※イラストが主役ロボットSOME-LINEである。
鉄甲巨兵SOME-LINEとは吉岡平原作のスーパーロボット小説である。
作品解説
マジンガーZを始めとするスーパーロボットアニメ(特に長浜ロマンロボシリーズ)、漫画、アニメ、ドラマ、映画へのメタ発言満載のオマージュ&パロディを見せつつも、ロボットアニメにありがちな矛盾と破綻を逆用し、SOME-LINE強化の予算を日本政府に説明し、主催者が国会で答弁する等、新たな切り口を見せた作品。本作でも作者独特のミリタリー描写は健在である。
敵が単なる宇宙規模の不動産企業でしかなく、地球侵略の理由も新たな土地を手に入れるためであった。終盤はある事が原因で倒産の憂き目に遭う。
物語
198X年、ハドソン湾に巨大なネコの死骸が浮き、ホワイトハウスとクレムリンは巨大なトラックが衝突し壊滅した。これは宇宙からの不動産企業・ツイミ不動産の仕業であり、未開の惑星・地球を強引に買収し、他の惑星に売り飛ばそうとしていた。
自衛隊の派閥や人事で防衛長官になり、引退後の年金を目当てにしていた小柴防衛長官の人生は一夜にして狂ってしまう。ツイミ不動産の作った怪物•地上げ獣に対抗出来るのは飯田博士が建造したスーパーロボット・SOME-LINE(サムライン)のみであったが、開発者である飯田博士は失踪しており、弟子の秋葉原博士が管理することになる。
そして、事もあろうにSOME-LINEのパイロットには問題児ばかりの高校生の少年少女が選ばれた。
こうして、SOME-LINE対ツイミ不動産製地上げ獣との戦いが始まった反面、小柴防衛長官はSOME-LINEのライナーチームに振り回されるのであった。
登場人物
キャストはCDドラマから。
ライナーチーム
- 利根木鷹彦(とねぎたかひこ)
CV:緑川光
東京都出身。元・ラグビー部キャプテン。ライナーファルコンのパイロット兼SOME-LINEのメインパイロット。
単純だが熱血漢。
- 米原尚昭(よなばるなおあき)
CV:置鮎龍太郎
沖縄県出身で空手部主将。ライナーコンドルのパイロット。沖縄県民なので本国の住民を『ヤマトンチュー』と呼んでいる。
果代の過失が原因で脳障害となり、その後の戦いで致命傷を負ったこともあり終盤に死亡する。
- 伊東果代(いとうかよ)
CV:天野由梨
静岡県出身。弓道部員。ライナーアルバトロスのパイロット。
美人であるが、非常に性格はキツイ。
- 横山美猫(よこやまみねこ)
CV:本多知恵子
山形県出身。全日本高校女子将棋チャンピオン。ライナーストークのパイロット。
果代の性格がキツすぎるため、性格重視で選ばれた。果代ほどではないが美人。
後に、リーンと思いを寄せ合うようになる。
- 山田保(やまだたもつ)
CV:田中真弓
北海道出身でライナースイフトのパイロット。
コンピューターに強いが性格はかなり悪く、余計なひと言を言っては周囲の人間をキレさせ、ボコされるのがお約束。ギャグ補正が常時かかっているようなキャラのため、たいてい次の回で復活する。
尚昭の死の前後にもいらんことを言って周囲を怒らせまくった(だけでなく、ギャグ描写込みとはいえ尚昭の生命維持装置を切ろうとした)ため、完全にキレた一同に半殺しにされ、パイロットから降ろされた(この時ばかりはギャグ補正でも復活できなかった)。
- 秋葉原ミナミ(あきはばらミナミ)
秋葉原博士の妹。香川県出身。メンバー唯一の中学生。ライナーロビンおよびライナーフェニックスのパイロット。
ノリノリでパイロットになったが、兄の悪ノリには時々ついていけなくなることも。
- カメリア・ゲルトリンク
飯田博士のライバルだったジョナサン・ゲルトリンク博士の孫。金髪の巨乳美女。
祖父の遺したカラミティー・ジェーンに搭乗して戦う。
祖父がライナーチームを助けるために戦死したため、当初は彼らに敵愾心をむき出しだった。
カラミティー・ジェーンが中破したことと保が事実上チームを解雇されたため、彼の代わりにライナーチームに入る。
- 小柴苅穂(こしばかるほ)
小柴防衛長官の娘。両親は離婚しており、母親に引き取られた(その割に姓は変わっていないが……)。
父の死後、極秘裏に予備パイロットとしての訓練を受けており、死亡した尚昭の後を継いでチームに入る。
これにより、ライナーチームは鷹彦以外女性というハーレムチームと化した。
太陽無限力エネルギー研究所
- 秋葉原石丸博士
CV:大塚芳忠
27歳。ロボット工学の権威にして飯田博士の一番弟子。天才であるが、性格はオタクな上に腹黒い。
- ミホ・アザミ
秋葉原博士の秘書。日系三世。
- 小柴防衛長官
防衛長官。常識人だが防衛長官としての能力は低い。これでも元空自のエースパイロット。
第18話で娘を助けるために死亡。
- 沢井三尉
小柴の秘書。
- 黒眼鏡部隊
内閣調査室のエージェント。本編では2名殉職し、黒眼鏡3号のみ最後まで生存した(作者が半ば存在を忘れていたため)。
ツイミ不動産
- ツク・リーン
CV:松本保典
地球店支店長 マキター専務から出世を条件に派遣されるが、実は両親が義理の育ての親で、マキター専務とアーカッツ常務の非嫡出子だった事を終盤に知る。自分をフォローしようとしたマキターが違法な損失補填までしたことですべてを失い、せめてものケジメにSOME-LINEと最後の戦いに挑む。
- ツムラー
アーカッツ常務から退職後の家族の世話を条件に単身赴任で地球へ派遣される。しかし、真の目的はリーンの失脚、または殉職を見届ける様、アーカッツから命じられた苦労人。
次第にリーンのことも評価するようになっていくが、半ばアーカッツに切り捨てられる形で戦死する。
- サト・ミオ・ガワー
CV:島津冴子
リーンの秘書だが忠誠心はほぼゼロ。終盤でリ-ン達についていけないと考え、見合い相手との寿退社という形でツムラーの死の直後にリーンのところから逃げる。その際、サト・ミタ・カダーに名を改めている。 ツイミ不動産側キャラクター唯一の勝ち組。
- アルフォンゾ・フッカー
査察官で死亡フラグを立てまくり見事に戦死する。実はガワーの元カレ。
- シュミラ・カナン
終盤にマキター専務がリーンを助けるべく派遣。実はリーンと同じマキター専務の非嫡出子で、リーンの妹に当たる。(この事でマキターが如何に貪欲で好色な男かが判る反面、実母のアーカッツとは逆に息子のリーンを気に掛けていることも窺える)リーンに真実を告げ、孤立無援のリーンを助けようとしたが、倒産による暴徒と化した元従業員に襲われ、リーンを庇い帰らぬ人となる。
- アーカッツ常務
一言で言えば腹黒い女狐で、実子のリーンにも冷淡であった。マキターとの不倫の過去を揉み消すべく、非嫡出子リーンの失脚、または抹殺を望んでいたが…そのリーンに会社を潰されるとは夢にも思わず、結果として不肖の息子に野望を潰えさせられた。
- マキター専務
ツイミ不動産の重役。アーカッツとは対立している。実は彼の私生児だったリーンには目をかけていたが、危機を助けようと違法な損失補填までしたことで自分もリーンも破滅した。
- 飯田博士
秋葉原博士の恩師でSOME-LINEの開発者。ツイミ不動産にうな重で買収され、敵に寝返ってしまう。マッドサイエンティストであり、所謂『ゴッドシグマ』の風見博士的ポジションの人物。
横柄な言動が多いためリーンたちには嫌われており、最終的には彼らに見捨てられる形で死亡する。
その他
- 丸山秀宗(まるやまひでむね)
冶金学の権威。秋葉原博士のと同様に飯田博士の弟子。岡山暮らしが長いため岡山弁が染みついている。
雷光剣の生みの親。外伝にも登場する。
- ジョナサン・ゲルトリンク
飯田博士のライバル。ペィスコ・ビル及びカラミティー・ジェーンの制作者。
登場メカ
SOME-LINE(サムライン)
5機の航空機型のLINERメカが合体するスーパーロボット。装甲は特殊合金S。動力源は太陽エネルギーで光触媒を基にプラズマ変換し起動する。合体コードは「レッツ、LINE-ON(ラインオン)」。
身長114m・体重1100tと言わずと知れたアレの倍である。しかし、合体前のメカの総重量は300t強であり、何故合体すると3倍以上に重くなるのかは謎(異次元から質量を持ってきているのだろうか?)。
当初から戦闘用として開発しているにもかかわらず、開発中に飯田博士の資金が底を尽いてしまったため武装が施されていなかった。しかし軍資金の目途がついたため回が進むにつれて日本刀型の雷光剣をはじめとして多彩な武器が装備されていく。
重量の関係上自力で飛行できるほどの推力がないため、当初は合体すると飛行できなかったが、追加メカのライナーフェニックスと合体することで飛行可能となる。
また、音声入力型武器管理システムを採用している関係上武器名を叫ばないと武器が使用できないため、操縦者には羞恥心がある程度欠如していることが推奨される。
最期はリーンの駆る最後の地上げ獣・カナカナとの月面での対決で相打ちとなり、カナカナと共に爆散した。その際鷹彦たちはコクピットカプセルで脱出しており、無事帰還している(明言はされていないが、秋葉原博士が操縦するライナーロビンに回収されたと推測される)。
ライナーメカ
SOME-LINEを構成するマシンでこの状態でも戦闘能力が高い。ブースターを装着すれば宇宙空間も飛行可能で、短時間なら水中でも行動できる。
ライナーファルコン
全長25メートルの戦闘機。全備重量15トンと最も軽い機体。パルサージェットエンジンを内蔵し、最大速度マッハ5まで出せる。合体時に頭部になる。
武装はパルスレーザー機関砲2門と最大8発の空対空ミサイル。最大11トンの爆弾やロケット弾を搭載しての対地攻撃も可能。高機能ノズルを使うことで急旋回可能なほどの機動力をもつ。
ライナーコンドル
全長33メートル、全備重量28トンの攻撃機。合体時には肩と腕になる。
飛行速度は最大マッハ3。武装は大口径対地用パルスレーザー機関砲1門。機体各部のハードポイントに20トンもの爆弾や空対地ミサイルを装着することが可能。
ライナーアルバトロス
全長51メートル。基本重量は80トンだが全備重量では200トンを超える。マシンの中では最も重いが飛行スピードはマッハ1を超える輸送機。合体時には胴体部となる。
装甲は5機のメインメカの中でもっとも厚い。輸送機ということもあり下面に輸送用のポッドを搭載している(合体時は切り離される)。ポッドのペイロードは150トンで、物資を運搬したり燃料を積んで他のメカに空中給油することも。爆弾やミサイルも搭載可能。寒冷地での任務では居住地としても利用された。
ライナーストーク
全長48メートル、全備重量100トン。合体時には腰と脚になる。
マッハ2の速度を持つ重爆撃機で脚部にあたる箇所に80トンもの爆弾を搭載可能。防御用の銃座もあり、自動で旋回、迎撃が可能。下面から無数のミサイル・爆弾を投下できる。
ライナースイフト
全長28メートル、全備重量35トンの電子偵察機。飛行速度はマッハ4。合体時には2つに分かれて足首になる。仕様上左右にコクピットがあるが、通常は右に搭乗する。
強力なレーダーを搭載しており索敵能力が高い。固定武装は無いが、オプションとして外付けのミサイルポッドを取り付け可能。
ライナーロビン
全長22メートルの小型偵察メカで指揮系統担当。この機体のみ合体構成機ではないが、エネルギー供給の役割もあるため、臨時的な合体機能がある。飛行速度はマッハ3。アルバトロスほどではないがペイロードも確保しており、複数人搭乗することも可能。
武装は小型の多目的ミサイルのみ。本来は秋葉原博士が搭乗し現場での作戦指揮を執る予定だったが、妹のミナミが代わりに指揮を取ることとなり、なし崩しにパイロットになり、鋼鉄双葉山に苦戦するSOME-LINEが反撃する切っ掛けを作るという快挙を成し遂げた。
戦闘に使われたのはこの一度きりであり、以降はミナミがライナーフェニックスに乗り換えたために出番が無くなり、彼女が故郷の中学校に通学するために使用されている(上記のように、最終決戦の裏で使用した可能性があるが)。
結果的に唯一破壊されなかったライナーメカである。
ライナーフェニックス
SOME-LINEを飛行させるために開発された、全幅120メートルを超えるステルス機タイプのマシン。背部に合体することで飛行可能とするだけでなく、出力・武装強化もされる。合体前は最高飛行速度マッハ3だが合体後はマッハ5を超える。この機体のみ秋葉原博士が開発したもの。合体コードは「フェニックス・クロス・スクランブル・イン」。
翼部はウェポンベイを兼ねており、劇中では空対空ミサイルであるフェニックスミサイルや超合金S製巨大手裏剣であるライナー手裏剣などを搭載している。
地上げ獣
単に地球上の生物や細菌を巨大化させただけのもの(初期。コントロールシステムは埋め込み済み)や完全に新造したロボット等多種に渡る。第一話で秋葉原博士が勝手に命名…のはずだが、ツイミ側も地上げ獣と呼んでいる(恐らく地球人の呼び名を逆輸入したものと考えられる)。
機体名はリーンが名付けているが、ゴキブリ型の「ゴキゴキ」、ゴライアスオオカブトムシの「ゴラゴラ」など、センスはイマイチ。ラスボスのカナブン型地上げ獣「カナカナ」はボルテスVの最終回に登場したラスボス・守護神ゴードルのパロディである。
ペィスコ・ビル
ゲルトリンク博士が開発した西部劇のガンマン風のスーパーロボット。パワー重視の重量級。
ハワイでSOME-LINEのピンチに出撃するが、調整が不十分だったためオーバーヒートを起こし、地上げ獣を道連れにキラウエア火山に落ちて爆散した。
カラミティー・ジェーン
ゲルトリンク博士が開発したスーパーロボット。ペィスコ・ビルを女性型にした見た目だが、こちらもパワー重視。孫のカメリアにより完全に調整してあるため、ペィスコ・ビルと同等の性能に加えて完成度も高い。
終盤で中破したたことで劇中から退場した。
鋼鉄双葉山(こうてつふたばやま)
太平洋戦争前夜、飯田博士が当時の日本のために設計したロボット。当然一笑に付された(一応、当時は機体を製造する余裕がなかったという理由はある)が、後にツイミ不動産に寝返った飯田博士の手で製作された。
SOME-LINEとは違い、リモコンによる遠隔操作型。武器は旧日本軍の銃火器をスケールアップしたものと、胸部のパラボラ型スピーカーからの殺人音波「紫外音楽」。
初戦はSOME-LINEを窮地に追い込んだが紫外音楽のスピーカーが破壊された上機体が中破したため撤退。改修後は鋼鉄双葉山改になるが、SOME-LINE側の方がより強くなっていたためボコボコにされる結果に。
なお、初戦時は装甲はSOME-LINE同様特殊合金Sと表記されていたのだが、改では素材が調達できなかったのか(もしくは作者が忘れていたのか)ただの鉄製になっている。
出版
- 本編
富士見ファンタジア文庫で全4巻が発売されたが、現在は絶版に付き入手困難であり、復刊が望まれる。全26話。
- 巨人たちの挽歌
劇場版という扱いで本編の後に発売された外伝(こちらも入手困難)。時系列は3巻と4巻の間なのだが、すでに死亡しているはずの小柴防衛長官が生きていたり、尚昭の体調不良の描写がないなど本編と設定に矛盾がある(「劇場版」だからとあえて設定を無視した模様)。ラストは完全に某映画であり、後継機『超甲騎兵 SOME-LINE・R』が登場し続編が出ることが示唆されていたが、結局続編は出なかった(巻末の次回予告で作者が「え、聞いていないですけど?」と言っていたので、最初から出さない予定だったらしい)。
- ドラマCD
1994年に発売されたコンピレーション・アルバム『吉岡平ワールド』内に収録されている(やはり入手困難)。アニメ化も視野に入れていたが、あまりにひどい設定だったために見送られた。
余談
- 本作は全3巻で完結させるつもりだったが、1話のボリュームが徐々に増えた為、もう一巻追加となり、その事は素直に詫びた。第1巻と最終巻と比べると話のボリュームが増した事が判る。
- 第1巻あとがきでは「最終回でSOME-LINEのピンチにグレートSOME-LINEが出たりはしません」と書いていたのだが、上記の通り外伝で堂々とやっている(「最終回じゃなくて劇場版だから」とのこと)。なお、実は本編最終回も闇落ち(?)した秋葉原博士が(コミカルに描かれてはいるが)世界征服を宣言するという続編が出てもおかしくない終わり方だったりする。
- 小柴防衛長官は小市民にして常識人として描かれ、日本の官僚を風刺しているが、実は史上最凶の防衛長官を反転させたキャラクターであり、作者のイメージした声優もその中の人であった。執筆終了後に本当に似たような人物が出てきた為、作者はどう思ったろうか?
- SOME-LINEが倒したバイオタイプ地上げ獣の死骸は捕鯨業者が解体・処分していると言う裏設定があり、特撮ヒーローやスーパーロボットアニメにありがちな矛盾を解決している。因みに作品世界では捕鯨業者が一時的に儲かったそうである。
- 作者は主人公の鷹彦も最後は死亡退場させたかったらしいが、結局はいい思いをして生存し完結する。意地悪な言い方だが、もしも執筆がジェットマンの最終回以後辺りにズレていたら、結城凱みたく全てが終わった後に敢えなく死亡といったラストになっていただろうか?(作者がジェットマンの結末を知っていたら悔しがったかも知れない。)
関連タグ
無責任艦長タイラー アイドル防衛隊ハミングバード:吉岡平原作のライトノベル作品。この2作はアニメ化されている。