概要
CV:非公表
それ以外の情報は一切不明で、しかも作中に登場したのは半天狗の回想1コマ&走馬灯による「見開き2ページの継ぎ接ぎ過去回想」の中のみ。
ちなみにこの回想シーンは11コマあるが、お奉行の出番はその内の5コマ(半天狗の裁きで3コマで、襲撃された直後の2コマ)。
キャラデザイン自体はテンプレ的な「侍」そのもので、出番もほんの僅かしかないが、その僅かな出番で魅せた高潔なる勇姿は忘れがたい印象を残し、精神力だけなら柱に匹敵する逸般人と高い評価を得た。
活躍
一応の初登場は原作124話。
「貴様のしたことは」
「他の誰でもない貴様が責任を取れ」
「この二枚舌の大嘘吐きめ」
「お前が犯した罪の責任は必ず取らせる」という炭治郎の糾弾に、かつて奉行から突きつけられたこの言葉がフラッシュバックする半天狗。しかしそれを振り切るように「儂は生まれてから一度も嘘など吐いたことがない善良な弱者だ」と言い聞かせ、脱兎のごとく逃げ出すのだった。
次の登場は126話。
自身を盲人と偽り、数々の罪を重ねたことで連行されてきた人間時代の半天狗と対峙。
「貴様は別の町でも盗みと殺しを繰り返していたようだな」
「同情の余地もなし」
対する半天狗は
「滅相もない、儂には無理でございます」
「このように目も………」
と相変わらず盲人と偽り、弱者の素振りで無罪を主張するも……
「貴様は目が見えているだろう」
「以前この白洲の場へ来た按摩(あんま)は私が話し始めるまで塀の方を向いていたぞ」
奉行として確かな観察力で瞬時に嘘を見抜く。
しかし半天狗はなおも「儂が悪いのではない!この手が悪いのだ!」と言い逃れする有様で、意趣返しとばかりに
「手が悪いと申すか!! ならばその両腕を切り落とす!!」
当然両手を落とすくらいで済まされるはずもなく、判決として打ち首を言い渡した模様。
「明日打ち首とは可哀想に 私が助けてやろう」
だがその日の晩、半天狗はたまたま居合わせた鬼舞辻無惨によって鬼化。
復讐として寝込みを襲い、瀕死の重傷を負わせるが、対するお奉行は最期まで臆することなく
「貴様が何と言い逃れようと事実は変わらぬ 口封じしたところで無駄だ」
「その薄汚い命をもって罪を償う時が必ずくる」
毅然とした態度で言い放った。
いかなる窮地にあろうとも心の折れない芯の強さを持った人物である事が窺える。
そして時は大正。
己の責任から逃げ続けてきた卑劣な悪鬼は、若き鬼狩りの振るう刃によってようやく斬首され、その罪の報いを受けることとなった。
お奉行もこれで少しは浮かばれただろうか。
人気
こんな具合でシリアスながらもネタ的な人気を獲得した名脇役、お奉行。
もちろん彼自身もそうだが、それ以上に半天狗の走馬灯である「つぎはぎ状態のコマ割り」や、彼の「台詞の汎用性の高さ」が(コラ素材としても)大人気になり、時には作品の壁すら越えてコラが作られたほど。
そして第2回人気投票では「半天狗を裁いた奉行」として199票を獲得して38位に輝いた。
順位が近いのは36位・恋雪の212票、37位・鱗滝左近次の201票、39位・真菰の193票、40位・堕姫の180票(妓夫太郎は158票で42位。41位は猫の茶々丸・179票)。いずれも重要キャラ達ばかりである。
本作が誇るネタモブキャラの最高峰・サイコロステーキ先輩こと「累に刻まれた隊士」が、223票獲得の35位である事を考えると大健闘だったと言え、ファンの間でもここはある意味非常に注目度の高い戦いだったようだ。ちなみに累は236票で33位。32位には本作の作者がランクインしている。
なお半天狗自身は僅か28票の62位であり、彼の分身体は哀絶が8票、それ以外の連中は全員ランク圏外という体たらくだった。
言っておくが半天狗はしっかりとした出番があって多彩な分身体も披露した為に、たった5コマしか出てないお奉行に比べれば遥かに恵まれていた。
にも拘らず半天狗自身は7倍以上、哀絶は約25倍もの差があり、こいつらを足して36票にしてもなお5倍以上の票差をつけられている。
この結果からは半天狗の不人気さと、わずかな出番でこれ程の人気を誇るお奉行の愛されぶりが窺える。やはり両者の人間性の差が出たのだろうか。
アニメでは10話で先んじて一言だけフラッシュバックで初登場。目つきの鋭さや指摘の仕草、何より半天狗の視点であることから、原作未読者には「弱者を責め立てる悪代官」と受け止められる感想も散見された。翌11話では回想シーンもより明確になり、死に際に断言した上述のシーンが視聴者に響き、「炭治郎が斬ったことで報われて良かった」「鬼殺隊で柱の一人になってもおかしくなかった」と好反応なツイートが多数を占めた。
禿頭の男性
「なんでお前さんは人から盗むんだ しかもあれほど… 目の見えぬ私たちに優しくしてくれた方から」
「旦那様は知らぬふりをしてくださっているが、私が許せぬ これから奉行所へ行く」
CV:武虎
半天狗の過去に登場した禿頭の盲人。お奉行と同じく本名は不明。
自分に親切にしてくれた人にも盗みを働くその不義理な所業に怒り、告発するべく(おそらく半天狗を連れて)奉行署へ行こうとしたが、口封じを図った半天狗に刺殺された。
「ワシが悪いのではない!! この手が悪いのだ」
「この手が勝手に!!」
そんな姑息な行いも空しく奉行署へ連行されていったが、その後の経緯は先述通り。
旦那様
禿がチラッと言及したのみの人物。一切のセリフも描写もないので何者なのかは不明。
上記の発言を聞く限り、周りから慕われている人物のようだ。
なお「知らぬふりをしてくださっている」とのことなので、半天狗が盗みに手を染めている事は把握しているようだが、奉行所へ告発するなり突き出すなりしなかった理由は謎。まあ半天狗は保身のためなら名前も素性も躊躇いなく偽る程狡猾なため、口車に乗せられて「何か事情があるのだろう」と信じ、大目に見ていたのかもしれない。
アニメ版での件の禿のセリフの間からすると、「しかもあれ程…」が掛かるのは「盗む」だと思われる。
余談
- 前評判
初登場シーンのセリフや、それまでに過去の明かされた鬼たちは何かしら悲惨な過去がある・もしくは善良な存在だったのもあって、連載当時の読者・原作未見の視聴者からは「半天狗は不当に嘘つき呼ばわりされ続けた被害者で、お奉行は典型的な悪代官だったのでは?」という予想が立っていた。
結果としてはまるっきり逆だったが、お奉行はその高潔な信念、半天狗は「少年期からの重度の虚言癖・陰険」という救いようと美点のない屑っぷりが故に却って(一部からの)人気を獲得するに至った。
- 猗窩座との対比
同じ上弦の鬼である猗窩座の回想シーンにも人間の少年だった頃に奉行所で裁きを受ける描写がある。当時のコイツも盗み(スリ)の常習犯だったが、殺人まではしておらず、奉行署でも半天狗のように見苦しい言い訳をするでもなく堂々と開き直っている。
しかし盗みに手を染めた動機は「病を患った父の看病のため」であり、なおかつ薬が高価だったことからやむなく、という事情もある(直接薬を盗むのではなく、スリで荒稼ぎしていた理由は不明。厳重に保管されていておいそれとは盗みようがなかったか、金の出所はともかく「代金は払う」という彼なりのボーダーラインだったのか?)
他にも、罪に手を染めたのが自分のため(半天狗)↔️自分以外の誰かのため(猗窩座)
奉行署へ連行されていったのは「老年期↔️少年期」&容姿(老人↔️青年)
など対照的な要素は多い。
按摩
ツボ押しによる整体・マッサージを行う仕事で、当時盲人が就くことのできた職業の一つ。
盲人でもなれる仕事は多く、鍼灸や弾き語り(琵琶や筝など)、仏門に入って僧となる者、計算能力を活かし勘定役・金融業を営む者などがいた。
当道座
室町時代から江戸時代まで幕府公認で置かれていた盲人の男性による自治組織(原型は鎌倉時代からあった)。また江戸幕府は盲人が当道座に所属する事を推奨しており、盲人を装う以上、半天狗も件の禿共々所属していたと思われる。
ちなみに彼らを束ねる役職は「検校」をトップとして別当、勾当、座頭などがあり、検校に至っては大名並みの地位と権限が与えられるという待遇だった。件の禿の言う「旦那様」が検校等の重役か、別の雇い主かは不明だが、どちらにせよ盗みのカモにするだけの資産がある事は間違いない。
アニメ
お奉行は担当声優が公表されなかったため、現在はクレジットに登場している役柄不明の10話11話出演声優たちの中からファンが推測している状態になっている(ちなみに声質から江川大輔との推測が多い)。
ちなみにサイコロステーキ先輩は登場回はノンクレジット。しかし役名が記されていないのは坂泰斗のみであるため、CVは彼だと容易に断定できる。
なお最期の表情は原作では義憤に満ちたものだが、アニメ版では脂汗を流しており、痛みに耐えながら毅然と「口封じしたところで無駄だ その罪を償うときが必ず来る」と言い放つ勇姿が際立つ演出になっている。
関連イラスト
関連タグ
サイコロステーキ先輩:同じく、少ない出番で忘れがたい印象を残した名脇役繋がり。ただしこちらは職務に強い信念や高い志を持っていたとはあまり言い難い。
憎珀天:半天狗の最強の分身。
半天狗を「弱者」、鬼狩りを「弱者を虐げる」と身勝手に断定するその人間性は生前のお奉行に対する当てつけだと考察されており、歪みきった価値観と腐りきった性根がよく現れている。