"幽霊"の名を持つ機械よ―――
もし消えゆく人の痛みと悲しみが
ほんのひとかけらでも、わかるなら―――!
概要
木星共和国(旧木星帝国)で開発された可変モビルスーツ。型式番号EMS-TC02。
主なパイロットはフォント・ボー。
本来ガンダムとして開発された機体ではなく、「ガンダム」の称号はパイロットであるフォントが(心の中で)名付けた物であり、フォント以外からは専ら正式名称である「ファントム」の名で呼ばれる。
本機は「一騎当千」をコンセプトとする特務用モビルスーツ「サウザンド・カスタム(サーカス)」の内の一機であり、その中で二番目に開発認可が降りた機体である。
木星帝国が過去にサナリィから強奪したレコードブレイカーのデータと、アマクサをベースにしたミノフスキー・ドライブ搭載の惑星間高速移動能力機であり、単機で連邦の要所を電撃的に襲撃する『テロ行為』を視野に入れて開発が進められていた。
惑星間という長距離を移動する設計思想上、機体を構成する四つのブロックの位置を入れ替え、巡航形態「蜃気楼鳥(ミラージュ・ワゾー)」へ変形する機構を備える。
ただし、本機に搭載されているミノフスキー・ドライブは技術的に未成熟であり、同時期にリガ・ミリティアで開発・運用されていたV2ガンダムと比較した場合、その完成度は50%程度でしかない。このため、ドライブを稼働させた際には、余剰エネルギー放出の欠陥である「光の翼」が常時発生してしまう(そもそもV2ガンダムのミノフスキー・ドライブ自体が完成から程遠く、機構上「光の翼」が全く発生しない仕様となってようやくミノフスキー・ドライブは「完成」と言える)。
ドライブの力場を安定させる為に、全身にサブスラスターを増設して余剰エネルギーの排出口を多数化し、更に補器として複数のIフィールド・ジェネレーターを外装して力ずくでベクトルを収束させる事で、推進システムとしての機能を確保した。が、これによって莫大なエネルギー消費が生じる事となり、排熱の問題が発生。結果的に稼働時間が短くならざるを得ず、『惑星間航行』という長期間連続運用のコンセプトに対して、完全な失敗作となってしまった。
しかしこれにより、ミノフスキー・ドライブを起動させた場合、「ファントム・ライト」と呼ばれるミノフスキー・ドライブの機動力とIフィールド・バリアの対ビーム防御を併せ持った現象を、短時間ながら引き起こすという、設計思想外の戦闘力を手に入れている。
機体特性としては、ミノフスキー・ドライブ搭載機というその性質上、推力・機動力に秀でており、特に蜃気楼鳥形態時の加速力・巡航能力は、事実上の上位機であるV2ガンダムを除いて、既存のモビルスーツ、モビルアーマーのそれを上回る。
ただし、設計者がミノフスキー・ドライブを稼働させなくとも1機のMSとして一定の完成度を目指した弊害として、本来不必要であった熱核スラスターおよびその推進剤も、通常のMSと同等推力に相当するものが搭載されており(ジャブロー戦ではファントム・ライト未使用状態でも、重力下において飛行していたため、パワー・ウェイト・レシオは1倍を上回る)、V2ガンダムがスラスターをあくまでサブ推進機とすることで軽量化を果たしていたのとは逆に、必然的に重量(質量)増加による慣性の不利を背負ってしまっている。
更に加えて、ミノフスキー・ドライブの本来のメリットの一つである長大な加速時間により達するが20Gの加速を許容する慣性緩和機能は、本機の完成度では稼働せず、リニアシートによる加速Gの相殺に頼るしかないため、加速中に急旋回を行った場合はパイロットはおろか、機体の耐久力をも上回るGが発生する欠点を抱く(劇中のフォントは、10G前後が限界と語っている)。
防御面に於いても、ビームシールドが搭載できず、Iフィールドによって内側に押さえ込んだメガ粒子が、自機を損傷させる可能性がある(本機のフェイス・エクステリアとツインアイを有しているが、これはファントム・ライト稼働時に自身のメガ粒子から本来のカメラアイを保護するためのカバーとして機能させる二次装甲であり、内部には木星式モノアイを搭載している)など、ミノフスキー・ドライブが未熟であるが故に、数多くの問題を抱えてしまう事となった。
特に、ファントム・ライト稼働限界後に切り替わる強制放熱モードでは、全身から冷媒を吹き出す事から、稼働時オーバーロードによる莫大な熱量負荷が伺われる。この内、サナリィの一部のF9グレードでも採用されていた、頭部バイオ・コンピューター(熱に非常に弱い)集中冷却用ギミックである、『フェイスオープン』は、機体のオーバーロードレベルに応じて最大二段階まで展開する仕様となっており、第二段階になるとフェイス部分に加え頬のパーツまでもが展開する。
機体制御は本来ならばバイオ・コンピュータによって行われる予定であったが、木星側ではバイオコンピュータの解析が遅れていた為(原因は八掛けの吊り橋の配線)、本機の完成を急ぐ木星のタカ派上層部の意向で木星式のOSをも組み込むことで「取り敢えず」完成させられた。
しかし、不完全なバイオコンピュータと木星式OSの組み合わせは相性が悪く、その結果通常のMSとして起動する事すらままならなくなり、「失敗作」あるいは「未完成機」の烙印を押され、封印されることとなった(この際にミノフスキー・ドライブも予定していた能力を発揮出来ない事が判明していた為、可変機構は物理的なロックを噛ませ封印されている)。
その後、サーカスへ捕らえられたフォントが脱走する際に搭乗。ハロロのサポートを得て起動させ、更にプログラムの不具合を解決させ、以降彼の乗機となった。これはハロロをダウンロードした際にハロロがファントムのプログラムに絡め取られて抜け出せなくなってしまったことも起因している。
数々の激戦を乗り越え、モビルスーツという単一の戦闘単位を超えた活躍を見せるが、マリア・シティでの戦闘にて迫り来る核ミサイルを迎撃する為に封印されていた可変機構を開放するべく自刃し、ロックを強引に解除した上でミノフスキー・ドライブ飛行を敢行。核ミサイルの迎撃には成功するもののこの結果機体に著しいダメージが発生し、作戦後カーティス・ロスコらの手によって改修が行われ、「ゴーストガンダム」へと生まれ変わっている。
なお、本機は可変機として設計されているものの、その可変機構は客観的に見た者から「壊れていく」と形容されるような代物であり、(人型状態よりはマシだが)蜃気楼鳥のフォルムも既存の航空力学に則っているとは言いがたい。
総合的に言えば長所と短所の落差が激しい非常にトリッキーな機体である。Iフィールドの嵐による反則じみた防御力があるとは言え、機体の構成上固定武装がフレイムソード一対しか無く、純粋な”戦力”としては頼りない。ある意味「戦闘は苦手だが知謀と機転で立ち回ることが得意」なフォントだから真価を発揮出来る機体であると言える。
武装
ファントム・ライト
本機に搭載された完成度の低いミノフスキー・ドライブ。
ファントムがミノフスキー・ドライブを起動させると、そのエネルギーが「光の翼」として放出されるが、本機のそれは全身に搭載されたIフィールドによって無理やり抑えこまれた結果、揺らめく炎のような形となる。
これは本来のファントムの仕様上にある能力ではなく、Iフィールド搭載によって偶発的に備わった機構である。
ただし、全身に外装されたIフィールドの効果により、強力な「Iフィールドの嵐」を身に纏った状態となるため、ビーム兵器類に対しては射撃・格闘・防御用を問わず無力化し、またビーム・シールドでの防御が不可能なヴェスバーの砲撃すらも受け流す事が可能となる。機体の出力自体も大幅にパワーアップしており、自分よりも大柄なMSを単純な力だけで振り回すほどの威力を見せつけた。むしろファントム・ライト展開時は力に物を言わせた肉弾戦で相手を沈める場合が大半である。
ただし膨大な排熱への処理問題が解決していない為、最大機動時の連続使用時間の上限は15分と機動兵器として運用するにはあまりにも短い。
この弱点を補うためバックパックに装備した緊急冷却用カートリッジによって一度の出撃で一回のみ、ミノフスキー・ドライブの稼働時間をもう15分程度延長が可能である。
なお、蜃気楼鳥形態時は推進ベクトルやエネルギー循環効率などが長距離移動に適した形へと再構成される事もあって稼働時間は延長されるが、これを用いても3分程度の延長が限度である。
また、変型後の形状は空力学的には不利だが、Iフィールドのミノフスキー・エフェクトにより空気抵抗を軽減する事で、MS形態よりも巡行性能が向上する。
ファントム・ライトの危険性
上述の『カメラアイを保護するためのカバー』が必要な事から、「光の翼」をIフィールドの“嵐”で強制的に抑え込んでいる弊害として、ファントム・ライト稼働中はメガ粒子が自機を傷つける可能性が高いと推察される。
『Vガンダム』劇中の、「メガ粒子砲の粒子一つに直撃されても、人間は即死でありますから」というセリフの通り、超高熱の粒子は容易にMSの装甲を蜂の巣にする(逆にこれを利用して、収束率を落とす事で直撃させることなく敵機を撃墜する武装も存在する)。よって理論上、ファントムガンダムはファントム・ライト稼働のたびに全身装甲のフルメンテナンスを必要とする、極めて整備性・稼働率の悪い機体であると言える。
当然ながら周囲に近づいた「人間は即死」させるため、市街地での稼働についても十二分に熟慮しなければならない。
(なお、小説版『F91』においてシーブックの父親は、ビームが近くを通り過ぎた事で穴だらけの死体となってしまった。)
Iフィールド・ビームバリア
全身に装備された対ビーム・バリア。原理などの詳細は別記事参照。
本来はミノフスキードライブの安定の為に増設された物だが、複数のIフィールドジェネレーターを搭載した結果、本機のIフィールド・バリアは非常に強力なものとなる。更に副産物としてこれまで例の無い「Iフィールドの力場操作が可能」となった。これによりビーム攻撃を分散・拡散させて周囲への被害を大きく軽減させる事も可能である。
しかしながら、Iフィールドの原理上実体弾に対する防御能力はゼロであり、加えて本機はビームシールドを搭載していない(Iフィールドを纏うせいで搭載できない)。
このためジャブロー戦では、パイロットが対ビーム防御能力を過信した事もあって、マシン・キャノンという単純兵装によって小破させられている。
フレイムソード
ファントム本来の武装。
腰部に二本備えられた大型のビームソードであり、ファントム・ライト時には光の翼同様「Iフィールドの嵐」にさらされる為、刀身が揺らめいて見える。
敵のビームシールドによる防御に対して、シールドのビームを巻き込み無力化する事が可能となっており、ビームシールドを基本とする当時のモビルスーツの防御手段を無視した強力な攻撃手段となりうる。
また、ビームを発さずともデバイス部分を加熱する事によってヒートダガーとして運用する事も可能。
このモードはファントムが蜃気楼鳥形態へ変形する際に可変機構の封印を解く際にも使用された。
あくまで「刀身のビームが安定せず炎のように揺らめいている」ことからフレイムソードという名称が付けられたのだが、ゲームなどの別媒体ではビームが橙色になって本物の様に燃えているような演出になっている。
バタフライバスターB
クロスボーンガンダムX0のバタフライバスターをブラックロー運送が解析、リニューアルした装備。クロスボーン・ガンダムX0のメインウェポンだが、ファントムも使用する。
六挺しか存在しない試作武器を元にしているものの、使い勝手に関してはバタフライバスターと同様。加えてオリジナルと比較して12%の出力UPに成功しており、宇宙世紀0150年代の平均的なビーム兵器よりも若干高い出力を有している。ただし、ビームサーベルやビームシールドに力づくで競り勝てるほどの出力は有していない。
なお、上述の“Iフィールドの嵐”の原理上、ファントム・ライト稼働中はサーベルモードのビーム刃が揺らめき、バスターモードでは射線が歪むはずだが、これらの運用上の不都合は見られなかった。本件についてはマンガ演出的な都合のためだろうが、原理としては謎である。ファントム解析の際に問題視されたIフィールドの対策がなされていると考えるべきか。
ビームローター
宇宙世紀0150年代に実用化された、ミノフスキー・エフェクトによる重力下長距離飛行システム。機構的な詳細はこちらを参照。
「Dust」の舞台である宇宙世紀0168年時に左腕へと増設された追加装備だが、ザンスカール製MSのそれというよりもデスフィズのビームファング的な複合兵装(ビームローター+近接戦用ビームドリル)として扱われる。
蜃気楼鳥形態時には機首部に配され、レシプロ機のようなシルエットになるが、ビームローターは垂直下方面に斥力場を形成して浮遊し、更にその斥力場にわずかな密度差を作る事で、『見えない滑り台をゆっくり滑り続ける』システムのため、この配置では飛行・推進システムとして機能しない。これは、ビームが質量ゼロの縮退状態にあり、空気や海水といったあらゆる流体から、抵抗を受けないためである。
このため、蜃気楼鳥形態時のビームローターは、前面防御のみのために使用している事になるが、『F91』以降の各作品で言及されているように、発光の強い(敵機からの視認確率を激増させる)ビームシールドを連続使用するようなパイロットは素人同然であり、フォントが本質的にはエンジニア――パイロット適正が低い事を表している。
なお、ビーム兵器である必然として、これもやはりIフィールドの嵐の影響を受け、形状が不安定化する。
「Dust」劇中ではバタフライバスターBやフレイムソードの使用シーンが無い(「ゴースト」最終戦時に消失したため)ので、おそらくはこれらの代用品として搭載されたものと思われる。
ファントムV2
機動戦士クロスボーン・ガンダムDUST出演時のファントムの呼称。V2の番号を振られているが、これは単純にバージョン2といった意味であり、機体内容が変わったわけでは無い。
銀色の特殊金属コーティングがされたゴーストガンダム形態からキゾ中将との最終決戦を経てコーティングが剥げ落ちたため、改めて元のファントムに戻ったかたちである。
キゾ中将との激戦を経たあと、15年間にわたって宇宙を彷徨っていたため、機体にダメージが蓄積されてしまっており、全盛期の75%程度まで出力が落ちている。ミノフキー・ドライブの出力低下と固定武装であったフレイムソードの消失を補うために搭載された新武装:ビームローターがV2形態の特徴と言える。
技術レベルが大幅に下がった「宇宙戦国時代」においてはロストテクノロジーに類する機体であり、ガタがき始めているとは言っても未だに最強クラスの実力を持った機体である。だが、機体の補給パーツも無ければ完全に修理する技術もないため、余り無理は利かない状況である。
実際問題、ファントムを完全な状態に治そうと思ったら技術が衰退していない木星まで持って行くしかないのである。
ファントムV2改
V2から更に調整を重ねた姿。外見はほとんど変わっていないが、サイドスカートのフレイムソード/フレイムガンが再生されており、ミノフスキー・ドライブも大幅に強化。後述のバロック同様にファントムライトを冷却剤なしで一時間程度も展開できる上、推進力も従来より12%向上。今までで最高の性能を、最善の状態で発揮できるようになった事で、ファントムとしては一つの完成形に至ったともいえる。
武装はブラックロー運送が復元した「クジャク(前作で登場したクロスボーンガンダムx-0用のマルチウェポン)」の他にビームローターを改良したミスティックシールドを装備。
バロック
機動戦士クロスボーン・ガンダムDUSTに登場したファントムのバリエーション機。
「首切り王」が木星から買い取ったファントムのフレームをベースに、10年の間にフランク・オズに完成させた機体。
元サナリィの技術者であるフランクが十分な時間をかけて組み上げたため、冷却システムが完成しておりファントムライトの連続展開可能時間が冷却材無しでも1時間以上と大きく伸びている。
冷却システムを全身に組み込んだ分、全高は18m級のMSと同等と原型に比べてひと周り大型化しており、外見上の特徴も言われてみればファントムに似ている部分がなくはない程度に別物で、フォントもファントムライトが展開されるまで全く気付けなかった。
また最初から首がないという独特の形状をしており、これはただのハッタリの類ではなくメインカメラに限らずセンサーの類が一切組み込まれていない。
だがパイロットである首切り王が超越的な感覚により外の世界を直接認識することで、通常のMSの域を越えた感知能力と回避性能を発揮する事が可能。
そしてこの機体の一番の特徴と言える物は、右腕に搭載された全長40Mにも達するガンダリウム合金製の大剣である。
これは芯の部分に繋ぎ止めるワイヤーが通っている以外はガンダリウム合金の削りだしとなっている超重量の質量兵器で、実弾装備が主流のUC.0160年代のMSでは防御も破壊も至難の業。
しかも切っ先のブロックにはミノフスキー・ドライブの推進器が組み込まれており、剣の重さで機体の動きが鈍る事は無く、振り回す速度も非常に速い。
むしろこの大剣こそが兵器としてのバロックの本体であり、MSとしてのバロックはそのコントロールユニットであると言える。
また正式な武装はこの大剣一本であるバロックだが、元がファントムであるため、フォントがゴーストガンダムでやったように、Iフィールドを制御する事で全身のファントムライトをビーム砲とて転用する事が可能であり、攻撃においては遠近共に、防御においては実弾とビームの両面に隙のない機体に仕上がっている。
バロック改
先の戦闘で損傷したバロックの左腕部分をガラハドのワイヤーアームに置換したバロックの改修機。ワイヤーアームは原型機の有線式でなくサイコミュによる無線操縦となっている。
メルト・バロック
バロック改をコアユニットとした格納する、深海生物のような外見の巨大MA。全長は50mを超え、単機による戦場制圧を目的として作られた。曲面装甲により実弾の跳弾を狙い、ビーム兵器に対してはIフィールドを搭載している。武装はかつて木星軍の運用したエレファンテ同様のフレキシブル・ノーズキャノンが2門とバロックの右腕と同じガンダリウム合金製のダガー・ファンネルを22基搭載。全体設計は小型のカオスレルといってよく実際にカオスレルのデータが参考にされている。メインパイロットの首切り王の他ダガー・ファンネルの制御に6人のサイキッカーが搭乗する。
バロック改・改
攻撃力を極限まで追求してさらに改修されたバロック。
左腕部はガラハドのワイヤーアーム(有線式)とデスフィズのビームファングの復腕となっていて
「戦況に応じてどちらかを使用し、もう一方を待機状態にする」というのを想定されていたが
首切り王はこれを同時に使いこなしてみせた。
これは首切り王の技量もあるが、木星に帰還した「カーティス・ロスコ」の情報によると
元よりバロックの全身には木星で作られたバイオ脳が組み込まれており、首切り王の反応を覚え込ませて、その操縦をサポートしていた。このバイオ脳は冷却システムと共にバロックが18m級の機体になった原因の一つとなっている。
ブラン・ファントム
DUST時代の連邦軍のファントム量産計画の試作第1号機として建造されたコピー品。
推進力の再現を念頭にコピーされており、頭部の形状と機能が変わっている他、数少ない固定武装を内蔵していた腰部アーマーも推進力システムに置き換わっており、内蔵武器を全く持っておらず、変形機構を撤廃されている。
最大の特徴は噴き出すファントムライトの光が紐状に変化している事で、全開加速している時の姿がまるで獅子の頭の様に見える事から、ブラン・リオンとも呼ばれている。
これは余剰エネルギーを多くのIフィールドで制御しようとした副産物だが、結果として推進力は原型機を上回り、V2ガンダムの75%にまで迫る事に成功している。
ちなみに連邦軍が作っただけあってガンダムらしいトリコロールカラーに仕上がっている(というよりもフォントの趣味が全開になったためか)。
ノエル・レイス
ファントム量産計画の正式な完成機で、ブラン・ファントムの検証により構造の簡略化と高性能化に成功しており、推進力だけで言えばV2ガンダムの85%にまで達している。
更に冷却の問題も解決している上、ブラン・ファントムで削除されていた変形機構も復活した。
ただ完成が首切り王との決戦直前だったため、何機かは飛行形態固定で建造されている。
外部出演
ガンダムVSガンダムシリーズ
非映像化作品出典やMSV出身の機体も珍しくなくなってきた本シリーズで、
漫画でしか活躍を拝めなかったファントムガンダムがまさかのガンダムVSシリーズに参戦することがガンダムエースにて報じられ、
「GUNDAM VERSUS」チームバトルトーナメント in C3AFA TOKYO 2017決勝大会会場にてが正式に公表の後、家庭版には400コストのDLC機体として、アーケード版には2500コストとしてそれぞれ2017年9月26日にそれぞれ参戦した。
原作通り変形が可能でファントム・ライトは時限強化武装、フレイムソードは時限強化状態でのみ使用可能な特殊格闘派生やその間のみ変化するBD格闘で使用する。
フォントのCVは石川界人氏。ゲーム作品等々で声優が決定した非映像作品の登場人物は彼に限った話ではないが、VSシリーズからというのはこれが初。
注目すべきはそのファントムライト。開幕は0からスタート、時間経過でゲージが200溜まると使用可能になる。 発動中はビームはおろかバズーカやハンマーも含めた実弾等々も防ぐ事が出来る全身射撃バリア状態で、発動中と被弾時にはゲージを消費するするものの、再入力で防御技である“Iフィールドの嵐”が発動可能、さらに機動力や格闘性能も強化され専用の格闘も使用可能になる。
その反面、素の格闘は弱判定ゆえにファントムライト無しだと格闘戦を挑みにくく、通常時は変形時の武装も併用してようやく並の機体レベルに射撃戦を展開できるという心許ないピーキー仕様となっている為、ファントムライトを如何に運用するかが鍵となる機体である。
覚醒技は二段階強制放熱モード。これはダメージを与える武装ではなく、使用するとゲージが300状態でファントムライトが強制発動。ただし、デメリットとして効果が切れてから通常のファントムライトが再リロードまで時間が追加されその状態だと機体性能が低下するというもの。
とはいえ、終了後のデメリットこそあるが、覚醒技による強制発動は、換装の回転率を一時的に上げる切り札である。 ここぞというところで使いたい。
尚、ゲームとは一切関係ないが
2013年の時期に同シリーズでの参戦を見事に言い当てた猛者がいる。
最新作のEXVS2でも稼働時から続投されている。ちなみに参戦当初から機体名は「ファントム」ではなく「ファントムガンダム」の名が使われている。
基本は参戦当時と変わらないが、アップデートで「クジャク」を使った広範囲射撃の追加や、
戦闘開始時からファントムライトのゲージが最大になっている=開幕からいきなりファントムライトが使えるという強化を受けている。また、ファントムライト中は格闘チャージでスーパーアーマー付きの斬りつけ攻撃が追加されており、接近戦でのある程度強引な攻めが展開できる。
ビルドダイバーズRe:RISE
物語第20話にて登場。 時間軸は、有志連合がマスダイバーの巣窟にて決戦を挑んでいた頃。
あるガンダムの謎の力を目の当たりにしていた。
立体物
NXEDGE STYLEシリーズにてラインナップ。劇中同様の装備とファントムライト再現用エフェクトパーツ、二段階強制排熱モード再現用フェイスパーツが同梱されている。
食玩「GUNDAM CONVERGE」シリーズにてラインナップ。
リアル体型のファントムは「ROBOT魂<SIDE MS>」で初立体化。蜃気楼鳥への完全変形を可能としている。
ファントムは「ガンダム」なのか
ガンダムタイプMSとして開発されていないファントムだが、その出自(若しくは乗り手)の特殊性ゆえに、本機を「ガンダム」として扱うか否かに関する論争が度々起きている。
公式に於いても媒体ごとに扱いに差異があることもこの議論を助長している。
原作では
フォントが個人的に呼んでいるところ以外では基本的に、改修後に改名されるまで「ガンダム」とは呼ばれていない。その「ゴーストガンダム」と言う名もクロスボーンの補給パーツを多く使って改修したこともあるが、カーティスが「そういうの」が好きなフォントに半ば気を利かせる形で命名、登録しており、正式にガンダムタイプと認定されたわけではない。
続編「DUST」ではフォント自身が「所詮ちょっと顔が似てるだけなんだ…」と熱く語るシーンがあるため、やはり完全に「ガンダム」とは扱われていないようであるが、この時の比較対象がファントムの先祖にあたるF89、つまり本当にガンダムに似ているだけのF系MSだったことは留意しておきたい。
ただフォント本人はファントムを「ガンダム」と呼ぶことを諦めてはおらず、後にブラン・ファントムにガンダムと名付けようとして連邦から却下されている。
商業展開では
「ファントム」と言う単語自体が固有名詞ではない為か、原作以外の媒体においては商標の都合上「ファントムガンダム」と呼ばれており、F9番台のF系MSや「SEED」のG兵器と同様の事態を引き起こしている。
ただし「DUST」時代のファントムV2は新しく単語が追加されてようやく固有名詞になれたためかそのまま「ファントムV2」の名義であり、ガンダムとは呼ばれていない。
ファンの間では
MSの系譜的にはかなり特殊な立ち位置のMSであると同時に、世界観の広がりにより「ガンダム」と言う名がもはや象徴的な物になりつつあることもあってか思い思いに決めているケースが多く、時には解釈の違いから論争に発展する場合も多い。
また「ファントムが『ゴーストガンダム』になる流れ」を尊重して敢えてガンダムと呼ばない、というように設定のみならずストーリー構成を加味して判断している場合もあり、その解釈は本当に多岐に渡っている。
そもそも宇宙世紀において「ガンダムタイプMSとは何か」と言う明確な定義自体が存在しない以上一つの解釈に纏めてしまうこと自体が野暮なのではないかという考え方もあるため、この議論に決着が付くのはまだまだ先の話であろう。
余談
劇中のジャブロー戦において、本機はコクピットシートに直接パイロットが二人乗りしているが、これは機動兵器の操縦において絶対に行ってはならない操縦法である。
物理的に、上に座っている人間の体重の分、加速Gが下の人間にかかるため、下の人間は事実上倍のGを受けて圧死が免れない。
実在する戦闘機などにおいてももちろんであるが、『逆襲のシャア』でアムロがチェーンを乗せる際や、『Vガンダム』でファラがキールを乗せる際に簡易複座席をセッティングし、また同じく『Vガンダム』においてシャクティがウッソ機に搭乗した際すぐに後部スペースに移るのは、このためである。
その他、小説版『F91』において成り行き上セシリーをこのように身体上に乗せたシーブックは、ラフレシアとの戦闘後に「グシャグシャに潰れているのではないか」と、セシリーに深く心配された。
後の最終決戦でも、小柄な子供とはいえ再び人を膝の上に乗せて戦う事となった。
Gを緩和する特殊なジェルでコックピットを満たしていたとはいえ、パイロットであるフォントにかかるGはすさまじいものであったことを本人も感じていたが、それが逆に戦いの行方を握るカギの一つとなった。
実はファントムガンダムの変形機構は後付け設定であり、作者は変形機構を想定せずにデザインしたが、編集部の発案で変形機構が組み込まれる事になり、あの「崩れていく」変形機構が誕生したと言う話である。(余談だがMSメタスも当初は宇宙戦闘機だったが、企画会議でMSへの変形機構があると誤認され、変形機構付きMSになった逸話もある。)
類似関連メカ
何れも敵勢力から主人公側となったロボット達である。