概要
ダクトテープとは、ジョンソン・エンド・ジョンソン(Johnson & Johnson)社が軍需品として開発した、アメリカ合衆国発祥の補修用の粘着テープのこと。その万能性と特徴的な銀色ないし灰色で知られ、アメリカでは広く利用されている。
布ガムテープに近い構造を持ち、ポリエチレンでコーティングされた繊維入りのテープに、粘着剤が塗布されている。布テープと同じように縦横方向に指で切ることが可能で、テープ部分はより薄く柔軟性と若干の伸縮性を持ち、糊部分はよりベタベタして粘着力が高い。
なお、ダクト工事によく用いられるアルミテープのことも、日本ではダクトテープと呼ぶことがある。
名称
耐水性と密閉性があり、貼るだけで簡単に固定できて、あとで剥がすことも可能な補修用のテープである。戦後のアメリカでは一般市民の間でダクト(配管)工事に使われていたため、「ダクトテープ」の名で普及した。
アメリカではAlbert Arno社の商標ダックテープ(Ductape)の名から"duck tape"、ヘンケル社"DUCK POWER TAPE"のブランド名から、パワーテープ(power tape)と呼ばれ、ほぼ普通名詞化している。これらはパッケージにアヒルの絵があったりするが、この"Duck"にはオランダ語の「ズック」(布、"doek"。ズック靴と同語源)に由来した「帆布」の意味もある。
販売
日本で販売されているものは以下など。
- アサヒペン「パワーテープ」シリーズ:上述のヘンケル社、現シュアテープ社"DUCK BRAND"製品の日本販売品。同社「T-REX」シリーズにもダクトテープがあり。
- 3M Scotch「多用途補修テープ」「ダクトシールテープ」
- 呉工業「ゴリラテープ」:一部ではアメリカンなCM(動画を下掲)でお馴染み。
- 他「ダクトテープ」で検索できる製品が多数存在。
気になる人はホームセンターやネット通販などで普通に購入できるので、探してみよう。なお、普及している布ガムテープの倍くらいの値段になる模様。しかし梱包テープのように長く切って利用することは少ないので、実際に使う分にはそれほど高価に感じない筈。
使い方
テンションを掛けつつある程度の凹凸を覆うように貼ることが可能で、密着させて貼り付けることで高い粘着力を発揮し、どんなものでも半ば強引にくっつけられる。比較されがちなガムテープとはこうした部分が異なっており、接着剤のような使い方に最適で、また接着剤との併用も有効。
切る・貼る・剥がすといった扱いが容易で、耐水性と密閉性を持つことから、特にアメリカでは非常に幅広い用途で使われる。例えば穴の空いた傘などの雨具、ビニールプールのように撥水性が求められるものの補修など。
皮膚に貼り剥がし出来ることから、胸の寄せ上げから、服の上から大きい怪我の傷口を塞いだり骨折・捻挫などで患部を固定したりするなどの医療目的で利用されることもある。また、イボ治療の民間療法として日本でも若干広まりつつある。
日本では比較的マイナーな存在に留まっており、たまにガムテープの文脈で名前が挙がる程度。しかし、アメリカの映画やドラマ、ゲームなどではたびたび登場するため、それらの作品が好きな人にはよく知られた存在である。
ダクトテープ万能論
その万能さゆえか、アメリカではダクトテープでスーツや鎧など様々な品を作っている人物もいる。折れた樹木をダクトテープで補修するなど(植物によっては接木となり有効)、「取り敢えずダクトテープでくっつけておけ」的な定番アメリカンジョークもあり、アメリカ人のダクトテープ愛は信仰にまで至っている……気がする。
詳しくは下記関連外部リンクを参照。
拘束用途?
pixivでこのタグの付いたイラストは、殆どがきつく拘束されて口を塞がれた女性キャラになる。ぐるぐる巻きにしてミイラのようにされているイラスト(マミフィケーション)もあるが、剥がすのは相当に大変だろう。ちなみに巻きつけて使う場合、ガチ拘束するのでなければ長い一枚をぐるぐる巻きつけるより、ある程度の長さで切りつつ巻いたほうがピッタリと上手く巻ける。
アクション映画やサスペンスなどで、この特徴的な銀色のテープが拘束に使われているのを見掛けることもある。医療用途にも使われるくらいなので、人体に直接貼り付けても、安全、安心。
拘束や緊縛プレイに使用するのも、ダクトテープが好きすぎるアメリカ人あるあるなのかも知れない…?
欠点
一般的な銀色や灰色も手伝って補修後の見た目が悪くなりがちなことと、経年劣化による糊残り、かなり薄いためテープ同士でくっつきがちなことなどが欠点として挙げられる。日本の過酷な高温多湿環境には向いていないとの指摘もある。このため、屋外で使用する際は各社が販売する高耐久・高耐水を謳った上位製品を使いたい。
このためその名と万能性に反して、ダクト修理にはそれほど向いていないとの評価もある。上述のように日本でダクトテープというとアルミの粘着テープを指すこともあるが、実は経年劣化が少なく頑丈なアルミテープの方が、ダクト補修には向いていたりする。
テープが薄いことから一枚で長い範囲を貼り付けるのにはあまり向いておらず、ガムテープ(特にクラフトテープ)や透明の梱包用テープ(OPPテープ)の代用として梱包に用いるのはお勧めできない。クッション封筒を閉じる用途としては有用で、海外便では時折見られる。
見た目では、補修後の外観は皺だらけで汚く貼ったほうが、頑丈に仕上がったりする。また指先では切り辛い場合が多く、端を綺麗にするためハサミで切って使いたくなるが、そうすると逆にテープ端が綺麗に貼り付けられないことがあり、強度も低下しやすい。テープの両サイドは相当ベタベタしているので、購入時にくっついているビニールは剥がさないほうが無難。
色に関してはある程度対処可能で、類似品を含めればある程度は色が選べるほか、アメリカではマスキングテープの如くさまざまな色柄で製造されており、日本でもコストコなどで探せば購入できる。ただし銀色による反射が耐光性を与えている可能性もあるため、ガチった補修に使うなら定番の銀色を選択したいところ。
活躍
- アポロ13号の事故の際、空気浄化装置の補修に用いられたエピソードは有名。月着陸船にすら積載されていたことからも察せられるように、アメリカ人にとっては万能補修具としてとりまダクトテープは要るっしょ、という感じらしい。
- 2015年の映画『オデッセイ』でもこれをリスペクトしたシーンが登場するが、実際に用いられたのはダクトテープと特性の異なる、耐熱性と絶縁性が高く粘着力の低い「カプトンテープ」だった。電子機器の修理にでも使うつもりだったのだろうか。
- 2018年の映画『スカイスクレイパー』(レジェンダリー・ピクチャーズ。ドウェイン・ジョンソン主演)では、主人公がありとあらゆる場面でダクトテープを使いまくるため、「ダクトテープ映画」として一部で話題になった。
- ゲーム『Enter The Gungeon』では「ダクトテープで銃と銃をくっつけて、より強い銃を作る」という嘘のような設定の武器合成システムがある。実際、軍需品という出自もあり、銃器の弾倉を貼り合わせる目的でダクトテープを使うのが定番。
- 『頭文字D』アニメFourth Stageでは、高橋啓介の愛車FD3Sをダクトテープらしきテープで応急修理して走るシーンがある。
キット化
トミーテック『リトルアーモリー』シリーズのフィギュアアクセサリに、プラキット化されたダクトテープの含まれる近接武器セットA、ゾンビハンターセットA等のセットが存在する。
公式サイトでは以下のように解説。
> ダクトテープ:配管を留める強力な粘着テープとして、様々な雑事に用いる。対テロ戦においては、手錠等の拘束具の代わりや目隠しなどに使用されることもある。
関連イラスト
関連動画
ゴリラテープ 芝刈機篇 - KURE Engineering Ltd.(公式)
外部リンク
アメリカ人の愛するダクトテープとは何なのか。歴史と製造方法と性能を調べてみた - ギズモード
ガムテより万能のアメリカンな粘着テープがオススメ - ASCII.jp