概要
東方Projectに登場する八雲紫と宇佐見菫子のカップリング。
原作では『東方茨歌仙』や『東方文果真報』で紫が菫子を認識している様子などが語られ、その後『東方憑依華』において実際に両者は対面した。
菫子の登場以後、実時間にして概ね二年半を越えた頃に描かれた出会いである。
具体的な対面の様子以外にも、作中における互いの要素に関連し合うものをもつことなどから二次創作において二人の様々な交流が想像されており、特に主に菫子の要素として語られている「秘封倶楽部」という文脈において二次創作のあり方の潮流の一つとして紫の側にも深く醸成され続けてきた特有の創作アプローチがあり、「ゆかすみ」においてもその創作アプローチが交わる事がある。
それは紫のエピソードにして紫と菫子の二人だからこそ描く事の出来る物語のあり方でもあり、「ゆかすみ」ならではの物語が多様に想像されている。
外の世界と幻想郷と「夢」
菫子は「外の世界」に所在する人間であり、『深秘録』において人間にして自らの意思で結界に隔てられた幻想郷へと臨み、菫子以外の意思による結果的な介入こそあったものの幻想郷に至る道を拓いた。その方法は『深秘録』に語られた通りで、その騒動を通して菫子は幻想郷と対峙することとなる。
『深秘録』以後はオカルトボールを通した従来の方法ではなく眠りと「 夢 」を通して幻想郷へと訪れるようになった。
紫は幻想郷を、現在の形にまで至るようつくり上げた妖怪である。
かつて紫は「外の世界」から幻想郷を博麗大結界をはじめとした種々の結界や境界で隔離し、同時に様々な存在を受け入れる下地を形成した。
菫子が憧れた幻想郷は、それが形作られる際には紫が大きく影響したのである。
また紫は外の世界との行き来も自由であるようで、外の世界から何かを持ってきたり、あるいは連れてきたりもしている。幻想郷に外の世界から人間が迷い込むケースにかかわることもあるようで、その場合は紫の結界操作による誘導(神隠し)による。
紫と外の世界については稗田阿求もまたその関係性について考察しており、阿求が記述するところによれば紫はそもそも「 外の世界の妖怪で、幻想郷に遊びに来ている 」のではないか、ともされるようである(「幻想郷縁起」、『東方求聞史紀』)。
さらに紫は「眠る」存在であり、冬や昼間は眠って過ごすとされる。
例えば博麗霊夢は紫について「 夜しか起きていない奴 」(『東方永夜抄』)と称し、紫と旧知の仲である伊吹萃香は紫が昼間活動している様子を見て「 昼間なのにこっちの世界に居るなんて珍しいじゃない 」とも語っている(『東方緋想天』)。萃香の言う「 こっちの世界 」が幻想郷を指すと仮定する場合、阿求の記述する「 寝ていると言われる時は、外の世界で過ごしているのかもしれない 」という考察とも関連し得る。
また阿求は外の世界がそもそも「 紫の夢の世界 」なのだとする「 噂 」についても記述している。
菫子は『深秘録』以後夢を介して結界を超えて幻想郷へとやってくるようになったが、紫もまた夢を通すことでも二つの世界を渡っているのではないか、とされるのである。
管理者と訪問者
「神隠し」と「人隠し」
深秘異変以後、人間の里では「 神隠し 」が頻発していた。
霊夢によれば、「神隠し」とは、「 外の世界から幻想郷に紛れ込んでしまう事件の通称 」(『茨歌仙』では「通称」の部分に強調の黒丸のルビがある)である。
しかし今回のケースは幻想郷内部の人間の消失であり、さらに特異なことは消えた人間はしばらく後に「 何事も無かったかのように 」帰って来ている。消えていた間の「 形跡 」もない。
この特殊な事態に霊夢や茨木華扇はそれぞれの方法で調査を始める。
この現象は、華扇がその調査過程で出会った(捕えた)紫によれば菫子が本人の意図とは別に関係した、菫子の幻想郷訪問の副次的なものである。
定義も「 神隠し 」にあたるものではなく、紫はこれを「 人隠し 」と称した。
詳細は『茨歌仙』第三十五話(単行本第七巻)を参照。
この紫と華扇との対話では紫が菫子の動向やその周囲の現象をチェックしていたこと、「 人隠し 」の現象の理解やそれへの対処方法のアイデアを持っていることなどが語られている。
紫はこれ以前のエピソードにおいて外の世界で西洋系の外来品種のタンポポが既存の品種のタンポポを駆逐していく生態系汚染を例示し「 幻想入りしていないもの 」が入り込むことを良しとしない姿勢も見せたが、菫子個人についてはそれを否定していない。
紫が菫子を排除するのでは、と懸念する華扇に対し、そんなことは言ってないと笑ってみせ、さらに菫子が幻想郷側にやってくることを否定しない姿勢も見せている。
『東方紺珠伝』では紫はこれに遡る都市伝説騒動を紫なりに肯定しており、『茨歌仙』では菫子に対する幻想郷側からの何らかの「 手引き 」さえ、自分の理念と一致する、とした。
UFOを呼び出そうとした(『茨歌仙』)ことでさえ、紫は肯定するのだろう。
「 人隠し 」にまつわる『茨歌仙』でのエピソードに菫子本人は登場しないものの、華扇との対話を通してそもそも紫が「 幻想郷の賢者 」として「 外からの人間 」である菫子のことを認識していたこと、その訪問を肯定している様子などを見て取ることができるのである。
ファンの間では外の世界からの訪問者である菫子について、幻想郷の管理者としての一面も持つ紫がどのようなスタンスをとるかが菫子の登場以後長らく(一抹の不安も伴って)想像されてきた経緯をもつ。先述の華扇の言葉ではないが、一般的な結界のルールとは異なる訪問者である菫子について紫はこれを良しとしないのでは、とする懸念も挙げられてきていたが、『茨歌仙』の同エピソードまでの範囲においては二人の交流の道が閉ざされることはなかった様子である。
なお、この対話では華扇が菫子の名前を複数回口にしているため、紫が菫子の名前に触れた明確な描写ともなっている。
『茨歌仙』作中における紫については「茨歌仙紫」記事も参照。
菫子の過去と「神隠し」
また「神隠し」という要素については菫子の幼少期にすでに体験がある様子も語られている。
「文々春新報」のインタビューの際に菫子が回想した内容によれば、菫子は幼少期に遊んでいた「 無人の神社 」や「 祠 」で三日ほど行方不明になっている(『東方文果真報』)。
本人は遊びの途中で寝入ってしまって「 寝すぎた 」のでは、と記憶していたが、『深秘録』以後幻想郷を来訪するようになって次第に当時の眠りの中で見た「 夢 」を思い出すようになった。
そしてその光景は、幻想郷によく似ていた。
この話を受けた霊夢はこの体験を「神隠し」だろうとしており、菫子もまた霊夢の解説に納得している。菫子は自身の当時の記憶がこれまでのぼらなかったのは「神隠し」が明けた際に菫子を探しに来た人々の心配した様子や親に怒られたりしたなどの強い反応を受けて記憶が抜けたのでは、としている。
東方Projectにおいて「神隠し」といえば、紫の行うところである。
紫自身もまた神隠しが自身の手のものであることを語っている。
これらのことから、ファンの間では菫子は幼少期に紫とも縁があったのでは、と考えるものもある。
さらにこの想像をベースにそもそも幻想郷という閉ざされた世界に菫子が縁を結ぶことができたのは、幼い頃に体験していた幻想郷、両方の世界の行き来を導いた紫との古い縁もまた影響したのでは、と考察を進めるものもある。
なお、紫は菫子にまつわる射命丸文の取材に対して、菫子について歯牙にもかけない相手であるかのような回答を行っているが、その実、先述のように菫子の来訪を円滑にする手続きのために骨を折るなど、紫の表情は場面や相手によって様々に変化している。
二人の出会い
『東方憑依華』
上記のように作中では紫側からの菫子への認識の在り方や菫子にまつわる紫の密かな活動、あるいは人物評などが語られていたが、両者が出会った具体的な描写は描かれてこなかった。
しかし『憑依華』ストーリー中において二人は対面を果たすこととなる。
『憑依華』での出会いは菫子&ドレミー(ドレミー・スイート)ルートの終盤である。
夢を通して普段の幻想郷と違う場所に引き込まれた菫子はその世界でドレミーと出会い、現側で「夢の世界の自分」が暴走していることを知る。菫子はこの世界からの脱出を願うもドレミーはそれはかなわないとしてあきらめるよう促すが、突如として菫子がドレミーの前から消失する。
不明な状況にドレミーは驚くも、引き続き分身を菫子に憑依させて事態を追跡する。
夢の世界を脱した菫子は幻想郷にあった。
「 誰かに掴まれたような 」感触での移動は、引き続き菫子に憑依したドレミーの見立てによれば「 強制的に夢の中から引っ張り出された 」ものであった。
夢の世界を脱せたことと幻想郷に来ることができた菫子は喜ぶ。
そんな菫子らの前に現れるのが紫である。
突如として空間を開いて菫子の前に現れ、菫子に声をかける。
「 こんにちは 」(紫、菫子らに対して)
「 こんばんは 貴方は? 」(菫子、紫に対して)
菫子に対し紫は「 救いの手を差しのばしに 」来たとし、今まさに幻想郷へと入れていることもあってこれに菫子は喜ぶも、紫の思惑は現の菫子と入れ替わりでやってきて現側で暴れていた「夢の世界の菫子」を外の世界に送還することにあり、そのために菫子を自らの元に手繰り寄せたのであった。
「 私は、この暴れん坊を外の世界に送り返す為に
夢の世界から連れ出したのよ 」(紫)
「 ええ? 外の世界に?
折角幻想郷に戻って来たのにー 」(菫子)
「 問答無用! さっさと消えよ! 」(紫)
こうして菫子らは紫から唐突な弾幕戦を仕掛けられることとなる。
弾幕戦の後、ドレミーが完全憑依異変における夢の世界への影響と現の世界との関連を語ると紫はそれに興味を示し、さらに菫子の事情を知ると二人の要望に応えるのだった。
そして「 境界の妖怪 」(ドレミー、『憑依華』)である紫の力によって「夢の世界の菫子」の所在する外の世界に導かれた菫子の、不思議な夜が始まるのである。
「 境界(さっき)の妖怪の仕業で
夢の世界の貴方も現の貴方もここにいるみたい
嵌められた
このままでは夢と現の狭間が曖昧になってしまうわ 」
(ドレミー、『憑依華』。「 さっき 」の部分は原文では「 境界 」にルビ表記)
この菫子のエピソードではドレミーを通して夢という観点からの完全憑依異変の姿やその仕組みなどが語られる他、菫子が普段幻想郷を訪れる際のプロセスや副次的な現象についても示されるなど、もう一つの世界である「夢の世界」の姿が語られるものとなる。
本作において菫子は「夢と現」を自身の存在性までも含んで彷徨うこととなったが、この「夢と現」を彷徨う菫子とドレミーによる夢の世界の情報によって、紫はこれまでその正体をつかみながらも独自の強制完全憑依を成す「完全憑依異変」の黒幕へ対抗策を見いだせていなかった事態に対して「夢の世界も介してマスターとスレイブの境界を操る」という自らの能力を生かせる形での対抗策のアイデアをつかむこととなる。これは紫にとっても極めて意義深い出会いとなっており、図らずも外の世界、幻想郷、夢という三種の世界を迷い歩いた菫子の動向が、ドレミーを介して、同様に外の世界、幻想郷、夢の三者を自ら渡ることのできる紫に事態打開に向けたブレイクスルーをもたらすこととなった。
『憑依華』でのこの他の二人の要素としては、ストーリー中で紫が自らの姓名を菫子に名乗っていることや紫が明確に菫子の名前を口にしていること、初めて言葉を交わした際の挨拶の言葉の時間感覚が紫と菫子とで異なっている対比などもまた特色である。
加えて「菫子を外の世界に送る」という様子は紫が自身の手で「睡眠中の菫子(現側)」を外の世界に送り出すという明確な描写ともなっており、これまでの菫子がとってきた両世界を渡る方法である、オカルトボールを介する方法、夢を介する方法のいずれとも異なる、幻想郷創設者である「境界の妖怪」の能力を通して、その明確な意思と手によるもので両世界を渡ったことも意味するものである。これは先述の紫の手による「神隠し」の逆の方向(幻想郷から外の世界へ送る)にも通じる。
先述の紫と菫子に共通する要素である「夢」にも関連して、ドレミーは紫について「 普段からよく夢の世界に潜んでいる 」としており、夢の支配者としてのドレミーを通しても紫が夢の世界に関連を持っていることが語られている(対戦モード対紫勝利セリフ、『憑依華』)。
一方「夢の世界の紫」に対しておそらくは現側の紫本人は「 可哀想ね、狭い世界で 」としているなど、現実世界での実際の広がりに身を置くことを肯定する想いも滲ませている。
これは今では夢を通して知る世界となった幻想郷に憧れを抱いていた菫子と対比的である。
夢と現の対比は完全憑依と並んで『憑依華』で語られるテーマの一端でもあり、特に実際に夢と現の境界を彷徨いドレミーとの出会いも果たすこととなった菫子と、菫子や黒幕への対処など複数の形で両者の境界を操った紫は『憑依華』でも共にこの「夢と現」のテーマの軸線上にある。
さらに紫は新たなテーマ曲としてまさに「夢と現」の要素を含んだ「憑坐は夢と現の間に ~ Necro-Fantasia」と共に登場しており、楽曲の面からも紫はこのテーマに関わっている。
ストーリー以外の場面では『憑依華』においても自由対戦モードにおいて自由な完全憑依ペアや自由な対戦をセッティングすることができ、ペアごとに二つ名が変化するというシステムもある。
二人をコンビとした場合の二つ名は、マスターが紫の場合(紫&菫子)は「 神出鬼没で扱いに困る二人 」、マスターが菫子の場合(菫子&紫)は「 神秘主義で裏表のある二人 」となる。これは二人それぞれの『憑依華』における二つ名を織り交ぜたものともなっており、『憑依華』時のそれぞれの二つ名は、紫が「神出鬼没で裏表のない妖怪」で、菫子が「神秘主義で扱いに困る女学生」。
この際の対戦モードでの勝利セリフは、特に紫が菫子にかける言葉が特徴的であり、菫子の幻想郷への来訪を歓迎するものとなっている。
「 幻想郷へようこそ 楽しんでいってね 」(紫、対戦モード対菫子勝利セリフ、『憑依華』)
これは先述の『憑依華』以前の紫が暗に示していた菫子に対する静かな肯定について、ここでは明瞭な言葉を通して感じさせるものである。
一方の菫子からは紫の境界を操る独特な能力への驚愕が語られるなどされる。
「 その裂け目は何? 空間が斬れてるの? 」(菫子、対戦モード対紫勝利セリフ、『憑依華』)
博麗神社
菫子が『深秘録』に初めて登場するのは同作における最初の霊夢のルートである。
このルートでは菫子はシルエットとしてのみ描かれ、菫子の視点からすると霊夢から突然攻撃を受ける訳であるが、この舞台となったのが博麗神社である。
その後複数のキャラクターの物語を通して菫子は幻想郷への道を得る事が出来、果たして幻想郷へと正式に(と本人は思っていた)やってくる。この際に菫子が初めてやってきたのも博麗神社であった。
さらに「 幻想郷の怖い夜 」を通して菫子が再び戻ってきたのも博麗神社であり、その後一時の脱出の後、外の世界にまで追ってきた霊夢に敗れ再び幻想郷へと引き戻されて霊夢らによる事後のお叱りを賜った場所も博麗神社である。
加えて『深秘録』とは別の形で幻想郷を訪れるようになった菫子は幻想郷側での活動に際しては博麗神社を拠点にしているようである。
文もまた菫子に関する取材を通して菫子には博麗神社からの特別な庇護があるとを感じており、菫子の周辺のつながりについて「 八雲氏との距離の近い 」面々であると表現しているなど、文を通しても紫と菫子の縁が描かれている。
博麗神社は幻想郷と外の世界の境界であり、『深秘録』あるいはそれ以降も二つの世界を渡る菫子の窓口ともなっている。
紫にとって博麗神社は「 私の神社 」(『緋想天』)であり、幻想郷を維持するための要所でもある。
『深秘録』における菫子が行おうとした二つの世界の境界をなくそうとする危険な試みなどについては紫は自ら手を下す事は無く、続いて巻き込まれる形で幻想郷にも危機がもたらされた『紺珠伝』でも直接的に行動する事は無かった様子であるが、博麗神社とその謂れに自らが良しとしない別の意図が紛れ込もうとした際には紫自らが介入してこれを一時倒壊させるなどの大規模な行動をとる事もあった。
博麗神社の結界が意図せず揺らいだ際には「 幻想郷的な力 」を応用することでこれを修正したりもする(『東方三月精』)など、博麗神社については紫が特に心を砕く様子が描かれている。博麗神社は外の世界にも存在するが、外の世界のそれを含め、紫は「 大切な神社 」ともしている。
先述の『憑依華』において紫と菫子の明確な、初めての出会いとなった場所も博麗神社(「 異変の神社 」)であり、その直接の出会い以前より紫と菫子はそれぞれの形で博麗神社に縁をもち、この地を通してそれぞれの世界を見渡したり体験したりするところに共感する要素をもつとともに、博麗神社は二人の歩みが初めて交わった象徴的な場所ともなった。
電波塔・標識・アクション
『深秘録』において菫子はその攻撃やスペルカード(<念力「テレキネシス 電波塔」>)などに「電波塔」を使用しており、スマートフォン等を(幻想郷で使用できるかは別として)持ち込んでいる事もあってその電波を中継する電波塔と関わりをもつ。
幻想郷でも電波塔そのものが幻想郷へと入ってきた事があり、その様子は『三月精』で語られている。
同作エピソードにおいてその電波塔の出現を前に会話する霊夢と霧雨魔理沙の前に現れるのが紫である。『三月精』で紫が登場するエピソードにおいて、紫が博麗神社とその周辺以外の場所に登場する数少ないケース(電波塔が出現したのは魔法の森の奥)であり、『三月精』(第三部)単行本第二巻の裏表紙もこの電波塔と紫を描いたものとなっている。
紫は「 忘れ去られ 」幻想郷に流れ着いた「 旧式で低い 」電波塔について想いを寄せ、さらにリアルタイムで建造中の「 今の電波塔 」についても語る。
そしてそのような物が幻想郷に来る事が無いようにと語るのである。
幻想郷へとやってきた電波塔はその後三妖精らによって「 妖精の神社 」(または「 聖地 」)となるなど「 幻想郷的な力 」の一つともなった。魔理沙もまた幻想郷へやってきたことで変化し続けることとなった電波塔について「 幻想郷にはお似合い 」としている。
また菫子はアクションにバスの標識や道路交通標識などを使用するが、紫もまた標識をアクションに使用する。弾幕アクションで使用されたものとあって共に物理的に叩きつけるように使用したり飛ばしたりする形で使用しているが、それに物理的力を与えアクションとして効果のあるものとしているのはそれぞれの特殊な能力であるという点も共通している。
菫子はその超能力を操る程度の能力も通して廃材などの捨てられ忘れ去られようとしてるものを応用し、その一つに「電波塔」や「標識」があるが、紫は『三月精』において忘れ去られた果てに幻想郷へと流れついた「電波塔」を見上げて二つの世界の姿それぞれの姿を想い、スペルカードや様々なアクションでは「標識」を応用する。
遠く隔てた別々の存在を電波を通して結ぶ「電波塔」や、誰かが誰かにその意思を象徴的に伝えるものである「標識」など通しても、紫と菫子はそれぞれの形で縁をもつのである。
二人がいずれも登場する『憑依華』にみるモーションにも紫と菫子にはコンセプトを共有するものがあり、例えば菫子は『深秘録』においても「テレポーテーション」(必殺技など)で瞬時に空間を移動することができたが、紫もまた必殺技や通常攻撃コンボなどで境界を渡ることでフィールド内の離れた場所を瞬時に移動するモーションを持つ。
ダッシュで姿を消すキャラクターには二人の他に古明地こいしや鈴仙・優曇華院・イナバがあるが、両者はテレポートや境界移動といった空間的な跳躍ではなく相手の認識に干渉あるいは操作することで瞬間移動したように認識させているという可能性もあり、この点が紫や菫子のような明らかな空間的跳躍と異なる点である。身体能力を高めて強力なダッシュを行う聖白蓮とも異なる。
またその雰囲気は大きく異なるものの、両腕による直接的な連続攻撃のモーションもあり、菫子には両腕を振り下ろすように連続掌底パンチを繰り出す「ぽかぽか」と言えるような攻撃モーションがあるが、紫にも境界で上半身と下半身を分け、上半身のみでクロールのように腕を振り回しながら前方に突撃しつつめったなぐりまたはひっかきを行う攻撃モーションがある。
菫子のパンダカー突撃とぽかぽかの連続攻撃の両性質に同時に通じるものを持つ。
通常攻撃のコンボの締めが相手の背後からの攻撃となる(紫は自身が相手の背後に移動、菫子は相手の背後に電柱を振り下ろす)のも同一。
菫子にみるヒップアタックは紫にはないが、気だるげに境界の上に横たわった状態での後ろ足による蹴り上げ(境界を介して脚部の部位を延長する)があるなど、共に相手に背を向けて何らかのユーモアのある攻撃を行うモーションも持つ。
二次創作では
先述のとおり、二次創作では二人についての様々な考察が展開されており、多様な創作のアプローチがある。特にゆかすみの二人に特徴的な要素としては例えば「秘封倶楽部」がある。
「秘封倶楽部」とゆかすみ
秘封倶楽部は『深秘録』では菫子がつくりあげた「 秘密を暴く 」サークル活動であるが、上海アリス幻樂団作品にはもう一つ「秘封倶楽部」が登場する。
それが「ZUN's Music Collection」に登場する秘封倶楽部であり、こちらでは宇佐見蓮子とマエリベリー・ハーン(メリー)の二人のサークル活動として語られる。
先述の現在時点では菫子の秘封倶楽部と蓮子・メリーの秘封倶楽部の両者のかかわりについては語られていないが、蓮子・メリーの秘封倶楽部については以前から紫との関係が二次創作においても多様に想像されていた。紫は『深秘録』以後「菫子の秘封倶楽部」と幻想郷で出会う可能性が拓かれ、以後は菫子を認識し、『憑依華』では対面も果たすこととなったが、ファンの間では「蓮子・メリーの秘封倶楽部」と紫との出会いもまた想像されていたのである。
また蓮子・メリーの秘封倶楽部において紫との関連を見出す想像の中にはこの両者に特徴的なものとして「紫=メリー説」があり、これは紫とメリーのアイデンティティが何らかの形で同一であるとするものである。この立場に立って「ゆかすみ」を見る場合、メリーは自身も蓮子とともに活動する(または活動することになる、あるいは活動していた)秘封倶楽部に、菫子を通して紫として出会うこととなるのである。この場合の「ゆかすみ」は、「菫メリ」とも触れ合うものといえるだろう。
また、「紫=メリー説」以外にも紫とメリーの間に何らかの接点があると考える二次創作は多く、その場合は「蓮子と繋がりのある菫子」と「メリーと繋がりのある紫」という組み合わせが、そのまま「蓮子とメリー」という組み合わせの相似形となる。
紫にとって菫子の出会いは秘封倶楽部との出会いでもあり、それは(先述の現在時点では)直接のものではないながらも、ファンの間で長らく想像されていた紫と秘封倶楽部の出会いでもあるのである。
「ゆかすみ」を想像する際には紫と菫子の二人の出会いを想像するものをはじめ、紫のバックストーリーにも考察を寄せ、紫において醸成されてきた二次創作的アプローチも多様に関連させながら紫ならではの想いをこめて菫子と触れ合う様を想像するものもあるなど、多様に醸成され続けている様々な創作も受けた、「ゆかすみ」ならではのアプローチがあるのである。
ゆかすみの二人
「秘封倶楽部」に限らず広く「ゆかすみ」の二人にまつわるアプローチとしては、例えば二人とも「眠り」という文脈でも語られているため、心地よい睡眠(=睡眠を通したより良い別世界ライフ)を求めるいわば良睡眠の求道者同士として共感すると言うストーリーもある。
加えて菫子は物理学の知識を通して霊夢と語りあうシーンがあり、紫については紫の式である八雲藍がその数学的センスについて想像もつかないほど高度であるとしているなど、共に理数科系の分野に開かれている様子からこの話題を通して二人が交流するというアプローチもある。
なお、菫子の興味の無い科目は「 現国 」(『深秘録』、対戦モード菫子勝利セリフ)。
方法などは異なるものの、リアルタイムで「外の世界」と「幻想郷」を行き来しあうという境遇にも共通点を持ち、両世界観の違いなどについて知識だけではなく感覚・感性的な部分で話ができ得る間柄、という点も「ゆかすみ」の可能性の一つである。
加えて両者のかかわりについての想像は先述のように『文果真報』における記述を通して菫子の幼少期にまで遡ることのできる可能性をみており、神社で遊ぶ幼い菫子と紫との出会いと幻想郷への誘い、外の世界への解放という二人のミステリアスな幻想体験の歴史をも想像させる幅が広がった。
さらに後に菫子が幻想郷に至るための力などについても『紺珠伝』に至る月の都の影響とは別にそもそも紫の多様な影響力があったことを想像するものもあったり、あるいは幼い菫子が見た当時の紫への憧れと重なっていたりといった想像がある。
菫子が抱いていた幻想世界への憧れについても紫によって導かれた世界の思い出が、記憶としては閉ざされたものの無意識下へと沈降し例えば魂の深みにまで重なっていたりする様など、菫子の成長や人生の方向性への紫の影響を想像するものもある。
また紫の視点では、幼少期の神隠しに紫が関与していたとして、なぜ紫が菫子に目をつけ、また「神隠し」として幻想郷にとどめず「外の世界」に返したのかなどを想像するものもある。そして再び幻想郷へと菫子が至るまで紫が菫子に対してどのようなスタンスであったかなど、二人のかかわりに関連して二次創作で展開されるゆかすみはさらなるステージを得ている。
今日の互いが互いをどのように感じるかについてもそれぞれの創作の方向性から、世代間に見られるようなギャップや軋轢として描かれたり、あるいは他方に対する憧れのような魅力として感じられたりと様々である。経験豊富な紫が真っすぐな部分もある菫子をからかってみたり、菫子が破天荒なオカルト研究で異変寸前の事態を起こして紫を悩ませたり、あるいは幻想郷や外の世界で起こる怪異に一緒に挑んでみたりと、創作ごとに様々な「ゆかすみ」の姿が想像されている。
この他、二人にまつわる謂れとして、菫子の通う「東深見高校」と「八雲」との関連を見る事も出来る。
「東深見」を仮に地名とする場合、実際の神奈川県に「深見」または「深見東」という地名があり、ここに「深見神社」がある。深見神社には摂末社(本殿祭神と縁が深いか、あるいは何らかの縁で当該の神社の管理の中にある祭神を祀る社)の一つとして「八雲神社」があり、八雲神社は今日では「八雲」の歌を詠んだスサノオが祀られている。
大和市イベント観光協会ホームページ(下記外部リンクなどを参照)によれば、こちらの八雲神社の由来は不明。なお深見神社には諏訪社も合祀されている。
「ゆかすみ」の二人については『深秘録』以後も多様なあり方が想像されており、菫子が幻想郷へ挑んだ『深秘録』から物語が継続した『紺珠伝』で紫がその存在を示し全ての「 混乱 」を肯定したことで、「ゆかすみ」はまた一歩物語が広がった。
さらに『茨歌仙』において紫が菫子を認識していたこと、ファンの間でも懸案でもあったように紫にとって菫子が排除すべき異物ではなかったことが語られたことで、紫と菫子の未来の可能性はさらに進んだのである。そして『憑依華』では夢と現という紫にも菫子にもそれぞれの形で繋がりを持つ事象のうねりの中で、ついに二人は出会いを果たした。
(その内容の真偽についての明確な確認はできないものの)博識でおしゃべりを好む紫と思春期の最中にある菫子との交流についての想像は、菫子の幼少期など二人の歩んできた歴史にも視野を広げつつ、広がりと深みとを増し続けている。