黒歴史(ネット用語)
くろれきし
概要
初出は『∀ガンダム』において、「過去の悲惨な戦争の歴史」を表現した黒歴史という作品の設定。
語感の良さと作中の描写により、今日では主に「無かったことにしたい、忘れたい過去」といった意味合いのネット用語として広まった。
流行の時期として、2ちゃんねる内では2000年の2月頃からガンダムファンの中で用語が認知され、2005年にはガンダムを知らない層にまで広まったことが確認できる。
長らくネット上でのみ使用されていた用語であるが、スラングを扱える作品や一部サンライズ作品等でこちらの意味の黒歴史という言葉が使われ始め、2017年頃からは地上波のアニメ作品以外でのテレビ番組内でも稀に使われるようになってきている。
2021年には国語辞典にも載るようになり、三省堂国語辞典第八版で項目として収録し、「∀ガンダム」が由来であることも記載された。さらに、同じ漢字文化圏である中国語圏や韓国語圏でも、それぞれ「黑历史」「흑역사」として同様の意味での使用が見受けられる。
完全に無かったことにすると、現史に大きな矛盾が生まれるために『黒歴史』という名で残されているという状況である。
該当する事例は多方面に渡り、みんなのトラウマの如くネタ的(雑談のタネなど)なものから本当に笑えない惨事まで様々。
作品そのものではなく、それに登場するキャラクターや人物(もしくはそれにまつわる話題やネタ等)に用いられる場合は、二次創作でもガセネタでもない公式作品で実際にあったことだが、イメージや評判、印象を大きく損なうためファンがなかったことにしたいと思っているものという意味合いで用いられることもある。
具体的には
留意点
ネットスラングとしての用法で概ね共通しているのは人の行為や言動を指すならば“過去にやってしまった失敗(あるいは犯罪)”を言い、何かの作品か創作物を指すならば“つまらないor下らない駄作”という評価になるなど、だいたい“認めてはいけない否定されるべき存在(過去)”という一種の批判的なレッテルとして扱っていることである。
しかし、それは時に必要以上にそれを貶めることにも繋がりかねず、たとえそれが客観的に批判されて然るべき所があったとしても、そういうものにも多かれ少なかれ愛好者や理解者が居ることを忘れてはならない。
何より“自分の過去にあった行き過ぎた行いや未熟だった部分を認めて自省、あるいはネタとして自嘲する”ことと、“他人の過去や他者が作った創作物を自分の基準で勝手に黒歴史呼ばわりして否定に走る”のとでは全然意味が違ってくることは覚えておくべきである。
原義における『黒歴史』との誤用
この単語の初出となった『∀ガンダム』の劇中において、本来この「黒歴史」という言葉はあくまで地球人からすれば“一般的には知られていないが、実在した可能性の高い現代よりも優れた科学技術を有していた超古代文明の情報”および“それの存在を裏付ける高度な技術で作られた遺物群”、ムーンレィスからすれば“自分達の今日までの歴史の中で詳細な記録が残されていない空白になっている期間”を指すただの歴史学上の専門用語に過ぎないものであった。
それがここまでネガティブなイメージを持たれてしまったのは、その文明の歴史に関する情報が実際に秘匿されていたというという事実と、それの内容について語ったアグリッパ・メンテナーの「この時の歴史は人類にとっての最大の過ちであり、だから永遠に隠し続けるべき」という極めて否定的な見解だけが広まってしまった結果である。
しかし、後にロランとディアナたちは「過去の歴史を学ばないがために人は今の失敗を繰り返す」と判断し、黒歴史の実態を人類全体に知らしめ、そしてそれを人類の純然たる歴史として受け入れるという黒歴史の肯定とも取れる結論を出している。
そのため、単に「黒歴史」というワードを過去の消したい過去として使用するのは、厳密には作中の意味合いとは少し誤用している。
どんなに自分にとって受け入れがたい、あるいは都合の悪いものを黒歴史扱いしてもそれが消えてなくなることはまずないため、その事実や存在を執拗に否定したり、それに纏わるものを徹底的に排除しようとして目を背け続けるのはそれこそアグリッパと同じレベルになってしまいかねない。
真実と同様、それがいかに我々人間にとって不都合な存在だったとしても、上記でロランたちがそうしたようにそれの一体何が問題だったのか、なぜそう呼ばれるようになったのかなどの理由を考え、そこから反省点や改善点を導き出し、それを成長あるいは発展の糧として次に活かした方が遥かに建設的と言える。
ちなみに、この「黒歴史」の本来の意味合いを知っているガンダムファンに対して、ある特定のガンダム作品のアンチが「シリーズの中のあの作品は黒歴史(=なかった物にすべき)である」と主張しようものなら、逆に“そのガンダム作品の存在を(∀の歴史の中に組み込まれるものとして)肯定している”と受け取られてしまうケースもあったりする。
余談
NHKで2021年から放送されている「神田伯山の これがわが社の黒歴史」では、企業の失敗談として黒歴史という語を使っている。コマ撮りで様々なアニメやゲームのキャラのフィギュアが登場して再現VTRとしているが、なかなかにシュールな内容になっており、原作の要素がパロディとして取り込まれている。放送内容、コマ撮り担当キャラは以下の通り。