'83年、菊花賞。
その馬は、「タブー」を犯した。
最後方から、上りで一気に先頭に出る。そうか…
”タブーは人が作るものにすぎない。”
その馬の名は、「ミスターシービー」。
才能はいつも非常識だ。「菊花賞」
2012年JRA CM「菊花賞」編より
※馬齢は2000年までの旧表記で記載する。
データ
本番までの動き
このレースの注目は、春の二冠馬ミスターシービーがクラシック三冠を達成するかだった。
これまで多くの名馬達が三冠に挑み、ことごとく跳ね返され、気付けば前回のシンザン(1964年)から19年の月日が流れていた。
ミスターシービーは前走の京都新聞杯(現GⅡ。現在はダービートライアルだが当時は菊花賞トライアルだった)では単勝1.7倍に推されたがカツラギエースの4着に敗れていた。それでも菊花賞では三冠への期待を込めて単勝2.1倍の1番人気だった。
2番人気はカツラギエース。3番人気は皐月賞4着、日本ダービー3着と堅実に走っていたビンゴカンタ(1979年の皐月賞馬ビンゴガルーの甥)だった。
出走馬
枠番 | 馬番 | 名前 | 騎手 | 人気 |
---|---|---|---|---|
1 | 1 | アテイスポート | 菅原泰夫 | 15 |
1 | 2 | チヨノカチドキ | 猿橋重利 | 21 |
2 | 3 | タマモコンコルド | 村本善之 | 18 |
2 | 4 | アスコットエイト | 五十嵐忠男 | 11 |
2 | 5 | マンノタロ | 河内洋 | 4 |
3 | 6 | ルーキーオー | 南井克己 | 20 |
3 | 7 | リードホーユー | 田島良保 | 5 |
3 | 8 | ウメノシンオー | 増沢末夫 | 10 |
4 | 9 | ミスターシービー | 吉永正人 | 1 |
5 | 10 | ダイゼンキング | 田原成貴 | 6 |
5 | 11 | ワイドオー | 川端義雄 | 7 |
5 | 12 | ドウカンヤシマ | 大塚栄三郎 | 8 |
6 | 13 | ウィンディシャダイ | 加藤和宏 | 9 |
6 | 14 | ヤマノテスコ | 武邦彦 | 12 |
6 | 15 | ブルーダーバン | 柴田政人 | 13 |
7 | 16 | ビンゴカンタ | 岡部幸雄 | 3 |
7 | 17 | シンブラウン | 岩本市三 | 14 |
7 | 18 | カツラギエース | 西浦勝一 | 2 |
8 | 19 | バンブトンゲート | 伊藤清章 | 17 |
8 | 20 | ヤマトストリーム | 松田清春 | 16 |
8 | 21 | ワンアイドダイナ | 田島信行 | 19 |
※ミスターシービーは単枠指定だった。
レース展開
(上記動画の2:52より)
さあ2周目の、2周目坂の下り!これが三冠街道かミスターシービー!
ミスターシービーが現在2番手か!先頭はドウカンヤシマかドウカンヤシマか!
おっとここで!ここでシービーが先頭に立った!ミスターシービーが先頭だ!
吉永が左右を確かめて、ミスターシービー先頭だ!
第4コーナーをカーブする!ミスターシービー先頭だ!
さあミスターシービー19年ぶりの三冠か!ミスターシービー19年ぶりの三冠か!
大地が、大地が弾んでミスターシービーだ!ミスターシービーだ!
内からリードホーユー来た!内からリードホーユーだ!
さあミスターシービー!吉永の左ムチ!ミスターシービー!
ミスターシービーが先頭だ!ミスターシービー先頭だ!ミスターシービー逃げる逃げる逃げる!
史上に残る三冠の脚!史上に残るこれが三冠の脚だ!拍手が沸く!ミスターシービーだ!
19年ぶりに三冠!19年ぶりに三冠ミスターシービー!19年ぶりに三冠馬を達成しました!
驚いた!物凄い競馬をしました! ダービーに次いで物凄い競馬をしました!
坂の下りで先頭に立った9番のミスターシービー! 勝ち時計は3分8秒1!史上3頭目の三冠馬であります!
レース結果
着順
順位 | 枠番 | 馬番 | 名前 | 着差 | 人気 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 4 | 9 | ミスターシービー | 1 | |
2 | 7 | 16 | ビンゴカンタ | 3 | 3 |
3 | 7 | 17 | シンブラウン | ハナ | 14 |
4 | 3 | 7 | リードホーユー | 3/4 | 5 |
5 | 5 | 10 | ダイゼンキング | 4 | 6 |
払い戻し
単勝 | 9 | 210円 |
---|---|---|
複勝 | 9 | 140円 |
複勝 | 16 | 250円 |
複勝 | 17 | 720円 |
枠連 | 4-7 | 400円 |
その他・記録など
ミスターシービーはシンザン以来19年ぶりとなるクラシック三冠を達成。
ジャパンカップと有馬記念には出走しなかったが、最優秀4歳牡馬と年度代表馬を受賞した。
ミスターシービー不在の有馬記念を勝ったのは、4着のリードホーユーだった。
一方2番人気に推されたカツラギエースは下から2番目の20着に大敗した。
なお、シービーは向こう正面、いわゆる京都競馬場の坂の上りでスパートをかけて4コーナー先頭に立つという、「京都の坂はゆっくり下る必要がある」というセオリーを無視したもので、管理した松山康久調教師は自席で「何をするんだ!!」と慌てふためいた逸話が残っている。
なお、このミスターシービーの大胆不敵な菊花賞勝利から29年後、しかもこの記事上部にあるCMの流れた年に、ある一頭の芦毛の暴れ馬がシービーとほぼ同じ3コーナー手前からの超大まくりという常軌を逸したロングスパートで2冠を達成した。
時代が変われど、才能は、いつまでも非常識である。
関連タグ
【前回】1982年(第43回) 優勝:ホリスキー
【次回】1984年(第45回) 優勝:シンボリルドルフ※無敗で三冠達成