千翼
ちひろ
『仮面ライダーアマゾンズ』season2の主人公。
幼少期にアマゾンに育てられたこと以外の素性が不明の少年。18歳(後述する点から、あくまで外見年齢と思われる)。
自身もまた、保護されてから異常な成長速度を見せており、食人衝動も持っていて、更にはネオアマゾンズドライバーを使用することで仮面ライダーアマゾンネオに変身できるが、アマゾンであることを頑なに否定している。
ネオアマゾンズレジスターを装着しているにもかかわず、抑えられない強すぎる食人衝動に悩まされており、人と深く交流できないというジレンマを抱えているため、アマゾンを深く憎んでいる。
普段は寡黙で大人しいが、自身をアマゾンと言われるとその場で暴れだすほどに激怒する。また戦闘中は闘争本能と憎悪が合わさり、敵アマゾンに対して苛烈すぎる暴力を振るう。
暴走を抑えるためにまともな食事も摂らず、全てタンパク質を多く含んだゼリー飲料で済ませている。
自らがアマゾンだということを頑なすぎるほどに否定するのは、愛する母親を食欲に駆られて食べてしまったのかもしれないという恐怖と後悔と自己嫌悪に苛まれており、それを否定したいためという面もある。
アマゾンを狩るのは上記のように八つ当たりという理由が強いが、一応アマゾンに襲われている人を放っておけずに介入する程度の情は持っている。
かつて、日本政府系列の秘密機関「4C」に保護され、戦士として育成されたが脱走。
行くところがなかった自分を受け入れてくれた不良集団“TEAM X”に所属し、彼らのアマゾン狩りというゲームに戦力として身を投じている。
体よく利用されており、チームメンバーの長瀬裕樹とは喧嘩することもあるが、千翼も一応拾ってくれて居場所を与えてくれたことに感謝している。
アマゾン狩りに興じていた時に偶然出会ったイユに対してだけは食人行動に駆られることがなく、自らがアマゾンではなく人間と思いたいという気持ちの拠り所にしようとする。
そのため橘に「イユを人間扱いすること」という条件を出し、自ら4Cに戻ってアマゾン駆除に参加するようになった。
最初は利己的な理由による一方的な思い入れであったが、イユの境遇を知っていくうちに、"護りたい"と思う感情を抱き始め、さらにイユに生前の感情を取り戻させてやりたいと思うようになっていく。
その正体は、トラロック作戦の後遺症で一時的に理性を失っていた鷹山仁と泉七羽の間に生まれた仁の実子。
トラロック後に生まれたことから、実年齢は5歳以下である。
作中フルネームが言及されることはなかったが、七羽と育ってきた生い立ちを考えると「泉千翼」が妥当と思われる。あくまで法規的な話ではあるが、白倉伸一郎プロデューサーは「出生届が出されていないので名字はないが、(七羽と仁は入籍していないため)出すとしたら泉姓になる」と言及している。
生まれながらに人間とアマゾンの遺伝子を受け継いだハイブリッド(小説『仮面ライダーEVE』に登場する蜻蛉の少年や『真・仮面ライダー序章』に登場するライダーベビーに近い存在)で、仁と七羽から認知されているが、あくまでも全てのアマゾンを狩り尽すことに執着する仁からは命を狙われている。
また、悠から4Cに提供された溶原性細胞を持つアマゾンの腕に遺伝子が残っていたことが判明し、溶原性細胞のオリジナルかもしれないという疑惑が持ち上がっている。
そのため、橘雄悟から自分が何よりも否定したかった母・七羽を食らった事を断じられた上、彼に危険かつ重要な存在と判断されたことで凍結処分が下され、千翼もイユの身を案じ、従うことになる。
凍結処置が施される中、イユの姿を見た千翼は……。
「イユ…。俺、今初めて…お前が、欲しいと!」
直後、イユへの感情が暴走した千翼は肉体に異変が生じ、凍結処分用のケージを破壊。突如無数の触手が出現し、4Cの隊員や研究員達に襲い掛かる。
破壊されたケージの中から現れたのは……
無数の触手を操る、アマゾンネオがより異形となった容姿を持つ6本腕のアマゾンだった。
4Cの隊員や研究員、さらには加納の殺害、橘に全身複雑骨折の傷を負わせ、黒崎の投げつけた手榴弾による爆発でも暴走は止まらなかった。
そんな彼の暴走を止めたのは、意図せず攻撃したイユの傷から滴る血の音だった。
正気を取り戻した彼は、自身が引き起こしてしまった事態に狂乱し、4Cから脱走してしまう。
その後は食欲に流されて人を襲いそうになり、イユや父親である仁に命を狙われる中、自分は人食いの怪物だという現実を嫌というほど思い知らされるが、それでも生きたいという生物としての最も根源的な欲求に従うことを決意、抗い続けることを選択する。
なお、"オリジナル"である彼は他の溶原性細胞感染者と同様に、人間の特定のパーツに対して食人衝動を抱いており、彼の場合は"腕"である(東映公式HP)。おそらくは、母・七羽に優しく抱きしめられた思い出に起因していると思われる。
実際、本編ではEpisode3でアマゾンに脳を捕食されていた女性の腕から血が滴り落ちるところを見て強い食人衝動が起き、その後も度々人の腕(特に女性の生の腕)に目を奪われている他、4Cに救助されたある夜の日も、突如として覚醒した食人衝動を抑えられなかったのか、隣で寝ていた七羽の腕に食らいつくような描写が確認できる。
自らを駆除しようとするイユに対し「生きる為にお前と戦う」決意を語り、死闘を繰り広げる。
両者共に深手を負って変身解除という形で戦いは決着するが、その場に仁までもが乱入。
先の戦闘のダメージで動けない千翼は為す術もなくトドメを刺されそうになるが、その光景を見たイユが感情を取り戻し千翼の命を救った。
ようやく、これまでの努力が報われたかに見えたが、イユの離反を知った橘局長は彼女の廃棄プロセスをスタートさせてしまう。
心身共に崩壊していくイユを救う手段を求め、千翼は4C本部への突入を敢行する。
ブレードで4C隊員を斬り伏せながら突入を図る千翼だが、悠の乱入により劣勢に立たされ、イユが倒れて動揺した隙にアマゾンパニッシュを喰らい、変身が解除されてしまう。
トドメとばかりに4C隊員の一斉射撃に晒されるが、イユを庇おうとする千翼の姿と、長瀬による涙ながらの説得により4C隊員が戦意を喪失、その隙に撤退した。
その後、千翼はかつて七羽と共に暮らしていたふれあい動物パーク跡に辿り着く。
ようやく笑顔を取り戻したイユと共に幸せな時間を過ごすが、程なくしてイユは絶命。
さらに、溶原性細胞という危険性を抱えた千翼を抹殺すべく、仁と悠が現れる。千翼は自らの運命を受け入れながらも「最後まで生きる」決意を表明しつつ変身。
アルファとニューオメガに対し、戦いを挑んだ。
戦いの結末は描写されなかったが、悠と仁は千翼の死を示唆する発言をしている。
また、戦いの舞台になった空き地には夥しい血痕や黒い液体が残されていたほか、付近にはかつて七羽が天使の絵を描き遺した廃倉庫があり、絵の前には七羽のストールと、千翼とイユ二人分のネオアマゾンズレジスターが置かれていた。
その様子は、母親に見守られる息子とその恋人のようであった……。
演者の前嶋曜氏の項目でも述べられているが、前嶋氏は俳優としてのデビュー作でいきなり主役という立場故に肉体的・精神的共に相当苦労しながら撮影に望んでおり、特に劇中での鷹山仁との初会合の際には雰囲気を掴ませる為に鷹山役の谷口賢志氏が敢えて直前まで前嶋氏に冷たく接していた事、俳優としてのあまりの格の違い過ぎる迫真さに満ちた演技力(特にあの髪の毛を掴まれて顔を上げさせられるシーンは谷口氏のアドリブ)に一度は本気で心を折られ泣いてしまい撮影をストップさせ、七羽とイユの演者である東亜優女史と白本彩奈女史からそれぞれ叱咤激励を受けて何とか立ち直るという事もあった。(前嶋氏曰くこの件が一番自分に効いたとの事)
とはいえその結果、結末としては悲しい事にはなったもののあの初経験とは思えぬ迫力に満ちた演技の数々はSeason2を見た人ならば十分理解できるだろう。
推測ではあるが、最後の悠と仁との戦闘で、千翼はオリジナルに変身しなかった可能性がある。
長瀬裕樹が生きていたことでまだ完璧な化け物になりたくなかったのか、それともオリジナルを解放できるほどの体力がなかったのか。前者の場合、裕樹が死んでいたら吹っ切れてオリジナルを解放して鷹山と悠を含む全人類を殺害する可能性が高い。
それほどにオリジナルの力は強力である。クラゲアマゾンの時も、駆除班の圧裂弾が無ければアルファは勝てなかった可能性がある。
なお、そのあまりに凄絶な生涯から一部で「天然痘の擬人化」「逆なろう主人公」「生きてほしいけど死んでほしい」という評価も出ている。
城戸真司:主人公ライダーとして共通点がいくつかある。また、脚本家繋がりでもある。
がん細胞(はたらく細胞):彼も、何一つ落ち度がないにもかかわらず存在そのものが災厄であるため殺されなければならない、「誕生罪」を背負う存在である。ただし、千翼が「それでも生きたい」と願い最期まで戦い続けたのに対し、こちらは「どうせ殺される運命なら」と侵略と復讐に走ってしまった(彼の特性上、侵略が完遂した時点で『身体(せかい)』の滅亡が確定したため、結局は「死ぬ」ことになる)。
和泉葵:同じく昭和ライダーのリブート作品であり次回作に登場した主要人物であるが、ある意味千翼のアンチテーゼと呼べる。
ショウマ(仮面ライダーガヴ):母親が人間、父親が怪人という全く同じ出自を持つ『仮面ライダーガヴ』の主人公。千翼役の前嶋氏も視聴後に「親近感が湧いた」とコメントしていた。
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