敵か味方か。
味方か敵か。
概要
『VIVANT』は、TBS系列の局で日曜21時から放送されているオリジナルドラマ。2023年7月16日から9月17日まで放送された。
主演は堺雅人。
『半沢直樹』シリーズや『下町ロケット』シリーズなどで演出を務めた福澤克雄が、演出と原作を兼任している。
キャスト・スタッフ等に池井戸潤作品のテイストが色濃く見られるが、その一方で池井戸氏がまず書かないような、世界規模の壮大なスケールで物語が進むのが特徴。
放送前に解禁されたのは主要キャスト5名とモンゴルでのロケを行ったことを報じたテレビCMのみで、ストーリーや役柄を初回放送まで一切明かさないという異例の手法が取られた。
上述の通りモンゴルで2か月半にも及ぶロケが行われたり、普段では有り得ないような豪華なキャスト陣を揃えた事も大きな話題を呼んだ。
各話の連作性が強く意識されており、次の展開が気になるような引きや謎解きの要素が非常に多く、考察班と呼ばれる視聴者の間では「誰が黒幕なのか」が議論され、大きな盛り上がりを見せていた。
その為、放送中にもかかわらず早くもVIVANTロスを嘆く者や、次クールのドラマ「下剋上球児」が煽りを受けないか心配する者もいた。9月10日放送回は見逃し生放送SPと共に通算4時間の放送となった。
そして、最終回の視聴率が19.6%と前作を超え、有終の美を飾った。
ちなみに、「VIVANT」とはフランス語で「生きている」という意味だが、本作における「VIVANT」はさまざまな意味が含まれたワードであることが物語が進むにつれて明らかになっていく。
あらすじ
中央アジアのバルカ共和国で行われている太陽エネルギープラント事業を担当している丸菱商事のエネルギー事業部2課課長・乃木憂助はある日、バルカ共和国の会社に130億円もの誤送金をした容疑をかけられてしまう。自身の無実を証明するため、事件に収拾をつけるために、乃木は単身バルカ共和国へ向かうことに。
しかし、それがいつしか国家やテロ組織も絡むほどの大きな事件に発展していきーー。
登場人物
主要人物
本作の主人公。
バルカ共和国の太陽エネルギープラント事業を担当する、真面目だが気弱な丸菱商事のエネルギー事業部2課課長。乃木とは真逆の性格をした「F」と呼ばれる別人格が度々現れ、二人で会話している。
そんな彼の正体は、自衛隊内に存在する影の諜報組織・別班の工作員。普段はポンコツサラリーマンを装っているが、実はミリタリースクールを全科目主席で卒業した超エリートだった。テントの指導者であるベキが自分の父親なのではないかと考え、彼の行方を追っている。
本作のもう一人の主人公。
バルカの日本大使館に駐在している警視庁公安部外事第4課課長。階級は警視。非常に豪快かつ頭脳明晰な人物であり、常に先を読み先手を打つが、対応策が無ければゴリ押すこともしばしば。『ハリー・ポッター』シリーズが大好きで、物語内に登場人物の名前が度々出てくる。
不審な点が見受けられる乃木のことを調べる一方、仲間としても目をかけており、乃木を陥れた真犯人を見つけるため彼と「共同戦線」を張る。しかし、真犯人が明らかになってからは別班にまんまと出し抜かれてしまった。
その後、ドラムと共にバルカに向かい、チンギスと手を組んで乃木の正体と過去を調べている。
本作のヒロイン。
WHI(世界医療機構)の医師で、ジャミーンの主治医。乃木と野崎のゴタゴタに巻き込まれ、二人と共に逃亡する羽目に。快活でしっかり者。意外と強かな一面も。
ジャミーンを助けるために生きている為誰かのことを好きになる余裕はないと話していたが、大事な時にいつも側にいてくれた乃木に好意を抱くようになり…。
JKT資源開発に勤務するエンジニア。テントのモニターを名乗っていたが、正体は別班の工作員で乃木の頼れる右腕。公安に追われる誤送金事件の真犯人・山本に手を貸し逃亡を手助けするふりをして確保し、乃木と共に山本を排除した。以降は乃木と共に行動し、テントを追っている。
本作のメインヴィランにしてキーパーソン。
世界的なテロ組織「テント」の創設者にして乃木憂助の父。
かつては公安の刑事だったが国に見捨てられた上に息子を武装勢力に奪われ、妻を亡くしたことで失意のどん底に突き落とされる。だが、用心棒の仕事をしながら現地の人々に「自分達の手で平穏を守る」術を教え生きていく中で孤児の存在を意識し始め、「バルカの子供たちを救う」ことを決意しテントを設立した。
40年前の経験から裏切りを決して許さず、組織のルールに反する者は日本刀で容赦なく斬り捨てる。
テントのNO.2。ベキの息子とされているが実際のところは養子であり、血の繋がりは無い。モンゴル語だけでなく、ロシア語や日本語も流暢に話す。
これまで「父親」の為に尽力してきたが、ベキの実子である乃木が現れたことで自身の地位が脅かされるのではないかと危惧している。
バルカの人々
野崎の右腕的存在。言葉を発することはない(バルカの言葉も話さないため、おそらくジャミーン同様失声症の類と推測される)が日本語は理解しており、野崎達とはスマートフォンの音声アナウンスアプリを使って会話を行う。野崎の指示のもと、乃木や警察の偵察、現地住民を使った捜査の撹乱、砂漠を越えるためのラクダの手配まで様々なサポートをしている。
曲者揃いの登場人物の中でも屈指の善人であり、「コミカルな動きと屈託のない笑顔が可愛い」、「厳つい見た目と音声アプリのギャップにやられる」等、富栄氏の演技が一躍話題に。主役の乃木を差し置いてグッズが発売されるほどの大人気キャラとなった。
- ジャミーン〈演:Nandin-Erdene Khongorzul〉
バルカ共和国出身の少女。人の善悪を直感的に見抜くことができる。父のアディエルと共に砂漠近くの家で暮らしていた。
2年前に母親を目の前で亡くしたショックで失声症のような状態になっている。またザイールの自爆テロで父も失い、自身も大怪我を追った上に天涯孤独の身となってしまった。 ファロー四徴症という心臓疾患を抱えている為、薫の手引きで来日し、心臓移植の手術を受けた。しかし、術後の容態が芳しくなく、数日眠り続けていた。 しかし、乃木達の思いが通じ、無事に目覚めて少しずつ快方に向かっている。
ドラムや乃木にはとても懐いている一方、何故か野崎のことは警戒し、近付こうともしない。
- アディエル〈演:Tsaschikher Khatanzorig〉
ジャミーンの父親。ザイールの自爆テロによる爆発からジャミーンを庇って重傷を負い、そのまま息を引き取る。
実は幼い頃にベキに拾われ、成人するまでノコルと兄弟のように育てられていた。
- チンギス〈演:Barslkhagva Batbold〉
バルカで最も優秀な警察官。ウェーブのかかった長髪が特徴的。乃木を自爆テロの実行犯だと疑い追っていた。
乃木達を執拗に追い回し荒々しく振る舞う様子が描かれているが、基本的にはバルカの警察官として真っ当に仕事をしているだけであり、動物や一般人には手を出していない。仕事が絡まなければ性格も温厚なようである。
乃木の正体と過去を調べる為に野崎と手を組み、野崎の捜査に付き合っている。実は、彼も「テント」が運営する孤児院の出身。
ちなみに、演者のバルサラハガバ・バタボルド氏はモンゴルで活躍する俳優であり、主演を務めた映画『37th tochka』を見た福澤克雄からのオファーを受けて出演が決まったとのこと。
- ワニズ〈演:河内大和〉
次期大統領候補と目される、バルカの外務大臣。フローライト独占に向けてその障壁となるテントへの妨害行為を行っている。
- ゴビ〈演:馬場徹〉
ノコルの親友。テントが行なっているフローライト採掘の共同出資者。
公安関係者
- 新庄浩太郎〈演:竜星涼〉
公安部外事第4課の捜査官で野崎の部下。
バルカの日本大使館で乃木達を迎え入れるため、到着を待ち構えた。その後も野崎の命で乃木達を支援しているが、豪快かつ強引な面には呆れている部分も。
しかし、実は彼もテントのモニターであり、日本で逮捕されたベキ達の脱走の手助けをした。
- 東条翔太〈演:濱田岳〉
サイバー犯罪対策課の捜査官で、警視庁にヘッドハントされたホワイトハッカー。基本的にパソコンの前から動かず、捜査会議の際もリモートで参加している。警視庁入庁前に丸菱商事のデータシステムを構築していた。
『ウルトラマン』シリーズの大ファンで、部屋の中にはポスターが貼られている。
濱田氏は子役時代にウルトラマンの映画『超時空の大決戦』に新星勉役で出演しており、そのオマージュとしてファン設定になった模様。
- 佐野雄太郎〈演:坂東彌十郎〉
公安部長。野崎の直属の上司。
- 鈴木祥〈演:内野謙太〉
公安部の捜査官。野崎の部下。
丸菱商事の社員
- 太田梨歩〈演:飯沼愛〉
財務部に勤務する女性社員。乃木からのバルカ国際銀行への1億ドルの送金依頼を処理していた。
正体は世界中で暗躍する天才ハッカー・ブルーウォーカー。テントのモニターだった山本に脅され協力させられていたが、山本の死後別班に1億で買われてからはテントのデータ解析などに従事する。
- 山本巧〈演:迫田孝也〉
乃木の同期でエネルギー事業部1課長。元情報システム部所属。サーバールームで誤送金のデータを調べる乃木に協力する。
その正体はテントのモニター。日本に対し常日頃から不満を抱いており、ダークウェブでテントと接触。組織の一員となった。
テントのモニターを名乗る黒須に騙されて捕まり自白剤を打たれ、知っている情報を全て話した後、日本を危険に晒した罪で乃木と黒須に殺された。
- 長野利彦〈演:小日向文世〉
丸菱商事専務。GFL社に誤って送金された130億を決算までに回収するよう厳命する。
- 水上了〈演:古屋呂敏〉
エネルギー開発事業部2課で働く乃木の部下。
- 宇佐美哲也〈演:市川猿弥〉
エネルギー事業部長。乃木の直属の上司。
GFL社への誤送金は乃木が仕組んだのではないかと疑っている。
- 原智彦〈演:橋本さとし〉
経理部長。
- 河合幸二〈演:渡辺邦斗〉
業務監査部。
社内の出世レースに出遅れた乃木が、アリと共謀し130億を奪ったと考えていた。
その後、誤送金の犯人が山本であることが判明したため、「F」に謝罪を要求され、不服ながらも素直に謝った。
別班
- 櫻井里美〈演:キムラ緑子〉
司令。乃木や黒須の上司。
- 高田明敏〈演:市川笑三郎〉
別班の工作員。表向きは経産省の官僚。
- 和田貢〈演:平山祐介〉
別班の工作員。表向きは自動車メーカーのロシア支社で働く営業職。
- 廣瀬瑞稀〈演:珠城りょう〉
別班の工作員。表向きはEU各国に医療系システム機器を販売する企業のシステムエンジニア。
- 熊谷一輝〈演:西山潤〉
別班の工作員。表向きは航空機器メーカーに電子機器部品を供給する製作所のエンジニア。
テント
- バトラカ〈演:林泰文〉
テントの幹部。表向きは民間軍事会社「PMSC Y2K」の代表。乃木家の家紋をテントのシンボルに選び、乃木親子が再会するきっかけを作った。40年前、ベキこと卓がスパイ容疑で拷問を受け、瀕死の状態になっていた頃に出会い、彼を秘密裏に助けた。卓は命の恩人として心底信頼している。
- ピヨ〈演:吉原光夫〉
テントの幹部。狙撃の名人。
卓が武装勢力からの用心棒の仕事を引き受けるようになった頃から、卓と共に行動している。
- アリ・カーン〈演:山中崇〉
GFL社の社長。その正体は、日本での業務を担当していたテントの上位幹部。
家族を人質に脅迫され別班にテントの創設者を教えたが、家族を3人殺されても尚(※実際には殺されていない)、口を割らなかったため、テントに粛正されることはなかった。
- アル=ザイール〈演:Erkhembayar Ganbold〉
テントの幹部。乃木からの返金要求を拒否し「お前がVIVANTか?」と問いかけ、その後自爆テロを起こし死亡した。
- シチ〈演:井上肇〉
テントの構成員。
- マタ〈演:内村遥〉
テントの構成員。
乃木家
- 乃木明美〈演:高梨臨〉
憂助の母親。卓や憂助と共にバルカに渡り暮らしていたが、武装勢力に捕まり拷問される。自分達を見捨てた日本への復讐を卓に託し死亡した。
- 乃木寛道〈演:井上順〉
卓の兄で憂助の伯父。たたら製鉄で栄えた島根の御三家の一つ・乃木家の現当主。
その他
- 西岡英子〈演:檀れい〉
在バルカ日本大使館の特命全権大使。乃木たちを全力で守る姿勢を見せるが実際はバルカ政府と裏で通じており、彼らをバルカに引き渡そうとした。
- サム〈演:Martin Starr〉
CIAオフィサー。乃木のミリタリースクール時代からの親友。
- イリア・サイハン〈演:真凛〉
バルカの看護師。
- 三井鈴〈演:水谷果穂〉
日本医療センターの看護師。
関連タグ
君たちはどう生きるか:同時期に公開された映画だが、公開日まで徹底的な情報統制が図られ、情報がほとんど公開されなかった作品繋がり。
STARWARS:ドラムのモデルがチューバッカ、ストーリーの主軸が生き別れ敵対する事となった父親と息子の物語という共通点がある。