作品概要
19歳の誕生日、暗黒結社ゴルゴムの手によって、兄弟同然に育った親友・秋月信彦(あきづきのぶひこ)と共にゴルゴムの次期創世王候補「ブラックサン」となるべく改造されてしまった青年・南光太郎の孤独な戦いを描いた、重くハードなドラマ性を持った物語である。
原作者・石ノ森章太郎の作品に原点回帰した設定(企画時には「仮面ライダー0号」とも称された)と、平成作品にも影響を与えた先駆的な展開とを併せ持った内容から、現在でも人気の高い作品。
本作の前身企画は、平山亨が1986年3月に作成した『キミは仮面ライダーをみたか?!』。この企画は「原点回帰」をコンセプトに仮面ライダー1号の世界観を80年代の最新技術でリメイクする企画だったが、当時はリアルロボットアニメブームだったこともあり実現に至らなかった。その後、メタルヒーローシリーズを手がけていた吉川進の手に渡り、本作の製作に至る。
殺陣の担当がそれまでの大野剣友会からJACへと変わり、音楽も、初代から一貫してシリーズの劇伴を手がけていた菊池俊輔から川村栄二に交代することになった。
シリアスなストーリーとは裏腹に「ゆ゛る゛さ゛ん゛!!」「ゴルゴムの仕業だ」など、今もネタにされる迷言も数多い。
また前作『仮面ライダースーパー1』から放映期間にブランクがあった事もあり、本作の時点では過去のシリーズ作品との設定の連続性はない(続編である『仮面ライダーBLACKRX』終盤ではじめて世界観を共有していた事になった)。
放送開始前週に当たる、1987年9月27日には事前特別番組『これが仮面ライダーBLACKだ!』が放送された。小野寺丈と榎田路子をリポーターに、石ノ森や劇中キャラクターへのインタビュー、BLACKの能力解説や変身プロセス、主演オーディション最終審査会の模様、てつをの主題歌のレコーディング風景などで構成されている。
テロップのフォーマットは『仮面ライダースーパー1』までと違い(サブタイが手書きなど)、当時のスーパー戦隊シリーズ・メタルヒーローシリーズと同様の物が使用されている。
ライダーのデザインに初めてバンダイが関与したのも本作で、デザインのフィニッシュはバンダイ傘下のプレックスが手がけた。それまでのマフラーとスーツに、グローブとブーツといった「人が着ている」印象を排除した、生物的・外骨格的とも評されるソリッドなデザインは後のライダーにも影響を与えた。
1988年にゲーム『仮面ライダーBLACK 対決!シャドームーン』が発売された。
2021年4月には本作のリブート作品となる『仮面ライダーBLACK SUN』の制作が発表された。
仮面ライダーBLACK(世紀王ブラックサン)
南光太郎がゴルゴムによって生体改造を受け、次期創世王候補の証である二つのキングストーンの片割れ「太陽の石」を与えられた姿。中間形態の「バッタ怪人」を経てこの姿に変身する。
それまでのライダーとは異なりマフラーや手袋・ブーツのようなスーツを思わせる造形を省いた外骨格的(生物的)なデザインが特徴。
(関節部分からは筋肉組織が垣間見えるようになっていて非常に生々しい)
必殺技のライダーパンチとライダーキックを始めとした肉弾技を得意とし、さらにエネルギーを蓄積させ技を強化したり、敵の攻撃を跳ね返す事にも使えるキングストーンフラッシュまでも備える。
なお(映画作品やゲームなどの単発登場を除き)昭和平成ライダー含む主人公ライダーの中において、劇中における決まり手がライダーキックとライダーパンチのみというライダー内随一の技のバリエーションの少なさを誇る。
(他には第1話でクモ怪人の群れを蹴散らしたライダーチョップがあるくらい)
それぞれ突撃殺法としてダイナミックスマッシュとスパークリングアタックを持つ。
また世紀王の証である強力な剣・サタンサーベルも扱う事ができる。
ちなみに本来の名「ブラックサン」とは「黒い太陽」という意味であって、BLACKに敬称の「さん」をつけた優しさではない。
混同しないようにか、第3話からブラックサン呼びの回数は極端に減っている。
歴代ライダーの中でも変身ポーズの格好良さが群を抜いているとされ、pixiv内に数多くイラストが投稿されており、パロディも多い。
なお、そのポーズは仮面ライダー2号の変身ポーズを逆にしたもの。
関連人物
世紀王シャドームーン
光太郎の親友・秋月信彦がゴルゴムによって改造された姿。もう一つのキングストーン「月の石」を持つ。
初期段階ではブラックサンと大差無い姿らしかったが、再改造により銀色ボディのメカニカルな外見になった。
仮面ライダーの名前を持ってはいないが、そのディティールと、主人公であるBLACKと同等の扱いから「仮面ライダーシリーズ初のダークライダー」として認知されている。
シリーズを代表する人気キャラであり、その後のシリーズで何度も殺されては何度も甦るという非業の運命を背負っている。
(その極みはSFCソフト『ガイアセイバー』で、なんとザコ敵として量産されている始末)
ゴルゴム
世界征服を企む暗黒結社。組織の黒幕として「創世王」を奉じ、3人の「大神官」が実務を仕切る一種の宗教団体であり、「不老不死」を謳い文句に政財界にも浅からぬパイプを持つ。
序盤はシャドームーン復活とBLACKの抹殺を主な目的とし、産業スパイやゲリラの育成、テロ活動、怪人を強化する薬の原材料としてマグロを買い占めるなどの幅広い悪事を行う。
シャドームーン復活後は夕張占領計画やアイドルを使った若者の洗脳・煽動など、スケールが大きくなっていった。
そして終盤ではシャドームーンがBLACKを殺し、日本の征服に成功している。
こうした征服事業を実現させた組織は、ゴルゴムを除いては大ショッカー(劇場版仮面ライダーディケイド)、バダン(仮面ライダーSPIRITS)くらいのものである。
主なキャスト
南光太郎役を演じた俳優。
いかにもヒーローな容貌をしており、V3=風見志郎の宮内洋とはまた違った魅力を持つ。
(だが両者とも「音痴」という点は共通……)
そのヒーローらしい容貌と演技は石ノ森章太郎からも太鼓判を押され、本人も原作者にそこまで褒められたのは涙が出るほど嬉しかったとか。
放送当時に写真集まで発売されるほどの人気を得たことから、次回作の仮面ライダーBLACKRXでも引き続き主人公・南光太郎役を務めた。
投稿されている仮面ライダーBLACKの作品においては、何故か作品名のタグよりキャスト名であるてつをタグの方が圧倒的に多い。
仮面ライダーBLACKや仮面ライダーBLACKRXの投稿はタグがいまいち統一されにくいため(例:BLACK、RX、仮面ライダーブラックなど)二作品通した主演キャストである彼の名前が多く用いられていると思われる。
また、その独特の声質からセリフの全てに濁点がついているように聞こえるため、彼のセリフに意図的に濁点が付けられたファンアートが多数見られる。
仮面ライダーディケイド終盤、南光太郎=仮面ライダーBLACK・仮面ライダーBLACKRXとして客演。
BLACK、BLACKRXの同時変身という「夢の共演」でファンを熱狂のズンドコに叩きこんだ。
仮面ライダーの正体を知る、インターポール捜査官の滝竜介(初代仮面ライダーの滝和也が元ネタ)を演じた俳優。
出演を依頼された際に、「仮面ライダーの正体を知る人物」という条件付きで、出演を了承したらしい。
BLACKのスーツアクターとして本作でデビューした、JAE(ジャパンアクションエンタープライズ。当時はJAC)スーツアクター。
トランポリンを用いた空中技が得意で、この人でなければ成り立たないシーンは数多い。
ちなみに、RXの方で有名になった次郎さんの代名詞的アクションである前方バク転は、本作の時点で披露している(第39話)。
平成ライダーでの活躍しか見た事のない人は想像がつかないかもしれないが、当時はとてもスリムな体型だった。
登場人物
主人公側
暗黒結社ゴルゴム
ゴルゴムメンバー
主題歌
- 仮面ライダーBLACK
作詞:阿木燿子/作曲:宇崎竜童/編曲:川村栄二/歌:倉田てつを
OP楽曲。シンプルでかっこいいヒーローソングに仕上がっているが、てつをの歌声がパワフルすぎてファンの間では「×上手い ×下手 ○てつを」という特殊な評価をされている。
- Long Long Ago, 20th Century
作詞:阿木燿子/作曲:宇崎竜童/編曲:川村栄二/歌:坂井紀雄
ED曲。当時としても珍しい、仮面ライダー関係の歌詞が全く入っていない楽曲であり、RXでもこの方式が続けられ、現在の平成ライダーOPに繋がっていったと思われる。
タイトルは「昔々、20世紀という時代があったそうな」という意味になるのだろうか。
挿入歌
- 仮面ライダーBLACK 〜星のララバイ〜
作詞:阿木燿子/作曲:宇崎竜童/編曲:石田勝範/歌:五十嵐寿也
- ブラックホール・メッセージ
作詞:阿木燿子/作曲:宇崎竜童/編曲:石田勝範/歌:五十嵐寿也
BLACKの戦闘テーマ。よくサビ部分が「ラーメンプリーズラーメンプリーズフォーメンマー」と聞こえるとネタにされるが実際には「LOVE&PEACE_LOVE&PEACE_Forever」と言っている。(仮面ラジレンジャーでもネタにされた。)
- 変身!ライダーブラック
作詞:石ノ森章太郎/作曲:渡辺宙明/編曲:石田勝範/歌:五十嵐寿也
BLACKの戦闘テーマ。光太郎が握り拳を「ギリギリギリ…」と鳴らしている際にイントロが流れるのが特徴。
ラスボスの「創世王」に引っ掛けたのか、聖書の「創世記」に関するワードが歌詞に込められている。
- BLACK ACTION
作詞:石ノ森章太郎/作曲:渡辺宙明/編曲:石田勝範/歌:五十嵐寿也
BLACKの戦闘テーマの一つだが、歌詞の殆どがゴルゴム関連であり、ある意味ではゴルゴムのテーマも兼ねている。そもそも、イントロからしてヒーローの戦闘曲というよりも悪の組織が暴れる雰囲気を漂わせている。
- レッツファイト・ライダー
作詞:八手三郎/作曲:渡辺宙明/編曲:石田勝範/歌:五十嵐寿也
BLACKの戦闘テーマの一つ。
- 激走!二大マシン
作詞:八手三郎/作曲:渡辺宙明/編曲:石田勝範/歌:五十嵐寿也
- ゴールへ向かって走れ
作詞:石ノ森章太郎/作曲:渡辺宙明/編曲:石田勝範/歌:五十嵐寿也
- オレの青春
作詞:石ノ森章太郎/作曲:渡辺宙明/編曲:石田勝範/歌:倉田てつを
南光太郎のテーマソング。
- MAゴコロあ・げ・る
作詞:山田隆司/作曲:小野寺丈/編曲・演奏:21-TWENTY ONE-/歌:大井裕子
劇中ではムカデ怪人が化けたアイドル・大井裕子が歌うという設定で登場。
萬画版
昭和ライダーで石ノ森章太郎本人により萬画版が描かれたのは初代を除けばこれとアマゾンだけであり、週刊少年サンデーに連載された(これの連載時期に青山剛昌が掲載した読切漫画では、「さまよえる赤い蝶…超? 超人なら仮面ライダーか? いや、ライダーはブラックだしな」と言うセリフが出ている)。
しかし、萬画版の光太郎はかっこいい仮面ライダーではなく、バッタ怪人としてゴルゴムと戦い、信彦も光太郎と寸分違わぬ姿のバッタ怪人にしか変身できなかった。
パンチやキックで戦っていたTV版とは異なり、もぎ取られた腕を新しく生やしたり、キングストーンフラッシュをドラゴンボールのようにバンバン撃ちまくったりと、TV版しか見ていない読者から見たらタイトルがなんだったのかもわからなくなるような戦闘スタイルを取る。
作品自体も、ご町内ヒーローとして活躍していたテレビ版とは異なり、ゴルゴムと光太郎の出生の謎を追って世界各地を飛び回る展開となり、中盤まで光太郎はバイクに乗ってすらいなかった。
さらに、本作では石ノ森節が悪い意味で全力炸裂しており、少年誌とは思えないほどグロテスクな場面が多く、ラストではゴルゴムが核戦争を起こして日本を滅亡させ、信彦との最後の戦いに勝利したものの自分を見失った光太郎が「教えてくれ~!! 俺は誰だ!?」と叫んで終わるという難解かつ救いのない終わりを見せた。
こちらは「仮面ライダーBlack」という表記で連載されており、テレビ版とは分けられている事が多い。
詳しくは仮面ライダーBlack(漫画)を参照。
外伝
島本和彦氏はテレビ版の外伝として、『仮面ライダーBlack Part.X イミテーション7』という読切漫画をサンデーに掲載している。
BLACKを倒す実験台としてゴルゴムが作り出した量産型怪人「ブラック・ダミー」の一人・太刀川洋は、ある日基地を脱走し、誘拐される前に束ねていた暴走族の元まで逃走する。
ゴルゴムによって与えられた力でライバルたちを蹴落としヘッドに戻る洋だったが、そこにゴルゴムの追手が迫る……というもの。
こちらは現在、氏のコミカライズ版『仮面ライダーZO』に収録済み。
関連イラスト
関連タグ
美墨なぎさ…声優が子役出演(続編にも別役で出演)していた。ちなみに、彼女が変身した時の名前は…
主なゲスト出演者
土師孝也…光太郎の父・南正人(1話)役
芝原チヤコ…ハチ怪人に襲われる女子高生(9話)役
中田譲治…ゴルゴム破壊工作部隊長・杉山茂(10話)役
10号誕生!仮面ライダー全員集合!! → 仮面ライダーBLACK → 仮面ライダーBLACK RX