概要
『鋼の錬金術師』は原作漫画と2003年放送のTVアニメで大きく設定が異なるが、ホムンクルスはどちらでも主人公であるエルリック兄弟と敵対する7人の人造人間として登場する。
彼らは七つの大罪に相当する名が与えられており、どの媒体においても即死級の攻撃ですら一瞬にして蘇生する再生能力と、200年生きても外見が変わらない不老長生を有する。ホムンクルスは人間と構成物質こそ大差ないが、体内に赤い石を有しており、これにより前掲の疑似不老不死としての肉体を維持している(赤い石の設定は原作と旧アニメで異なる)。
七体のホムンクルスはそれぞれ特殊能力を有しており、それらは往々にして他のホムンクルスをも凌駕する代物である。彼らの体にはどこかにウロボロスの紋章が刻まれており、バラバラの状態から再生しても消えることがない。ホムンクルスは人のまがい物の為、生殖能力を持たない。
中でも原作初期から登場するラスト・グラトニー・エンヴィーの三人は原作及び旧アニメのどちらにおいても3人でつるんでいることが多かったが、他は各自の思惑通りに動き、7人が完全な一枚岩だったことは原作・旧アニメ双方で一度たりとも存在しない。
唯一、ユニバーサルスタジオジャパンで公開された旧アニメの番外編ムービー『国家錬金術師軍団VS7大ホムンクルス』ではスロウスを除く6人が結託してエルリック兄弟並びに国家錬金術師チームと戦っている(本作は旧アニメとはパラレル設定である)。
なお、舞台となるアメストリスにおいては、「七つの大罪」を定義したキリスト教はとっくに廃れている設定。旧アニメでダンテが明言しており、原作単行本においても「クリスマスとかの宗教行事は無いんですよ、現実とは別の歴史を辿っているから」と作者が発言している。
※以降の記載には本編のネタバレを含みます
原作・アニメ『鋼の錬金術師FA』における設定
- 彼らを作ったのはヴァン・ホーエンハイムの血液から作られた『お父様』と呼ばれる世界最古のホムンクルス。『お父様』が不要な欲望を削っていく上で生まれたため、彼らは七つの大罪の名を有する。
- 体内の赤い石は完全な賢者の石である。そのため、賢者の石さえ残っていれば全身が蒸発したとしても復活するが、賢者の石は人間の魂の結集体なので、一回再生能力を使用する度に残機である魂を消費していく。魂を全て使い果たした上で致命傷を受けると完全消滅し、二度と復活しない。
- したがって賢者の石を液化させ、人間に流し込むことにより人間をホムンクルスにすることも可能。ただし、注入された人間の魂と石の中の魂で肉体の取り合いになり、失敗すれば肉体が石による破壊と再生に耐えられず死亡するため、成功率は凄まじく低い上、老化は(遅くはなるが)するし、魂が一つしか残らないため再生能力も使用できなくなる(グリリンの場合はリンがグリードを受け入れたため、魂の消費が起きず再生能力を失わなかった)。
- 皆黒っぽい服を着ているが、これらは体の一部でありこれ以上脱ぐことができない。
旧アニメ版における独自設定
→ホムンクルス(旧鋼)参照
メンバー
ラスト(Lust)
色欲のホムンクルス。妖艶な美女の姿をしている。紋章の位置は鎖骨部。
ホムンクルスの司令塔的な立ち位置。
特殊能力は最強の矛と呼ばれる、ホムンクルス最強の貫通力を有する伸縮自在の指(旧アニメでは爪)。
原作では二番目に誕生した。一方、旧アニメでは前述の設定上、スロウスに次いで若い7歳。
グラトニー(Gluttony)
暴食のホムンクルス。禿げ頭の太った小男の姿をしている。紋章の位置は舌。
見た目通り間が抜けていて、ラストを慕っている。ちなみに原作では一人称が「おで」、旧アニメでは「ぼく」。常に空腹であり、優れた嗅覚で相手を探し当て捕食する。硬さに関係なくどんな物体も噛み砕くことが出来る。
実は真理の門(旧アニメでは一貫して門と呼ばれる)の失敗作という設定であり、人間を好んで喰らうのはその魂を賢者の石に錬成するためである。原作及びFAでは真理の扉の模造品を腹から作り出し空間ごとを「呑む」ことができる能力を発揮。
原作では六番目に誕生。
エンヴィー(Envy)
嫉妬のホムンクルス。やせぎすの中性的な外見(旧アニメでは男設定)。紋章の位置は左腿。
皮肉屋でとことん性格が汚い。後述の特性上、凄まじいほどの体重とパワーを誇る。特に旧アニメでは終盤までひたすら物語をかき回していたが、その正体は意外な人物であった。
何にでも変身できる能力を有しているが、その本性はどの媒体でも巨大な爬虫類のような化け物の姿をしていた。また原作・FAにおいては賢者の石を使い切った直後の「核」の状態で、賢者の石を動力源とする人形兵を吸収することで復活する描写があった。
原作では四番目に誕生しているが、旧アニメでは最初に作られた。
グリード(Greed)
強欲のホムンクルス。突き立った髪と釣り目を持つ青年。紋章の位置は左手甲(盾装備時にも浮き上がる)。
その二つ名に恥じぬ強欲ぶりを有する野心家であり、一度手にしたものは自らの身を削ってでも離さない。造物主の元を離れデビルズネストという酒場で暮らしていた。原作では『お父様』に処刑されたが、残った賢者の石はシン国の王子リン・ヤオに宿され、長い事二重人格として活動していた。この形態をグリリンと呼んだりもする。
固有能力は最強の盾と呼ばれる防御力。体内の炭素を結集しダイヤモンド並みの硬さを得る。
原作では三番目に誕生。旧アニメでも140年前から生きているというセリフがあり古株の模様。
※残る三名はアニメ放映中に登場したため、設定は大きく異なります。
プライド(Pride)
傲慢のホムンクルス。どちらの媒体でもホムンクルスのリーダー格という設定が共通している。
原作/新アニメ版
何の皮肉かセリム・ブラッドレイその人。セリムの肉体は単なる器であり、本体はどす黒い平面の影。この影を自在に操り、相手を切り裂いたり拘束したりする。単純な戦闘力はトップクラスである。
傲慢の名に恥じず、見た目とは真逆の徹底した残虐ぶりと狡猾な知能を有する。
『お父様』から最初に切り離されたため外見もよく似ている。誰が呼んだかこども長男。義父であるラースは末弟であるが、世間体としては父。
紋章の位置は不明。
旧アニメ版
CV:柴田秀勝(新アニメにも続投)
その正体はキング・ブラッドレイその人。大まかな設定は原作と変わらないが、再生能力と空気の流れが見える力を有する。ちなみにこちらでは養子のセリムは普通の人間。
お茶目な部分は単なる演技であり、ダンテにとって最も忠実な部下である。
不老不死であるが微弱な変身能力を有していたため、年を取ったように見せかけて周囲の目をごまかしていた。
ラース](Wrath)
憤怒のホムンクルスであり、度々静かながらも激昂した面持ちを見せる。
なお、彼のみプライドとの対応のため原作を先に表記する。
原作/新アニメ版
CV:柴田秀勝
アメストリスの支配者であるキング・ブラッドレイ大総統の真の姿。
最後に作られたホムンクルスであり、人間の肉体を乗っ取った姿。そのため老化もするし再生能力も持たない。旧アニメとは異なりホムンクルスの司令塔でもない。
固有能力は最強の眼であり、飛び交う銃弾や落下する瓦礫の軌道すら完全に読み切るほど極めて優れた視力を誇る。左眼に紋章があるため普段は眼帯で隠している。また、作中でも最高クラスの身体能力と剣技を使いこなしているが、これは賢者の石由来のものではなく、大総統となるべく育てられた際に身につけた自前のもの。
旧アニメ版
CV:水樹奈々
少年の姿をしたホムンクルス。紋章の位置は右足裏。
青白い肌をしているが、なぜか右腕と左足の色・大きさが異なる。
固有能力は融合能力であり、他の物質と触れ合うことでその物質と合体することができる。そのためホムンクルスで唯一錬金術を使えるが、戦闘力は7人の中で最も低い。
誕生当初は記憶を有していなかったため、とある方法で現実世界に出現してからは放浪を重ね、自分を人間だと思い込んでいた。後にエンヴィーに赤い石を与えられたことでホムンクルスとして覚醒する。
詳細はラース(鋼の錬金術師)を参照。
スロウス(Sloth)
怠惰のホムンクルス。
原作/新アニメ版
CV:立木文彦
ホムンクルスで最も大きな体を有している。紋章の位置は右肩。
サボり癖があり事あるごとに「めんどくせぇ」と言い放つが、その固有能力は最速の足であり、ラースをも凌ぐスピードを有する(速すぎて本人の反応速度を超えている)。その巨体から放つ怪力攻撃、戦車の砲弾でも耐えるほどの筋肉の鎧も強力。
五番目に生み出され、ひたすら地下で穴を掘らされていたが…?
旧アニメ版
CV:鷹森淑乃
ホムンクルスの末っ子。紋章の位置は左胸。
背の高い美女の姿をしており、大総統秘書官のジュリエット・ダグラスに擬態していた。
固有能力は体の液状化で、液状化している内は再生能力すら使わずにあらゆる攻撃をすり抜ける。