錬金術は、物質を理解、分解、再構築する科学なり。
されど、万能の業(わざ)にはあらず。 無から有を生ずること、あたわず。
何かを得ようと欲すれば、必ず同等の代価を支払う物なり。
これ即ち、錬金術の基本、『等価交換』なり。
錬金術師に禁忌あり。 其(そ)は『人体錬成』なり。これ、何人も犯すことなかれ。
概要
本作における錬金術は現実世界におけるそれと異なり、錬成陣と呼ばれる円及び術式、そしてそしてそこに流し込むエネルギーを用いて物質または非物質を理解・分解・再構築することにより起こす術を主に指す。
錬成に使われるエネルギーは流派によって異なり、作中で主に使われるアメストリス式の錬金術は大地の下の地殻変動のエネルギーを利用している。
魔法のようにエネルギーと物質に干渉する現象であり、別次元に存在する真理の扉(旧アニメでは「真理の門」)を持つものにしか使うことは出来ず、扉の中の真理を見たものならば錬成陣を使わず(正確には術者自体が錬成陣の役割を果たす)に手を合わせることで錬金術の行使もできる。
術者の知識と技術、錬成陣を構築する理論によって様々な現象を起こすことが可能で、これによって起きる現象を錬成と呼び、錬成時には独特の光が発生する。
本作における錬金術は魔法・呪術ではなく大系を有する「科学」として扱われており、一定の法則の元に体系づけられて人間によって研究されている。現実世界におけるそれのように、フラスコやビーカーを用いた実験も研究段階では行われることもある。研究を元にして論文の作成や提出、書物として刊行なども行われているが、研究成果が濫用されぬように錬金術師は自らの研究を暗号化することもよくある(例:エド→旅行記、マスタング→ラブレター、マルコー→料理レシピ)。
等価交換の法則が基本となっており、錬成するものには代価が求められる。そのため「無から有を作り出すことはできない(質量保存の法則)」「水の性質の物からは水属性のものしか作れない(自然摂理の法則)」などと言った原則のルールが存在する。
用意した材料と目的のものが釣り合わなかった場合や、術者の技量不足によっては反動としてリバウンドと呼ばれる現象が起きて術者がその代価を支払わされる上に、錬成も失敗する。
作中の賢者の石は触媒にすること(正確には万能の代価)で、属性や元の質量に関係ない錬成、更に術者の力量を超えた大規模な錬金術の行使を可能とするなど錬金術師が持つことでこの原則を表面的に無視する触媒のように機能する。ただし、賢者の石は魂の集合体なので、使うごとに劣化していき、最終的にストックを使い切ると消滅する。
以下錬金術で起こされた現象の例の一部
・物体の形を変える
劇中最も多いパターンの錬金術。
物質の一部を一度分解し、任意の形に再構築することによって道具、または壁や土台、像や扉など様々な形状へと変化させる。規模や形状は術者の力量とセンスに依存する。
根本から押し上げる変形させることで、リフトのように物を持ち上げたり、変形を攻撃などに転用することも可能。
錬金術の工程の分解で止めれば、物質に破壊だけを起こすこともできる。
・物質の状態、化学変化
分解や再構築を用いることで水を瞬時に凍らせたり沸騰させたりする、対象の周囲の酸素濃度を変える、水から酸素と水素を作り出す、ダイナマイトをアンモニアガスに変える、血液から鉄を作り出すといった化学変化も起こすことができる。
・魂への干渉
作中の錬金術は物質のみならず魂への干渉も可能とする。肉体から魂のみを引き剥がす、肉体を失った魂を血で錬成陣を刻んだ鎧に定着させる、人間から剥がした魂を凝縮・物質化させる(賢者の石)といったことも可能。
なお、ハガレン世界においては生物は「肉体」「精神」「魂」の三位一体で成り立っており、精神は肉体と魂を繋ぐ媒介として存在している。したがって、魂だけの状態で寄り集められた賢者の石の中の魂は、ほぼ怨嗟と絶望以外の感情を有していない。
・元素変換
同属性内なら原子レベルで物質を別の物に変えることもできる。国家錬金術師クラスの優れた錬金術師ならばボタ山から黄金を錬成することも可能だが、貨幣経済を狂わせるため表向きは法で禁止されている。
・生体錬成
生き物の肉体に錬金術を施すことで、医療系錬金術とされる治療行為や、異なる生物の融合(キメラの作成)などを行うこともできる。
どちらも専門知識が必要で、術者の知識・技量に大きく左右される。
・人体錬成
作中の錬金術における禁忌。
広義の上では生体錬成も人体に関する錬成を含むが、錬金術で人間全体を作ろうとした場合や、失われた人体や人を戻す目的などで使用した場合、真理の扉に関係する特殊な現象が発生する。
鋼の錬金術師における錬丹術
錬金術と同系統の術。2003年アニメ版では登場しない。
アメストリスの隣国の『シン』で発展している。主に医療方面で活用されているらしい。
「金人」「西の賢者」と呼ばれた金髪金眼の不老不死の偉人が伝えた錬金術が原型となったとされる。
アメストリスの錬金術と異なり、龍脈と呼ばれる大地のエネルギー流から力を取り出して術を行使する。
使っているエネルギーが異なる事から、地殻エネルギーを遮断することで行うホムンクルスの錬金術封じが効かない。
力の流れに沿ってしか使えないという制約があるが、対の錬成陣を張る事で術者から離れた場所で錬成を行える遠隔錬成が可能(練丹術師が作った遠隔錬成の陣を用いればアメストリス式の錬金術師も遠隔錬成できる)
純粋な練丹術師はメイ・チャンのみ登場している。傷の男の兄はアメストリスの錬金術と錬丹術を組み合わせた錬金術の研究を進め、その研究成果は傷の男に受け継がれた。
メイは気を感知することで龍脈を把握し、自分の鏢で五芒星と錬成陣を描くことで術を行使し、物体の変形や状態変化、傷の治療、遠隔錬成などを行っている。医療方面で活用されているというだけあり、致命傷の近い傷でも応急処置程度なら一瞬で行えるほど。
傷の男のものは使っているエネルギー以外はアメストリスの錬金術と大差ないようで、気の感知も行えないまま行使している。
2003年アニメ版では
2003年版アニメでは設定が異なり、錬金パワーは術者本人の精神力とされていた。錬成に使われるエネルギーは、作中世界の人間が内側に持つ「門」を通して、我々の世界によく似た世界から生命エネルギーを搾取し、それを錬成時のエネルギーにしていたことが最終盤で判明する。
絵的な異能バトルを追求したのか、風属性や雷属性の錬成も登場した。
また、原作で金を錬成していたシーンで、硬貨を用いた金メッキを施しただけになっている場面もある。
「魂の定着」に関しては原作よりも汎用性が高く、『シャンバラを征く者』では、アル(肉体奪還済み)が近くにあった鎧に自分の魂を定着させて操作している他、ゲーム『翔べない天使』では3人がかりでリビングアーマーを使って襲ってくる錬金術師が登場している。