『青島要塞爆撃命令』とは、第一次世界大戦の青島の戦いを題材にした東宝の戦争映画。1963年5月、古澤憲吾監督。
中国語読みの「ちんたおようさい」が正しく、「あおしまようさい」は誤り。
概要
邦画としては珍しい第一次大戦を題材にした作品で、『加藤隼戦闘隊』に落下傘部隊隊員のエキストラとして出演したことを誇張して「パレンバン空挺降下作戦で一番乗りした」と自称し砧の撮影所では「パレさん」と呼ばれていた古澤憲吾が監督した唯一の戦争映画である。
中国大陸を舞台としたスパイ活劇という『独立愚連隊』を彷彿とさせる作品で、加山雄三、佐藤允、夏木陽介の3人がメインキャストを演じるのも共通する。
あらすじ
バルカン半島に端を発した第一次世界大戦の影響は、遠く極東にも及ぶこととなった。
大戦の当事国であるドイツが中国・膠州湾一帯を租借地としており、山東半島の青島をアジア進出の拠点としていたためである。
日英同盟を理由に日本は連合国としての参戦を要求され、日本海軍は青島の攻略に当たることとなった。
しかしドイツ軍は青島に強固なビスマルク要塞を建設。巨大な砲台が設置され、連合艦隊をもってしても攻略は困難を極めた。
そこで連合艦隊司令長官・加藤定吉は海軍で研究していた飛行機に望みをかける。追浜海軍航空術研究所に所属する大杉少佐以下5人のパイロットは、部隊存続をかけて輸送艦「若宮丸」に乗り込み青島を目指す。
スタッフ
製作:田中友幸
脚本:須崎勝弥
特技監督:円谷英二
監督:古澤憲吾
キャスト
国井中尉:加山雄三
真木中尉:佐藤允
二宮中尉:夏木陽介
大杉少佐:池部良
楊白麗:浜美枝
加藤長官:藤田進
吉川大尉:平田昭彦
村田参謀:田崎潤
庄司候補生:伊吹徹
趙英俊:成瀬昌彦
戸田大尉:柳谷寛
太田兵曹:堤康久
警備隊の当直下士:広瀬正一
牛車の親方:左卜全
初老の男:佐田豊
ベルゲ中尉:ロルフ・ジェサップ
ランゲ大尉:ウエルナ・ヴェンツ
獄房の番兵:オスマン・ユセフ
列車の警乗兵:ギュンタ・ロメナス
機関手:エリー・ランツマン
見張所の監視兵:ジェシー・イユーネン
英軍司令官:ハロルド・コンウェイ
多くの資料で初老の男が連れている男の子として金子吉延が出演していると記述されているが、2021年のインタビューで金子はこれを否定している。
余談
連合艦隊旗艦(劇中では明言されていないが当時の旗艦は「周防」)の甲板は当時記念館として復元されて間もない戦艦三笠で撮影された。周防のルーツはロシア第1太平洋艦隊(旅順艦隊)に所属していた戦艦ポベーダ(ポビエダ)であることを考えると奇妙なめぐりあわせである。
日本海軍のモ式ロ号水上機とドイツ軍のルンプラー・タウベは翼長1m以上の模型のほか実物大模型も製作された。モ式ロ号水上機は大日本飛行協会に分解状態で保存されていた実機をもとに復元図面を起こし、グライダー職人によって組み立てられたという。
当初白麗役には星由里子が予定されていたが、加山共々『ハワイの若大将』出演のため降板となった。
同じく当初は国井を夏木陽介、二宮を佐藤允、真木を加山雄三が演じる予定だったが、先の『ハワイの若大将』と高熱により撮影を一時中断していた『戦国野郎』出演のため加山は比較的出番の少ない国井役に変更され、残る二人も役柄がシャッフルされた。不良下士官役の多い佐藤允が女性に一目ぼれする優等生を演じる珍しい作品となったのはこの名残である。
さらに『ハワイの若大将』のハワイロケが悪天候で難航したことから、当初はゴールデンウィークに公開予定だった本作は5月29日まで公開が延期されてしまった。
また本作の特撮シーンは、同じ古澤憲吾の東宝クレージー映画の『大冒険』・『クレージーの大爆発』にも流用。クライマックスの爆破シーンをフォローした。
クライマックスに登場した蒸気機関車の模型は鋼鉄製で、ガソリンエンジンで自走も可能だったが出力が足りずオープンセットの坂を登れなくなりカメラを傾けたり線で引っ張ったりして撮影した。
この模型は現存が確認されており、「館長庵野秀明特撮博物館 ミニチュアで見る昭和平成の技」で展示された。