「お前達愚かな人間共は便利なコピー機を“発明した”と言っているが、ゴーマの高度な文明にはそんな物は6000年の昔からあったのだ!」
CV/演:吉川理恵子
登場話数:第25話「ぞろぞろ裏戦隊」
概要
作中では数少ない女性型のゴーマ怪人の一体で、「ゴーマにその者ありと云われた女傑」を自称する。先に登場した口紅歌姫のように、目を持たず唇のみが露出した顔立ちをしているが、ゴーマ怪人共通の「一つ目」と思しき部位も胸部に配されている。
その胸部にはコピー機が備わっており、冕冠(えんかん)(※)を模した頭部のスキャナーと併せて、コピー光線を照射した相手の複製を作り出すことができるという特性を有している。
その複製の精度の高さたるや、当の本人ですら「どっちがどっちだか分からなくなっちゃった」と言わしめるほどに寸分違わぬものである。もっとも後述の通り、見た目はともかく対象のパーソナリティまでは必ずしも正確に写し取れている訳ではないようで、これが結果として目論見が頓挫する一因となっている。
このコピー能力の他にも、武器として剣を装備しているものの、自身の戦闘能力はそこまで高い方ではないのか、作中では終始コピーをけしかけて敵の排除に当たらせていた。
(※東アジアの漢字文化圏にて用いられていた、皇帝や王等が被る冠の一種で、前後の端には旒(はたて)を垂らした「冕板」と呼ばれる長方形の木板を、冠の上に配しているのが特徴である)
作中での動向
道士・嘉挧の暗殺を目論むコピー女帝は、手始めに女性カメラマンに姿を変えて亮達に接近、「ハリウッド映画のスカウトのため」と称して彼等の姿を写真に収めると、さらに彼等とは別行動を取っていた知も言葉巧みに被写体とし、まんまと彼の偽者を生み出すことに成功。
突如現れた偽者に当惑する知を気絶させ、幽閉に追い込んだニセ知は他の4人も巻き込み、嘉挧の誕生日を祝うという名目でダイレンジャー本部に侵入。中で瞑想していた嘉挧に接近を果たす・・・のだが、当の嘉挧からは今日が誕生日でないとにべもなく返され、さらにお詫びに「新しい麒麟拳」を披露するとして振るった剣も、嘉挧の左腕をかすめただけで殺害には至らず、その場からの逃走を余儀なくされた。
あくまでもミステイクであると、追いすがってきた亮達に弁明して立ち去ろうとするニセ知であるも、その挙動の怪しさは既に誰の目からも明らかであり、亮が密かに取り付けていたカブトムシ型の発信機を頼りに、4人はその後を追うこととなる。
そんな彼等の行動も織り込み済であったのか、資材置き場にて待ち受けていたコピー女帝は自らの目論見を明かすとともに、先に撮影していた亮達の写真を元にコピー人間を生成、さらには「出血大サービス」と称して転身後のダイレンジャーのコピーまでも生み出し、都合8人の偽ダイレンジャーを足止めとして本物のダイレンジャーへとけしかけることで、彼等に「同士討ち」を演じさせてみせた。
一方、嘉挧の暗殺に失敗したニセ知は、本物を始末して完全にすり替わろうとするが、知の抵抗や嘉挧の介入もあって消滅に追いやられており、そうとも知らぬコピー女帝は前述したコピーの精度の高さが災いし、自身のもとに現れた知が本物であると見抜けぬままに攻撃を食らってしまう。
もっともこれでコピー女帝の優位が揺らいだ訳でもなく、さらに5人の偽ダイレンジャーを出現させると転身したキリンレンジャーを圧倒、そして自ら止めを刺そうと剣を振り下ろすが、全ては彼女の油断を誘うためのキリンレンジャーの一芝居に過ぎず、逆に渾身の「麒麟拳・ロッドアロー」をモロに食らってコピー機を破壊され、偽者達の消滅という事態を招いてしまった。
これにより、ダイレンジャーも5人全員揃い形勢は逆転。麒麟爆弾パンチに続けての気力ボンバーで吹き飛ばされた・・・かに見えたが、コピー女帝はしぶとくも巨大化爆弾を起爆させており、勝負は大連王との巨大戦へともつれ込む。
ここでも頭部のスキャナーから、いつの間に写し取っていたのか気伝武人・龍星王のコピーを出現・実体化させ、大連王へと攻撃させるも所詮は焼け石に水、大放電と大王剣・疾風怒濤のコンボによってまとめて打ち破られたのであった。
今わの際に発した「しまった!私としたことが・・・悔しい~!」という断末魔は、大連王をコピーすればよかったと気づいたのか、あるいはコピー龍星王に任せて逃げればよかったことに気づいてのことなのか、今となっては誰一人知る由もない。
備考
デザインは篠原保が担当。当時彼が所属していた有限会社クラウドにあったコピー機をそのまま描いていると語っており、両肩に備わっているトレイ状の部位も、そのコピー機に準じて3段とされている。この他にも、映画『ラストエンペラー』のイメージから「女帝」のイメージも盛り込まれており、この点については「おかずを追加するのがパターン化してきてる頃」とも振り返っている。
女性怪人であることから、腰回りについては横に張り出すようにパーツを追加することで、相対的にウエストが細く見えるよう試みられているが、造形段階においてはハンドル状のパーツがやや小さめにアレンジされている。
演者の吉川は、東映のプロデューサーの一人であった吉川進の実子で、その縁から1980年代から1990年代初頭にかけて、主に父が関わっていたメタルヒーローシリーズの諸作品にゲストとして度々出演。スーパー戦隊シリーズへの出演は本作が唯一である。
コピー女帝によって生み出されたニセ知役は、土屋大輔(知役の土屋圭輔の双子の兄)が演じていることで知られているが、後年『東映ヒーローMAX』のインタビューにおいて、一人で映っている際は圭輔が演じていること、またアフレコについては全て圭輔によるものであると語っている。
マイティ・モーフィン・パワーレンジャー
第2シーズンの第100話にて、フォトメーア(Photomare)として登場。原典とは異なりコピー機ではなく、インスタントカメラから生まれたモンスターであり、口調や人格も女帝というよりはオカマとして描写されている。原典譲りのコピーを作り出す能力のほか、撮影した人間を写真に閉じ込める能力も持つ。
作中では、ロード・ゼッドの魔法により子供に戻ってしまったパワーレンジャーを写真に閉じ込め、写真を燃やし倒そうとしたが、バルクとスカルに写真を奪われた挙句、アルファの援護によってパワーレンジャーは解放され、元の姿に戻ってしまう。
その後は街の人々を襲っては写真に閉じ込めていたが、そこにパワーレンジャーが駆け付けたのを察知したロード・ゼッドにより即巨大化させられ、後は原典通りの最期を迎えることになった。
『パワーレンジャー』の初期3シーズンのうち、日本語吹き替え版は100話までしか制作されなかったため、このフォトメーアが日本語吹き替え版に登場する最後の怪人となっている。
関連タグ
類似・関連する他作品項目
スーパー戦隊
コピーオルグ:『百獣戦隊ガオレンジャー』に登場する敵怪人の一体。コピー機をモチーフとし、ヒーローの偽者を生み出した戦隊怪人であるという点もさることながら、デザインの経緯においても「当時デザイナーが所属していた会社にあったコピー機が参考にされている」という共通項を持ち合わせている
ラッコピーマン:『爆竜戦隊アバレンジャー』に登場する敵怪人の一人。こちらもコピー機がモチーフなだけあってコピー能力を持つが、コピーするのは敵対する戦隊そのものではなく、その戦隊が用いる専用武器や合体武器といった相違点もある、
幻獣ミノタウロス拳シユウ:『獣拳戦隊ゲキレンジャー』に登場する敵怪人の一体。こちらも本物とそっくりなコピーを創りだすことができ、能力の餌食になったヒーローとその偽者を双子の兄弟が演じたという点でも共通項が見られる
スーパー戦隊以外
ブラックビート:『重甲ビーファイター』に登場する敵キャラクター。こちらは人間態を土屋圭輔氏が演じ、コピー元を土屋大輔氏が演じていると善悪などの立場が逆転している。
マモー:『ルパン三世 ルパンVS複製人間』の登場人物の一人。電気もコンピューターも無い時代に、人間を複製する技術(ヒト・クローン技術)を編み出したという共通項を有する