概要
メアリー・スーっぽいキャラのこと(項目を参照)。
二次創作における優遇されたオリジナルキャラを指すことが多いが、「理想を投影されて魔改造された原作キャラ」もメアリー・スーと呼ばれることがある(後述)。
メアリー・スーと呼ばれやすい例
まず前提として、メアリー・スーの厳密な定義は不可能である。何がメアリー・スーっぽいかは人によって解釈が分かれるからである。
以下は一例である。
- 作者の理想が投影されている
- 若くして高い地位に付いている、偉人の生まれ変わり、非常に強い、美形(オサレ)である、不特定多数の人に好かれる、超能力を持つ、他のキャラクターが知らない事柄を知っている、その他厨設定がてんこもりなど、「特別な存在になりたい」という理想
- 逆に弱い、平凡な外見、無知、モブ、とってつけたような弱点がある、原作キャラから嫌われてるなど、「よくある最強キャラから外れて特別になりたい」という理想
- オリキャラでなくともU-1やHACHIMANのように最強化されたキャラや、BLものに出てくる同性愛者化キャラ、TSものに出てくる性転換キャラなど、原作を魔改造している
- 作者によって作品世界内において異常なまでに優遇されており、その結果物語から浮いている
- あるいは、単にあなたが嫌いなキャラクターを「〇〇の特徴が当てはまっているからメアリー・スーだ」「薄っぺらい」とこじつけて悪口としてそう呼ぶ(なろう系のようなマジックワード)
これらはあくまで例であり、当てはまっているかどうかも主観に左右される。
「メアリー・スーの特徴に当てはまっているから駄作」のような判断は間違いである。
語源
1973年に執筆された『スタートレック』の二次創作小説に登場するオリジナルヒロイン、『メアリー・スー大尉』(艦隊で最年少の大尉。15歳)の名前から取られた。
この小説は、ファンの作る二次創作に登場しがちな、非現実的で思春期の少年少女の願望を具現化したようなオリジナルキャラクター(最年少かつ最優秀で、原作に登場するクルー達から尊敬や愛を寄せられ、驚くような能力を持ち、死ぬ時は劇的に死に、クルー全員が悲しみに包まれる)を揶揄していた。
なお『メアリー・スー大尉』が書かれた背景には当時のスタトレ二次創作界隈で、オリキャラが原作キャラを差し置いて大活躍する二次創作が蔓延していたことにあり、そうした風潮を皮肉る目的で書かれたものである。
内容そのものもわずか十数行しかないパロディ小説であり、作者自身がネタである事を前提としてやっている点に注意されたし。
定義と派生
ネガティブな意図を大きく含み、基本的に罵倒である点には注意する事。蔑称・レッテルとして使われることが多く、感想やネタタグで使用するのは、基本的には不適切である(意図的にメアリー・スーをネタにしている場合を除く)。
その原義からも分かるように二次創作から生まれた言葉であるが、現在では一次創作の「さいきょうきゃらくたー」についてもメアリー・スーと呼ぶ人が少なくない。
中二病の人、中二病に向けた創作物の主人公や、最強キャラ、原作者が贔屓している原作キャラを無条件にメアリー・スー扱いする向きもある。
他にも「悪役メアリー・スー」「暗黒メアリー・スー」「逆メアリー・スー」など、派生語、対義語は山とあるが、これらは全て明確な定義と言うものは特に存在せず、発言者が勝手に言っているだけである。定義や派生語については文脈を読んで判断すべきであろう。
語源のメアリー・スー大尉のような「現実離れした凄いキャラ」ではなく「作者の現実に近いキャラ」が作者の分身となるのは傍観ものやモブキャラものでよく見られる。
これらは傍観者や一般人が作者の理想像というだけなのでメアリー・スーと言われる可能性も十分あるが、厨設定のステレオタイプから外れるため気づきにくい。
以上の誤解を元にオリキャラを作ったり、あるいは原作キャラを動かした結果、メアリー・スーを避けたつもりで「忌み嫌われるメアリー・スーの作者なんかとは違う優れた存在である自己」が投影されたキャラになっている…というパターンもありがちである。
メアリー・スーではないものの定義
メアリー・スー呼ばわりやチェックテストが恐ろしくて上手く制作ができないなど、スー・フォビア=メアリースー恐怖症と呼ばれる症状がある。
そういった人たちのために、「こうなればメアリー・スーではない」とされる定義も存在している。
「弱点がある」「そこそこの強さである」「元からメアリー・スー並みに最強である、シェアードワールド(クトゥルフ神話やSCP財団など)である」など、メアリー・スーの定義が無数に存在するのと同じくそうでなくなる条件も無数に存在する。
メアリー・スーは客観性のない自己投影であるという説によって、自己投影でなく客観的に楽しんでいることをアピールし非メアリー・スーを主張することも多い。
「自分が○○のキャラになりたい(自己投影)のではなく、遠くから○○たちの物語を眺めたいだけ」などはよくある主張である。
もっともこれらはメアリー・スーが中二病だとすれば高二病のような状態であり、これらの中にはメアリー・スーの「亜種」とされるものも多い。
更には「自分の物語の楽しみ方は客観視点だが他人は主観視点である」といった主観的な決めつけや、単なる暴言や差別としての「メアリー・スー認定」も珍しくなく、無限に広がり続けるメアリー・スー概念に対し、それを避けようとする試みはいたちごっことなっている。
メアリー・スーの存在を前提にした派生キャラ・ジャンル
メアリー・スーは悪名高いため、特にウェブ創作界隈においてはメアリー・スーをモデルにしたキャラがキャラヘイトやヘイト創作に近い行為の対象にされることも多い。
このすばのミツルギや幼女戦記のメアリー・スーが典型的な例である。
ヘイトを露骨に向けない場合でも、主人公との対比としてメアリー・スー的なほどの超人を置くという手法があり、リゼロのラインハルトやゴブリンスレイヤーの超勇者などがいる。
とある魔術の上里翔流は、魔神をダース単位で異世界に追放する特別な右手と妄信的な大量のハーレムを持つなど明らかにメアリー・スーを意識したキャラであるが、本人は自分自身も含めた力で周囲を捻じ曲げてしまう存在を最大限憎悪している…つまりメアリー・スーでありながらメアリー・スーを憎む者であるという皮肉なキャラである。
仮面ライダーエグゼイドの檀黎斗は、創作者として末路はある意味メアリー・スーとしての末路を辿っている。(そもそもの発端が自分より優れたアイデアに対しての嫉妬であり、自分の作ったキャラクターに対して愛情を向けてなかった訳では決して無い。)
また、技術者としては一流だがそれらはこちら側から見れば単なる設定であり、変身するフォームも設定上かなりチート染みた、まさしく本物のメアリー・スーと化している(アイデアで攻撃する能力の面から見ても皮肉であり、父親にも「この世界に生まれるべきじゃなかった」とさえ言われている。)
その後、「誰もクリアできないゲームを作ってしまった...私が犯した罪があるとすれば、それは生まれる時代を間違えたということか」と述べており、彼の思想は周囲の理解を得ることが出来ず、作られたゲームも黎斗も含む、敵が強すぎて誰もプレイする者が居なくなったという皮肉な経過を辿った。
(実際、才能を具現化する手段の無くなった彼は力を手に入れたはいいものの、手に入れた力を使って何がしたいかを問われ明確なビジョンを見出せず破滅、所謂かませ犬的なポジションと化している。)
最期に彼は「次に生まれる時は、そのときは時代は私に追いついているだろうか」と述べている。
(ある意味、明確な理由があったにも関わらず理解を超えたアイデアを蔑む周囲の環境への失望とも取る事ができる。)
二次創作の傍観ものにもメアリー・スー=夢主に対する断罪要素を組み合わせたジャンルが存在する。
pixiv内企画でのメアリー・スー
上記の「最強」「無敵」「誰にでも好かれる」などの設定をつけたキャラでピクシブ内企画に参加する事はあまり好ましくない。
交流ありきの企画が多い中、このように設定したキャラクターを作ると使いづらく、仮に交流をしても最強なので結果的に他のキャラクターの軽視に繋がり、企画の空気が白ける結果になってしまうためである。
このため、企画主催側で過剰な設定の付加を禁止している場合が多い。
メアリー・スー テスト
ネット上において、自分のキャラが自己投影オリキャラに近いかどうかを調べる「メアリー・スー テスト」と呼ばれるテストが多く存在する。
(参考→https://iwatam-server.sakura.ne.jp/game/marysue/test.html)
ただ、ひとつの参考として「メアリー・スー テスト」を見るのは構わないが、必ずしも単一の型にはまったテストで検証しきれる概念ではないので、実際に自分のキャラがメアリー・スーか否かを判断する上ではあまり参考にはならない。
また、これらテストを他者の作品に適用し、「点数が高いから(作品・作者・読者が)悪い」という悪口に悪用する人も存在する。
当然だが、各々が個人的な価値観で作っただけのテストを適用しても、世間一般としての良し悪しが図れることはない。それを恣意的に一般化するのはただの悪口である。
例として上記URLのFAQより引用する。
「Mary Sueの判定は、読む人の解釈にも依存する。つまり、書き手には全然そんなつもりはなくとも、読む人がMary Sueにどっぷり浸かっている場合は、その人はそれをMary Sueだと受け取ってしまうということだ。
あくまで、「自分で書いた小説をテストする」というのが基本であることを忘れてはならない。さらに言うと、どれもこれもMary Sueに見えてしまう場合は、自分がそれに侵されてしまっていると考えた方がいい。」
例えばやおいやTSF二次創作はキャラの性癖や性別を改変するなど作品世界観に対する不自然さは高いが、そういうジャンルとしてファンに受け入れられている。
作品の属性を抜き出して何々が悪いとする、つまり特定の属性やジャンルが嫌いなだけの人が作ったテストで本当に作品を改善できるかは、慎重になるべきだろう。
本国では
1973年発祥という歴史を踏まえてもアメリカでは良くも悪くも古典的なネタであることに注意。
現代のアメリカではこうしたキャラをアリスと呼ぶという説があるが、ネットではソースが確認できず、デマかローカルな流行だと思われる。
メアリー・スー作成者インタビューと、本来の原義
メアリー・スーの初出である「A Trekkie's Tale」の作者Paula Smith氏のインタビューが残されている。
(参考→http://journal.transformativeworks.org/index.php/twc/article/view/243/205)
この中で冒険小説「ドック・サヴェジ」の実写映画を見て「メアリー・スーだと思った」と発言しており、その際スーパーマンやジェームズ・ボンドを引き合いに出して「思春期以降の女性と向き合おうとしない当時の若者が自らの願望を叶えるために作った、読者が命を吹き込む余地がないキャラクター」であると考察している。
スタートレック界隈でメアリー・スー的と評されたウェスリー・クラッシャーに対しても否定的。
「メアリー・スーは二次創作に限定された概念」「メアリー・スーは二次創作において避けるべきマナー、二次創作者のための自戒である」といった言説がネット上には存在するが、この記事を要約すれば、メアリー・スーの作者はフェミニズムを拗らせた偏見丸出しの歪んだ倫理感で「一次創作のキャラをメアリー・スー」として非難しており、これを原義とするならそれらは根底から覆ってしまう。
関連タグ
オリキャラ ぼくのかんがえた U-1(SS用語) 幻想入り 冬木ちゃんねる
対義語タグ
平凡・・・美形の最強キャラではなく普通である
最弱キャラ・・・最強どころか最弱である。メアリー・スー同様にピクシブ内企画では禁止されていることが多い
傍観・・・大活躍するのではなく傍観する
モブキャラ・・・設定の薄いモブキャラ。名前すらないことも。転生モブなどは作者の分身感がより強い
嫌われ・・・周囲に好かれるのではなく嫌われる
※以上の設定とメアリー・スーが両立する場合もある