発進にあたって
46年前に親父殿(西崎義展)が生み出した「宇宙戦艦ヤマト」の物語は、永き時を経ても過去の遺物とはならず、アニメ、書籍、実写映画、ゲームなど、さまざまな形で多くの皆さんに届けられてきました。
そして、それを継ぐ私たちは、さらに多様で刺激的な挑戦をしていきたいと考えています。この「スターブレイザーズΛ」は、そうしたNEXTヤマトを生み出すプロジェクトのひとつなのです。
吾嬬君の繊細でスタイリッシュな絵は個人的にも気に入っていますが、今までヤマトを描いてきた線とは異なるものだと感じています。
また、生まれたばかりの物語がどこに着地するのか?果たしてどこまで共感いただけるか?それも未だわかりません。私自身の評価は今は保留とし、読者の皆さんに委ねたく思っています。
ヤマトファンの方にも、ヤマトをまったく知らなかった方にも、私たちの挑戦のひとつとして受け止めていただけたらと願っています。
西崎彰司
(『宇宙戦艦ヤマト』新シリーズ 製作総指揮・著作総監修)
概要
正式タイトルは『宇宙戦艦ヤマトNEXT スターブレイザーズΛ』。
『まったく新しい“宇宙戦艦ヤマト”』をコンセプトに制作された「宇宙戦艦ヤマトシリーズ」のオリジナルコミックであり、これまで展開されてきたどのシリーズとも異なる世界観に基づくストーリーが展開されている。
作者は「少年ジャンプ+」にて連載されたSF漫画『鉄腕アダム』を手掛けた吾嬬竜孝。メカデザインは「「宇宙戦艦ヤマト2199」シリーズ」に携わっている玉盛順一朗が、設定考証は高島雄哉がそれぞれ担当している。
2020年6月10日から2022年8月12日までの間コミックNewtypeにて連載され、後に単行本化された。
あらすじ
西暦2100年───21世紀最後の年。
地球の上空400kmの衛星軌道上に建設された超巨大加速器ディヤウスは、未知の巨大生命体セイレーネスの襲撃を受け、北米大陸イエローストーンに墜落した。墜落によって引き起こされた超巨大火山の大噴火により西アメリカは壊滅。さらに、大気圏に放出された何百万トンもの火山灰が太陽光を遮断し、犠牲者は10億人にも及んだ。
それから6年の歳月が過ぎた西暦2106年。人類は再び襲来するであろうセイレーネスを迎撃する為、時空結晶体をコアとする宇宙戦艦及び対セイレーネス艦隊「ナーフディス」を建造・編成し、それらの搭乗者(トップネス)を若者たちの間から選出していた。スターセイラーのトップランカーである少年ユウ・ヤマトは、ナーフディス・マーク06のトップネスに選ばれる。
ディヤウスの研究主任であった母の仇を取るべく、己の命を顧みずセイレーネスとの戦いに挑むユウ。そんな彼を守ろうとする、ナーフディス・マーク07のトップネスたる少女リンネ・アイギス。
二人の出会いから、物語は大きく動き始める───
登場人物
ユウ・ヤマト
本作の主人公。日本出身。12歳。小学生。
年相応の生意気さと年不相応の苛烈さを併せ持つ少年。
ディヤウスの研究主任であった母親のマヤをセイレーネス襲撃によって亡くした上に、「セイレーネスの襲撃はディヤウスでの研究が原因」とする言説によって「10億人を殺した悪魔の息子」と誹謗中傷された過去を持つ。
ナーフディス・マーク06のトップネスとして選ばれた直後、襲撃してきたセイレーネスを迎撃すべく出撃する。
企画初期の段階では高校生だった。
リンネ・アイギス
ヴィマーナでユウが出会った少女。出身や年齢も不明。
初対面のはずのユウの名を知っていたことをはじめ、色々と謎多き人物。カルロスとは何らかの理由で敵対関係にある模様。
ナーフディス・マーク07のトップネスだが、当初は搭乗を拒んでいた。しかし、初陣で危機に陥ったユウらを救う為にやむなく出撃することとなる。
ニーナ・ネルソン
ナーフディス・マーク01のトップネスを務める少女。イギリス出身。13歳。
ユウが選ばれるまではトップネス最年少だった。
レイン・ミズーリ
ナーフディス・マーク02のトップネスを務める少年。アメリカ合衆国・ハワイ州出身。18歳。
トップネスの中では最年長で、気のいい性格。ユウとは「スターセイラー」を通じて以前から知り合っていた。
ヒューゴ・リシュリュー
ナーフディス・マーク03のトップネスを務める少年。フランス出身。17歳。
マリナ・フレーザー
ナーフディス・マーク04のトップネスを務める少女。カナダ・ヌナブト準州出身。15歳。
アイシャ・メジディエ
ナーフディス・マーク05のトップネスを務める少女。トルコ出身。16歳。
カルロス・ジョーンズ
ナーフディス総司令。アメリカ合衆国出身。
スキンヘッドに眼鏡をかけた男性で、リンネからは「キモハゲメガネ」と忌み嫌われている。
「ニルヴァーナ」と何らかの関わりがあるようで……。
アビー・ヤン
ナーフディス作戦部人的資源管理官。香港出身。28歳。
トップネスの選出や管理を担当する女性で、ユウたちにとっては直属の上司。
アレクセイ・レトヴィザン
国連宇宙軍情報技術作戦部主任。ロシア出身。
主にセイレーネスの研究を行っている。ヴィマーナの設計やミフネの製作も彼によるもの。
ミフネ
アレクセイが作った自律型猫ロボット。「ミミナシフクロネコ」を略してミフネ。主な仕事はヴィマーナとナーフディスの整備。各個体の記憶は定期的に共有されており、基本的にどのミフネも同じ記憶を持っている。
セス・カーディナス
謎の組織「ニルヴァーナ」の議長。
仮面を付けており、素顔はよく分からない。
マヤ・ヤマト
ユウの母親。ディヤウスにて時空結晶体の研究を行っていた。
セイレーネスがディヤウスを襲撃した際に死亡したとされている。
登場メカ
ナーフディス
国連宇宙軍が建造した7隻の宇宙戦艦及びそれらにより構成される対セイレーネス艦隊。カルロスが率いる独自の指揮系統を有する。
英語表記は「NERF.dis」。NERFが「弱体化」という意味なので、「セイレーネスを弱体化させる戦艦 / 艦隊」という意味で名付けられたと推測できる。
戦艦はいずれも時空結晶体をコアとして持ち、時空結晶体とトップネスのフィードバックによって発生する莫大なエネルギーを利用している。
艦ごとに固有の能力を持っており、戦況に応じた連携によって真価を発揮する。
コアシップ
トップネスが搭乗する戦艦の心臓部となるユニット。
時空結晶体が内包されているのもこのユニットであり、脱出装置としても機能する。
サウンドシステムが内蔵されており、高音質な音楽を聴くことも可能。
ナンバー | 通称 | 能力 |
---|---|---|
マーク01 | ネルソン艦 | 艦隊の作戦司令塔。戦術をプロデュースする。艦隊の耳や目となる情報収集ドローン「セカンドサイト」を多数装備しており、セカンドサイトから届く情報を処理しマーカーを共有することで艦隊の命中率が格段にアップする。 |
マーク02 | ミズーリ艦 | 艦隊最速のスピードスター。装甲は薄いが「ディスジャンクト」と呼ばれる瞬間跳躍を利用して奇襲や回避を行う。「バインドニードル」と呼ばれる三次元空間に突き刺さる特殊な金属針を用いて攻撃する。 |
マーク03 | リシュリュー艦 | 最前線で戦うフランカー。金属水素を噴射し、摩擦により発生する電流で目標を爆砕する攻撃ドローン「サンダーストーム」を多数装備。サンダーストームを格納し、「ライトニングボルト」を発射することも可能。 |
マーク04 | フレーザー艦 | 前線で展開する戦艦の盾。「フロストアスター」と呼ばれる氷の盾を生成し、艦隊の防御や敵の分断を行う。モードを切り替え、近寄ってきた敵を「フリーズブラスター」で凍らせることも可能。 |
マーク05 | メジディエ艦 | 艦隊のヒーラー。ダメージ箇所をスキャンして、無数の発射台から修復素材を射出し、応急処置を行う「ファーストエイダー」を使用する。また、「カラードリボン」で敵を引き裂くこともできる。 |
マーク06 | ヤマト艦 | 艦隊の後衛アタッカー。「波動砲」を搭載しており、艦隊最強の火力を誇る。波動砲はエネルギーのチャージに時間がかかり、連射も出来ないが、広範囲の敵を殲滅することが可能。なお、波動砲を発射するとユウ自身も大きなダメージを受ける。 |
マーク07 | アイギス艦 | 艦隊の盾。強力な重力シールドを展開したり、「セイレーネスの歌」を無効化するマイクロブラックホール弾を発射することが可能。マーク06との連携で際立つ。 |
用語
セイレーネス
西暦2100年に突如地球に襲来した知的生命体。最初の襲撃から数年間は何もしてこなかったが、西暦2106年から地球への攻撃を再開した。
名前の由来はセイレーンの複数形である「セイレーネス」であると推測される。
サイズにより2種類に大別される。正体や人類を襲撃する理由は不明。
通称 | サイズ | 備考 |
---|---|---|
アリア | 約800m | 個体によって攻撃手段が異なるが、「セイレーネスの歌」と呼ばれる強力な重力衝撃波を発生させるという共通点がある。また、ワームホールを開くとされている。 |
アンサンブル | 約260m | アリアの随伴として複数体出現し、無数の光弾で攻撃する。負傷したアリアの治療も行う。 |
時空結晶体
ナーフディスのコアに使用されている特殊な結晶体。常に形を変えて構造を保っている。
この宇宙とは異なる物理法則に支配された小宇宙であり、トップネスとのフィードバックによって超物理法則の高エネルギーを発する。セイレーネスの襲撃によりオリジナルは喪失したが、ディヤウスに於ける実験で8つのコピーを生み出すことに成功しており、これらがナーフディスのコアとなっている。
作者がpixivfanboxに掲載した解説によれば、マイクロユニバース(宇宙の中に生み出されたもう一つの宇宙)を時間結晶によって結晶化したものであるとのこと。
トップネス
ナーフディスの搭乗者。
スターセイラーの優秀なプレイヤーの中から、ナーフディスのコアとのフィードバック値が一際高く且つ時空結晶体に選ばれた者たちが選抜されている。
名前の由来は素粒子物理学におけるフレーバーの一つである「トップネス」。
スターセイラー
西暦2100年頃のオンライン宇宙海戦ストラテジーゲーム。
様々なパーツを組み合わせて戦艦をカスタマイズすることが出来、遊び方は無限大。他のプレイヤーと協力してモンスターを倒すステージもある。
ヴィマーナでの起動テストに集まったのはトップランカーのAAA。ちなみにアビーのランクはB+。
世界中で大人気のゲームだが、何か裏があるようで…?
国連宇宙軍
ナーフディスが所属している軍事組織。
英語表記は「United Nations Space Force」で、略称は「UNSF」。
ナーフディス以外にも複数の宇宙艦隊を保有しており、第2話ではヴィマーナに配備されている第一艦隊がナーフディスが出撃するまでの時間を稼ぐ為セイレーネスと交戦するも、有効打を与えられず、一方的に損害を被る結果となった。
また、月面基地には第七艦隊が配備されている。
ディヤウス
地球上空400kmの衛星軌道上に建設された超巨大加速器。6年前にセイレーネスの襲撃を受けて北米大陸・イエローストーンに墜落した。
地球のエネルギー問題を解決するべく、時空結晶体を複製する実験を行っていた。時空結晶体を複製するには、加速器が地球を一周するほどの膨大な量のエネルギーが必要である為、衛星軌道上に建設された。
名前の由来はインド神話の天空神。
ヴィマーナ
木星軌道上に存在する対セイレーネス前線基地。ナーフディスの建造及びトップネスの選出試験も行っている。
基地内にはコンビニやプール、公園などがあり、設備も充実。トップネスのストレスを極力軽減するために極力地球に近い環境に設計されている。吾嬬氏曰く「合宿」をイメージしているとのこと。
名前の由来はインド神話の空飛ぶ宮殿。
ワームホール
時空の点と点を繋ぐ一種のトンネル。
セイレーネスはこれを使って遠くの天体から太陽系にやってきていると考えられている。
国連宇宙軍に巣喰う秘密結社。
「この宇宙の全ての魂を救済すること」を目的に活動する。
セイレーネスの正体を知っているようだが、何故かそれを隠そうとしている。
各話リスト
話数 | サブタイトル |
---|---|
第1話 | 世界の終わりだって遠くから見れば美しく見える |
第2話 | セイレーネスの歌 |
第3話 | キャッチャー・イン・ザ・ジュピター |
第4話 | ニルヴァーナ |
第5話 | End(less) Universe |
第6話 | 次元潜航 |
第7話 | 第一番目の適合者 |
第8話 | ビハインド・クローズド・カーテン |
第9話 | そのいのち |
第10話 | ライジング・サン |
第11話 | ハッピー・ハロウィン |
第12話 | ブリーチ |
第13話 | 虹 |
第14話 | Endless Universe |
第15話 | 夢のつづき |
第16話 | レイン |
第17話 | 最強のトップネス |
第18話 | 木星撤退 |
第19話 | ダニッシュ・ギャンビット |
第20話 | ファイティング・ピース |
第21話 | この宇宙で一番大切な人 |
第22話 | アンチマタージャイアント |
第23話 | ヒドゥン・プレイス |
第24話 | ファイヤーワークス |
第25話 | 最強のセイレーネス |
第26話 | 人類敗北 |
第27話 | トゥー・オブ・アス |
最終話 | You |
スタッフ
作者 | 吾嬬竜孝 |
---|---|
メカデザイン | 玉盛順一朗 |
原作 | 西崎義展 |
著作総監修 | 西崎彰司 |
協力 | ボイジャーホールディングス |
設定考証 | 高島雄哉 |
資料提供 | 本間智明 |
余談
- 本作のタイトルの一部である「スターブレイザーズΛ」は、『宇宙戦艦ヤマト』の英題である『Star Blazers』とアインシュタインによって提唱された「宇宙定数(『Λ』)」を組み合わせたものであると推測される。
- 仏教をはじめとするインド哲学の影響を強く受けており、作中にもこれに関連した用語が数多く登場する。これらの意味を調べてみると、本作への理解をより深めることが出来る。
- 『オーバーウォッチ』からヒントを得ており、「ナーフディス」はオーバウォッチのキャラクターのセリフ「NERF THIS!!」を引っ張ってきたものである。各々の戦艦の能力や戦闘も『オーバーウォッチ』を参考にしている。
- 元々はテレビアニメとして企画されていたが、制作の過程で西崎彰司氏に「漫画にした方が面白くなりそうだ」と判断され、漫画へと移行した。本作はその際に書かれた脚本が基となっている。