「君にはもう帰る家もない…」
「ウッヘッヘッヘッヘ、ハッハッハッハー!出たぞ出ましたガマグチ法師~!!」
登場話数: 第2話「気力だァァッ!!」 劇場版『五星戦隊ダイレンジャー』
概要
その名の通り、黒いがま口財布のような頭部を持つゴーマ怪人の一体。
頭部の中には布袋の顔を模した赤いマスクが入っており、これを次々射出する「ガマグチ殺法・ガマダンク」なる技を得意とする。またこの技は攻撃のみならず、マスクを対象に被せてその視界を封じ、自らの意のままに操る効果も有している。この他にも、柄の部分に魚の意匠を持つ巨大な木槌も武器として振るう。
甲高い声とエキセントリックな挙動が目を引く怪人態とは対照的に、ストリートバスケのプレイヤー姿の人間態はどちらかと言えば口数少なげであるが、その寡黙さは彫りの深い容貌と相俟って、相対する者に得体の知れない威圧感を与える。この姿では手にしたバスケットボールを、記事冒頭にも示した台詞とともに前述の赤いマスクへと変化させ、これを投げつけて相手を拉致する。
また後述の「ニードロブードロ」の儀式(※)においては、白いホッケーマスクに黒装束という姿で参加しており、携えていた大鎌で生贄とされた者達の首を刎ねる役目を担った。
(※ 嘉挧が語るところによれば、ゴーマの復活に際し、穢れを知らない5人の生贄を集めその生き血を捧げるという悪魔の儀式であるとされる)
作中での動向
TVシリーズ
先んじて活動を始めていた紐男爵が敗北したのとほぼ時を同じくして、ザイドス少佐により彼の担いでいた頭陀袋の中から放り出されるという、些かシュールな形で登場を果たすと、ゴーマ復活の祭典「ニードロブードロ」の生贄とすべく、子供達を次々と拉致していった。
将児の弟分である健一少年もその被害に遭い、健一と行動を共にしていた将児の前で正体を現したガマグチ法師は、転身して向かってきたテンマレンジャーにガマダンクを放ち、相手の繰り出した「天重星・重力逆転破」を逆用(※)して大ダメージを与えるとその場を後にした。
将児からの連絡を受けた道士・嘉挧は、ゴーマが「ニードロブードロ」を執り行うと推測し、他の4人にゴーマのアジトを見つけ出すべく指示を出すが、アジトの捜索に当たる彼らの行動はゴーマも織り込み済みであったようで、ガマグチ法師も一般人に変装していたコットポトロからの連絡により、リンを待ち伏せてその身柄を確保せしめると、先に拉致していた健一らと併せて生贄とすべくアジトへと連行する。
アジトにおいて「ニードロブードロ」の儀式が執り行われた際には、前述の通り黒装束に身を包んでこれに参列し、ガラの指示によりリンの首を刎ねようとするが、そのガラの乗っていた車を追跡し、アジトを突き止めていた将児の乱入によりすんでのところで妨害され、リンや健一達も奪還されてしまう。
儀式を台無しにされ、さらに亮達3人も合流したのを受け逃走を図るガマグチ法師であったが、彼らに先回りされたために已む無く正面対決を余儀なくされる。
テンマレンジャー「ガマグチ野郎!口がでかけりゃいいってもんじゃねぇんだ!!」
ガマグチ法師「ぬぉっ!?ほざいたなぁ~!来いぃっ!!」
と、ノリ任せのよくわからない応酬も交えつつテンマレンジャーとの再戦に及んだガマグチ法師は、初戦と同様にガマダンクを見舞って勝負を制しようとするが、対するテンマレンジャーは先の敗北から得た教訓と特訓により、「自然の法則に逆らわず、逆に利用する」ことを感得して飛んできたマスクを尽く回避。さらに反撃として繰り出した「天重星・回転蹴り」により、ガマグチ法師は手痛いダメージを被る格好となった。
追い詰められたガマグチ法師は巨大化爆弾を取り出すも、ダイレンロッドを投げつけられて身動きが取れなくなった末、必殺の気力ボンバーを食らい「アァァァディオォォォォス!!」と断末魔を残して爆散した。
(※ この時テンマレンジャーは、飛んできたマスクを重量ゼロにして跳ね返そうとしたが、このように「自然の法則」に逆らって力を力で跳ね返そうとする場合、必ずそこに摩擦が生じ何倍もの力になって我が身に返ってくるのだと、敗北の後に嘉挧は将児に諭している)
劇場版
物語のクライマックスにて、トランプ公爵がダイレンジャーに対抗するため、ゴーマ怪人の絵柄が描かれたトランプの中から出現したうちの一体として登場。
TVシリーズと同様にテンマレンジャーと干戈を交え、ここでも人間態に扮してガマダンクを繰り出すも、ダイレンロッドによる「ダンク返し」で打ち返され、今度は自分がマスクを被せられるという失態を演じてしまう。
他の怪人たちとともに巨大化した後もそこまでの活躍は見られず、オジャル大王へと妖力合体を遂げると口紅歌姫の剣をがま口に挟んだ「口紅剣」で大連王を攻め立てるも、大王剣・疾風怒濤の前に他の怪人たち共々敢えない最期を遂げた。
マイティ・モーフィン・パワーレンジャー
パースヘッド(Pursehead)の名称で、第2シーズンの第79話に登場。同作ではがま口ではなく、ピンクレンジャーことキンバリーの持つハンドバッグが、ロード・ゼッドの魔法によりモンスター化したという位置づけとなっている。
ハンドバッグらしく中に入っていた道具を使用した攻撃を得意とし、光線を放つコンパクトミラー、敵を拘束するデンタルフロスなどでパワーレンジャーを苦しめたが、サーバの眼から放たれた光線を受け怯んだところにホワイトレンジャーのキックを受け倒されてしまう。その後は原作通り巨大化することなく、「さすがホワイトレンジャー!」と言い遺し元のハンドバッグへと戻った。
撮影に際しては実際に着ぐるみがアメリカに輸送されており、現地で撮影されたパワーレンジャーとの戦闘シーンが追加されている。
備考
デザインは篠原保が担当。番組企画時に最初に提示された4体のうちの一体であり、無機物モチーフであるという点が当初から固まっていたことから、何にしようかと机の上をパッと見た際に目に付いたがま口財布と、これに付いていた七福神の根付を並べてそのまま描いたものとなっている。根付は両肩の意匠に反映されている他、得物が木槌であるのも七福神のイメージの名残であるという。
番組の企画にも当初より深く関与していた、メイン監督の小林義明の嗜好が反映されたシュールな方向性、それにシンプルにするという要求を考慮して「一つ目」としたガマグチ法師であるが、その後鍵道化師のデザイン作業に際して悩んだ末にこちらも一つ目としたことや、ガマグチ法師のデザインを気に入った小林からの「これだよ」という後押しもあり、結果的にはゴーマ怪人全体の方向性を決定付ける一体ともなった。
CVを担当した檜山は、ガマグチ法師の他にも同話数に登場するコットポトロの声も担当。さらに本作ではゴーマ3ちゃんズの一員である神風大将役としても再登板し、スーパー戦隊シリーズへの初参加にして後の「常連」ともいうべきポジションに繋がる活躍ぶりを示した。
人間態を演じた神威は、前年放送の『特捜エクシードラフト』(カルロス東郷役)に引き続いての東映特撮への参加であり、本作以外にも『有言実行三姉妹シュシュトリアン』や『仮面ライダーJ』など複数の作品に出演。2022年現在は俳優業を休止している一方、脚本家・映画監督として精力的に活動を継続している。