概要を詐欺罪と器物損壊罪で訴えます!
元ネタは、ゲーム情報サイト「ワザップ!」へ投稿された嘘の裏技に騙されたユーザーの怒りの文。
元となった文章は2016年に投稿されたものだが、後年に匿名掲示板や動画サイトでネタにされたことで2019年初頭に注目を浴び、ネットミームに発展し、同年のネット流行語100で6位に入賞した。
そもそも「ワザップ!」は2001年に開設されて以来、ブームとなった時点で約20年もの歴史を誇る老舗コミュニティサイトで、比較的無垢なユーザーが集う場でもあったことから無根拠・伝聞レベルの怪しい情報が非常に多かった。
そんな中で投稿されたのが、「ポケットモンスター オメガルビー(2014年発売)」で幻のポケモン「ボルケニオン」の色違い(通常のゲームプレイではゲット不可能)をゲットできるという裏技である。
レアなモンスターが手に入ると言いながら、その手順にはセーブデータを削除することが含まれており(後述)、もし実行するとデータが消えた上にモンスターも手に入らないという、要するに愉快犯の悪質ないたずらだった。
ただし、前述のようにセーブデータを削除することが工程に含まれている時点で普通はおかしいことに気が付く筈なので、試す方も試す方なのだが(インターネットのサイトに書かれていることが正しいこととは限らないというのはインターネットユーザーとしては当然持ち合わせるべき常識である)。
原文は犯罪者です!
この裏技を実際に試したと思われる人々からは、恨み辛みの抗議のコメントが多数書き込まれていたが、その中にあったのが以下のもの。
コメント跡地(※現在は当のコメントは管理者によって削除された。ただし返信コメントは閲覧可能。
ウェブアーカイブにはその記録が残っている→2019年6月20日時の記録)
あなたを詐欺罪と器物損壊罪で訴えます!理由はもちろんお分かりですね?あなたが皆をこんなウラ技で騙し、セーブデータを破壊したからです!覚悟の準備をしておいて下さい。ちかいうちに訴えます。裁判も起こします。裁判所にも問答無用できてもらいます。慰謝料の準備もしておいて下さい!貴方は犯罪者です!刑務所にぶち込まれる楽しみにしておいて下さい!いいですね! |
この、ですます調を崩さないままにボルテージの上がっていく言い回しが『ジョジョの奇妙な冒険』第5部の主人公であるジョルノ・ジョバァーナを彷彿とさせたことから、投稿より2年経った2019年3月14日、5ちゃんねるのなんでも実況J板に「【悲報】ワザップの嘘裏技に騙されたクソガキ、ジョルノ・ジョバーナみたいになってしまう」としてスレッドが立てられ、ネタにされることになった(なお、ジョルノの姓は上述の通りジョバァーナなのだが、スレ名では「ァ」が抜けてしまっている)。
文章だけ見れば、純粋無垢なキッズがガセに引っ掛かり怒りのまま書いたのだろうとしか言いようがないが、発掘時期は2019年。
……そう、ジョジョ5部のアニメが放送されている最中に発掘されたのだ。
「言われてみればジョジョっぽく見える」と各まとめサイトで取り上げられて一躍話題となり、ニコニコ動画では投稿者たちによるものまねアフレコ動画がちょっとしたブームになった。
ツッコミ所にも問答無用できてもらいます。
まず、「覚悟」だけですでに「心の準備」という意味なので、「覚悟の準備」は重言を起こしている。これが勢いと迫力ある荒木節の再現っぽく見える。
「裁判所にも問答無用できてもらいます」という箇所も、落ち着いて読めば「『犯人に』裁判所へ来てもらう」と言う意味で、筋は通っているのだが、「裁判所に『犯人の下へ』来てもらう(通称「出張裁判所」)」と誤読されやすい。意味上の主語と目的語が省略されたまま連続して切り替わるのが分かりづらい原因だが、それらがきっちり明記された落ち着いた文章になるとそれはそれでこのネタ構文独特の勢いが削がれてしまうトレードオフである。
また、勢い余ってか「刑務所にぶち込まれる楽しみにしておいて下さい!」と、脱字を起こしている。正しく書くなら「ぶち込まれるのを楽しみに」。
そして、そもそも匿名投稿のワザップでその投稿者を訴えようとすること自体無謀(裁判所を通して情報開示に値する案件かどうかを審査し、サイト運営者やプロバイダに情報開示請求をする必要がある)なのだが、「こんなウラ技」を実行してデータを消したのはあくまで本人である点と、騙されたとはいえ騙した側に何らかの金銭的な利益等が発生するわけではない点から、詐欺罪は成立しない。
器物損壊罪についても、セーブデータ(法律用語で言う「電磁的記録」)を、「器物(≒財産的に価値のある、カタチのある物体)」として主張することはかなり難しい。※
騙されて危険な操作を行ったせいでゲーム機本体とソフト(これらは「器物」と主張できる)が両方壊れたとしても、弁償額は合わせてせいぜい3万円くらいだろう。慰謝料として「皆」の心の傷を金額に替えようとしても、これと大差ないのではなかろうか。
※2009年のコンピュータウイルスによるデータの破壊(通称「イカタコウイルス」)が2010年に器物損壊として起訴され、2011年に有罪判決になった例はある。ただし起訴された2010年当時はウイルスやサイバー犯罪などに関する法整備が未熟で、当てはまる罪状が他に無かったためといえる。2011年には「不正指令電磁的記録に関する罪」が制定された。
よって、彼の主張する通りにこれらの罪状を立件することはまず不可能であり、仮に有罪となったとしても実害のしょ~もなさから「犯人」に執行猶予が与えられることは確実。
執行猶予とは「条件付きだが刑務所の外で普通に生活できる処分」なので、どう訴えようがガセネタ犯は刑務所の中にぶち込まれるわけがないのである。
弁護士に支払う経費や訴訟・裁判に割く時間なども考えると完全に差し引きマイナスであり、はっきり言って何もしない方がマシ。
少年少女たちには可哀想だが何も知らず騙されたのに法律が助けてくれない理不尽さは、警官時代のアバッキオが抱いた社会正義への絶望や、娘に先立たれた花屋の主人のやり場のない悲しみと、数万分の一くらいのスケールでほんのちょっぴり似ていてジョジョ5部の舞台設定に通じるものがある……かもしれない。
ジョルノと言われる主な理由はもちろんお分かりですね?
・感情的ながらも崩れないですます調
例:理由はもちろんお分かりですね?
ジョルノ:払ってしまって「ない」と言ってるんですよ…3度目は言わせないでくださいよ
・しかし明確に強くなる語気
例:あなたを詐欺罪と器物損壊罪で訴えます!
ジョルノ:このジョルノ・ジョバァーナには夢がある!
・まくし立てるような話し方
例:慰謝料の準備もしておいて下さい!貴方は犯罪者です!刑務所にぶち込まれる楽しみにしておいて下さい!
ジョルノ:もたもたしないでッ!必死なんだッ!絶対走ってもらいますからね!
・ジョルノを象徴する台詞が「覚悟」である
例:覚悟の準備をしておいて下さい。
ジョルノ:あなた…『覚悟して来てる人』…ですよね
・裏技投稿者が該当ユーザーから見たら吐き気を催す邪悪※そのものである
何も知らぬ無知なるもの(=幼いプレイヤー)を自分の利益(=人を騙す快感)だけのために利用する
と完璧に条件を満たしている
※ただし原作でこの台詞を言ったのはジョルノではない
あなたが皆をこんなウラ技で騙し、セーブデータを破壊したからです!
以下原文
ulK0f137 公開日:2016年1月8日 3:33
色違いボルケニオンゲット!
簡単です!
まず初めに ボックス1の一番左上にポケモンがいないことを確認する。
いるなら別の場所に移動してください。
データを消して最初から始める。(データの消し方:十字キーの上ボタン+Bボタン+Xボタン)
最後にデータはちゃんと戻るので安心してください!
注意!前のデータが女主人公でも必ず男主人公にすること!女主人公で試したところ全て失敗しています
適当でいいのでレポートを書くところまで進める。
「レポートを書き残した!」の表示が出た瞬間に電源を切ります。
タイミングが難しいので私はソフトを抜く方法でやってます。
成功率は個人的にこっちのほうが高い気がします。
注意!必ず一番最初に書くレポートで↑をやってください。
これをやる前にレポートを書いていると失敗します。
ソフトを再開すると「続きから」が消す前のデータに戻っています。
ボックスを確認するとレベル1の色違いボルケニオンがいます。
結果
ボルケニオンゲット!
(編注:流布されたコピペでは冒頭の「簡単で」と「す!」の間に改行が入る場合もあるが、原文には入っていない)
嘘を嘘と見抜ける人ならば、「データを消して」の部分ですぐにガセだとわかるはずである。
よく見るとデータ消しだけでなくソフト抜きによるソフト・ゲーム機本体の破損も狙っているのが悪質といえば悪質。無意味な手順や注意書きを織り混ぜることでいかにもバグ技っぽく見せるあたりなかなか高度な嘘でもある。
元凶はポケモンBBSというポケモン掲示板サイトで、話し合いの末このようなネタが生まれてしまったのだという。
余談の準備をしておいて下さい!
この怒り心頭のユーザー「RT4K7x8t」は他にもコメントを残しており、それも凄みがある。
というかモロ5部のキャラクター達を連想させる言い回しであり、そのコメントは各地で笑いを呼んだ。
なお、ワザップ恒例「出来ました!」の嘘報告に「どうせ改造」と煽っていたため、相当お怒りの様子。
- お前は自分で自分を騙している。もしかしたら、自作自演なのか!?テメーのやっていることは!
(参考:ブチャラティ)
- 今すぐこのガセネタを削除しやがれ・・
- お前はこのウラ技実際にやってみたのかよ?
(参考:ミスタ)
- 貴方は全国のポケモンファンの持っているポケモンのゲームソフトのセーブデータを破壊しようとしている破壊神です。破壊の神です。そんなことをしているテメーが破壊されろ!
(参考:フーゴ)
- お前はこのウラ技を何で知った?
(参考:リゾット)
そして2019年5月19日頃、問題のジョルノがアニメ版「グリーン・ディとオアシス その①」放送に呼応するかのように再臨してしまった。
その時に彼の投稿した文章がこれ。
- 貴方!こんなウラ技をまだ皆に広めようとしているのですか。いい加減にこのウラ技を消去してくれ(怒)
(参考:広瀬康一)
※ちなみに康一君も5部の序盤に登場している
その後に訴えます。裁判も起こします。
アフレコ動画を素材にしたMAD動画や他のキャラ風アフレコ動画が流行りはじめ、派生ネタが次々と生まれる。
同時期に、タレントの松居一代氏が「バイキングと坂上忍の虚偽報道により名誉を傷つけられたので訴える予定だ」と語る動画がTwitterに投稿された際、何を思ったかこの動画を編集し、5部「黄金の風」アニメ版のBGMのひとつ『il vento d'oro』(通称処刑用BGM)を流すという動画がアップロードされ松居氏の凄みとマッチしたからなのか、これもワザップジョルノの一環としてまとめられる羽目になった。
ワザップの愉快犯なんかより、こっちの方がよほど名誉毀損で訴えられそうである。
その後、下のミリオンを達成したアフレコ動画の作者がジョルノ風に松居一代をアフレコするという動画をアップ。これもMAD素材に使われるようになった。
さらにその後、ワザップジョルノもやや下火になってきた(といっても、例のミリオン動画は1日に1000再生ずつ伸びる程度には人気だった)頃、絶対にチョコミントを食べるアオイチャンの動画内でこれのネタが「To Be continued」のオチと共に投下され、少し人気が戻ったんだとか。
このネタの流通以降、作品問わずワザップで明らかな嘘ネタが投稿されると一連の構文で器物損壊罪と詐欺罪で訴えるのがコメント欄でのある種のお約束になってしまい、嘘を嘘と見抜くのが少しだけ簡単になる二次被害(?)が発生している。
これは余談だが、ワザップジョルノことRT4K7x8tは実際は暴言厨であり、他の裏技ページにも出没しては暴言を残していく迷惑ユーザーだった。
その暴言の中で偶然にもジョジョっぽかったのが流行っただけである。
そして2020年6月12日、ついにワザップへのアクセス禁止措置を喰らったという。
決して許されない暴言荒らしだが、ネットミームを起こしたことは事実。彼の意思は後の世代にも継がれていくだろう…。
関連イラストの準備もしておいて下さい!
パロディ絵
スタンドチャート風ボルケニオン
お前はこの関連動画を何で知った?
アフレコ動画の皮切り。原点にして底辺。テンション的には寝起き5部の方が近い。
映像版アフレコ動画。こちらの方が再生数が高く、ミリオン→ダブルミリオン突破。
アニメ版ジョルノを演じた小野賢章氏の演技の特徴を程良く掴んでいると評判である。
一体何人のギアッチョとミスタが犠牲になったのか。
こちらはチョコラータ戦にアフレコしたもの。
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ワザップポルノ
関連タグにぶち込まれる楽しみにしておいて下さい!いいですね!
il vento d'oro:これのおかげで風評被害(ワザップのテーマ、など)が出ている。
HEROIC_VERSE:公式サイトにて楽曲「深淵に捧ぐレクイエム」の作者コメントがこれと同じような言い回しになっている。
マナフィ フィオネ ケルディオ メロエッタ:ボルケニオンと同じ幻枠。剣盾・アルセウス・SVではなんと通常ゲットできるようになっているのだが、その出現方法が上記の嘘手順のような難解な方法だったので「出し方がワザップすぎる」と言われている。(一応ゲーム内にヒントが多少なりとあり、またシリーズ経験者であればある程度は合点がいく方法ではあるが…)