江ノ電自転車ニキ
えのでんじてんしゃにき
この記事は賛否両論が多い案件です。偏向的、主観的、感情的な内容の記述はご遠慮願います。善悪を決めるのではなく、中立的な立場の記事をお願いします。また、一般人のため、名前や家族情報等の本人が公表していない個人情報は書かないでください。
江ノ電自転車ニキとは、江ノ電の人気列車の横を自転車で走ってしまい、多くの鉄道ファンに写真を撮られた一般人男性のこと。
この時の写真がTwitterで話題になった。なお、男性と鉄道ファンのトラブルについては「龍の口の騒乱」「令和の生麦事件」「撮影戦争」とも呼ばれている。
2021年8月5日23時頃、神奈川県を走る江ノ島電鉄(通称:江ノ電)の人気車両「300形」305編成の定期検査後の試運転が行われた。江ノ島駅~腰越駅間にある「龍口寺前交差点」付近は、路面電車のような区間になっている人気の撮影スポットで、多くの鉄道ファンが綺麗に塗り直されたばかりの同列車を撮ろうと(横断歩道上に並んで)集まっていた。しかし、自転車に乗った地元在住の外国人男性がお目当ての試運転列車と並走する形で現場を通過。写真に彼が写り込んで車両の一部が隠れてしまった上に、陽気にも手を上げて大きく振るような仕草をしたため、撮影の邪魔をされたと思い腹を立てた一部の鉄道ファンが彼を取り囲み、「ふざけんな!」「何時間待ったと思ってるんだ、こんなの金だろ金!」と罵声をあげ、金銭を要求するなどのトラブルに発展してしまった。
その後
この様子はTwitterで拡散され、ニュースにもなったことで一般人にも知れ渡るようになり、トレンドに関連ワードが数日間入るなど良くも悪くも話題になった。
現場当時の殺伐とした雰囲気はさておき、この写真そのものに対しては、「普通の鉄道写真よりもずっと芸術性があって良い」「男性が地域密着型の江ノ電を現していて良い」「男性が楽しそうにしていて良い」等、好意的意見が多く見られた。また、ある意味シュールな光景のため、パロディイラストも描かれるようになったり、コラ画像が作られたりと一種のブームとなる。そしていつしか、この男性は「江ノ電と並走していた自転車に乗ったアニキ」を略して「江ノ電自転車ニキ」と呼ばれるようになった。
後にこの男性は、地元でタコス店を経営していると判明し、撮影を妨害されたと勘違いした鉄道ファンは報復としてグルメサイトに酷評するレビューを多数投稿。それに対して見かねた一部の層が擁護すべく称賛レビューを投稿する対立に発展。流石に見かねたサイト運営にコメントは削除された。
また、本人は更にこれを省略し「ENO-NIKI」と名乗っている。この男性は、後に週刊誌の取材において、罵声を上げた当事者達が店舗に訪れて一覧の騒動を謝罪し、男性側も謝罪を受け入れて和解。ひとまず一件落着となった。
同伴した別の男性がコミケでアクスタをお披露目したいと伝えると、「事情が分からずポーズを取ってしまったことを(撮り鉄の人々に)謝る機会になるなら」と協力を約束し、コミケに売り子として出店した(当該記事より)。
以下に今回の事件における問題点やそれに関連した注意すべき点を挙げる。
鉄道ファン側の問題点
近年、撮り鉄と呼ばれる写真専門の鉄道ファンが、撮影場所を巡り暴力事件を起こす、無断で私有地に侵入する、撮影に邪魔な木を勝手に切断するなどのトラブルを引き起こして、度々ニュースに取りざたされており、撮り鉄へのイメージが低下していた。
有料撮影会などとは違い、今回の場合はあくまで鉄道会社のご厚意によって無料で写真を撮らせてもらっているのに、撮影がさも当然の権利かのように我勝ちにベストポジションを争って、邪魔になる存在に対して罵声を浴びせている。これは明らかなマナー違反である。
いくらいい写真を撮りたいからといって、通行人に罵声を浴びせる、金銭を要求するなどの行為は、迷惑行為どころか立派な犯罪であるので、撮り鉄へのバッシングを疎むのであれば、このような行為も厳に慎まなければならない。横断歩道上の撮影も、道路交通法違反になる可能性があるので思いとどまるべきである。
また、一部の鉄道ファンが男性の店に対して店と関係ない理由での低評価レビューや荒らし行為を実行していることが確認された。当事者であってもなくても、鉄道ファン全体への風当たりを強くするような行為は厳に慎むべきである。
今回の件は道路上のトラブルのため、江ノ電は介入が難しく、対応が必要なときは警察が出動するとのこと。撮影はルールやマナーを守って迷惑を掛けないように楽しみましょう。
外野の問題点
こうした事件では恒例とも言える撮り鉄叩きも起きている。一般的に知られているように、撮り鉄はマナー違反者が多い実態があり、そういった世間からの目や評判を長年無視してきたため、過度な撮り鉄バッシングにも繋がっている。
自業自得としばしば言われる界隈ながら、だからと言って全ての鉄道ファンが悪いわけではないという事実を理解しないのはお門違いである。実際に元の写真を撮った撮り鉄の中には「ハイタッチおにーさん ユーモアのある素敵な外人さんでした」と好意的なつぶやきをしている者もいるため、全てを思慮なく一纏めにしてここぞとばかりに感情的な批判を浴びせる(「撮り鉄は全員障害者」「鉄道ファンは趣味ではなく病気」等)のは、どんなに義憤に駆られた末の発言とて見当違いである。
また残念なことに、男性の行動を真似して似たような写真を撮ろうとしたり、鉄道ファンの撮影を故意に妨害したりする様子を投稿した人もいる。先述の通り、これらの行為はトラブルや事故の原因となるためやめるべきである。
本人はこの件についてこのように述べている。→映像
また、Twitterで話題になっていることも把握してるらしく、Instagramでは本人自身がコラ画像を投稿したりしている他フォロワー数が4万人を突破するなど大きな話題となり、事件が起きた数日後の8月9日には彼のタコス屋に大行列が出来るほどの混雑が起きた。
図らずもこの騒動によって店の知名度が上昇し、今では当時の撮り鉄がタコスを買いに来てくれたり、地元民や遠方からの観光客がはるばるアクスタを購入するために訪れるようになり、結果的に、店舗の認知度や売り上げの向上につながっている部分もあるとのこと。
コミックマーケット99に来場した男性は、取材に「そこはもう触れないでほしいんですよね(中略)私も状況がわかっていなかったし、撮り鉄のみんなに謝りたい気持ちもあるんです」と応じ、売り子として関連グッズの頒布を手伝ったり、記念撮影を希望する大勢の参加者に丁寧に応じたり、混雑を招いたことを周囲のサークルに謝罪し、同人誌を買って回るなど、終始気を遣っていたという(『コミケ99』江ノ電自転車ニキが“鉄道島”へ来て話題に…「みんなに謝りたい」より)。
また、各種メディアにも取り上げられ、台湾のニュースの他、読売新聞のコーナーにも掲載された。
2022年1月2日放送のテレビ東京『この世はご報告であふれてる』でも取り上げられ、後述の自身がパロディされた漫画雑誌と供に登場した。
トラブル1年後の2022年8月5日には、自転車ニキ自身のInstagramにて1周年を祝う画像がアップされ、このようなインタビュー記事も書かれた。
まさかの商品展開
同年9月には、彼が経営するタコス店にてTシャツとパーカーの販売を開始。
更にはLINEスタンプも発売された。ちなみに、LINEの画像編集機能を使えば、好きな列車とニキを組み合わせられる。
同年12月31日には店を休業し、東京ビッグサイトで開催のコミックマーケット99に参加。江ノ電の同人誌などを発行するサークル『イナシュウ』とのコラボで、アクリルスタンド等の新グッズを販売した。
アクリルスタンドの発売はニュースになっており、制作までの経緯なども紹介されている。ニュース記事
パロディなど
- 2021年9月29日に森山直太朗がリリースした「遠くへ行きたい」のSNSキャンペーンとして、「#遠くへ行きたい直太朗ニキ」を開催し、コラージュ画像を10月6日まで募集した。この際、江ノ電自転車ニキとのコラボレーションや、森山直太朗が左手を挙げて自転車に乗った素材の配布が行われた。(参照)
- 週刊少年ジャンプ連載の漫画逃げ上手の若君第39話扉絵にて、江ノ電自転車ニキをパロディしたイラストを掲載、Twitterトレンドに入るなど話題になった。なお、イラストの車両は鎌倉行きの1500形で、ナンバーは架空の1335号車とされている。同作品は北条時行の生涯を描く歴史漫画で、北条時行が処刑された場所が龍ノ口刑場=江ノ電自転車ニキ事件の現場後ろの寺なので、一応作品とも関係がある場所ではある。なお、江ノ電自転車ニキ本人に認知されている模様。
- イブニング連載の金田一少年の事件簿シリーズの最新作『金田一少年の事件簿30th』においては、主人公の金田一一がテスト当日に遅刻した1話の初登場シーンを江ノ電自転車ニキのパロディポーズで飾っている。
- ネコ・パブリッシングが発行する雑誌「鉄おも!」の2022年2月号(第169号)に「でんしゃカルタ」が付録で付いているが、「まちなかをがたごとはしるえのしまでんてつ」の絵札が、江ノ電自転車ニキをパロディしたイラスト(龍口寺前交差点を走る305編成と自転車に乗って手を振るうさぎのキャラクター)となっている。
- アニメ版「ポプテピピック」第2期5話の中で、きかんしゃトーマスの様な顔がついた列車になったポプ子とピピ美の横を、邪神が左手を掲げながら自転車で並走するというシーンがあった。
pixivでは江ノ電自転車ニキを別のキャラクターにしたパロディイラストが多く投稿されている。
彼らが撮影していた「江ノ電300形」は、かつて6編成が活躍したが老朽化にともない新型車両への置き換えが進み、現在は305編成と呼ばれる1960年に製造された1編成のみが残る。旧式の装備を現在も残す最後の昭和レトロな車両として、観光客からも人気がある。前述の通り老朽化が進む古い車両のため、いつ引退してもおかしくなく、検査を受け、再塗装され、試運転する姿は貴重(=次があるか分からない)と、多くの鉄道ファンが集まった。ただし、検査や試運転の日程は非公開で、江ノ電もなぜ彼らが日程を知っていたかは不明とのこと。「検査のためしばらく走らない」という情報は発表されていたので、検査が終了する時期に工事内の様子を見に来て試運転日を予想し、仲間に情報を流したのではないか?と推測されている。
2024年11月11日、305編成の試運転(※車両故障による修理後の点検)が行われたが、「試運転」の表示を出さずに運行した。
江ノ電の親会社である小田急電鉄は、「試運転列車を撮影する撮り鉄による危険・迷惑行為が頻発したため、安全上の理由から試運転表示を取り止める(回送と表示する)。」としており、子会社である江ノ電の305編成の試運転でもこれを実施した可能性がある。
当記事の件だけが直接の原因ではないものの、珍しい表示を取り止めるという形で対策を取られることになった。