蟲師
むしし
この世はヒト知れぬ生命に溢れている。
ストーリー
「蟲」それは動物でも植物でもない、生命の原生体。
本来棲む世を隔てたヒトと蟲とが重なるとき、人智を超えた妖しき現象が生まれ、ヒトは初めてその存在を知る。全ての生命は、他を脅かすために在るのではない。ただ、それぞれが在るように在るだけ。
こうした「蟲」とヒトとをつなぐ「蟲師」であるギンコが、旅の途中で様々な人々とそれに関わる蟲達に出会ってゆく。
概要
作者 | 漆原友紀 |
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連載 | アフタヌーンシーズン増刊(1998年~2002年)、月刊アフタヌーン(2002年~2008年) |
単行本 | 全10巻 |
テレビアニメ | 2005年10月~2006年3月放送 |
テレビアニメ続章 | 2014年4月~6月、同年10月~12月に分割2クールで放送 |
実写映画 | 監督大友克洋、主演オダギリジョー(2007年3月公開) |
ニンテンドーDS用ソフト | 『蟲師 ~天降る里~』(2008年1月31日発売) |
蟲のもたらす怪異とそれにまつわる人々を描いた物語。
大きなくくりで言えば「ファンタジー作品」と呼ばれる類のものだが、日本の原風景的な生活観に蟲という超常の存在が溶け込んで紡がれる物語は既存のジャンルには分類しがたい独特の空気を持ち、ハッピーエンドともバッドエンドともつかない特有の読後感を残すエピソードも数多い。
ストーリーは一話完結形式で、蟲師のギンコが訪れた旅先の土地が物語の舞台となるとため 毎回異なるキャラクターが中心となり、シリーズを通して複数回登場するキャラクターは極めて少ない。
またそのギンコについても蟲の引き起こす事象の解決のために毎話必ず登場はするものの、物語の主役はあくまで舞台となる土地の人々とし、ギンコ自身は狂言回しとして最低限の出番のみということもしばしばある。
様々な昔話や民話、伝承などを題材にしたものや、現代社会にも通ずる様々な問題、民俗学・生物学・医学などの要素を題材にして描いたものも多く、これらを作中では「蟲の仕業」という解釈や絡みを加えて物語に組み込んでいる。
この作品には原型があり、漆原氏が「志摩冬青」名義であった1994年と1996年に描かれた短編漫画『虫師』。物語は現代日本が舞台で、設定や世界観には共通性はあるものの、作者曰く全くの別世界としている。登場人物にはギンコに似たものも登場する。
世界観
登場人物は主人公のギンコ以外は基本的に和装で、劇中の文も日本語で書かれているが 具体的な年代は設定されておらず 作者からは「鎖国を続けている日本」や「幕末と明治の間にもう一時代ある感じ」といった抽象的なイメージで語られている。前近代的な風俗ではあるが、鉄砲はあり、西洋的な事物も多い。
「瞼の光」ではビキは洋服で、飛行機やピアノのおもちゃの描写もあり、当初は上記の設定はまだ確立していなかったと見られる。このエピソードのアニメ版では前述の描写は変わっている。
劇中でも連載初期から後期にかけて数年の歳月が流れていることは示唆されているものの、各話の具体的な時系列や前後関係は判然とせず、アニメ版のようにシリーズの節目に合わせてエピソードの順番が入れ替えられても問題なく成立する作りになっている。
用語
蟲(むし):作者の創作であり、一般的な「昆虫」などの小動物の総称としての「虫」とは異なり、精霊や幽霊や妖怪などにあたる生物としている。様々な怪異を、普通の人には見えない生命の原生体である様々な「蟲」の生命の営みから起こる現象と捉えている。大部分には名前は無く、形態も生態も千差万別に多種多様で、自然現象に近いものもある。彼らとの接触が大きいと人間も蟲と同様の存在に化してしまい、普通の人には見えなくなってしまい、記憶や心も失ってしまう。
蟲師(むしし):蟲に関した事象で生業とする人々。蟲と関わりのある問題を解決したり、医者のような治療をしたり、蟲を研究したり、蟲にまつわる品や薬などを売り買いしている。ギンコのように旅をして移動したり、定住して土地に根付いたり色々だが、彼らの存在は作中の社会ではあまり認知されていない。たまに「講」という集会を開いて情報や物品を交換している。
光脈(こうみゃく):地下深くを流れる光の川で、蟲を元とする生命の根源。生まれる前の小さな蟲が光を放って集まったもので、ここから光酒が抽出できる。光脈によって地上の自然の盛衰は左右される。
ヌシ:光脈筋にあたる山には「ヌシ」と呼ばれる特別な存在になった生き物が統制している。特徴として生まれつき身体に植物が生えており、山の精気を抑え、山で起こる全てを把握している。
光酒(こうき):光脈から抽出した光り輝く液体。蟲師には蟲退治や治療など様々なことに使われる高価なもので、それは大変な美味とされる。生命の変化を左右するものであり、使い方では死者の蘇生や不老不死も可能だが、それは蟲師にとって禁じ手とされている。
ワタリ:蟲師とは違う蟲と関わる集団。光脈筋に沿って移動し、光脈筋や蟲に関する情報を蟲師相手に売って生業とし、講の開催や光酒抽出の儀式も取り計らう。
妖質(ようしつ):五感とは異なる蟲を感知する第六感のようなもの。
虚繭(うろまゆ):ウロという蟲を利用した蟲師が使う通信手段。ウロは空間に穴を開けて行き来する習性があり、2匹の蚕が作った1つの繭を2つの繭に分けると、中にいるウロはその2つの繭の間を移動する。その移動を利用して片方の繭に手紙を入れて、もう片方の繭へ手紙を運ばせる。代々、兎澤一族によって管理され、数年おきに新しいものに取り替えてもらう。
狩房文庫(かりぶさぶんこ):狩房家の代々筆記者が蟲師から聞き取って記録した蟲に冠する書物で、一文字一文字全てに筆記者に封じられていた「禁種の蟲」が封じられている。普段は狩房家別邸地下蔵に所蔵され、蟲退治の話を提供することで閲覧ができ、蟲師にとっては蟲退治に関する指南書であり、貴重な価値を持っている。
テレビアニメ
第一期
2005年から2006年にかけて地上波で20話、BSで6話の計26話を放送。
終始高い品質を維持した作画や丁寧な演出、音楽で原作ファンからも好評を得た。
原作準拠をテーマとして掲げ、テレビアニメとしては少々異例ともいえる手法を多数取り入れており、細部に至る原作者の全面監修のもと忠実な映像化が成されている。
いわゆるアニメ声としてデフォルメされていない生身の人間の言葉を表現するために 幼年のキャラクターには子役を起用している他、舞台俳優なども積極的にキャスティングしており、主人公のギンコ役も実写畑の俳優であった中野裕斗が演じている。
各エピソードにはそれぞれテーマカラーが設定され、タイトルクレジットや影の色使いに反映されている。
主題歌
- オープニング曲
「The Sore Feet Song」
歌 - Ally Kerr
ヴォーカル曲はオープニングのみで、エンディングには本編からシームレスで流れるエンディングテーマが各話で専用に作曲されている。
スタッフ
- 監督・シリーズ構成:長濱博史
- 脚本:伊丹あき、桑畑絹子、山田由香
- キャラクターデザイン・総作画監督:馬越嘉彦
- 美術監督:脇威志
- テクニカルアドバイザー:大山佳久
- 編集:松村正宏
- 音楽:増田俊郎
- 音響監督:たなかかずや
- アニメーション制作:アートランド
各話紹介
話数 | サブタイトル | 主な登場人物 |
---|---|---|
一話 | 緑の座 | |
二話 | 瞼の光 | |
三話 | 柔らかい角 | |
四話 | 枕小路 | |
五話 | 旅をする沼 | |
六話 | 露を吸う群 | |
七話 | 雨がくる虹がたつ | |
八話 | 海境より | |
九話 | 重い実 | |
十話 | 硯に棲む白 | |
十一話 | やまねむる | |
十二話 | 眇の魚 | |
十三話 | 一夜橋 | |
十四話 | 籠の中 | |
十五話 | 春と嘯く | |
十六話 | 暁の蛇 | |
十七話 | 虚繭取り | |
十八話 | 山抱く衣 | |
十九話 | 天辺の糸 | |
二十話 | 筆の海 | |
二十一話 | 綿胞子 | |
二十二話 | 沖つ宮 | |
二十三話 | 錆の鳴く聲 | |
二十四話 | 篝野行 | |
二十五話 | 眼福眼禍 | |
二十六話 | 草を踏む音 |
第二期
2014年4月~6月、及び同年10月~12月に分割2クールで放送。
一期の主要スタッフが続投し原作の未アニメ化エピソード24話を全て映像化。
テレビアニメの終了から8年、原作終了からおよそ6年というこのタイミングでの第二期製作について、長濱監督からは「これまでにも度々企画は出していたものの様々なタイミング等の問題もあり、8年を経てようやく実現まで漕ぎ着けた」といった趣旨の言葉が語られている。
各話紹介
話数 | サブタイトル | 主な登場人物 |
---|---|---|
一話 | 野末の宴 | |
二話 | 囀る貝 | |
三話 | 雪の下 | |
四話 | 夜を撫でる手 | |
五話 | 鏡が淵 | |
六話 | 花惑い | |
六.五話 | 蟲語 |
|
七話 | 日照る雨 |
実写映画
時代設定を「100年前の日本」と明確化し、柔らかい角、雨が来る虹がたつ、筆の海といった原作の複数のエピソードを一筋のストーリーに統合した内容となっている。
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蟲師100users入り → 蟲師500users入り → 蟲師1000users入り → 蟲師5000users入り → 蟲師10000users入り