――見ているのですか、アーサー王。
夢の、続きを――
プロフィール
真名 | ベディヴィエール |
---|---|
クラス | セイバー |
性別 | 男性 |
身長 | 187cm |
体重 | 88kg(10kg以上は銀の腕による) |
出典 | アーサー王伝説 |
地域 | イギリス |
属性 | 秩序・善・星 |
好きなもの | 蒸した野菜 |
嫌いなもの | 特になし |
設定担当 | 奈須きのこ、桜井光 |
ILLUST | 武内崇(SN)、天空すふぃあ(FGO) |
CV | |
演 | 佐奈宏紀 |
※ プロフィール、能力、スキル、宝具などは『FGO』による。
登場作品により設定の相違が見られる為、実際にはこの限りではない。
概要
『Fate/Grand Order』に登場するセイバークラスのサーヴァント。
アーサー王を尊敬し、一介の騎士から側近にまで昇格した努力家。
多くの者が王の誠実さに恐れをなしキャメロットを去る中、「王の人としての笑顔が見たい」と最期まで付き従う。なお、アーサー王が女性である事は最期の瞬間まで気付いていなかった。
真名
円卓の騎士の末席にして隻腕の騎士、『ベディヴィエール』。
隻腕ながら、優れた将軍であると同時に卓越した剣技を持つ騎士でもあったとされる。
華々しい他の騎士たちとは違い、彼には取り立てて伝承は残っていない。本人もその自覚はあるものの、いつかの王が己に説いた言葉を信じ、円卓の騎士として忠義を尽くす。
人物
一人称は「私(わたし)」。
ブロンドの髪を結った端正な容姿の美青年。面長で目付きが鋭く、男性らしさと女性らしさが混合した独特の外見をしている。円卓一の人格者にして常識人。誰に対しても敬意を払い、やや天然で嘘が付けない性格。人並みに死への恐怖・敵への恐怖に震えながら、守りたいもののために奮い立つ青年。臆病ではあるが卑怯ではない騎士。
人を超えた英雄たちの集う円卓の中にあって「ただひとりの人間」としてアーサー王に仕えた。
多くの騎士がアーサー王を「完璧な統治者」と崇め畏怖する中、彼は「そんな王にも笑みをこぼす時があるはずだ」と、あくまで人間として見ておりその瞬間を見るためだけに仕え続ける。
しかし、王は一度として自身のために笑う事はない。かの王が笑みを溢すのは、いつだって誰かの幸せを思ってのものだった。それでも彼は忠義を尽くす。あの夕暮れに見た王の微笑みを代え難いものだと思ったから。
能力
最優クラスかつ円卓の騎士であるためかステータスはかなり高水準となっている。
モーション中では、騎士剣による剣術を主体とする他、宝具の限定開放と思われる光の手刀で斬り裂いたり、銀の義手から波動砲のような形で光の奔流を放出したりしている。
マスター | 筋力 | 耐久 | 敏捷 | 魔力 | 幸運 | 宝具 |
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藤丸立香 | A | B | A+ | C | B | A |
保有スキル
対魔力(B) | セイバーのクラススキル。魔術に対する抵抗力。Bランクでは、詠唱が三節以下の魔術を無効化する。大魔術、儀礼呪法などであっても殆どダメージを受けない。 |
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騎乗(A) | セイバーのクラススキル。乗り物を乗りこなす能力。Aランクともなれば、幻獣・神獣ランクを除いた全ての獣、乗り物を自在に乗りこなす事が可能となる。 |
軍略(C) | 一対一ではなく、多人数を動員した戦場における戦術的直感力。対軍宝具の行使や、相手の対軍宝具へ対処する際に補正が与えられる。ベディヴィエールは不朽の指揮官であると語られている。ゲーム上では、味方の宝具威力を強化する。 |
騎士の軍略(B) | 「軍略(C)」が変化したスキル。詳細不明。 |
冷静沈着(B) | 如何なる状況にあっても混乱せず、己の感情を殺して冷静に周囲を観察し、最適の戦術を導いてみせる。精神系の効果への抵抗に対して、プラス補正が与えられる。特に混乱や焦燥といった状況に対しては高い耐性を有し、例え数百数千の軍勢を単身で相手取る事になろうともベディヴィエールは決して惑わない。執事的行為に対しても、このスキルは有効に働く。ゲーム上ではNPの上昇もある。 |
守護の誓約(B) | 陣地防衛に対してプラス補正。自陣メンバー全員の防御力を上昇させる。 |
宝具
剣を摂れ、銀色の腕(スイッチオン・アガートラム)
- ランク:C→C+
- 種別:対人宝具
- レンジ:0
- 最大捕捉:1人
「銀の腕よ、私に輝きを!」
「我が魂(たましい)喰らいて奔(はし)れ、銀の流星……!『一閃せよ、銀色の腕(デッドエンド・アガートラム)』!!」
重さ10kgの銀製の義手。
アガートラム(アガートラーム)は本来、ケルト神話の神王ヌァザが腕を失って王位継承権を奪われた折、医術神ディアン・ケヒトから贈られた神造兵装である(注意:『アガートラム=銀の義手そのもの』という解釈は本来は間違いであるため、あくまでも『FGO』の設定として覚えておくこと)。よって本来ならベディヴィエールと縁のないはずの宝具だが、この宝具はあくまでその模造品であり、ヌァザの銀の腕とは本質が異なっている。
詳細は該当記事を参照。
一閃せよ、銀色の腕(デッドエンド・アガートラム)
- ランク:A+
- 種別:対人・対軍絶技
- レンジ:1〜40
- 最大捕捉:300人
膨大な魔力を秘めた銀の腕を用いて振るわれる絶技。
宝具『剣を摂れ、銀色の腕』の戦闘用起動時のみ、使用が可能となる。
敵陣を瞬速の「手刀」によって一閃せしめる対人・対軍殲滅攻撃である。
実際にゲーム中の宝具演出で放たれる宝具はこちらであるが、宝具アイコンは『剣を摂れ、銀色の腕』になっている。そのため、宝具演出での台詞はこちらの宝具名が使用されている。
登場作品
Fate/stay night
アーサー王ことセイバーの最期を看取り、その命に従い聖剣を湖に返却する、『Fateルート』の幕引き役。設定は原典とほぼ変わっておらず、アーサー王の側近の騎士。ただし、隻腕ではない。義手の可能性もない事はないが、外見上は両腕がある。左手でエクスカリバーを、右手で馬の手綱を握れており、少なくとも隻腕によるハンデは特にない。また、以降の作品とは異なり、目にハイライトがなく、赤い耳飾りがある。
Fate/Apocrypha
アニメ版のモードレッドの回想で登場。アニメ版が『Fate/Grand Order』展開後に制作された為、『FGO』準拠のデザインで登場。なお、隻腕かどうかは不明。
コハエース
同僚の黒いのと白いのが残念な分、まともさが円卓一際立つ人。桜セイバーに斬られた死に際でも、王の主演するアニメの宣伝を忘れない。
ちびちゅき!
剣道部員。黒・白・息子共々、なかなか顔を出さないセイバーをオロオロしながら待つ。唯一胴着を着ているところに律義さが表れる。
Fate/Grand Order
ビジュアル面では今までの作品と比べてかなり童顔な印象になっており、髪の色や衣装なども若干異なる(イラスト担当は武内氏ではなく子ギルのイラスト担当の天空すふぃあ氏である)。本作では片腕が一目で通常とは異なる事がわかるビジュアルになっている(※)。
第1部6章クリア報酬にて獲得でき、同章クリア後から「ストーリー召喚(常設課金ガチャ)」限定で召喚可能になる(限定PUを除く)。
メインシナリオでは第1部6章『神聖円卓領域 キャメロット』に登場。キーパーソンを務める。
エルサレムの地が円卓・エジプト・山の翁の三すくみに陥る中、獅子王として君臨するかつての主に拝謁するため、魔術師マーリンによりアヴァロンから特異点へ送られる。
序盤は「ルキウス」という偽名を名乗り、主人公たちとは砂漠を放浪中に初めて遭遇する。一度手助けするものの、その後は仲間になることなく言葉少なに立ち去る。獅子王によってエルサレムの跡地に築かれた「聖都キャメロット」で開かれる「聖抜の儀」に立ち会った際、ガウェイン率いる粛清聖騎士団と諍いを起こした主人公と再会。目的のためだけに動いていたはすだったが、苦境でも立ち向かう主人公たちの姿に騎士道精神を揺さぶられ、二度目の助太刀に入り、以後、主人公たちと行動を共にする。途中、マシュに激励され、アーラシュに箴言を送られ、同行する仲間たちの姿に葛藤と決意を深めていきながら、彼自身も成長していくことになる。
おとなしそうに見えてもやはり円卓の一員だけあってかなり図太い一面もある。
『旅慣れている(後述を参照)』からサバイバルの経験は豊富と豪語し、難民達の飢えを凌ぐために人間の食用に堪え得るエネミーの目利きとハンティングにも一役買った。
『アーサー王語録、その八!”栄養は ゲテモノ肉でも 変わりません”!』
……目玉と触手の怪物は流石にどうかと思います(もちゃもちゃ)
その他、イベントなどのギャグ空間では、はっちゃけるガウェインやランスロット、トリスタン相手にツッコミを入れる円卓の常識人ポジションとしての彼を見ることができる。
2020年12月7日に劇場版『神聖円卓領域 キャメロット 前編』公開記念としてモーション改修と霊衣開放『シルバー・バトラー』が実装する。
ゲーム上での性能
☆3セイバー4騎中でも、最もATKに寄った超攻撃型。カードバランスは《Quick:2/Arts:1/Buster:2》のランサー型。カード1枚当たりのヒット数は〔Q:2/B:1/A:2/Ex:5〕と、平素こそ凡庸だがエクストラアタックのヒット数が多く、「A/Q/Q→Ex」でそれなりのNPとスターを稼げる。
Aカードの性能が高めで、クリティカルヒットが狙えるならNPを多めに稼ぐことも出来る。
スキルは、味方全体の宝具威力アップ(1T)の「軍略(C)」、自身にNP獲得&魅了や恐怖などの精神弱体への耐性をアップの「冷静沈着(B)」、味方全体に防御アップ&弱体耐性アップ(共に1T)の「守護の誓約(B)」と、大きく目立ったスキルを持たない印象である。
また「冷静沈着」のNP獲得量は30%固定、「守護の誓約」の防御バフもスキルレベルアップでは成長しないが補正値は高めと、どちらも独特の使用感を有する。
「軍略(C)」は強化クエストをクリアすることで「騎士の軍略(B)」にランクアップし、威力アップの倍率が上がり持続ターンも3Tに延長、さらにNP獲得量アップ(3T)の効果が追加される。
宝具は上記の通り。
事前にBuster性能アップが入るため、後ろにBカードを続けて畳みかけることが出来る。
スターが飽和状態かつのBカードが2枚ともあれば、☆3とは思えない驚異の大斬撃を繰り出す。
これこそベディヴィエール最大の武器であり、軍略で威力を底上げしつつ、宝具効果で威力の上がったBカードによるクリティカル攻撃を用いることで、上手を相手に大打撃を叩き込めるエースアタッカーへ大成する。
課題はスキルレベルによる恩恵が少なく、肝心のNP獲得量や防御バフが固定されていること。反面、無理にスキルレベルを上げずとも最大効果を発揮することも意味しており、マスターの財布事情にやさしい。しかし無視し難いのは宝具レベルが上げづらい点であり、「ストーリー召喚」という闇鍋からベディだけを狙って引き当てるのは至難の業であり、円卓組のピックアップ召喚からレアサーヴァントの副産物として狙うのが妥当というのが現状である。
ただ宝具Lv.5に達したベディヴィエールの銀の腕は、☆4サーヴァントの単体宝具(Lv.5)に匹敵する超兵器と化けるため、機会があれば狙ってみる価値はある。
総じてクラスを超越した単体宝具アタッカー。
☆3ゆえの物足りなさこそあるが、それをサポートできれば「円卓の騎士」に名を連ねた所以が理解できるはず。第1部6章での活躍から聖杯転臨に着手するマスターも多く、☆3部門では4位という支持率を得ている。
Fate/Grand Order Arcade
START画面の絵の中にベディヴィエールも確認されているが、2023年5月24日を持ってサーヴァントの展開が完了したため実装の機会を永遠に失う。
関連人物
生前
敬愛する主君。王の安寧を心から願い、最期の瞬間まで仕えた。
『FGO』第1部6章では変わらぬ忠義を貫くとともに、ある悔恨と贖罪を背負う。
円卓のひとりであり、生前の友人。
『FGO』第1部6章ではトリスタンのギフトの影響や互いの事情から敵対関係。
本来はフランクな仲であるらしく、穏やかなベディヴィエールもマイペースが過ぎて奇行に走る彼に対しては(親しいが故に)割と辛辣。
円卓のひとりであり、後にブリテンを滅ぼした騎士。
偏見は良くないと言いつつも割とボロクソな言葉を投げかけている。
円卓のひとりであり、ガウェインの妹。「ガレスちゃん」と呼び、気にかけていた。
生前および第1部6章で彼女に起きた悲惨な境遇を覚えているため、カルデアで同胞や兄妹達と楽しく過ごす姿に涙ぐんでいる。
円卓のひとりであり、世間話をする仲。
彼からは「纏う雰囲気が柔らかくなった」と言われている……のだが、何故かその際の例えが口説き文句のような言い回しであり、プレイヤー達を混乱させた。
Fate/Grand Order
契約したマスター。
どんな事があっても進み続ける彼/彼女にかつての主君の面影を重ね、力になりたいと願う。
エルサレムの地で共に戦ったデミ・サーヴァントの少女。
旅を通して互いに励まし合い、マシュの霊基の件も含めて先輩後輩のような間柄となる。
山の翁の隠れ里で出会い、共闘することになった東方の大英雄。
かつて孤独を選んだ人生から、ベディヴィエールの抱えた苦悩を見抜き、箴言を送っている。
異世界の主君。下記する理由からか時々話をする仲である事が彼の幕間から判明。
彼も容姿と性別は違えど『敬愛する我が王』と認識されている。
彼女の幕間の物語において共演。
自身の中に残っていた「罪悪感」というわだかまりの清算のため主人公の夢に現れた。
セイバークラス、銀髪で中性的な容姿、敬語口調の執事属性の持ち主、アクの強すぎる周りを諌める苦労人気質など数々の共通点がある。
余談
アニメ『Fate/stay night』では、中性的な容姿とキャラクターとしての立ち位置から能登麻美子が起用された。これは最終話を収録していたスタジオにたまたま能登氏がおり、友人であるセイバー役の川澄氏が声をかけたという逸話があるが、この逸話は川澄氏によるとデマである。このキャスティングから、ベディヴィエールを女性と勘違いしたファンも多い。PS2版、PSvita版、ドラマCD版『Garden of Avalon』等、作品ごとに声優が違っており担当声優が多いのが特徴。
彼自身の一般的な知名度はそれほど高くないが、アーサー王伝説を題材とした作品での登場頻度は多い。ローズマリー・サトクリフの著作では、ランスロットが担当していたギネヴィアの不倫相手というポジションを務めている(『落日の剣』のみ。サトクリフのアーサー王シリーズではランスロットが不倫相手である)。アーサーに最後まで付き従った彼にとってはいささか酷い設定ではあるが、ランスロットはキャラクターとして後付けの存在であり、歴史的にアーサー王伝説を描こうとした場合に登場させるのは不適切、と考えられたためで、サトクリフ以外にもこの設定を採用する作家は多い。
『Grand Order』では「彼には取り立てて伝承は残っていない」とされ、マシュからも「強くない」と評されているが、伝承上では「隻腕でありながら振るう槍の一突きは他の者の九突きに匹敵する」「『恐るべき膂力のベディヴィア』とあだ名されるほどの屈強な戦士」「巨人の投げた毒槍を掴んで投げ返し、巨人の膝を粉砕する」という逸話が残っており、決して弱くはない。まあ、周りの円卓の騎士たちはそれを上回る化け物レベルなので相対的に弱く見えるのかもしれないが。
また、上記のように槍にまつわるエピソードが多いため、『Grand Order』で実装される以前のファンの間では「もしサーヴァントとして召喚されたらランサーではないか?」と考えられていた。クラスはセイバーで召喚された(理由は彼の義手の中身だが)ものの、敏捷がA+だったり、カードバランスが《Quick:2/Arts:1/Buster:2》とランサーの定型的な配分となっているのはその名残りではないかとも言われている。また上記の逸話の為か筋力もAと高く、ステータス上は狂化した円卓最強と同じ。ちなみにあのバスターゴリラですら筋力B+である。
第1部6章序盤で名乗っていた「ルキウス」という偽名だが、『FGO Material Ⅳ』によると、架空のローマ皇帝『ルキウス・ティベリウス』から取ったものである。「ブリタニア列王史」においてベディヴィエール卿は、この皇帝との戦いで戦死したことになっており、実際には生存していたものの現在の自分は死人同然であるため、あえて自分を殺したとされる者の名を名乗ったとのこと。
また、ルキウスはラテン語で【輝くもの】を意味する名であり、「輝ける腕」からの連想とも受け取れる。そして、アーサー王のモデルの中に「ルキウス・アルトリウス・カストゥス」という人物が存在する。
関連イラスト
関連タグ
Fate/staynight Garden_of_Avalon Fate/GrandOrder
ベディヴィエール(ランサー):彼の本来のクラスを反映した表記
ギルサンダー:中の人繋がりの騎士。登場作品にアーサー王が登場する点も共通している。
※ ここから先は『Fate/Grand Order』第1部6章に関わる重大なネタバレがあります!! |
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銀の腕の真実
『Fate/Grand Order』における彼は、アーサー王の最期を看取ったベディヴィエールではない。つまり、『Fate/stay night』に登場するベディヴィエールとは別人である。
彼は『FGO』とも『SN』とも違う歴史、それらとは異なる並行世界からやってきたイフの存在。
『Fate/stay night』ではアーサー王を看取るまで笑顔を見たことが無かったのに対し、この彼は一度だけ生前のアーサー王の笑顔を見ている。
そもそもベディヴィエールは生前優れた武勇があった訳ではなかった為に、円卓の騎士の中で唯一人英霊の座に登録されていなかった。
『Fate/stay night』においては、彼は騎士王の死に際し、二度に亘って聖剣を還すことを躊躇い、三度目にして湖に聖剣を還したはずだった。
しかし、『Fate/Grand Order』(正確には特異点に重なったifの1つ)での世界線では王を想うあまり三度目すら躊躇ってしまい、聖剣の返還に失敗。これにより、死ぬべき時に死ねなかった騎士王は“彷徨える亡霊(ワイルドハント)”の化身、果ては聖槍の化身とも言うべき神霊と化してしまうことになる(第1部6章終盤辺りで円卓の騎士達が彼を覚えていたのに対して獅子王が『ベディヴィエールという存在を覚えていない』理由がこれである)。彼が三度目に帰還した時には騎士王の遺体は既に消え失せ、彼の手には湖に還るべき聖剣だけが残されていた。
自らの行動の結果を知った彼はその罪を償うべく、世界の何処かに居る騎士王を探し続ける。
返し損ねた聖剣によって不老の加護を得たものの、その孤独な旅路に彼が費やした年月は実に1500年。人の身には到底耐えられない年月である。そこにない影を追い続けるかのような日々に、肉体は摩耗し魂も擦り減っていく。
―――しかしそれでも、彼は決して止まらなかった。ただ王のためにと捧げた精神ひとつで自らの死を許さず、主の姿を求め続けたのである。
そして第六特異点の出現に伴って理想郷(アヴァロン)の端に到達。人型の岩とまで称されるような変わり果てた姿で力尽きていたところをマーリンに発見され、特異点で起こっている異変に際し、かつての罪を償う為に旅立つことになった。
マーリンの魔術により自らをサーヴァントに見えるよう隠蔽し、失われた右腕に「銀の腕」―――隠蔽を兼ねて改造された、返せなかった聖剣を携えて。
―――――つまり、彼は英霊でも疑似サーヴァントでも、ましてデミサーヴァントですらない。聖剣の加護で生きながらえてきた、主人公と同じ生身の人間である(Dr.ロマンも、その事実に気づいた時は驚いており、そんな惨い話があってたまるかと激高していた)。
かつての同僚たちがベディヴィエールの姿を見て驚愕していたのは、円卓の騎士の中で唯一英霊の座にいなかった筈の彼がエルサレムの地にいた為。彼がサーヴァントとして現界している訳がなかったが、流石に1500年も生き永らえた人間だとは思ってもいなかった。
肉体こそ人間であり、また生前の武勇も優れたものではなかったが、宝具と称して使用する『剣を摂れ、銀色の腕(スイッチオン・アガートラム)』、もとい義手に加工されたエクスカリバーにより、サーヴァント化した円卓の騎士とも戦えるだけの力を得ている。
しかしこの宝具の使用には「魂が全焼する」とされる程の苦痛を伴い、また使えば使うほど自らの寿命を縮める諸刃の剣。更にその力に耐えられない肉体は使用の度に内側から焼け焦げ、やがて土塊のように崩れ落ちていく。文字通り、自らに残された命そのものを糧とする宝具である(その事に気づいていたのは、本人以外には古代ペルシャの英雄と、初代山の翁のみである)。
彼の目的はただ一つ――「王に聖剣を還す」こと。
順わぬ魂となり、聖槍の化身「女神ロンゴミニアド」として人理の記録者となり果てた主君を、その楔から解き放つために。たとえ刺し違えることになろうとも、またその達成が自らの死を意味すると知っていて尚、ただ彼は王との対面を臨み続ける。全てはあの時犯した自らの罪、「ただ王の生を望んだ」という過ちを償うために。
最終的に主人公たちと共に臨んだ決死の戦いの末、彼はその任を全うし聖剣を返還。同時に自身をこの世に繋ぎ止めていた聖剣の加護を失い、肉体ごと消滅した。
1500年という生を贖罪に費やし、かつての輩との戦いに身も心も抉られて尚、最期を迎える忠誠の騎士の顔には紛れも無い笑みがあった。
―――そしてそれまでに彼が得た経験と功績は、彼を確かに一廉の“英雄”足らしめ、英霊の座へと導くことになるのだった。これにより、カルデアに召喚されることになるわけだが、カルデアに召喚された彼が用いるのは6章の時と違って、極めて特殊な「仮想聖剣」であるという。
以上の事からカルデアに召喚されるベディヴィエールは6章に登場した彼そのものがベースとなっているため、本人は6章での記憶を鮮明に覚えている。一方で他の円卓の騎士達はもともと英霊の座に登録されている記録がベースになっているため、6章での事情を知らないサーヴァントからは銀の腕を不思議に思われている。人柄などは大きく変わっていないようで、本来は違う時間軸の円卓のメンバーと対しても、特に違和感を持たれていない。
決して目立たず、強くもなかった。情が深く、むしろ臆病ですらあった。それでも彼が一人の騎士として貫いた“忠誠”は、どの円卓の騎士に勝るとも劣らぬものだったに違いない。
余談だが、TVアニメ『Fate/stay night』では山口監督の勘違いでエクスカリバーではなくアヴァロンを携えたベディヴィエールの没原画が存在する。これはこれでもの凄い展開になりそうである。
また、上記するアストライアの幕間実装時は劇場版『神聖円卓領域 キャメロット(前編)』放映が始まった頃だったため、しんどさがより増したorぶり返したマスターが多発したとか……