概要
RX-78F00とは、一年戦争の後の時代に極東で建造されたとされる機体である。
その外観は一年戦争の名機RX-78-2と酷似しているが、一年戦争当時のガンダムと比べると人体に近付いた比較的スマートなスタイルになっており、分割線などのディテールも異なる。
機体名はRX-78-2と同様の「ガンダム」。
立像としての概要
人気アニメ作品『機動戦士ガンダム』の40周年を記念し、山下ふ頭に期間限定で開催された「GUNDAM FACTORY YOKOHAMA(ガンダムファクトリー横浜)」内で展示されたガンダムの実物大立像。
頭しか動かなかったお台場ガンダムとは異なり、手足や指まで動く事が特徴となっている。手のパーツを除く関節自由度は全24自由度。
金属フレームにカーボン樹脂製の外装を取り付ける仕組みになっている他、屋外環境や災害を踏まえた設計が行われ、動作時には遠隔操作により動作指示を出すため安全性も高い。また、FRPの使用や、デザインアレンジにあたり全体的に細身にしたことにより、お台場ガンダムより約10トンの軽量化を果たしている。
企画当初は完全な自立を目指していたが、全長から建築法に抵触し、制作には「絶対に転倒しないこと」が条件となった。その為メインフレームは外部クレーンに固定され、歩行時には支持台車を使用しているため、実際に地に足を付けて歩行している訳ではない。
イメージとしてはフィギュアスタンドに固定されている形。
制作は劇中のガンダム同様複数の企業の手により、富野由悠季氏による監修も入りながら行われた。
デザインはこの立像の為に描き起こされたオリジナルのものだが、制作にあたって各種検証の為に用いられたお台場ガンダムに似通った部分もある。
2020年8月5日、頭部と本体のドッキングが完了したことでガンダム本体が完成、同年12月19日に営業展示を開始した。
当初は2022年3月31日までの稼働を予定していたが、新型コロナウイルス感染症の影響で足を運べない観光客も多く、そのような状況を鑑みて1年また1年と稼働予定期間を延長しており、2024年3月31日まで稼働期間を延長。同日のグランドフィナーレをもって、多くの人々に惜しまれながらイベントを終了した。
前述の通り稼働期間は当初2年程度の予定で、3年以上の稼働は想定されていなかった。その為延長の度に幾度もメンテナンス期間を設けた上で延命措置を施しながらの運用が行われた。
しかしそれでも度重なる酷使に加え雨風と直射日光、果ては海から来る潮風によりガンダムの内部機構にダメージが蓄積していったようで、グランドフィナーレの前日には金属音を発して動かなくなる事態まで発生した(この日は修理のため閉場時間を止むなく早める措置が取られた)。こうしたことからグランドフィナーレの稼働が危ぶまれはしたものの、無事に稼働してイベントを締めくくることができた。
イベント終了後に解体され、その後については現場でスタッフがポロリと漏らしたという「2025年日本国際博覧会(大阪万博)に移設される」という詳細不明な未確認情報だけがSNS等で流布している状況だったが、2024年6月になって株式会社バンダイナムコホールディングスより、同社が出展する「GUNDAM NEXT FUTURE PAVILION」の敷地にて展示される事が公式に発表され、その後2024年10月下旬に設置が完了した。
既に機体が稼働限界を迎えている等の諸々の事情により、「膝をついて天に向かって腕を伸ばす」という固定ポーズによる展示になる。また、左肩と左スカートアーマーにクリアブルーのパネルが取り付けられた新型パーツが追加されている。これらのパーツに記された型式番号や施設名称によると、型式番号は「RX-78F00/E」、管理施設の名称は「OSAKA YUMESHIMA TERMINAL」となる模様。
機体設定
宇宙世紀0079年、スペースコロニー「サイド7」で起動したRX-78-2ガンダムはニュータイプアムロ・レイの機体として数々の戦いをくぐり抜けた後、ア・バオア・クーの戦火に消えたと言われている。
しかしその後、極東アジア地区の地球連邦軍関連施設「GUNDAM FACTORY YOKOHAMA」の近郊において、RX-78タイプと思われるMSのパーツが大量に発見された。
秘密裏に隠されていたであろう本パーツ群については一切の記録が残されておらず、その技術上の情報を解明するべく様々な領域のエンジニアたちが密かに集結。
バラバラに保管されていた多数のパーツを長い時間かけて、研究・分析・再構成することになった。
パーツが発見されなかった部位も新しく作り起こされ、あたかも新型のガンダムタイプMSを開発していくようなプロセスを経て完成した本機は、研究開発に関わったスタッフ達から「RX-78F00」の型式番号を新たに与えられることになる。
各演出のあらすじと登場人物
時期によって異なる内容の演出が用意されており、その度にこのガンダムに秘められた設定が明らかになっていく。
起動実験(オープン前特別演出)
ミッションコントロールの指令で、今日もガンダムの起動実験が行われる。G-DOCKから踏み出し直立するガンダム。続けて両腕の稼働テスト、更にカタパルト発進のテストを行う。
起動実験(通常演出)
上記と同様ガンダムは直立するが、突如としてオリジナルのAIが起動。自動制御を受け付けず機能停止に陥ってしまう。
ミノフスキー・フライト稼働実験
映画閃光のハサウェイ公開に合わせた期間限定演出。
なんとこのガンダムには、Ξガンダムやペーネロペーと同様にミノフスキー・フライトが搭載されていることが判明。
フライトユニットはフロントスカートとショルダーアーマー前面に内蔵されており、稼動時にはそこが水平に跳ね上がり金色の光の粒子を放つ(形状が全く同じリアスカートとショルダーアーマー背面は立像という制約からか展開しない)。
ガンダムは待機モードに移行してエネルギーをフルチャージ、今まさに飛び立たんとする。
F00/AI Awakening!
来る高機動形態への換装に向け、マグネット・コーティングの稼働実験を行うガンダム。ここ最近はなりを潜めていたオリジナルAIだったが、本実験中に再び起動。
ミッションコントロールとの通信が途絶える中、「ガンダムのパイロット」はAIに宿ったある人物との邂逅を果たす。
最終起動実験
2024年3月31日のグランドフィナーレで行われた、一度きりの特別演出。
実験中、オリジナルAIはついに自らを「アムロ・レイの記憶」であると明かし、間もなく自分とガンダムは永い眠りにつくと言う。そして、いつかモビルスーツが人々の幸せのために働く日が来ると言い、ガンダムのパイロットと若者たちへ未来を託し、天を指さして「未来に向けて起動」した。そして、これまで姿を表さなかったパイロットがコクピットハッチから降機し敬礼。最後に、アムロ役の古谷徹氏の声で「君たちの描いた未来でまた会えることを信じているよ」と、ガンダムの最後の挨拶とともにイベントは締めくくられた。
この他にも、放送中のガンダムシリーズや横浜市の企画に合わせ、音楽と合わせた様々な演出が行われた。
登場人物
公式サイトの演出セリフより抜粋。
先述の理由によりキャストが明確な「Original AI」以外のキャストは、全て伏せられている。
- Pilot
F00に搭乗するパイロット。ミッションコントロールからの指示に時折不満を漏らしながらも、与えられたミッションは着実にこなす。
オリジナルAI曰く、金色の髪と青い瞳をしており、懐かしい人を思い出させるとのこと。
- MissionControl
ミッションコントロールの指示を統括する人物。日本語に訳すなら「ミッションコントロール長」といったところか。
ミッションを確実にこなす為、パイロットとオペレーターとの私語を叱ることも。
- OperatorA
女性オペレーター。起動前の見学者(観客)への注意喚起及び各部システムの確認を担当する。
英語部分も同様に表記されていることから、ハーフとも考えられる。
- OperatorB
男性オペレーター。Aと共に各部システムの確認を担当する。
- Original AI(cv:古谷徹)
F00ガンダムに内蔵されているオリジナルAI。
実験中に自動制御を乗っ取り停止させる、コックピット外部からの通信を遮断するなど、時折不可解な動きを見せる。
その正体は、この機体に搭載されているサイコフレームに宿ったアムロ・レイの残留思念。
「F00 AI Awakening!」にて初めて意志を持って語りかけた。
- 吉崎
「F00:AI Awakening!」の演出中に、システム開発チームの人物として言及。
実際に横浜ガンダムの建設に携わった吉崎航氏がモデルと思われる。
バリエーション
ガンダム高機動型
型式番号RX-78F00 HMT。
GFY公式ショップ「GUNDAM-LAB」に掲げられたパネルに描かれている機体。
オリジナルAIから発見されたデータを元に、高機動型ガンダム(プロトタイプ)の再現を目指して復元された機体。
機体カラーや脚部の形状がプロトタイプガンダムに近づけられるとともに、高機動型ガンダムのものに類する大型バックパックや高機動ユニットが装着されている。
なお、型式番号末尾の「HMT」は「ハイマット」と読む。
試作機が2機存在し、試作1号機は木星圏のような高重力下での運用を想定したかのような長大なブースターユニット、オリジナルのRX-78の盾と重ね合わせて装備する巨大な盾などを装備している。こちらは会場内に設置されていた展示コーナー「GUNDAM-LAB」内での展示物としてのみ存在し、プラモデルとして 中立体化されているのは試作2号機にあたる。
なお、ガンダムMAモードもガンダム高機動型と呼ばれる事があるが、関連性は特にない。
関西万博仕様
型式番号RX-78F00/E。役目を終えた動くガンダムの立像を解体したのち、一部の新規造形のパーツと共に組みなおした立像、および設定されたMS。2025年に開催される関西万博と、そこで開かれるガンダムネクストフューチャーパビリオンにて展示される。詳細はここを参照→RX-78F00/E ガンダム
「お台場ガンダム」との関係性
2013年3月に惜しまれながら公開終了したお台場ガンダムだが、その後はお台場の番をユニコーンガンダムに任せて解体され、来たるバンダイホビーセンター敷地内への移設までの間このRX-78F00制作の為の検証素材として活用されていた。
元々ガンダムはMS運用データ収集用の試作機だったことを考えると納得の役割であり、試作機の面目躍如といったところか。
なお「極東で発見されたRX-78タイプのMSのパーツ群」とは、パーツ単位に解体されたこのガンダム立像の事を暗に示唆するものとも言われている。
立体化
ガンプラ
1/144スケール、1/100スケール、1/48スケール、SDCSのプラモデルが発売。
1/144と1/100は両者とも新たにデザインされたビームライフルとシールドが付属。さらに前者には実際の「ガンダムドック」を模した台座が、後者には支持台車を模したスタンドが付属。
過去の実物大ガンダムの立体物とは異なり各種ブランドに属していないためパーツ数が少なく、その独特な機体色をシールや塗装無しでは再現出来ないが、その分組み立てやすさと可動域に優れるガンプラ初心者向けのアイテムとなっている。
また1/144スケールではRX-78F00 HMTも施設内で限定販売されており、後にはG-3ガンダムをイメージさせるカラーのバージョンも発売された。
1/48は下半身と肘から下の無いBUST MODEL仕様が先行発売。後にガンダム丸々1体が組み上がる通常仕様も発売された。
値段、パーツ数共に初心者にはハードルが高いが、その分先述の二種とは異なり成形色による色分けが実現。更に指可動など実物そのままの可動域も実現しており、素組みするだけで立像のイメージそのままのガンダムが完成する。
両者ともLEDユニットを内蔵することで頭部デュアルアイとメインカメラを点灯できる。
オープン後のGUNDAM FACTORY YOKOHAMAで販売された他、プレミアムバンダイにおける先行販売及び、GFY開催期間の延長決定に伴う特別販売も行われた。
また、GFYオープン当初は入場者特典として1/200スケールのプラモデルが配布されていた。
フィギュア
ROBOT魂、超合金、DX超合金が発売。
ROBOT魂は各種手首や武装に加え、ライフル用ビームエフェクトと専用ドックを再現した台座が付属。こちらは胸部水色が塗装されていない分値段は安く、入手のハードルも低い。
超合金は通常仕様と夜間の展示を再現したNight illuminated ver.の2種が発売。各種手首と武装一式、飛行状態を再現出来るスタンドが付属。サイズは1/100スケール。電飾ギミックにより頭部カメラ3点と胸部両ダクトが発光する。
高額フィギュアである分色分けと可動、重厚感を両立した優秀なアイテムである。
DX超合金はライフルとシールド、ビーム刃に加え、ほぼ完全再現されたガンダムドックが付属。サイズは1/48スケール。電飾ギミックにより頭部カメラ3点と胸部両ダクト、肩と膝の警告灯、コックピット、台座のライトが発光する。また台座部分に起動実験とBEYOND THE TIME~メビウスの宇宙を超えて~を収録した2種の音声を収録。
起動実験のギミックには実際に演出内で使用されたデータが採用されている為、実験音声に合わせて一部電飾の発光色が変化し、実物さながらの臨場感を味わえる。
更に指可動を含む実物同様の可動を備える他、装甲取り外しにより実際のフレームに近い状態も再現出来る。
この様に横浜ガンダムにとって究極の立体物とも呼べる本アイテムだが、その分値段は驚異の99000円(税込)。更にパッケージのサイズ、重量共に家電並みであり、金銭的にも物理的にも入手ハードルは途方もなく高い。
プレミアムバンダイの先行抽選販売に加え、現地でも販売が行われたが早期にに完売している。
余談
史実において
発見されたパーツに関する調査記録の中には、一年戦争時には存在しなかった「MS用ミノフスキークラフト」の有無に関する記述が存在しており、現実世界では「ミノフスキー・フライト稼働実験」と称するイベントが2021年4月から実施された。
一年戦争期に基礎設計がなされた18m級MSであるRX-78に搭載できるほどにフライトユニットが小型化されている(参考までにΞガンダムは28m)。
この事から本機は少なくともミノフスキーフライト搭載機のペーネロペーやΞガンダムが活躍していたU.C.0105年より後の技術も交え建造されたことが推察できる。そのため、本機はF89のような第5世代モビルスーツから第二期に至るミッシングリンクのような機体であると思われる。
また型式番号の「F00」よりフォーミュラ計画及びその計画を推進していたサナリィとの関連も噂される(サナリィには元ホワイトベースクルーのジョブ・ジョンが幹部として在籍)。サナリィ側が自社開発のテストヘッドとして復元し、そのデータを参照にして開発に織り込んた、という理由も考えられるがそれも含めて詳細不明となっている。
もし前述の通りなら、それまでの「RX」ナンバーと新世代の「F(フォーミュラ)」ナンバーを併せ持つ唯一の機体ということになる。
立像として
富野氏監修のもとでの大胆なデザイン・スタイルアレンジはファンの好き嫌いが分かれる物だが、これは富野氏の「原点回帰ではなく今流の作り込みでオリジナルを超えるべき」と言う思いによるものが大きい。
実際作品への思い入れが強いが故に「ガンダム」と言う原点への意識が強かったスタッフが制作した雛形を見た富野氏は「気に入らない」、「癪にさわる」などとダメ出しを連発している他、「もう少しおっぱい感が欲しい」などのような迷言も飛び出した。
問題の発言とその真意はこちらから。
立像の公開にあたって、富野氏は展示会場のメッセージボードに「こんなガンダムしか作れなくてごめんなさい」というメッセージを残した。これは、現在の法律やテクノロジーに照らしてガンダムを作ろうとした結果「建造物の延長」としてしか形にできなかったこと、アニメのように素早く動かせなかったことについて申し訳ないと述べつつ、このガンダムを見て「では、本物のガンダムを作るにはどうしたらいいんだろう?」という疑問や想像力を膨らませて、これを超えるものを次世代を担う若者や子どもたちに作って欲しいという思いを込めたメッセージである。
また、「素早く動かすことは出来なかったが、ゆっくりとした動きがとても似合っていて、優しさを感じるガンダムを造ることが出来た」とも語っており、建造することが出来た喜びもメッセージボードに残された。
イベント終了後のインタビューでは「こんなに素晴らしいものを見せていただけるとは、思っていなかったので、本当に夢のようでうれしいです…というのは、ほとんどウソです」という、いつもの富野節から始まる感想を述べた。その中で「子どもたちが本当に喜んでくれて、これを追いかけるぞ! という顔を見ることが出来た。そういう会場を設けてくれたことは本当に嬉しい」「これだけのことが出来るんだ、ということを見せてもらった」という感謝と、「これがファイナルじゃない。ガンダムはネクストというものを開拓してくれる」という、次世代への激励を込めたメッセージを語った。
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RX-78:開発、デザインの母体となった機体。
ユニコーンガンダム、フリーダムガンダム、νガンダム:同じく実物大立像が建造された機体。
ハーフガンダム:設定上のRX-78F00と同様、RX-78-2の再現を目的として残存するパーツを元に建造された機体。ただしこちらは次期開発試験型扱いとなる。