東方地獄組
とうほうじごくぐみ
「 弾幕は 地獄であるほど 美しい 」 (『東方地霊殿』パッケージ同梱帯)
東方Projectに登場するキャラクターの内、同作中における「地獄」に深く関係するキャラクターたちによるグループ。
この内でも主に地獄の新体制側や『東方地霊殿』を初登場するキャラクター以外での新体制側と縁もある実力者たちの面々などが本グループを通して結ばれている。
東方Projectにおける「地獄」
東方Projectにおける「地獄」とは幻想郷から見て彼岸の世界である。
広義の地獄は全般的な世界としての「地獄」をはじめ以前に地獄から切り離され後に地上からやってきた鬼たちが築き上げた「旧都」、怨霊たちを封じるため灼熱地獄跡に建設された「地霊殿」などがある。旧都は現行で従来通りの公的機関として機能している地獄と対比して旧地獄にあたる。
また現世から彼岸との間には三途の河があり、至る道筋には中有の道がある。
地獄は魂の輪廻転生に関わる重要な機関であり、閻魔らの所属する「是非曲直庁」などもその一つである。是非曲直庁は死後の魂を裁き、その後の行き先を決定する。行き先の一つが地獄である。
稗田阿求によれば地獄には「 様々な拷問器具 」があるが、地獄自体が財政難であることもあって「 整備は不十分 」である(「幻想郷縁起」、『東方求聞史紀』)。支給品と思しき三途の河の舟も質素で年季が入っている。地獄は三途の河の渡し賃と中有の道で展開されている屋台での収益を収入源としている。
支出で痛手となっているのは(地獄の)「 人口増加に伴う施設拡張 」であるとも。
また地獄はヘカーティア・ラピスラズリが司る世界であり、ヘカーティアは月、地球、異界それぞれの地獄の女神である(『東方紺珠伝』)。
ヘカーティアが文々春新報の取材に回答したところ(『東方文果真報』)によれば、地獄とは本来「 善意の世界が馴染まない者、生粋の悪、本当の自由を追い求める猛者 」といった者がつくりあげている、そういった者達にとって「 自分たちに都合の良い社会 」である。
ヘカーティアによれば「 傍若無人な奴ほど生きやすい世界 」とも。
ヘカーティア曰く地獄の思想は「 傍若無人 」にも通じる「 真の自由主義 」にして、自らの力だけを頼りにして成り上がることも堕ちることもできる「 超実力主義 」。
しかしこれでは地獄の本来の機能である「 人間の更生 」が行えないとして閻魔や鬼神らが「 新体制 」を構築したムーブメントがあり、これが今日の地獄にも繋がる。
地獄という自由社会ではこの動向を受け入れることも拒否することも自由であり、ヘカーティアなどそういった動向も「 気にしない 」者はそのまま地獄にとどまり、受け入れられない者は旧地獄へと去ったり閻魔らとは異なる地獄の建設を試みたりただそれらを傍観していたりと様々な立場がある。
地獄では高い実力を持つ者ほど自立するようになり、より「 アウトロー 」な存在となっていく。ヘカーティアもまた地獄ではアウトローの一角。
ヘカーティアによれば新体制の地獄よりは今日の幻想郷の方が「 自由 」。
外部からの流入さえ許容し、その「 新しい風と光 」も用いながらさらなる活性化、あるは存続を試みる幻想郷を指して、ヘカーティアは幻想郷の可能性を指摘している。
なお、ヘカーティアは文字通りの自由主義・個人実力主義に基づく新体制外の地獄社会、あるいは「 地獄的思想 」を含めすべての可能性を受け入れることで成長を続けようとする幻想郷とはまるで異なる道を往く世界として月の民たちによる月社会を挙げており、前者二者にある外来存在の受容の意思が皆無にして排他孤立的かつ選民思想的な月の都の社会について地獄から見た幻想郷に対する理解と友好の想いとは一転して否定的な姿勢を示している。
この他また広く上海アリス幻樂団作品を見渡すとき、「ZUN's Music Collection」でも「地獄」が語られることがある。同作中では衛星トリフネでダメージを追ったマエリベリー・ハーン(メリー)が療養させられていた間に、「 地獄 」の光景をのぞき込んでいる(「伊弉諾物質」)。
2017年現在でのpixivにおける「東方地獄組」には次のメンバーが描かれている。
キャラクター名 | 初登場作品 | 「地獄」との関連 | 所属する体制 |
---|---|---|---|
小野塚小町 | 『東方花映塚』 | 地獄の民、死神、三途の河の渡し | 新体制 |
四季映姫・ヤマザナドゥ | 『東方花映塚』 | 閻魔、是非曲直庁所属 | 新体制 |
クラウンピース | 『東方紺珠伝』 | 地獄の妖精 | (ヘカーティアの配下) |
ヘカーティア・ラピスラズリ | 『東方紺珠伝』 | 地獄の女神、「統率者」の一人 | (アウトロー) |
この内小町と映姫の二人は、ファンの間では新体制の地獄、是非曲直庁という間柄というだけでなく
広義の「彼岸」に関わる存在として「彼岸組」などの枠組みでも捉えられている。
ヘカーティアは映姫の知るところでもあり、映姫はヘカーティアについて語る際「 ヘカーティア様 」と敬称で呼びかけている。映姫によればヘカーティアは「 地獄の中では悪意の薄い方 」(『東方三月精』)。
上記以外の面々で地獄に関連する面々としては、先述の阿求も御阿礼の子としての次の転生までは閻魔の元で働くこととなっており、公的に本来とは異なる特殊な転生を行うという事も相まって地獄の機関ともかかわりが深い。
クラウンピースなどの妖精は「 大抵の場所にいる 」存在であり、地獄にも存在する。例えば『地霊殿』においても火焔猫燐に協力するゾンビフェアリーが登場している。
クラウンピースは地獄の妖精の中でも強い力を持つ存在である。
なお地獄では有力者たちは主に鬼神を従えることが主であり、妖精を従えることは珍しいもので、映姫はこの人間関係の文脈を通してもクラウンピースと共にあるヘカーティアの個性的な様を見ている(『三月精』)。
その具体的な姿が描かれておらず主に文中等で語られる存在としては、新体制の地獄について寿命を管理する存在として本人の姿などの描写はないものの「水鬼鬼神長」が地獄から幻想郷に派遣されている様子が描かれている(『東方茨歌仙』)。
また魂たちの裁判における裁判長となる閻魔があり、十人の「閻魔王」が裁判を執り行っている。
以前は「閻魔王」は「[十王]]」の内の一角を指すものであったが、人間の増加に伴って業務量が増えたことにより権力を分散しつつ裁判回数(元は七回の裁判と三回の追加審判)も一回にまで減らし、負担を軽減した。
人材募集も行い、全国の地蔵の中からその地蔵が所在する地区での閻魔職希望者を募ることも行っている。閻魔のほとんどは元地蔵で、映姫もそういった元地蔵の閻魔の一人である。
十回裁判が行われていた頃の時代の「十王」は阿求(「幻想郷縁起」、『求聞史紀』)によれば、次のようなものである。個々の名称については概ね実際の仏教における「十王」と同一。
ただし先述の通り東方Project作中では後にこの十王の内で当時最も力のあった「閻魔王」に名称が統一され、権力と業務も分配均一化しているため現行の役割まで実際の「十王」と同一であるかは不明である。
また本リストは下記内部リンク記事(参考1)及び外部リンクページ(参考2)を参照している。
東方Projectにおける十王 | 読み(元の「十王」を参考) | 原典の「十王」における本地(※2) |
---|---|---|
秦広王 | しんこうおう | 不動明王 |
初江王 | しょこうおう | 釈迦如来 |
宋帝王 | そうていおう | 文殊菩薩 |
五官王 | ごかんおう | 普賢菩薩 |
閻魔王(閻魔) | えんまおう | 地蔵菩薩 |
変成王 | へんじょうおう | 弥勒菩薩 |
泰山王 | たいざんおう | 薬師如来 |
等王※1 | とうおう | 観音菩薩 |
都市王 | としおう | 勢至菩薩 |
五道転輪王 | ごどうりんてんおう | 阿弥陀如来 |
※1:「平等王」(びょうどうおう)にあたるか
※2:「本地」(ほんじ)とは仏教の概念の一つ。「本来のもの」、「本質」といったニュアンス。
仏教には、この世界には多様な宗教や信仰があり、様々な神々があるが、それらはいずれも仏や菩薩がこの世に現れる際の姿の一つであり、人々がそれぞれの文化で受け入れやすい形で顕現したものなのだとする解釈の在り方がある。
例えば表面は「○○神」でも中身は「○○菩薩」といった具合である。
このとき「○○神の本質である○○菩薩」を指して「本地仏」という。例えば上記の十王であれば、「地蔵菩薩」(本質)は「閻魔王」(化身)の「本地(仏)」となる。また本地の仏が他の神の姿をもってこの世に現れるを事を「垂迹」(すいじゃく)と呼び、これら一連の仏教的立場をあわせて「本地垂迹説」という。「地蔵菩薩(本地仏)が閻魔王として垂迹する」といった具合である。
習合や個々の宗派・寺院などの歴史的に解釈や立場によって様々な神々が様々な仏・菩薩らと縁を結んでいるため必ずしも仏教界における一対一の統一見解などがあるわけではない。神様いっぱい正体もいっぱいな包容力の高い世界。
ただし「本質は仏・菩薩」で「その他はこの世での仏・菩薩の仮の姿」なので仏教優位の解釈となる。
「東方地獄組」が主に新体制の地獄と旧来からの地獄のメンバーのうち初登場作品では旧都との直接的な関わりが語られていない面々から成るのに対し、主に旧地獄・旧都などに関わる面々としてもグループ構成も見出されている。
例えば「地霊組」は『地霊殿』に初登場した旧都の面々と地霊殿関係者たちを包括するグループ単位である。今日の地獄については東方地獄組と地霊組は地底世界という広義の同一の地域にして新体制側(と支配側・アウトロー組)と旧体制側・自由社会側という隣合わせの関係ともなっている。
ただし地霊殿は怨霊管理という新体制の枠組みでの業務も受け持ってもいる。
地霊殿の面々にまつわるグループ性としては、pixivでは連名のタグである「古明地さとり・火焔猫燐・霊烏路空・古明地こいし」のタグも使用されている。