「俺は恐怖の小鳥売りだ。アミーゴ。小鳥は好きか?ハッハッハッハ・・・!」
「俺は6000年もの間、ずっと我慢してたんだよ。必ず最強の戦士に戻ってやる。見てるがいい」
登場話数: 第32話「黄金キックの鬼」
概要
ゴーマ怪人の一人で、6000年前のダイ族との戦いにおける「最強の戦士」・・・だった男。
ソンブレロやポンチョといったメキシカンな衣装をまとった、四肢の生えた巨大な鳥カゴという奇抜な風体をしており、その風体に違わず「アミーゴ」や「アディオス」など、スペイン語混じりの喋りを多用するのも特徴の一つである。
かつての戦いで失われた左足は、現在では散弾銃を仕込んだ義足となっている。散弾銃は義足だけでなく松葉杖にも仕込まれ、戦闘ではこれらを武器とする他、身体から発した炎状のエネルギーを浴びせることで、相手を体中に閉じ込める能力も持つ。その体内には“相棒”と呼ぶ巨大なカラスも飼っており、こちらも戦力として使役する。
怪人態でのどちらかと言えば派手な見た目に対し、人間態は浮浪者のような身なりの傷痍軍人というみすぼらしい姿を取っており、古びたバスを拠点に沢山の鳥カゴを乗せ、時折街中で風船と共に小鳥を売りつつ放浪の日々を送っている。
このように、とても過去に「最強の戦士」であったとは思えぬ現在の暮らしぶりであるが、だからと言って過去の活躍ぶりも「看板に偽りあり」という訳では決してない。
6000年前の戦いにおいて、鳥カゴ風来坊は自らの「黄金の足(※)」を駆使した必殺の「黄金キック」の使い手として、無敵の強さを誇る紛れもない実力者であった。テンションも高く一人称も「僕ちゃん」と、覇気もかなりのものだったのだが・・・いつしかその実力に慢心して酒浸りとなってしまい、それが災いして酔いつぶれていたところをダイ族の戦士の急襲に遭い、自慢の黄金の足を切り取られるという失態を演じてしまう。
このことで自身の最大の武器のみならず、拳士としての地位や名声を一挙に失う格好となった鳥カゴ風来坊は、周囲からの嘲笑を浴びた末にゴーマからも追放され、以来6000年もの間屈辱に耐え忍びながら放浪の身の上に甘んじていたのである。この間一人称は「俺」に変わり、言動も気怠げで陰湿な雰囲気を持つようになったが、それでもなおかつての最強の戦士に返り咲く意志は強い。
(※ ゴーマ怪人の大半に共通する要素である「一つ目」は、この黄金の足のふくらはぎの辺りに備わっており、ゴーマから追放されたのも黄金の足と共に一つ目を失ったことが原因の一つにあるとも考えられる)
作中での動向
放浪の身の上にありながら、なお最強の戦士としてゴーマに復帰する日を夢見ていた鳥カゴ風来坊は、ある日”相棒”をけしかけて少女をさらい、さらにこれを助けようとした将児までも電話ボックスごと自らの元へと運ばせた。
彼等の前で正体を現した鳥カゴ風来坊は、とある事情(※)から亮の助力を得られぬまま苦戦を強いられる将児を難なく打ち破り、少女もろとも体内に捕らえると、一足違いで駆けつけた亮に対して、
「アミーゴ、俺の足が泣いている。帰ったら道士・嘉挧に伝えろ。仲間を返してほしければ、俺の黄金の足を呼んでくれとな」
と伝えてその場を後にした。ここまでの一連の行動は全て、「黄金の足」を取り戻すための取引に向けた前準備であったのである。
一方、その動向を密かに見守っていたザイドスは、酔いどれと侮っていた鳥カゴ風来坊に将児の身柄を引き渡すよう迫るも、対する鳥カゴ風来坊はとっくにゴーマの怪人でないことを理由にこれを拒絶し、さらに義足からの銃撃を見舞って返り討ちにすると、ザイドスに対しても将児が欲しければ黄金の足を持ってくるよう要求を突きつけた。
その後、将児達を取り戻そうと単身挑みかかる亮を、人質の安否をちらつかせつつ返り討ちにすると、再度嘉挧にテレパシーで黄金の足の封印を解くよう迫る。「足を取り返しても人質を解放するとは限らない」と難色を示す嘉挧であったが、苦境に追い込まれた亮を捨て置くこともできず、やむなくとある池に封印されていた黄金の足を引き上げるに至った。
なおも人質の交換を巡って両者の間で駆け引きが展開される中、そこに乱入してきたザイドスによって黄金の足の封印が解かれてしまい、鳥カゴ風来坊は6000年の時を経てようやく本来の姿と力を取り戻した。
「フッハッハッハ・・・! 俺の足と6000年ぶりの再会だ。『黄金キックの鬼』と呼ばれた男が甦ったのだ!」
黄金の足を取り戻した鳥カゴ風来坊は、同時にかつてのハイテンションさまでも取り戻し、約束を反故にして将児達の身柄と引き換えにゴーマに復することを画策。亮や後から駆けつけた他の3人もまとめて「黄金キック」で一蹴する等、手の付けられないほどの強さを見せつけるが、彼らに止めを刺そうと体内から“相棒”を繰り出そうとしたのが災いし、その足に少女と共に将児がしがみついたことで、彼等の脱出を許してしまう。
こうして将児が解放されたことで形勢も逆転し、”相棒”もダイバスターの銃撃で撃ち落とされ、自慢の黄金キックもリュウレンジャーとテンマレンジャーのWキックに打ち破られるなど劣勢に立たされた鳥カゴ風来坊は、2人の繰り出す「天重星・最大重力破」で身動きを封じられた末に、「天火星・稲妻火炎破」を喰らって手痛いダメージを負ってしまった。
やむなく巨大化爆弾で巨大化に及んだ鳥カゴ風来坊は、大連王相手にも黄金キックを見舞うがあっさり受け止められ、大放電に続けての大王剣・疾風怒濤の前にかつての「最強の戦士」も敢え無く敗れ去ったのであった。
「アディオス、アミーゴ!!」
(※ この直前、亮からの頼みとはいえモーニングコール代わりにオーラチェンジャーを私用で使い、ゴーマが現れたと出任せを口走っており、これに腹を立てた亮は直後の「本当の」ゴーマ出現の報せをまともに取り合わなかったのである)
備考
人間態の傷痍軍人のような出で立ちも含め、鳥カゴ風来坊の人物造形や演出には同話数の演出を手がけた小林義明のこだわりが強く反映されており、デザインを担当した篠原保も、小林から事前にハッキリ明確なモチーフを示されたことや、彼が片足という要素に並々ならぬこだわりを見せていたことを述懐している。篠原は鳥カゴ風来坊のデザインについて、「基本的にはモチーフ自体のアイディアだけ」であるとも総括している。
デザイン画稿では体内に青い小鳥が止まっているのが確認できるが、実際の映像作品では前述の通り巨大なカラスに変更されている他、得物として描かれている歪な大剣もオミットされている。この大剣は造形自体はなされており、後にサボテン将軍の得物として活用された。
「マントをまとった人間の中身が鳥カゴ」というコンセプトはルネ・マグリットの絵画『臨床医』が元ネタであると推測される。
演者であるでんでんは、これ以前にも東映不思議コメディーシリーズへの出演で東映特撮とも関わりがあり、本作へは同年放送の『有言実行三姉妹シュシュトリアン』へのゲスト出演に続いての出演となった。
また芸能界デビューのきっかけとして、オーディション番組『お笑いスター誕生!!』での8週勝ち抜きによる金賞獲得の逸話が知られているが、やはり同番組がブレイクのきっかけとなった怪物ランドの赤星昇一郎や郷田ほづみも、でんでんに先んじて本作にゲスト出演している。
関連タグ
トリカゴラー:『電子戦隊デンジマン』に登場する、鳥かごモチーフの戦隊怪人の先輩
サボテンモズー:『大戦隊ゴーグルファイブ』に登場する、メキシカンな要素を持つ戦隊怪人の先輩