「何も悪い事なんかしてないのに…ただ生まれてきただけなのに…!!」
CV:石田彰
演:Fukase(SEKAI NO OWARI)(実写映画)
山田ジェームス武(舞台)
概要
『はたらく細胞』に登場する、細胞の一つであるがん細胞を擬人化したキャラクター。通常の細胞と異なり髪が白く、目の配色も変異元の一般細胞と違う。全身に脈が走り、手足が崩れた異形の姿をしている。
細胞の遺伝子異常による分裂エラーで生まれるできそこないの細胞で、分裂プログラムを無視して無軌道に増殖し続け、やがて臓器を乗っ取ってしまう。健康な人間でも日に数千個生じているが、通常は増殖する前に処分される。まさにこの世に生まれたことが消えない罪、誕生罪を背負った哀しき悪役である。
この個体も例外ではなく生まれてすぐに他の免疫細胞に抹殺されかかるが、偶然にも一緒に逃げた仲間が捕まった隙に逃げ延びることができた。何もわからぬ内に「バグリ野郎」と呼ばれ、何もしていないにもかかわらず殺されるという理不尽な境遇を恨み、人体全てを乗っ取ろうと画策。そして免疫細胞たちには、多対一の暴力で殺される理不尽な気分を味わせたいと、強い憎しみを抱く。
体を自在に変形・増殖させる能力を持ち、翼を生やして飛翔する事も可能。戦い方も変形・増殖した自身の身体で相手を押し潰すというもの。周辺の建物(細胞組織)を丸ごと取り込み、相手を建物ごと叩き潰すという荒業も見せた。
また、異常増殖によって分裂させたコピーを生み出すことも可能で、出来の悪いコピーはゾンビの如く好中球やキラーT細胞に襲い掛かってきた。
通常の一般細胞を装うことも可能。さらに炎症性サイトカインという物質を放出することで、優先的に細胞内の栄養や血液を引き寄せることができ(本作では赤血球たちへの注文という形で表現されている)、比較的一般細胞に近いコピーたちに大量の栄養を摂取させていた。NK細胞以外は誰もがん細胞とは気づかず、赤血球たちも不思議に思いながら栄養を運び続けていた。(NK細胞だけが気付けた理由についてはこちらを参照)
免疫細胞たちを自身のテリトリーにおびき寄せるため、正常な一般細胞を装って好中球とキラーT細胞に近づく。が、彼らに同行してきたNK細胞に正体を見破られ、彼女と交戦を開始。
合流した好中球、キラーT細胞と対峙してなお、終始優勢に立ち回るほどに増幅・強化され、遂には全身への転移に王手をかける。しかし栄養素を運ぶことに疑問を覚えた赤血球がマクロファージに相談したことがきっかけとなって集まった免疫細胞の増援を受けて形勢は逆転、活性化したNK細胞に致命傷を負わされた。
好中球に止めを刺されそうになったが、直前に出てきた一言で好中球はその手を一旦止める。言い残すことはないかと聞いてくる好中球に対し、彼は自身の思いを吐露する。そこで吐き出されたのは、おびき出そうとした際に助けてくれた好中球への感謝と、何よりも望まずして原罪を背負わされた自身に対しての悲しみの感情だった。
「手違いがもとで出来損ないとして生まれて…そのせいで味方になるはずだった免疫細胞に命を狙われて…戦って負けて……この世界に何も残せずに死ぬなんて」
「何のために生まれてきたんだ……!」
そして、思いを全て汲み取ってくれた好中球に対して、最期は負けを認めて介錯を受け入れ、安らかに息を引き取った。
「フッ…良いよ、負けといてやる。今回はな…!」
と、がん細胞らしく再発を示唆する言葉を残していった。
そして原作第5巻にて…
彼は再び甦った。そう、再発したのである。
NK細胞が兼てよりその動向を追跡しており、キラーT細胞もメモリーT細胞にクラスチェンジして
討伐任務に向かっていた。その後、好中球も合流し先の戦いで活躍した3人が再び集う事になった。
前回とは異なり、腸内環境が悪玉菌側に偏った事で発生した有毒ガスを吸収して自己を強化。
更に制御性T細胞ががん細胞を一般細胞と認識して防衛に回っているのを利用して
キラーT細胞とNK細胞を徹底的に甚振り、好中球は「友達」としてカプセルの中に幽閉し、その凄惨な様を見せつけた。
しかし、キラーT細胞の放った「パーフォリン・キャノン・パンチ」によって形勢が逆転。
制御性T細胞もがん細胞を一般細胞と見做さなくなり、更には腸内環境が善玉菌優勢になった事で
自己強化のために吸収していた有毒ガスの供給が停止。最期は前回と同じように好中球によってとどめを刺された。
命が尽きようとする中「嫌いな奴に殺されるより、友達に殺される方がずっといいや」と語り
今際の際に「またね、優しい殺し屋の白血球さん…」と言い残して安らかに息を引き取った。
こうして、この世界はがん細胞による2度目の危機を乗り越えたのであった。
その他の活躍
朝日新聞にて掲載された、オプジーボの説明の為に特別に書き下ろされた説明漫画でも登場。
体から分離した手の形状をした小型の分身でキラーT細胞の目を塞いで無力化するも、赤血球が運んできたオプジーボ(ここではゴーグルの形状をしていた)によって無力化できなくなったところを殴り飛ばされた。
アニメ版と中の人
がん細胞としての正体を表す前から、一般細胞になりすまし(モブキャラを装って)第2話、3話と続けて一瞬だけ登場している。赤血球とも少し絡むなど、毎回一言だけ喋ることで、演出上は初期より周到に伏線を張っている。
この演出について、原作未読の視聴者からは、なぜ石田彰のようなギャラの高い人気ベテラン声優を、わざわざ一言しかセリフがないモブに起用しているのかと疑問の声が起こり、無駄遣い系のネタ配役か、あるいはフラグではと憶測が流れていた。
本性を現したのは6話ラストだが、謎めいたセリフで7話に続くという手本のような石田〆で、典型的なCV:石田彰キャラとしての正体を表すことになった。ですよねー。
うん。みんな知ってた。
このようなことから一部のファンから『石田細胞』とも呼ばれている。
実写映画
はたらく細胞(実写映画)の記事も参照。
当初は白血球に憧れを抱いている「骨髄芽球」(演:岩川晴)だったが、好中球先生から成長の遅れを指摘され処分されそうになったことで自身を「不良品」扱いされた恨みから誕生。より一層悲壮感が強調されるものとなった。
名称も「白血病細胞」へと変更されているが、立ち位置はほぼ変わらず。
余談
- はたらく細胞のプロトタイプである「細胞の話」でも、今とほぼ変わらないデザインで敵役として登場。この時は腎臓に現れている。片言で喋りながらも明確な意思を持ってはいない敵として描かれた。
- 上述の通り、本作の「人体」さんはがんが全身転移寸前までいったわけだが、これは医学的にはステージⅢの終盤、即ち末期がんであるステージⅣの寸前まで病状が進行していたことになる。つまり、この人体は抗がん剤投与や外科手術をせずに自力で進行がんを治したことになる。これ以前にはB型インフルエンザ完治直後にA型インフルエンザに感染したり(6話でのキラーT細胞のセリフより推測)したのに(B型の対処で免疫細胞たちは疲弊しきった状態であった)、どんだけ免疫強いんだこいつ。
- 実写映画ではさすがにこうするわけにもいかず、ちゃんとリアルな治療方針に沿っている。
- 米国エモリー大学ウィンシップ癌研究所所属の癌研究者・大須賀覚氏はこの放送を視聴し、自身のツイッターでとても正確な内容だったと言及し、本作品をとても面白く勉強になると評価している。 → 件のツイート (但し赤血球は抗原情報を伝達しない事とNKの活性化は未知数が多い事は突っ込まれていた)。
はたらく細胞BLACK
本家『はたらく細胞』の身体(せかい)では強靭な免疫細胞たちと乳酸菌たちの働きのおかげでがん細胞の転移を阻止し身体(せかい)は救われた。
しかしものすごく不健康(糖尿病持ち)な『はたらく細胞BLACK』第二部の身体(せかい)では7巻から「彼ら」との死闘が始まる…。
ちなみに本作で1番暴れることとなるがん細胞の個体名はK-9999。個体名からするに元ネタはK9999であり、K9999の元ネタは島鉄雄。攻撃方法も何かと似ている上、あるシーンで鉄雄のようにマントを羽織る描写まである。ずいぶん遠回りなパロディをしているようだがまあ某社と違いこちらは同じ講談社なので大丈夫だろう。
関連イラスト
関連タグ
はたらく細胞 好中球(はたらく細胞) キラーT細胞(はたらく細胞) NK細胞(はたらく細胞)
白カネキ:外見や攻撃の仕方がよく似ている事からネタにされる。
渚カヲル:中の人繋がりにして外の人繋がり。
はたらく細胞BLACK:7巻よりこちらの身体の「彼ら」との死闘が始まる。