概要
プス・キャタピラー(puss caterpillar)とは、鱗翅目メガロピゲイラガ科(学名:Megalopygidae、英語名:flannel moth、フランネル・モス)に分類される蛾の幼虫である。イラガ(イラガ科)ではないが、それに近いグループの一つである。
名前の通り、まるで子猫(puss)の毛皮のようなもふもふした毛に包まれた毛虫で、裏から見た本体は芋虫そのものなのであるのだが、毛があまりにも発達しているために、単にもそもそ歩く毛玉にしか見えず、さらに毛が長い種類は動くかつらにすら見える。
裏面に隠れているため分かりづらいが、腹脚(腹部の脚のような短い器官)は7対で、普通の芋虫(5対)より2対も多いのも特徴である。
触角はメスが糸状、オスが羽毛状。全体的に近縁であるイラガと似ているが、体毛がより分厚くて目立つ。こちらももふもふである。
260種以上知られ、主にアメリカ大陸の熱帯雨林に生息する。アメリカ合衆国南部のフロリダ州やテキサス州に分布するサザン・フランネル・モス(学名:Megalopyge opercularis)が特に有名。
また南米ボリビアに多くの種がいることから、ボリビアバグという呼び名もよく知られている。
実は...
いかにも手触りが良さそうな姿をしているが、実はこの毛は猛毒の毒針であり、触れてしまうと格子状の刺し傷とともに、毒が注入されて激しい灼熱痛に襲われてしまう。
さらに頭痛および発熱、嘔吐や頻脈、けいれんなどを発症し、重篤の者は救急救命室(ER)で治療を受けないと死に至るという。
特にサザン・フランネル・モスによる被害例が多く、2020年には近年の夏の酷暑の影響からか、本種は本来の生息地から離れた東部のバージニア州で発生し被害者が現れたことでニュースとなった。
そのため本種は現地ではアスプ(コブラやクサリヘビなどの毒蛇)、イタリアンアスプ、ツリーアスプ、アスプキャタピラーなどの別名で呼ばれる、まさにリアル殺人毛玉である。
ちなみに幼虫ばかり眼が行きがちだが、成虫も猛毒の毒毛を有している。
飛来した成虫にぶつかったり、鱗粉の舞った跡に触れて被害に合うケースもある。
なお、ある種の寄生虫に弱いため、身に寄せ付けないために糞を遠くに飛ばすという習性を持つ。
関連タグ
イラガ:近縁。
ジュエルキャタピラー:同じイラガに近い別科(ダルセライラガ)の蛾の特徴的な幼虫。
リンゴドクガ:日本のモフモフな毛虫で、こちらはドクガという名に反し無毒である。
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