「あばよ、名探偵…!!」
「黒と黒が混ざっても…黒にしかならねぇよ…」
「疑わしきは罰する…それが俺のやり方だ」
「歓迎するぜ…シェリー……」
「探偵ごっこはそこまでだ」
「女同士で妙な仏心が出たんじゃねぇかと案じてたんでな…」
概要
取引現場を目撃した工藤新一を殴打し行動不能にさせた上でAPTX4869を飲ませた張本人である。組織が新たに開発した「証拠の挙がらない毒薬」として服用させており、身体を小さくさせる意図はなかった。
彼との関わりが、工藤新一が江戸川コナンとして黒ずくめの組織を追い続ける切っ掛けとなった。ちなみに組織を壊滅させる可能性がある存在を指す「シルバーブレット(銀の弾丸)」は、ジンをベースとするカクテルである。
単行本41巻にて作者は「1巻から出てるけどコミックス裏表紙の鍵穴に登場したことの無いキャラが実はいる」ように語っていたが、事実ジンはそれまで鍵穴キャラとして登場したことが無かった。しかし、記念すべき100巻にして、遂に鍵穴キャラのデビューを果たした。これは、No.2の正体が明かされる事よりすごいことかもしれない。
純粋な悪役キャラではあるのだが、2004年の2時間半スペシャルアニメ(345話)や、劇場版『探偵たちの鎮魂歌』のキャラクター集合ポスターではウォッカ達と共にキャラの輪に加わっている珍しいシーンがある。
人物像
黒のロングトレンチコートと帽子に薄紫色のハイネック、という服装を貫いている他の主な特徴は、銀の長髪(アニメ版では当初は金髪だった)・深緑の眼(原作では赤く塗られていることが多い)・左利き・長身痩躯(ウォッカと並べばガタイのいい彼が小柄に見えるほどであり、コナンも「あんな大男」と評している)・ヘビースモーカー。また頬には赤井秀一によって負わされたかすり傷が残る。その目つきは一目で真っ当な人間でない事を悟らせる殺伐とした威圧感を持ち、初見の新一もビビらせた。
黒のポルシェ356A(正確にはC)を愛車としている。ナンバープレートは「新宿34 あ 4869」「新宿54 み 4368」「新宿500 み 4368」などのパターンがあるが、「あ 4869」はAPTX4869を表していると思われる。
「ドイツの雨ガエルも…偉くなったもんだ…」
拳銃は原作ではベレッタM1934、アニメではベレッタM92を所持している。
高い戦闘能力に加えて非常に頭の切れる優秀な人物で、多方面における知識の造詣も深く、時としてコナンや服部平次といった高校生探偵はおろか、赤井秀一や安室透等にも引けを取らない推理力も発揮する。
冷酷無情な徹底主義者。またボス同様非常に用心深い性格で、信条は疑わしきは罰せよ。FBIの調査でも、コードネーム持ちはラム以外同格でありながら「ジンを抑えればボスまで一直線にたどり着ける」と言われている。
実際、その内外共に生き残りを許さない「猟犬・殺し屋」としての有能さは組織内の誰からも評価されており、参謀能力も優れている為、幹部が集まって作戦行動をとる任務ではリーダー的な存在として指揮を執る事が多く、他のメンバーもそれに異を唱えたりはしない。
一方、暗殺や内部粛清を一手に担い続けたが故の「引き金の軽さ」は仇にもなっており、ピスコ、アイリッシュ、キュラソー、ピンガなど、相手が有益な情報を持っている事を知りながらそれを聞き出すより確実な始末を優先し、結果組織側の調査が滞っても悪びれない悪癖がある。
ただいずれも状況的に猶予が無かったり、当人達にも落ち度があった事は留意されたし。
殺した人間の顔と名前は忘れることにしているため、殺した相手がもし生きていてもジン本人は気付かない(そこはウォッカがサポートする)。他人が殺した人間は思い出そうと努力すれば思い出せていた。組織の人間であれば、自ら手にかけた相手でも覚えていることもある(宮野明美、原佳明など)。
ただし、断じて自己の保守を優先している小物ではなく、むしろ有事の際には必ず自らも前線に出陣しており、自分だけ安全地帯にいながら手を汚さないやり方は行わない(劇場版を参照)。
コナンに時計型麻酔銃を撃たれても、自身の腕を撃ち抜いて眠気を潰し任務を遂行しようとする等、個人としての戦闘センスや組織への忠誠心はズバ抜けて強い。
むしろ、その直前まではコナンの仕掛けた小細工の目的を見抜き逆にそれを仕掛けた人間がまだ付近にいることを指摘したり、キャンティの「ノイズが多い」という一言から盗聴器を発見するなどして、2手3手先を読んでコナンを出し抜く高い能力を示すこともある。そしてそのシュールな絵面の何割かはコナンが小学生の姿をしている事が原因な事とメタ的な言い方をしてしまえばコナンの正体がバレてしまえば『名探偵コナン』という作品が終了してしまうからである。
上記の件からネタキャラ扱いされることもあるが(若干公式からもそのような傾向があるが)人によっては気分を害することもある為過度なネタ発言はくれぐれも注意したい。
ただ彼が残虐非道な悪役ながらどこか憎めないキャラクターとして人気なのは、良くも悪くもそうしたネタ要素の影響もあるのかもしれない。
総じて彼の適性は「自分一人と殺す標的」で完結した現場主義のヒットマンとして長けているといえよう。
流石の彼も自分たちを追う厄介な敵が(身体的には)7歳児とは考えないであろうが、それを知った時どういう反応をするか楽しみである。
本名・国籍
『そして人魚はいなくなった』の事件に登場する「儒良祭りの名簿」にある「黒澤陣(くろさわじん)」はジンの記名であると作者は明かしている。
黒澤陣が偽名の可能性もあるが、『ラブ・コナン』内のインタビューではジンの国籍を問われた際に「裏設定では黒澤陣っていう名前」と答えており、作者は黒澤陣を本名として扱っているようである。この回答から国籍も日本(もしくは日系人)と考えられる。
ちなみに、この名簿ではシェリーの記名も「宮野志保」と本名が使われている(名簿を見たコナンは「永遠の若さと美貌を欲しがるタマじゃねーし…」と同名異人と判断している)。
なお、漫画原作では「宮野志保」の表記は見えるものの、「黒澤陣」については、書かれてると思われる場所がコナンの顔に隠れてしまい、はっきりとは見えない。しかし、アニメ版でははっきり表示されている。
初期のジン
『おらおら、犯人はそのアマで決まりだ!!早くオレ達を帰してくれ、刑事さんよ!!』
初期は完全に小悪党然としており、その言動はほとんどチンピラのそれ。誰が呼んだか「別ジン」。
初期は黒ずくめの組織関連の設定が定まっておらず、警察の存在に挙動不審で怯えるなど、今とは比べ物にならないほど情けないジンの姿が見られる。現在の設定に落ち着くのは灰原が登場した辺りからである。
ただし、物語初期において、ジンとウォッカが巻き込まれた殺人事件は、二人にとって本当に危険な状況だったと言え(殺人現場であるジェットコースターでは、ジンとウォッカの二人が被害者の真後ろにいた上に、毒薬とされるAPTX4869、拳銃、密輸の証拠であるフィルムも持ち合わせていた為)、下手すると容疑者扱いされて組織の存在について露見しかねなかった事も考えれば、焦るのも当然と言える。
そして皮肉にも、新一の謎解きせずにはいられない性質が、ジンとウォッカを助けてしまう事になっている(まあこの事件に限ったことではないが)。
なお、アニメ版では第1話時点での口調は「ただの事故に付き合っている暇はない!」と言った感じに多少修正されている。
それでもまだ漂っていた小物臭も20周年記念スペシャルで再構成された時には上記の荒らげる台詞はウォッカの台詞に変更され、ほぼ完全に脱臭された(初期に見せた挙動不審ぶりは内心気まずさを感じた程度に改められ、表情には出さなかった一方、銃を出して強引に、最悪の場合、目暮警部らを撃ってでも脱出しようとする描写も加えられている)。
また、劇場版26作である『黒鉄の魚影』では、久しぶりに声を荒らげる様子を見せてもいる(後述参照)。
誰かを好きになることはないが好みのタイプは存在するらしく、『名探偵コナンBLACK PLUS SDB』で、青山剛昌先生はジンの好みの女性について質問されて「いわゆるいい女?(笑)」と答えている。劇中では取り引きのために訪れたバーで歌姫の歌に聞き入る描写があった(ウォッカやベルモットにそのことを指摘されても否定していない)。
「恋人はいますか?」に対しては「今はいないかも」とのこと。なお、デートはどこへ連れてってくれるのかという質問には「墓場じゃね?」と、おどろおどろしいフォントで答えている。なお、赤井秀一の場合は『名探偵コナン80+PLUS SDB』によると「ずっとドライブして済ませそう」とのこと。
人間関係
組織内
ボスには非常に忠実で、「あの方は~おられる」と敬っているような発言もしてる。ボスから直接指示を受けているのはそれだけ信頼されている証拠と言えるかもしれないが、ボスがジンをどう思っているかは不明。
組織の他メンバーと登場する事も多いが、普段から相棒と思われるウォッカとは特によく行動を共にしており、ウォッカがジンのサポートを行う事も多い。
ジンが他のメンバーと意見が衝突した際にはウォッカが仲介役を担うこともある。ジンを深く尊敬しているものの単に思考停止で付き従うわけではなく、時としてきっちり異議を唱えられるからこそジンも彼のことを認めているのかもしれない。自分に従順で裏が無い面も気に入っているのかも。またウォッカはジンに忠実だがジンに銃口を押し付けられた際は脂汗をかいて怯えている事から、恐ろしさを理解した上で慕っているとわかる。「名探偵コナンBLACK PLUS SDB」において、「Q.ジンがウォッカを、車のハンドルを預けるほど信用するに至ったきっかけが知りたいと子供の頃から思っていました」との質問を受けた作者は「A.自分で運転するのが面倒なだけだと思うよ」と返答。
ちなみに作者によれば二人のデザインは合わせて30秒ぐらいで決定しているとのこと。第一話の時点では「この漫画はどうせ一年も経たずに終わる」と考えて描いていたらしい。
あくまで中の人の解釈であるが、ジン役の堀之紀さんは「僕はね、ジンは誰も信じていないと思ってる。あとね、僕の中ではだけど、ジンはウォッカに対して最大の信頼をしているけど、信用はしていない。だからウォッカと言えども何かしくじったら多分ジンは撃つでしょうね。ジンにとってはあの方もラムもどうでもよくて、唯一忠誠を誓っているのは「組織」だけだと思います」。ウォッカ役の立木文彦氏は「ジンへの愛ですよ。嫌われたらおしまいだって気持ちで演じています。殺されるよりなにより嫌われることが嫌なんじゃないかなと思っています」と話している。
シェリーこと灰原を髪の毛一本で認識するなど、彼女の組織脱走前になんらかの深い関係があったと思われる。なお、「名探偵コナンSDB BLACK+PLUS」における“青山剛昌先生への132の質問コーナー”では、「Q.シェリーは組織にいた頃にジンと付き合っていたんですか?」に対して、「A.灰原のタイプじゃないと思う(笑)」というやり取りがあるため、恋愛関係に相当する付き合いは無かったものと思われる。万が一男女の関係があったとしても互いに相手への愛は一切無いようなドライなものだろう。組織から逃げ出したシェリーの抹殺に積極的に動いており、なおかつ別に自分の手で殺したいなどといった愛憎めいた思いも見られない。
『黒の組織との再会』が収録されているアニメコミック「名探偵コナン―5つの重要書類 (File2)(少年サンデーコミックス―ビジュアルセレクション)」カバーの青山先生のコメントに“そうそう、読者から「灰原とジンの関係は?」ってよく訊かれるんだけど、実はあの二人は… あっ、もう書くスペースが無…“とあるので、何らかの特別な関係にあった(少なくともそのような設定の構想があった)ことは確かなようだ。
また、「名探偵コナン100+PLUS SDB」における“青山剛昌先生への118の質問コーナー”では、「Q.ジンは髪の毛一本でシェリーのだと断言していましたが、他の人のもわかるんですか?」に対して、「A.割とわかるかも。」というやり取りがあった。……これが事実ならもしやベルモット、キャンティ、キール、キュラソーなどのメンバーも髪の毛一本で判別出来たりするのだろうか?
ベルモットとは肉体関係を持っていることが作中で示唆されており、青山剛昌先生は83巻インタビューで、「ベルモットがジンのことを好きだったことが、昔はあったんじゃないかなあ。深く付き合っていたが、ジンは誰かを好きになるってことはないからベルモットの方から」と語っている。「名探偵コナンLOVEPLUSSDB」における“青山剛昌先生への101の質問コーナー”では、「Q.もしベルモットとジンがデートしたらどこに行くのでしょうか…?」「A.なんか暗い所(笑)。」というやり取りがある。
「女は秘密を着飾って美しくなるのよ?」と言った彼女に「ヘドが出るぜ…」と面と向かって言っているように秘密主義にはうんざりしている。その言動から不信感を募らせており、『満月の夜の二元ミステリー』では、あの方にベルモットが一枚嚙んでいるから内情を探れと指令されてウォッカに潜入を命令し「許可は受けてねぇが、妙な真似をしやがったら、容赦はするな。たとえあの女があの方のお気に入りだとしてもな」と命じた。発言や行動に不自然さを感じた際は、銃口を突き付けたり(『ブラックインパクト』)、抹殺しようとする様子も見せている(『漆黒の特急』)。
彼女は以前、イーサン・本堂の手首を嚙み砕き、銃を奪って彼の頭を吹っ飛ばした(という設定)事があり、この行いを「キレた獣にしかできねぇ芸当」と称賛している。スパイだとか疑う事はなかったが、FBIに捕縛されて奪還した後からは、簡単に取り返せた事でFBIと繋がっていないか訝しみ(あの方もジンと同じでそこを不審に思った故に赤井の殺害を彼女に命じた)赤井を抹殺させた後も、警戒を全く緩めようとはせず、赤井が生存している可能性が出てきた際には、即座に彼女を呼び出し、銃口を突き付けながら会話を交わし、赤井の生存の確信が取れた場合は射殺しようとしていた(実際、この疑いは間違っておらず、キールは赤井と結託して殺した様に見せかけていた)。
ベルモットと同じく秘密主義者であるため、どこで何をやっているか掴めておらず、独断専行された時には「相変わらず気に食わねぇ野郎だぜ」と発言。また「小説の中だけにして欲しいもんだぜ…シャーロック・ホームズのような探偵はな…」などと述べており、観察力・洞察力に恐ろしく長け、高い推理力も持っている為か、彼女以上に警戒している様子がうかがえ、やはり機会があれば抹殺しようとしているが(『漆黒の特急』『純黒の悪夢』)原作において、彼をスパイだと疑った事はない。
組織のナンバー2。ウォッカやキャンティなどの幹部すらも顔を見たことがなく、多くの噂が流れえている。ジンは面識があり、「義眼以外は護身のために本人が流したブラフ」だそうだ。ウォッカとの会話では「ラムが抜かった仕事なんざ知った事か」(兄貴も人のこと言えませんとかツッコんではいけない)「いちいち褒めるな」などあまり面白く思っていないような扱いをしている。
一方で、『純黒の悪夢』ではキールとバーボンの処刑を中止せよという命令、さらにキュラソー奪還という追加命令にも逆らうことはしていない。また、ベルモットやバーボンの動向は掴めていないがラムの動向は把握しており(「顔を変えてふざけた名前を名乗っている」)、ちゃんと小五郎に関する情報共有をし合えているなど、裏を返せばベルモットでさえ一歩引いた対応をするラムともある程度気安い対応ができる関係とも言える。
人を撃ちたがりなスナイパー達だが、勝手な行動は取らないのでそれなりに信頼していると思われる。無口で大人しいコルンはともかく、なにかと声を荒げて急かしてくる気性の荒いキャンティも指示はきちんと聞いているのだ。
組織外
FBIの赤井秀一に対しては彼が組織に潜入していた頃から嫌っていたらしく、警戒すると共に目の敵にしている。そして『赤と黒のクラッシュ』にてあの方からの命令を受けてキールこと水無怜奈に指示を出して彼を間接的に抹殺した………かに見えたのだが赤井はコナンの策略で色々あった末にこの抹殺劇から無事に生き延びていたことが緋色シリーズで判明した。彼の生存の可能性が出てきた際には、奴が生きていたのならもう一度殺れる。嬉しくてゾクゾクするなどど言っている。
あの方が恐れていることは知っているが「我々を一撃で破滅させられるシルバーブレットなんざこの世に存在しねぇよ」や「銀の弾1発だけじゃ、黒い大砲には勝てねぇよ」と言っており、それほど脅威を感じていないようだ。
江戸川コナン/工藤新一に対しては、第1話の段階でこそ高校生探偵としての知名度を聞いていて警戒していたが、本人の中では完全に死んでいる扱いになっているせいか、ウォッカやアイリッシュから名前を聞いても記憶になかった。
「バラしたやつの顔なんざいちいち覚えちゃいない」というポリシーが原因かと思われるが、「バラしたやつ」とは別の事情として、新一がマスコミにも出てた程の有名人だったのにピンと来ないのもどうか?と言うツッコミ要素もある。未だモブの民間人ですら大抵は工藤新一の名前を聞いただけで「あの高校生探偵の?」と反応するのに。
しかし、彼が代役としている毛利小五郎に関しては、キールと接触していた事やシェリーが仕掛けたと思っていたのと同じ発信機を使っていた(正確にはコナン)という事実から、強い疑いを持っている。また羽田浩司の件で近々始末する算段を取っていた堀田凱人の殺人事件の解決にも関わっていた事から、「暗がりに鬼を繋ぐが如く…鬼だったとしたら眠ってる間に始末しねぇとな…」と、本格的に小五郎の抹殺を思案し始めている様子を見せている。
もっとも、盗聴器の件は直前の事件でコナンが仕掛けたものが偶然にも黒ずくめの組織に繋がったという意図しなかったものであり、仕掛けた人物が毛利小五郎だと疑ったことについても最悪の場合小五郎の関係者が口封じのために黒ずくめの組織に狙われる危険性があった(蘭はもちろん、事務所に居候しているコナンも対象になる可能性があり、実際に誤解を解くために事務所のガラスにサッカーボールを当てたコナンもろとも射殺するように命令している)。
おまけに、元々黒ずくめの組織のために仕掛けたものではなかったので盗聴器にはコナンの指紋が付いており、調べられて工藤新一が生きてることがバレる危険性があった。
つまり、この件に関してはジンの失態ではなく、むしろコナンにとって自分の首を絞める事態になったと言った方が正しい。劇中でもコナンは黒ずくめの組織の情報の入手より、盗聴器が見つかって小五郎が疑われることを心配しており、赤井秀一の狙撃で盗聴器を破壊してジンを負傷させたことで「盗聴器を仕掛けたのはFBIで、小五郎は囮」と思わせることに成功した(上記の通り、ジンはまだ小五郎を疑っているが)。
まあ強いて言うならば、「盗聴器に指紋が付いているから奴とその周囲を調べれば誰だか分かるはずだ」と言うなら暗殺実行に乗り出す前に念のため確認しておくべきではあっただろう。
確かにジンの立場で見れば小五郎が仕掛けた可能性が一番高いのは確かだが、キールが小五郎と別れてからジンと会うまでのどこかで仕掛けられた可能性もゼロではないのだから。
彼が慎重を期して、先に小五郎及び周辺人物の指紋を調べていれば、盗聴器を失ってしまう前に犯人がコナンであることを見抜けていただろう。……もし、その場合は「聞こえるか?江戸川コナン…」とジンは呼びかけていたのだろうか?
劇場版
劇場版シリーズでは、ウォッカと共に第5作『天国へのカウントダウン』、第13作『漆黒の追跡者』、第20作『純黒の悪夢』、第26作『黒鉄の魚影』の4作に登場。
・天国へのカウントダウン
西多摩市に新設されたツインタワービルにシェリーが来訪することを突き止める。更にIT企業TOKIWAの専務である原佳明が組織を裏切って盗み出したデータを物理的に消去すると共にシェリーを抹殺するためビル内に大量の爆弾を仕掛ける。
ここで灰原(シェリー)の髪型を真似た鈴木園子を、本人と勘違いして危うく射殺しかけるというミスを犯している(ただしこの時は狙撃手の仲間とベルモットが未登場。とはいえ狙撃の実力は他の作品でも十二分にある扱いらしく、『異次元の狙撃手』では本作で狙撃を行っていたためか、劇中でコナンが想像する黒ずくめの組織の狙撃手のイメージ映像にジンが登場している)。
コナンの咄嗟の機転で園子は難を逃れたが、遠くのビルから動くエレベーター内のターゲットを正確に狙うなどかなりの腕前の様子。
その後の園子の挙動で別人と判断したらしく、狙撃を中止した。単なる殺人嗜好者ならついでに園子を射殺してもおかしくないが、余計な行動をしない理念からしなかったようで、これは用心深さも感じられると同時に、無関係な者を巻き込む大量殺人も躊躇わない一方で、意味の無い殺人はしないという、悪人ながら彼なりのポリシーと単純な殺人嗜好者ではない面も示唆されたシーンでもある。
・漆黒の追跡者
警察に潜入していたアイリッシュの裏で、組織のNOCリストが保存されているメモリーカードを警察より先に回収するために暗躍。最終的には軍用ヘリに乗って東都タワーに乗り込み、アイリッシュごとメモリーカードをキャンティに狙撃させる。この時には、一瞬だけ暗視画面に写ったコナンの靴先に目敏く気付き、アイリッシュと一緒に「もう1人いる」と見抜いたことで攻撃を開始。
機銃掃射によりコナンを最上階まで追い詰めるも、伸縮サスペンダーを利用した彼の機転によりヘリを破壊され、撤退することとなる。
投身自殺を図った相手からの反撃はさすがに想定していなかったのか(「逃げ切れねえと観念したか」という台詞から、ジンは「追い詰められたターゲットが自殺を図った」と判断していたことがうかがえる)、いつに無く呆気に取られた表情で「何だ……何者なんだ……」と零す一幕もあった。
なお東都タワーの下には警察が到着し始めたばかりであり、アイリッシュを最上階まで走らせてヘリに収容することも出来たであろうが、それをしなかったのはキャンティとコルンを両方乗せて来たせいでヘリが満員だったからなのかもしれない。
ジンの洞察力ならば、万が一のためにアイリッシュをヘリに乗せられるよう事前に配慮することも出来たはずだが、作中においてアイリッシュとしばらく連絡が取れなくなったことや彼がコソコソ何かを探ろうとしていることをジンは不審に思っていたとも取れることから、疑わしい振る舞いをするアイリッシュをヘリに乗せて助ける気など最初からなかったのだろう。
・純黒の悪夢
本作での登場はドイツ・ベルリンにて。キュラソーから送られたメールでNOCと判明したリースリングをウォッカとともに追い詰め、射殺するシーンが描かれた。
同じメールではキールとバーボンにもNOC疑惑が浮上していたことからすぐに日本に戻り、彼らを拘束して尋問する。この時には、手錠を外そうと画策するキールの僅かな挙動を見逃さずに肩を撃ち抜くという抜け目の無さを見せた。
結局、赤井から妨害を受けバーボンに逃げられたことや、キュラソー(を装ったコナン)からのメールを受け取ったラムが中止を要請したことなどが重なって二人の処刑は中断。その後は公安警察に囚われたキュラソーを奪還するべく、事前に「公安がキュラソーを連れて行く」と踏んでいた東都水族館へ向かった。
しばらくして、組織のオスプレイに乗って東都水族館の上空に現れる。到着後すぐにキュラソーが乗るゴンドラを確保するが、彼女がゴンドラの中におらず観覧車の上を動いていることを知るや否や「キュラソーが裏切った」として始末を即断(ベルモットからは「せっかちね、まだ彼女が裏切ったとは」と忠告されているが「逃げた以外に考えられるか」として聞き入れなかった。実際ジンの考え通りであった)。さらには事前に観覧車の車軸に仕掛けていた爆弾を解除しようとする人影に気づき、即座に起爆スイッチを押す……が、寸でのところで解除される。いくら連打しても反応しないことから解除されたことを察したジンはスイッチを踏みつけるとともに「浴びせてやれコルン、弾丸の雨を!」と言い放ち、機関砲による掃射を命じた。
しばらくはコルンに機関砲の操作を任せ指示役に徹していたが、赤井の狙撃でローター部分が炎上し、すぐにでも墜落しかねないほど姿勢制御が困難になったタイミングで交代。砲弾が観覧車の車軸の爆弾に集中するように上手くコントロールして見せた。しかし墜落しかけのオスプレイはどうにもできず、程なく離脱することになる。
その後キュラソーは転がる観覧車を食い止め、被害を抑えたのと引き換えに死亡。直接手を下した訳ではなかったものの、結果的にはキュラソーの始末に成功した形となった。
『ハロウィンの花嫁』の次回作予告では「会いたかったぜ、シェリー」と彼の声が入り、後に2023年公開の第26作『黒鉄の魚影』にて四度目の登場を果たす。
・黒鉄の魚影
冒頭、ドイツ・フランクフルトでのシーンに登場。そこでピンガの犯行を目撃したユーロポール職員のニーナを、キールの肩ごと撃ち抜いて射殺した(ニーナの死に方がリースリングと似ていたり、銃弾がキールの肩に当たるなど、奇しくも『純黒の悪夢』と状況が似ている)。
直美・アルジェントが所持していたUSBメモリ画像を見たウォッカは「シェリーは子供の姿になって生き延びていた」と確信し、ジンはその件を伝えられるも「ベルツリー急行で死んだ」と否定。しかし、彼の必死の説明で拉致を許可。老若認証で居場所を見つけ出し、捕まえておくように命令を出した。
ウォッカとピンガが灰原の拉致に成功した後にもパシフィック・ブイのソナーに発見されないよう海中に潜ませていた潜水艦を海上に浮上させ、ヘリで合流するという派手な行動に出ていた為、スクリュー音を拾われ、結果的に灰原と直美の脱走を許してしまった。なお、ジンがヘリで合流することはバーボンがコナンに教えて、コナンは灰原に知らせた。
補足しておくと、劇中でウォッカが「アニキには安全に来てもらう」と発言していることからヘリで来るよう提案したのはウォッカである可能性が高い。
ウォッカから「ガキの写真をそちらに送ります」と提案されたのを拒否して、自分の目で確かめようとしたこだわりが発端であり、その判断が灰原と直美にチャンスを与えてしまった。赤井の生存疑惑の時も「俺がこの目で見て判断する」と発言していたことからも基本的に自分の目で見たものしか信じないタイプなのかもしれない。
しかし、そもそも灰原によってフードに仕掛けられた盗聴器の存在に気付いたキールが脱出経路を教えており、加えていつでも逃げられるように灰原の手足を拘束していたロープを解きやすい結び方にしていたおかげで脱出できている。つまり、キールの働きかけがなければ、ジンが海から来ようが空から来ようが、灰原と直美の脱出は不可能だった。さらに、ジンが到着した時点では脱出できておらず、キールがいなければ灰原と直美はジンにレバーを引かれて殺されていた。
最終的にコナンと赤井の連携を受けて貴重な戦力である潜水艦を爆破処分せざるを得ない状況まで招いてしまった。なお、この際にピンガを意図的に爆発に巻き込ませて始末している。
ちなみに、ベルモットから老若認証システムは欠陥品と知らされた際はすぐ横にあった潜望鏡を殴りつけ「何が老若認証だ!とんだクソシステムじゃねぇか!」と激昂している。真相はあの方に精度の高さを報告して「~をつぶせ」と命令を受けたベルモットによる偽装工作であり、実際は顔認証の観点から言えば非常に優秀なシステムで統計学と解剖学を用いたAIで顔の骨格から人物を特定する。コナンを老若認証にかけた場合、黒羽快斗を表示せず、新一だけをヒットさせるほどの精度を誇る(ただし横溝兄弟のような顔が似てる…というか遺伝的に同一人物同士な双生児等の判別ができるかは不明)。
警察機構に導入されるシステムで似た顔の人物が複数一致してしまうという重大な欠陥に、運用開始しても尚、エンジニア達が誰一人として気付いていないという状況は、傍から見れば不自然極まりないのだが、ベルモットの変装だと察した人は「組織随一の洞察力の持ち主」と評されるバーボンのみ。別格のラムも「使えないシステム」だと騙されて、用心深いあの方が予定していた通りにパシフィック・ブイの破壊へ計画を移行させている。
なお、シェリー(灰原)との関係については、本作で明らかになるとファンから期待されていたが、叶うことはなかった。
声優について
アニメで演じる堀之紀氏は、新出智明を演じる堀秀行氏と兄弟にあたる。ただし、そのことを連想させる絡みはなかった。
余談
原作初期の3回目の登場エピソード「新幹線大爆破事件」がアニメ化された際、アニメ版自体が今ほど長続きする予定がなくいつ打ち切られても構わないように黒の組織は関わらせない方針を取っていたためアニメだとこのエピソードにはウォッカ共々登場しておらず、事件の犯人が彼とは似ても似つかない容貌(と言うよりジンより明らかに老けていてブサイク)の上田と下田という組織とは無関係の黒ずくめの男に代わっている(ちなみに上田のCVは後にアンドレ・キャメル捜査官を演じる梁田清之氏)。