン | ザラブ星人 | 蹴り一発でピラミッドを突き崩す |
帰ってきたウルトラマン | モグネズン | 沢村忠の1万倍の脚力(※) |
仮面ライダー | 仮面ライダー1号 | ライダーキックは戦車を一撃で破壊する |
秘密戦隊ゴレンジャー | 機関車仮面 | 新幹線よりも早く走れる(劇中でも披露) |
※沢村忠の39万倍の体重なので全く自慢になってない。
講談社
テレビマガジンデラックスというレーベルから販売されている「〇〇超百科」が著名。
特にウルトラシリーズは「決定版 全ウルトラ怪獣超百科」と題して、時代に合わせて収録怪獣を増やしており、『決定版 全ウルトラ怪獣完全超百科』と改題してからはQ〜パワード、ティガ〜マックス、メビウス〜ウルトラマンゼロ(ミラーマン、ファイヤーマン、ジャンボーグAの怪獣も紹介されたが、メビウス〜タイガに改訂されるにあたって省略された)とシリーズごとに分割されるようになった。
こちらのシリーズは円谷プロの公式監修がなされている。
仮面ライダーシリーズは当初こそヒーローを紹介した書籍が中心であったが仮面ライダーウィザードが放送中盤に差し掛かると怪人を取り上げた『決定版 オール仮面ライダー&全怪人超百科』が刊行され、令和ライダーも補完した増補改訂版も刊行された。
講談社のテレビ絵本の一環としてポケットサイズの『全仮面ライダー オール怪人スーパー大図鑑』や『全ウルトラマン オール怪獣スーパー大図鑑』も刊行されており、こちらは上下巻制。
図解に特化した「図解超百科」シリーズというのもあり、『G』から『ウルトラマンゼロ』の頃まで続いた(仮面ライダーシリーズは『555』のものが書籍化された)。
小学館
第2期ウルトラシリーズの掲載権を持っていた関係で『なぜなに学習図鑑』や『入門百科シリーズ』にて怪獣を取り上げた書籍を度々刊行していた古参の出版社である。
「ピギー・ファミリー・シリーズ」レーベルから子供向けに『ウルトラ怪獣大ずかん』のようなポケットサイズの書籍を刊行した事も。
円谷プロ創立50周年に際しては『円谷プロ全怪獣図鑑』、ゴジラ生誕60周年に合わせて『東宝特撮全怪獣図鑑』を刊行している。
また、『てれびくんデラックス 愛蔵版 超全集』シリーズのように作品全体の解説書にも怪獣や怪人解説のページは設けられている(過去には『ウルトラ怪獣大全集』のような怪獣専門のてれびくんデラックスも刊行された)。
ちなみに、水木しげるの著書として「妖怪おもしろ大図解」(復刻版は『水木しげる 妖怪大図解』という題になっている)のような妖怪版の図解も刊行していた実績を持つ。
勁文社
「ケイブンシャの大百科シリーズ」が著名。
「全怪獣怪人大百科」と題して各特撮作品の怪獣/怪人を網羅した書籍が刊行され、年度によってはロボットアニメのキャラクターが記載されている事すらあった(1975年以降)。
1990年には上下巻制で『全怪獣怪人』が刊行され、勁文社倒産後の2003年には英知出版から上(仮面ライダーシリーズ/スーパー戦隊シリーズなど東映特撮作品を収録)、中(メタルヒーローシリーズ、東映不思議コメディーシリーズ、ウルトラシリーズなどを収録)、下(東映・円谷以外の特撮作品を収録)の三巻が刊行された。
これでマイナー作品に魅了されたというファンも多いのではないだろうか?
デアゴスティーニ
『週刊 ウルトラマン オフィシャルデータファイル』や『週刊 仮面ライダー オフィシャルパーフェクトファイル』などの分冊百科シリーズが著名で、怪獣や怪人を解説する項目が個別で存在し、一部を除いてスペック解説やコラムも充実している。
ポケットモンスター
この世界観における怪獣図鑑に該当するものとしてポケモン図鑑が存在する。
ポケモンは我々の世界における動物と同じく当たり前にいる生き物とされているが、ポケモン図鑑に記載されている設定は「めったに すがたを あらわさないが ひとたび あばれだすと おおきな としが かいめつする ときもある。」(『青』のギャラドスの解説文より)だの「からだの なかに かざんを もつ ポケモンだ。からだに たまった せっし 1まんどの マグマを ときどき せなかの コブから ふきあげている。」(『ルビー』のバクーダの解説文より)だのともはや怪獣レベルの能力のものが多い(尤も、能力は妖怪レベルのものまでピンキリであるが)。
怪獣図鑑同様に各モンスターには一体一体丁寧に別名が付けられており、例えばパルキアは「くうかんポケモン」である他、怪獣図鑑定番の足形も存在する。
スタッフがウルトラ怪獣などの影響を大きく受けた事もあって、怪獣図鑑の遺伝子を最も色濃く受け継いでいる世界的コンテンツと言っても過言ではない。
さて、昭和期の学年誌では(他作品を含めた)怪獣やヒーローのスペックを比較しようとする試みが存在していたが、ポケモンの方でも『小学館の図鑑NEO+ぷらす くらべる図鑑』の派生シリーズとしてポケモン同士のスペックを比較した『ポケモンくらべる図鑑』シリーズ(小学館)という書籍が刊行されている。
ウルトラシリーズでも『ウルトラ怪獣 くらべる図鑑』(小学館)が刊行された。
デジタルモンスター
このシリーズにおいて決まった形の『デジモン図鑑』というものはないが、『デジモンアドベンチャー』のデジモンアナライザーのようにデジモンの登場ごとにナレーターがデジモンのデータを解説してくれるシーンが挿入されている(テイマーズではディーアークの機能として登場するなどシリーズ毎に差異が見られる。『デジモンストーリー』などのゲームではデジヴァイスの機能としてデジモン図鑑が登場する作品もある)。
デジモンウェブには詳細な公式設定を記載した『デジモン図鑑』というコンテンツがあり、こちらの解説文も一介のモンスターが持つにしてはオーバースペック過ぎる物が多い。
特に究極体と呼ばれる世代のモンスターは大陸を沈められたり、雄叫びを上げるだけで完全体以下のデジモンを即死させたり、先読み能力が強すぎて理論上、勝てる存在がいないというヤバイ奴らの巣窟である。