概要
1974年7月25日に「フィンガー5と遊ぼう!東映まんがまつり」の一枠として公開されたアニメ映画。
演出(監督)は西沢信孝。脚本は高久進。現場プロデューサーは有賀健と旗野義文。西沢の映画初監督作品である。
前年の『マジンガーZ対デビルマン』に続く『マジンガーZ』劇場用オリジナル作品第2弾であり、「劇場版マジンガーシリーズ」の第2作目でもある。
『マジンガーZ対デビルマン』のように、本作もテレビ版最終回の展開を一月ほど先取りした内容になっており、 これまで苦戦しながらも機械獣軍団を打ち倒してきたマジンガーZが新たなる敵「ミケーネ帝国」に極限まで追い詰められる様は当時のファンに衝撃を与えた。
しかも、予告編やテレビマガジンなどの雑誌でデザインは公開されていたものの名前は不明だった「謎のロボット」がマジンガーZの危機を救う展開まで用意されており、 劇場に集まったファンは戦闘獣を薙ぎ払う謎のロボット「グレートマジンガー」の勇姿に更なる衝撃を受けることになったのだった。
また、作劇側にとっては当時には前例が無かった『続編』への試金石も兼ねており、グレートマジンガーをどうやって登場させるかに苦心した作品である。
この映画の成功は以後のアニメ史上に『続編』を根付かせる結果ともなり、大きな功績を残した。
同時に肝心の『グレートマジンガー』と言う作品の運命に暗い影を落としたという事実もあるため、功罪入り交じる作品でもある。
本作のインパクトの大きさゆえか、後年のロボットアニメやヒーローものにも本作のオマージュと思しき描写が見られるものが複数存在する。
なお、本作の焼き直しとも言えるオリジナルビデオアニメ『マジンカイザー死闘!暗黒大将軍』は流石に主役ロボットが無双過ぎてファンからの評価は良くない。
ちなみにタイトルには「対」の字が入っているが、本作だと暗黒大将軍は前線には出てこないので、『マジンガーZ対獣魔将軍』か『マジンガーZ対戦闘獣軍団』の方が内容に近いかもしれない。
また、劇中において暗黒大将軍にZのことを尋ねられたゴーゴン大公が「Dr.ヘルが散々苦戦させられたロボット」と報告するシーンがあるため、本作は時系列的にDr.ヘル一味を壊滅させた後のエピソードであることが分かる。
(なお、本作の劇場公開当時に『冒険王』にて連載されていた桜多吾作版では、メディアミックスの一環として本作のコミカライズ版が展開されているが、そちらはDr.ヘルとの最終決戦直前という時系列になっていた。)
あらすじ
ドクターヘル一味を壊滅させ、平和を謳歌する兜甲児や弓さやか達だったが、ある日突如として世界各国の主要都市を謎の巨大ロボット群が襲撃。彼らこそミケーネ帝国の支配者である暗黒大将軍が送り込んだ戦闘獣軍団の先発隊だったのだ。
ニューヨーク、ロンドン、パリ、モスクワを壊滅させた戦闘獣軍団の魔の手は日本にも伸びていた。東京襲撃の報告を受け出動したマジンガーZだったが、新たな敵・戦闘獣の攻撃力は機械獣を遥かに凌駕しており大苦戦を強いられる。
何とか敵を退け首都の壊滅は食い止めたものの、Zもかつてない大ダメージを受ける結果に終わった。さらに光子力研究所も襲われダイアナンAは大破、シローも生死をさまよう重傷を負ってしまう。シローへ大量の輸血を行ない最悪のコンディションの甲児と損傷の癒えないZの前に獣魔将軍が率いる戦闘獣軍団が迫る。
死を覚悟して出撃した甲児の必死の防戦も空しく、救出しに来たボスボロットも一蹴されてたちまち満身創痍と化すマジンガーZ。絶体絶命のピンチに陥った刹那、偉大な勇者グレートマジンガーが颯爽と現れる。
登場人物・キャスト
主要キャラクター
主人公にしてマジンガーZのパイロット。本作では亡き祖父と父の写真を前に戦闘獣への恐怖心を漏らしつつも、 人々を守るためにシローのプレゼントのオルゴールを手に出撃する一人の人間としての弱さと強さの同居が描かれた。
その一方で、「Zとミケーネの間に横たわる戦力差」「死にかけるシロー」「連戦と輸血による消耗」の三重苦に苦しめられながらもテレビ版では全く手も足も出なかった戦闘獣軍団相手に必死で食い下がって数体を撃破し、 同じくテレビ版では実現しなかった鉄也との対話を果たすなど、主人公としての名誉は守り抜いた。
なお、本作は甲児がグレートマジンガーとその開発者の正体を不思議がるところで終わっているため、海外留学の話は一切出ていない。
ダイアナンAで戦闘獣に立ち向かうが一蹴されてしまう。しかし、予言者の予言の意味を理解して間接的にダンテの撃破に貢献する。
誕生日を控えた甲児のためにプレゼントを見繕うが、戦闘獣の襲撃で生死の境をさまよう。
ボス、ヌケ、ムチャ
グレートマジンガーと予言者の第一発見者になり、まぐれとは言えダンテを倒すなど、意外に見せ場に恵まれている。
兜十蔵博士の遺品を調べ直し、敵の正体を突き止める。それ以外の場面では甲児とマジンガーZの消耗を心配している印象が強い。
もりもり博士亡き後も弓教授を支え続けた二博士。マジンガーZの修理の最中、戦闘獣の予想外の強さに驚きの声を漏らす。
予言者/兜剣造博士
サイボーグとして生き延びていた甲児の実父。
テレビ版同様に息子たちに正体を明かせないのか、予言者に扮して光子力研究所にミケーネ帝国の脅威を警告した。
『グレートマジンガー』の主人公。
マジンガーZの危機に颯爽と現れ、圧倒的なパワーを振るって戦闘獣軍団を叩きのめした。
この時はTV版の設定がまだそんなに作られていなかったためか、彼特有の好戦的な台詞は一月後のTV本編までお預け。
テレビ版と違って素顔がハッキリと見えるシーンはない。(作画段階では、うっすらとゴーグル越しに素顔が確認可能になっていた。この頃から、いつもの濃ゆい顔に作画されている)
声優もTV版の野田圭一氏とは異なり(野田氏は戦闘獣ダンテ役で出演)、デビルマン/不動明役で有名な田中亮一氏である。
(一説によれば田中氏が当初は不動明からの流れで鉄也役に内定しており、その流れで本作に参加したとの事。野田氏になった要因は、一説によれば田中氏のスケジュールがグレート本編のアフレコと合わない事が判明したからだとされる)
サイボーグ化して地底へ逃れた古代ミケーネ人が建国した帝国。
TV版での設定とは異なり、闇の帝王が登場して来ない為に彼自身がミケーネ帝国の支配者となっており、声優もTV版の緒方賢一氏とは異なり小林清志となっている。
東京を壊滅させる為に派遣された戦闘獣を撃破したマジンガーZの存在に憤り、片腕である獣魔将軍に7つの軍団の中から選ばれた精鋭の戦闘獣軍団を率いてマジンガーZを抹殺するよう命じた。
この設定は『マジンカイザー死闘!暗黒大将軍』にも反映されている。
当該記事参照。
TV版本編と異なり、諜報軍が登場しないために暗黒大将軍に従っている。マジンガーZに関しての報告を怠っていたらしく、東京攻撃部隊が壊滅するまで暗黒大将軍はマジンガーZの存在を知らなかった。
登場戦闘獣
- 魚類型戦闘獣
- 爬虫類型戦闘獣
- 鳥類型戦闘獣
バーディアン(CV:富田耕生)、オルピィ(cv:富田耕生、加藤修)
- 昆虫型戦闘獣
- 猛獣型戦闘獣
- 人間型戦闘獣
- 悪霊型戦闘獣
ダンテ(cv:野田圭一)