万華鏡伯爵
まんげきょうはくしゃく
その名に違わず、万華鏡を模した頭部の中央に、ゴーマ怪人の共通項である一つ目を備え、スカーフとコートに身を包んだ瀟洒(しょうしゃ)な出で立ちが特徴である。
特定の相手に幻覚を見せたり、離れた場所の出来事を万華鏡に映すなどといった幻術に長けており、ダイレンジャーやクジャクでさえもこれを見破るのは至難の業である。作中では「聖なる孔雀の涙」を探すというクジャクの目的を利用し、彼女を罠にはめようとするガラの作戦に従事。戦闘においては刀の他、手から発する妖力弾を武器とするが、シシレンジャーとの戦闘では終始劣勢に立たされていたことから、直接戦闘は不得手のようである。
ある日、「山奥でハイキングをしていた登山客の若者が遭難した際、『輝く孔雀』によって一命を救われた」というニュースが流れ、これが予てからクジャクが探し求めていた「聖なる孔雀の涙」に繋がるものではないかと直感した大五は他の4人とともに調査を開始する。
・・・が、この「輝く孔雀」は万華鏡伯爵による幻術の産物でしかなく、これに釣られて大五達、そしてクジャクが輝く孔雀が現れたという山に踏み込んだことを知ると、万華鏡伯爵は彼女達を自慢の幻術にかけて巧みに翻弄してみせる。
そうとも知らず、クジャクや大五達は花畑では伸びてくる蔦、森では槍の様に飛んで来る枝、岩場では落石や落雷と様々な自然現象に見舞われ、さらにはガラの介入もあって窮地に立たされるが、幻術を行使していたのを道士・嘉挧に感づかれ、大五達は嘉挧の助勢によって自分達に襲いかかってきた自然現象の数々が、万華鏡伯爵の幻術によるものであったことを知ることとなる。
一方、その過程で大五達とはぐれていたクジャクは、洞窟の中で遂に聖なる孔雀の涙を発見するに至る・・・のだが、これもやはり万華鏡伯爵のしかけた罠であり、直後に駆けつけた大五達によって、その正体が毒蛇を潜ませた骸骨であることが露見。こうして自らの仕掛けた幻術がことごとく見破られたのを受け、万華鏡伯爵は彼らの前に姿を現し落盤の幻術によって攻め立てるも、6人全員による気の集中によりこれも打ち破られてしまう。
転身したダイレンジャーとの戦闘では、シシレンジャーと一騎打ちに及ぶも大輪剣・気力シュートでダメージを負うのみならず、天幻星・霧隠れによる「幻クジャク」で翻弄されるという、自らのお株を奪われるかのような劣勢ぶりを露呈した末、スーパー気力バズーカの前に敗北。巨大戦においても大連王にはまるで歯が立たず、大王剣で腹を貫かれて投げ飛ばされた末に、大王剣・疾風怒濤の前に敢え無く散ったのであった。
デザインはマイケル原腸が担当。「中身が見えなければしょうがない」万華鏡がモチーフとして指定されていたため、様々に試行錯誤した末に苦肉の策として、六面鏡のような処理に落ち着いた。マイケル曰く「顔で万華鏡をグルグル回したかった」とのことである。
流石にグルグル回すところまでは無理であったものの、実際の造形物においてもこの六面鏡的な顔面の処理や、デザイン画稿で指示のあったオーロラフィルムを使用したコートが再現されている一方、デザイン画稿で右手に持っていた扇子はオミットされ、側頭部からドレッドヘアのように伸びている飾りも、肩パッドから伸びる形へとアレンジされている。マイケルもこの点については「頭にガシャガシャ付けたところで確かに絵のような広がりは出ない」と、そのアレンジで正解であると語っている。
声を担当した野本は、本作には紐男爵に続いての参加であり、この後も新紐男爵の声を手掛けている。
前年までとは異なり、一体の怪人を一人の演者が担当するのが基本なゴーマ怪人の中にあって、このように複数の怪人を兼ねるパターンは本作では例外ともいうべきものであり、野本以外で複数の役柄を兼任したのは檜山修之(ガマグチ法師・神風大将)や日下秀昭(鍵道化師・南方天)ぐらいである。