あれは誰だ 誰だ 誰だ
あれは蟹座 デスマスク デスマスク
嫌われ者の名を受けて 聖衣を捨てて 戦う漢(おとこ)
蟹座諸君、君たちは覚えているか?あの忌まわしき伝統、そう『星座カースト制度』の事を。
週刊少年ジャンプにて1986~90年まで連載された『聖闘士星矢』には、星座は重要な役割を果たし、主人公たち青銅聖闘士に立ち塞がる絶対的存在にして後の支援者となる、黄道12星座を象った黄金聖闘士は、時として主人公らより多くの支持者を得ることになる。
圧倒的なカリスマ性と強さを見せつけた双子座、
神に近い大いなる能力でその星座に生まれた男子の希望となった乙女座、
主人公たちの指導者として死した後も助力を続けた射手座
その弟で、猛き心を宿し、外伝作品においては主人公に抜擢された獅子座
冷徹非情に見えるも、弟子に対する思いやりは深く、誰よりも温かい心を秘めていた水瓶座
主人公らの闘志や友情から奇跡が生じた事で、自ら負けを認めて戦いの結末を見守り、その後は良き協力者となった牡牛座と蠍座。
武骨で好戦的だが、聖闘士としての義理堅さや忠誠心の篤さに誇りを持っていた山羊座
序盤こそ戦いの場面は存在しないが、常に主人公らを支援し、実は物凄い戦闘力を秘めていた牡羊座と天秤座
…と、彼らはその星座に生まれた読者の小宇宙の中で君臨し続けた。
しかし、勝者もいれば敗者もいる。日の当たらない星座に生まれてしまった者は、星座カースト制度により理不尽な扱いを強いられる事になった。
特に魚座のアフロディーテと蟹座のデスマスクの扱いの悪さと悲惨っぷりは飛びぬけていた。彼らは正義を守る至高の存在でありながら、己の意志で悪玉に加担し、冥闘士として蘇生した後は(演技だったとはいえ)みっともない姿をさらしてしまった。
恵まれたルックスや気品ある振る舞いから魚座のアフロディーテは何とかギリギリ持ちこたえたが
『あじゃぱー!』『足の骨が折れたー!』『マンモス(宇宙的に)あわれな奴』と珍言を残し、黄金聖衣から見放されたり、冥衣を纏って再登場した時は主人公から一方的にボコられ『ホントの蟹みたいに泡吹くまでやってやるっ!』と啖呵を切られた蟹座のデスマスクは、ヘタレな事この上無しであった。
「やーいwwwwお前の星座、蟹座wwww」と小学校時代にからかわれた者もいるだろう。この世に神はいないのか?
積尸気アローは超音波 積尸気イヤーは地獄耳
しかし時が経ち、21世紀以降に作られた外伝では蟹座の地位はある程度向上している。
「エピソードG」では強い悪党として巨人族(ギガス)をあっさり仕留めた若かりし日のデスマスク(当時16歳)が登場し、
さらに「ロストキャンバス」においては、先代の蟹座であるマニゴルドが、師匠にして当時の教皇でもあるセージと協力し、冥王ハーデスの側近であるタナトスを封印した。
特にマニゴルドとセージの戦いは、ロストキャンバスにおいても屈指の名シーンと評判であり、少年期に辛酸をなめた多くの蟹座読者は感動のエールを送った。
積尸気ウイングは空を飛び 積尸気ビームは熱光線
更に時はめぐり、2010年代。
ロストキャンバスとは別時間軸で物語が進められる「ネクストディメンション」には、先代の蟹座であるデストールが登場。マニゴルドとは真逆な意味で話題をかっさらっていった。
かなりの実力を持ち合わせるが、かのヒドラの市並みに奇抜な見た目のオカマで日和見主義者、そしてかつての「あじゃぱー!」を思い起こさせるコメディリリーフというキャラに再び星座カースト制度の脅威が鎌首を上げてきた前兆を感じ取る読者も多かったが、それは杞憂であった。実際のデストールは人(特に男)を見る目は確かで義理人情にも厚く、更にはあの単独行動大好きなフェニックス一輝をも従わせる人徳の持ち主であったのだ。
え?でも美形じゃないから嫌だって?贅沢言うな。
旧作TVシリーズの続編である「聖闘士星矢Ω」では蟹座のシラーという次世代の黄金聖闘士が登場し、軍神マルスや聖なる魔女メディアの加護によるものか、蟹座の黄金聖衣は外れる事はなかったが、セブンセンシズに目覚めたばかりの鷲座のユナの一撃を食らってマグマの海に蹴り落とされ、次世代黄金最初の戦死者となってしまった。
Ω二期においては、蟹座・水瓶座・魚座のキメラ型防具「フォトンテクター」を纏う、武神光臨剣のガリアという女幹部が現れ、他の幹部たちと比べるとかなりショボイ退場をしてしまった。
そしてΩ放送終了から暫く経って公開された聖闘士星矢 LegendofSanctuaryでは、3DCGで描かれたニューデザインのデスマスクが登場。蟹座のネタキャラ化といじられ度上昇に拍車をかけてしまった。
巨蟹宮でのミュージカル、黒パンツ一丁姿、そして紫龍の廬山昇龍覇でマグマの海に落下と、明らかにお笑い枠としか思えない活躍を披露してくれた。
・・・蟹座が一体何をしたというのか?
蟹座の力 身に着けた 正義の聖闘士 デスマスク デスマスク
だが蟹座に、大いなる転機が訪れた。
2015年春よりWeb配信が始まった「聖闘士星矢 黄金魂」は、映像媒体としては初の黄金聖闘士のみを主役とした外伝ストーリーである。
ハーデス冥界編終盤、「嘆きの壁」の破壊のために散っていったはずの黄金聖闘士たちが、何者かの干渉により新たな命を得てアスガルドに復活。デスマスクもまたその一人であった。
昼間から酒を飲んだり借金してまで博打三昧の日々を送り、リフィアからもこんな人でも黄金聖闘士なの!?と呆れられ、あまつさえアイオリアからの共闘の申し出を断るなど奔放で人間臭い生き方を選んだように思われていたが、実は博打で手に入れた金の半分は、アスガルドの商店街にて、たった一人で弟妹を養いながら健気に働く女性・ヘレナの病の治療のためにコッソリ捧げていた。(但しヘレナの弟妹からは、その酒臭さからバレバレであった)
ヘレナとの出会いは、彼をそれまでの冷酷非情な人物から情や愛を優先する人物に変えていた。
またアイオリアからの申し出を断ったのも、未だに自分が蟹座の黄金聖衣から許されておらず、戦う上で同胞の足手まといになるのは避けたいという彼なりの配慮であった。(少なくともそれに気づいていたのはアフロディーテのみである)
しかしヘレナがファフナーに浚われ、ヘレナ救出に向かったアフロディーテがアンドレアスに敗れてユグドラシルに聖衣共々囚われ、そしてヘレナもデスマスクの前で息を引き取ってしまう。
これまでの自分の不甲斐無さをアンドレアスから指摘された時も一切否定しなかったデスマスクだが、ヘレナの存在が自分を変えたと訴え、純粋に正義のために戦うことを誓った時、蟹座の黄金聖衣が再び彼の身に装着され、アイオリア、アルデバランに続き、三番目の神聖衣覚醒を成し遂げた。
「ハッ!。こんな俺と、また一緒に
戦ってくれるっていうのかよ。
キャンサー!!」
黄金魂のデスマスクは、まぎれも無く地上の愛と正義を守る黄金聖闘士である。
…星座カースト制度崩壊の日は、そう遠くないのかもしれない。
今日もどこかで デスマスク 明日もどこかで デスマスク
生やしていた無精ひげを剃り、自身を変えてくれたヘレナの家に別れを告げ、ユグドラシル内部へ単身乗り込む。知恵の間「スヴァルトアールヴヘイム」にて、ムウと交戦中していたファフナーに対し、半ば乱入する形で対峙。ムウに「後でまた追いつく」と告げ、先を進ませた。
積尸気冥界波でファフナーを黄泉比良坂へ落とすも、黄泉比良坂を歩くヘレナの弟妹達を盾にしたファフナーから一方的に甚振られ窮地に追い込まれる。しかしヘレナの弟妹達から励まされ、再び奮起。
「どんなに小さくても死んでいい命は無い。あいつら(ヘレナとその弟妹たち)がそれを俺に教えてくれたんだ!」と、十二宮時代の邪悪さを捨て去り、純粋に正義へと目覚めた事を主張し、小宇宙を極限まで高めて神聖衣を発現させた。
そして新技・積尸気冥柩波をファフナーに撃ち込み、「生きる価値も死ぬ価値もない」とファフナーを黄泉比良坂に(顔以外を)生き埋めにし、死者に踏まれながら生と死の狭間の世界で未来永劫苦しませるという皮肉を込め、勝利した。
しかし、先のアンドレアスより受けたダメージ、続いて黄泉比良坂にてファフナーから受けたダメージ、更には小宇宙を極限までに高めて神聖衣を発動させたことによる過度な負担により、その命は風前の灯となっており、知恵の像を破壊した後は、「悪いなムウ。後から追いつくと言ったけど、俺ちょっと疲れたぜ。」と自嘲しながら力尽きた。
怨霊を操りし正義の漢、デスマスクよ…永遠なれ!
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星座カースト制度 安定の蟹座 マニゴルド デストール 蟹座のシラー ガリア
聖闘士星矢 ロストキャンバス ネクストディメンション 聖闘士星矢Ω LegendofSanctuary
デビルマン/不動明:中の人繋がり。…惚れた女性のために正義に目覚めた。
※ネタバレ注意
実は、ファフナーを倒した後ユグドラシルに取り込まれたが、アフロディーテが自身も含め、取り込まれた黄金聖闘士達を仮死状態にしていた為、完全に死んではいなかったのだ。そして、他の黄金聖闘士達と共にロキとの最終決戦に挑む事になる。