概要
1969年~1973年にかけ『週刊少年ジャンプ』で連載された本宮ひろ志の漫画。
『父の魂』を連載中の貝塚ひろしが失踪してしまったため穴埋めとして連載が始まったが、後発組で部数も伸び悩んでいた少年ジャンプを、永井豪の『ハレンチ学園』と共に人気雑誌の座に押し上げた。
いわゆる「硬派学ラン番長」系の漫画であり、ただの喧嘩漫画ではなくビジネスや人情ものの要素もある。また、劇中には梶原一騎作品の露骨なオマージュ・パロディも見受けられる(特にこれ)。
車田正美や原哲夫にも多大な影響を与えるなど、本宮の代表作である。
また、平松伸二も自身のバイブルというべき漫画の3つの内の1つに本作を挙げている。(他の2つは『巨人の星』と『あしたのジョー』)
あらすじ
以下、編の名称は便宜上適当につけたものであり公式のものではない。
立志編
西海(たぶん阪神地域当たり)のガキ大将の戸川万吉(とがわまんきち)が、ケンカを通じて男たちの心を動かし子分や仲間を増やし続けていた。
ある日、脱獄囚から助けたツテで東京のご令嬢・岡野友子と知り合った万吉と子分の銀次は東京に旅行に行くが、その際に日本の財界を牛耳る「水戸のおばば」(メイン画像右上)と出会う。おばばが友子のパパの会社を乗っ取ったことを知った万吉はおばばに談判しに行くが、そこで大人社会の残酷さを突き付けられる。伝説の相場師にして今や全国のホームレスの元締め(なんじゃそりゃ)である坊谷津光五郎に弟子入りした万吉は、安価に家を建てる新技術を開発している中小企業「昭和ハウス」に目を付けて投資し、台風の直撃と商売敵の仕向けたヤクザから実験家を守り抜き、見事に1億8000万の大金を手にする。
赤姫山籠城編
故郷に錦を飾る万吉の増長ぶりに怒った海運寺の和尚は万吉を木の枝から吊るし叱責する。しかし、折しも西海には水戸のおばばと結託した大富豪白川の手先である仲代が向かっていた。仲代は海苔の価格を吊り上げるべく重油を巻いて産地を荒らしていたが、運悪く引火して西海は火に包まれる。この火事に乗じて難を逃れた万吉は、一家を率いて破壊消防を行い村の英雄となるも、仲代をリンチにかけた一件で警察から追われる身となる。
万吉一家1000人は赤姫山に立てこもり警察相手に徹底抗戦を試みるも、2か月が経過し後が無いと踏んだ万吉は、ホームレス8万人も引き連れて一世一代の自首を行う。
特等少年院編
裁判の結果、万吉は特等少年院に、銀次は普通の少年院に送致される。その閉鎖的な環境に不満を抱いた万吉は少年院をシメることを決意。わざと騒動を起こして特等送りになった銀次や新たなゴンタクレどもと共に、万吉は少年院の伝説である「鬼頭政次」の正体を暴き、人権を無視した暴政を敷く教官たちとも和解を果たす。
水戸のおばばの口利きもあり、万吉と銀次は出所を果たした。
西日本統一編
鬼頭の生涯に感銘を受けた万吉は、日本全国の「男」を集めるべく、まずはその足掛かりとして子分たちに西日本の番長たちの統一を命じる。しかし、西海に残った万吉の下に、水戸のおばばの孫娘であるあゆみが現れ、万吉は虞美人に溺れる項羽の如く堕落していく。
西日本統一を果たした子分たちからも詰られた万吉は、それでもあゆみとの恋を選び西海を出るが、その上り列車は暴風雨により停車し、先の鉄橋が破壊されているにもかかわらず下り列車のブレーキが壊れ突っ込んでくることを知る。人の命に代えられるものなどないと、万吉は雨の中汽車を飛び降り、子分たちと一触即発になっていた西日本の悪童どもを従え、猛スピードで鉄橋の修復を行う。尊い犠牲を払いながらも汽車は無事に橋を超え、万吉は仲間の死を乗り越え男として一皮むける。こうして万吉は、西日本全ての不良を従えた。
富士山決戦編
万吉は水戸のおばばに負けを認めさせるべく、天下統一を目指し東へと進む。それは当然、東日本の番長どもにとっては「侵略」以外の何物でもなかった。東日本最強と謳われる東北の番長・堀田は、Dr.佐々木と結託し、東日本の番長たちを従えて万吉一家壊滅のために打って出る。
編集者との対立
少年ジャンプといえば、人気作品がなかなか連載を終わらせてもらえないことで有名だが、本作も連載を終わらせたくない編集部と、区切りのいいところで連載を終わらせようとした本宮との間での対立が発生した。
本宮が万吉を死なせ「完」と記した原稿を、担当編集者だった西村繁男が修正液で槍に貫かれた万吉と「完」の字を消し、連載を無理やり続けさせた。
上述のような経緯から、本宮が自らすすんで描いていなかった12巻以降は文庫版などにも収録されていなかった…が、2018年3月に連載開始50周年記念として電子書籍化が実現した。
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