うちは日本一不幸な少女や
ウチ誰やと思てるねん ただの不良少女やないでテツの子供やで。
人生は一日一日が完結編なんじゃ
続けるちゅうことがえらいんや、肩書きはどおでもええ。
概要
1979年から1998年にかけて『漫画アクション』(双葉社)に連載されたはるき悦巳の漫画。
大阪市の架空の下町「頓馬区西萩」(モデルは作者が幼少時に育った西成区花園北あたり)を舞台とした作品。作中に南海電鉄や通天閣が頻繁に出てくる。
アニメ映画化と2度のテレビアニメ化、さらに舞台化がなされている。
無職でケンカと博打にあけくれる父親テツと、別居中の母親ヨシ江をもつ少女「竹本チエ」が主人公で、彼女が働くホルモン焼き屋「チエちゃん」の周囲で起こる様々な騒動を描いている。
別居していた妻のヨシ江は序盤で帰って来た(当初は戻ってくる予定はなかったらしいとか)ものの、テツのヤクザも恐れない喧嘩好きは改まることはなかった。
人情コメディーと呼ばれ、ヤクザが出てきたりする物騒な世界にもどこかしら温かみが感じられるものとなっていた。特に連載初期は劇作家の井上ひさしから絶賛、当時、文壇の中心にいた作家の大岡昇平にも面白いと採り上げられ、人気は一気に火がつき社会現象にまでなった。コミックスは全部で67巻(全798話)、累計3000万部を売り上げる。
大阪を舞台としたとあって、コテコテの大阪ワールドが展開されるが、独特なのは猫達が二本足で歩き人間と同じ思考で会話、行動(例外を除いて人間との意思疎通は出来ない)をしており、竹本家で飼われる「小鉄」を題材としたスピンオフ作品も登場している。また、人間は猫の言葉を理解できないのに、猫らは人間の言葉を理解できるのも、面白い世界観を作っている。
また、この作品は背景などにスクリーントーンを使わず、連載途中まで作者本人と同じく美大卒の奥さんの二人三脚で漫画を描いていた。
また、演劇の台本のような演出を意識していたため、劇中にはネーム(セリフ)がかなり多い。
ストーリーはある程度行き当たりばったりだったものの、キャラクターが絵の中で演じることによって最終的に作者自身が納得する展開に至っていた(ミツルの仲人の話では、当初テツが大ポカをやらかす予定だったらしいが、描いてるうちに、皆から拍手が送られる成功をしていた、など)。
1980年には博多っ子純情と同時に小学館漫画賞を受賞しているが、双葉社の漫画作品の受賞はこの年のみ。また、双葉文庫版が、第七回(一巻)・第八回(番外篇どらン猫小鉄奮戦記)・第十一回(最終巻)の、大阪ほんま本大賞特別賞受賞。
アニメ化
1981年に東宝でアニメ映画化、1981年及び1991年に毎日放送でテレビアニメ化された。
チエ役はいずれも女優の中山千夏。偶然にも、はるき悦巳は子役時代の中山千夏をイメージしてチエを描いていたらしいので、このキャスティングには驚いたという。
映画版の監督は高畑勲。
舞台が大阪だけあって、主要キャラに吉本興業を中心とするオール関西有名芸能人という陣容で声優を固め(『紳助・竜介』『やすきよ』と言った当時の漫才ブームの立役者から、芦屋雁之助、鳳啓助、京唄子といった大御所レベルが務めている)、特に西川のりおは、テレビアニメ版でもテツ役で声優を務めるなど評価は高い。
テレビ版では、テツとチエ以外の多くのキャラクターのCVは変更されているが、基本的に関西圏出身の声優、俳優、女優、お笑い芸人、コメディアン、子役が中心に起用されている。因みに、小鉄とアントニオJr.との決闘シーンではなく、「チエちゃんの作文」の場面をクライマックスに持っていきたかったらしいが、尺の都合上変更になったという。
後に十社以上に上る競合の末、東京ムービー新社によってアニメ化がされ、監督は引き続き高畑となった。彼自身は「元が完成された作品」と評し、自分は何もしていないと謙遜しているが、原作においてシビア、難解だった話を適度に削減(アニメでカットされたものとしてオバアの過去がわかる「幕ごはん」、花井拳骨にまつわるエピソード、百合根のお好み焼きの極意の話など)し、より親しみやすい展開へと生まれ変わらせた実績は間違いなく、氏の手腕である。
ちなみに、関西では放送されたアニメでは必修科目とされる程に親しまれているとされる。特にあの「パタリロ!」との二大巨頭と数えられる程。
なお、第一期アニメ化を果たしたのは全67巻に及ぶ長編のうちの最初の方(1~11巻の大半及び13巻の一部)に過ぎない。
また、関西のみ続編となる第二期『じゃりン子チエ~チエちゃん奮戦記~』が放映(全39話)され、放送中は不本意な結果に終わったものの、駆け出し中の片渕須直が絵コンテや演出などに関わっていたことから後にDVD販売もされた。
登場キャラクター
竹本家の人々
人間側の主人公。ホルモン焼き屋「ホルモンチエちゃん」を営む小学5年生の少女。ポッチリという赤い玉の髪留めがトレードマーク。普段は白のシャツに黒地のスカートという地味なかっこうをしているが、母のヨシ江が作ってくれた一張羅もよく似合っている。
活発で喧嘩っ早く、いらん事をいうマサルやタカシたちをよく下駄でシバいている。
働かないテツのことを人前では良く言わないが、ヒマな時は遊んであげるなど、それなりに気を使っている。
マサルから「テツにそっくり」とからかわれるが、祖母・菊の幼馴染からは「若い頃の菊ちゃんそっくり」と言われた。小鉄は母親似だと思っていた。
人間側のもう一人の主人公。チエの父。黒シャツに腹巻、草鞋というスタイル。
「ホルモンテッちゃん」の経営者だが仕事もせず博打や喧嘩に明け暮れ、看板が「ホルモンチエちゃん」に書き換えられてしまい、実質無職。
少年時代から乱暴者で鑑別所に入っていたことがある。強面で腕っぷしが強く、ヤクザやチンピラから金をゆすり取っている。
その一方、女性に対してはナイーブな所があり、妻のヨシ江と2人きりになると緊張してしまう。女遊びはせず、暴力をふるうこともない。
博打はおいちょかぶが大好きだが強くない。チエと遊んでも負けてばかりいる。
チエの母・テツの妻。別居していたが、戻ってくる。洋裁講師を務め、夜は家事と家業手伝いにも勤しむ良妻賢母で、テツも彼女には頭が上がらない。テツにぞっこんであり、付き合い始めた頃からテツを積極的にリードしていく世話女房タイプ。劇中随一の美人であるが、立場が立場だけに顔が崩れることもしょっちゅう。両親とは子供の頃に死別しているが、その辺りは劇中で触れられていない。
見た目は清楚だが、チエの母親だけあって足は恐ろしく速い。馴れ初めは地区のリレー大会でお互いアンカーを務めたこと。後にテツからリベンジマッチの申し出を受けるが、実行委員を務めた拳骨が「テツがお前に逢いたがっている」とだけ伝えてしまったため、デートの誘いと勘違いしてしまったことから。
チエの祖母・テツの母。同じくホルモン屋を経営し、チエちゃんの店の経理関係も受け持っている。老齢ながら空手などで鍛えた衰えない腕力を有し、よくテツを懲らしめている一方、小さい頃のテツにケンカをけしかけていたのも菊であり、テツの人格形成に少なからず影響を与えている。因みにテツは菊から「ヤクザとチンピラやったらどついてもエエ」と教え込まれている。
若い頃は自分を周囲に西萩小町と呼ばせるなど美人と思っており、写真写りが悪いと色々変な言い訳をしている。
チエの祖父・テツの父。氏名は不明。婿養子。心臓が弱く、しょっちゅう過呼吸気味になる。テツには甘く、しょっちゅう金をせびられ、妻の菊に咎められることが多い。トレードマークは眼鏡とタバコ。
周辺の人々
テツの小学校時代の恩師で仲人。大学時代はアマチュア横綱。いけすかない指導教授を全裸で木に吊るして大学の研究室を去り、小学校教諭を定年まで勤めた。妻に先立たれ、現在は文筆業を営みつつ悠々自適の生活をおくっている。
テツに遭う度に「テツ!!」と怒鳴り散らすが、未だに色々面倒を見るなど可愛がっている。
テツが頭が上がらないキャラの1人。チエからは「花井のオッちゃん」と呼ばれる。
バクチ屋「遊興倶楽部」の社長だったが、テツの所為で店がつぶれてからはヤクザから足を洗い、お好み焼き屋「堅気屋」を経営。愛猫家で、アントニオと彼の死後は息子のアントニオJrを溺愛している。妻子がいたが離婚した。
普段は温厚だが、泥酔すると狂暴になる(テツ曰く「野獣」)。
元は大旅館経営者の御曹司(相続は放棄)で、婆やのお丸からは「ボンボン」と呼ばれる。
テツの悪友で警察官。昔はヤンチャしてたが今は真面目。若い頃はヨシ江が好きだった。山下ノブ子という職場の同僚と結婚し、1児を儲ける。
チンピラ2人組み。初期はカルメラ焼きの屋台を引いていた。テツにカツアゲされたりするなどの不幸に遭い続けたが、後に中華料理屋を営み、二人共妻子持ちとなる。
チエの学校関係者
花井拳骨の息子でチエの担任教師。東京府出身。東京での生活が長かったため本作では珍しく標準語で話す。テツによく弄られている。東京で知り合った向井朝子と結婚、アキラという息子を儲ける。母親似で運動神経は鈍いが、誠実な教師としてチエたちを見守る。
ショートカットで、活発な女性。花井渉夫人。彼女とは東京で知り合ったため、彼女も標準語。テツを気に入っており、しょっちゅうちょっかいを出している。
チエのクラスメイトで学級委員。運動神経は鈍い。よくチエをバカにしては返り討ちに遭う。富裕層のボンボンであり、しょっちゅう自慢したりすることも。実はチエのことが好きなツンデレ。
チエのクラスメイトでマサルの腰巾着。実は運動神経はいいのだが、マサルのために気を遣っている。
チエの親友。名前の通りヒラメ顔で、チエ同様マサルには容赦がない。府大会で金賞を獲るほど絵心がある一方、歌唱力はジャイアン級。運動神経は鈍い方だが、腕っぷしは強く、女だてらに相撲好き。
テツの友人の息子。チエの一つ下で、いっぱしの不良少年。チエのことが好きだが、マサルと同じく素直になれないひねくれ者。パチンコの腕はプロ並み。
転校生。愛称はサッちゃん。チエ・ヒラメと親友になり、マサルに「パンパカトリオ」と呼称される。劇中後半の一時的にしか登場しないが、読者人気は高かった。
猫
猫側の主人公。かつて「月の輪の雷蔵」の異名を持つ渡世猫だったが、ケンカに明け暮れる生活に嫌気が差し、馴染みの甘味処から譲り受られる形でチエの飼い猫となる。必殺技はタマつぶし。額の三日月の傷は東北に行った際に、あかぎれと凍傷でできたもの。二本足で歩き、用心棒から家事の手伝い、そろばん勘定、ホルモン焼きまでこなす。両親は不明で、目が覚めたときには、既に川に流される箱の上だった。
百合根の飼い猫。小鉄同様喧嘩が強かったが、容赦ない性格だったために、周囲に恨みを買っていた。小鉄との死闘によりタマを喪った後、土佐犬に噛み殺されて死亡。
アントニオの息子。父を死に追いやった小鉄を逆恨みし仇討ちを挑むが和解。親父よりは包容力があって、男らしい性格。毎春、ノイローゼ気味となり、哲学的な発言をする。
その他
昆布巻アララ(?)
アニメ第2話にて、チエのクラスメイトとして登場。花井渉が「昆布巻さん」と指名し、帽子には「ARARA」と書かれているなど、どこからどう見てもアラレちゃんのパロディキャラである。