エルドリッジ
えるどりっじ
アメリカ海軍に主として配置され、その他自由フランス軍やブラジル海軍にも配置されたキャノン級護衛駆逐艦の1隻であり、この級は第二次世界大戦中にて戦死したものの名称を付けることとなっており、ソロモン諸島の戦いにて戦死したパイロット、ジョン・エルドリッジ・ジュニア少佐にちなむ。
この軍艦はアメリカ海軍に配置され、第二次世界大戦ののち過剰となったため退役したが、同盟国に対する軍事支援の一環としてギリシャに売却され、第二のキャリアを歩んだ。
アメリカ海軍
1943年2月22日起工、7月25日進水、8月27日就役。この駆逐艦は当初地中海および大西洋にて船団護衛に従事、その後ヨーロッパの戦線が一段落したため、1944年には太平洋、具体的には沖縄海上にて船団護衛や対潜哨戒の勤務に当たり、戦後過剰装備として1946年6月17日退役、ギリシャ引き渡し後の1951年3月26日に除籍された。
ギリシャ海軍
1951年1月15日、同艦はギリシャへ引き渡しが決定し、到着後駆逐艦レオンとして運用されるが、老朽化及び代替の存在のため1992年除籍され、1999年にスクラップとされた。
この軍艦は、ペンシルベニア州フィラデルフィア沖合で行われたとされる、アメリカ海軍のステルス実験( 正式名称『レインボー・プロジェクト』 )で知られていた。…ともいうが、「ステルス」という概念自体が1970年代以降(そのうえ発見したのがソヴィエト・ロシア)に登場し、その後に作られた用語だったりする。
ほかの言い回しでは「透明化実験」だったり。…まじめに考えるなよ?
原理
当時のレーダーは「船体が発する特徴ある磁気に反応するシステムである」と考えられていた( 実際には「電波の反射を測定している」 )。そのため、発明家ニコラ・テスラは、「高周波・高電圧を発生させる変圧器テスラコイルで船体の磁気を消滅させれば、レーダーを回避できるのではないか」と考え、この予測はジョン・フォン・ノイマンに引き継がれ、1943年10月28日、この軍艦に船員を乗せ、「磁場発生装置テスラコイル」を使い、「レーダーに対して不可視化する」という実験を行なうこととなる。
別の話では「アインシュタインの相対性理論を応用して」となっていたりもする。どうせ与太話なので深く考えないように。ニコラ・テスラは当時のサブカルチャーにおいて何をしでかすかわからないとされ(所謂フリー素材扱い)、スーパーマンと戦ったりもされたりした。
実験
この実験を行うため、この軍艦の船内には3つのコイルおよび多数のの電気実験機器が搭載され、そのスイッチを入れると強力な磁場が発生し、その後レーダーから駆逐艦は消失。実験は成功したかに思われた……が、直後に不可思議な現象が発生した。
不可解な状況
この軍艦を観察していたものの報告によると実験開始と共に海面から緑色の光がわきだし、次第に軍艦を覆い、次の瞬間、艦は浮き上がり発光体は幾重にも艦を包み、みるみる姿はぼやけて完全に目の前から消滅。あろうことか、レーダーどころか艦自体が消えたのち、数分後、エルドリッジはまたもや発光体に包まれ再出現、後の別の商船の報告によると、2,500kmも離れたノーフォークにて数分間存在し、消滅したとの証言が存在し、どうもその距離を瞬間移動していたと思われる。
さらに不可解、オカルトじみた状況
これだけでも相当に不可解な現象だが、真に恐ろしいのはその後の船内の調査結果であり、調査結果によると体が突然燃え上がった・衣服だけが船体に焼き付けられ、人間は消滅していた・甲板に体が溶け込んだ兵士の存在・発火した計器から火が移り、火だるまになった・突然凍り付いたとしか説明できない兵士・半身だけ透明になった兵士( 生死不明 )壁の中に吸い込まれていたという驚くべき状態が確認され、それ以外の乗員も発狂等の心身の障害を発生していたとされ、まさに地獄絵図であろうと思われたが、唯一鉄の隔壁に守られた機械室にいた、一部のエンジニアたちだけは影響を受けなかったとされる。
…駆逐艦には機銃弾でも貫通するといわれるように、そもそも装甲なんて構造にないんですけど。
実際の話
……などという話が伝わっているが、この軍艦に関しては8月27日にニューアークで就役して以降、1943年中には一度もフィラデルフィアに寄港していないうえ、ノーフォークに現れ、そして消えた軍艦を目撃したとされる商船アンドリュー・フルセスは、記録によると10月25日にはノーフォークを出港しており、以降1943年中は地中海にあった。しかも同船に乗り組んでいた米海軍予備士官ウィリアム・S・ドッジ少尉は、彼もそして他の乗組員も「ノーフォーク在泊中に特に変わったものは見ていない」という手紙を寄せている。また乗員の被害者が少なすぎる( 通常時乗員は186名となっている )点、第一、そのようなわけのわからない状況にある軍艦を他国に提供するということ自体が有り得ない( 「回航中に事故により沈没」でもいいし、クロスロード作戦に投入してもいいのである )ため、実際にはそのよう実験自体行われておらず、「都市伝説」とみなされるべきであろうと推測される。
そもそもレーダーの原理は当時でもすでにわかっており、話を言い出した人間がどうしようもなく無知であることを証明するだけである。(理解していなかったら、どーやってレーダー利用兵器の代表である近接信管を1年で実用化できるんだ、ん?ちなみに近接信管の基礎研究は1920年代から始まっている。くどいようだがVT信管の目標となるものはアルミでできた航空機や、土とコンクリや有機物でできた地上目標である。)
と言うか、これを最初に言い出したモリス・ジェサップはUFO研究家であり、またジェサップにこの情報を送りつけたアジェンデは詐欺師と言う点でレーダーに関して無知であると察しが付くというものなのだが。
そもそもエルドリッチという単語自体が、もともと「不気味」「気持ち悪い」という意味・スラングである。
元ネタ
この「実験」の元ネタとされるのは、1940年代初頭に行われた、磁気感応式機雷や磁気探知機対策のための船体消磁の実験とも、1950年代に行われた駆逐艦Timmermanで行われた高周波発電機の実験ともいわれるが、ティンマーマンの実験では高周波発電機から放電現象などが発生したものの、乗組員への実験による影響は報告されていない。
なお、1940年代初頭の消磁実験に関しては、元米海軍の乗組員を名乗るエドワード・ダッジョなる人物が実際に現場に居合わせたと証言している。
ダッジョを探し出したのは、アジェンデの正体を暴きだした3人の内の一人でUFO研究家のジャック・ヴァレである。
その証言は『1943年の6月か7月にフィラデルフィアで、消磁実験が行われた。私(ダッジョ)は護衛艦エングストロムに当時乗り組んでいた。フィラデルフィアで停泊中にそれを目撃した。護衛艦エングストロムと同じ護衛艦のドブラー、ドネフ、エルドリッジは当時一緒に行動していた。“レインボー・プロジェクト”はこの実験が誤解されたもの』と言うものだった。
一見すると筋が通っている様に思える。しかし、エングストロム、ドブラー、ドネフの進水式は1942年7月24日で矛盾は無いが、肝腎のエルドリッジは1943年7月25日である。しかもエルドリッジの就役は更にひと月後の1943年8月27日であるうえに、就役以降1943年中は一度もフィラデルフィアに寄港していない事実を鑑みれば、このダッジョの証言も信用できないものとする他ない。
ちなみにこの計画を最初に言い出したモリス・ジェサップはUFO関連の自著が売れず、原稿を書いても出版してくれる版元が見つからずに困っていた。
ジェサップの元に、手紙で計画に関する情報を送りつけたカルロス・ミゲル・アジェンデは怪しげな詐欺師としか言い様のない人物。
アジェンデの2通目の手紙に登場する、この計画にも参加し、かのアインシュタインが提唱し生涯かけて研究しながらも未完に終わった相対性理論を完成させたとされる、アジェンデの友人フランク・リノ博士は全くの架空の人物。
そのリノ博士は実在すると主張するウィリアム(ビル)・ムーアはトンデモ界の有名人で、彼は自身が作り上げたリノ博士のプロフィールを自ら否定していたりする。
さらにムーアとの共著でやはりリノ博士は実在すると主張したチャールズ・バーリッツはトンデモ界の巨人で、金に成るなら嘘でも100倍以上にフレームアップして書き散らかす売文屋である(魔の三角海域=バミューダトライアングルも元はこいつが捏ち上げた代物だったりする)。
と、この計画を事実と主張する方々の香ばしさと、エルドリッジ及びアンドリュー・フルセスが共に実験が行われた日にフィラデルフィアとノーフォークに影も形も最初から無かった事実から、都市伝説と言うよりも与太話とした方が良いような気がしないでもない。
それからこれはあまり知られていないが、フィラデルフィア-ノーフォーク間の船舶による移動は、通常の大西洋航路を利用すると片道で一日を費やす事になるのだが、片道6時間もあれば行き来出来るルートが存在する。
なのでこの超短縮ルートを知らない者が、一日足らずでフィラデルフィア-ノーフォーク間を往復した船舶を目の当たりにして、『一日足らずで往復など出来るはずが無い。これは絶対未知の技術を利用したに違いない』と勝手に妄想した話に尾鰭が付きまくり膨らみまくって出来上がった話が『レインボー・プロジェクト』だとする身も蓋もない説も実は存在する。
まぁ何にせよ、戦争中に就役したばかりの軍艦を、こんな訳の判らない実験に供与するなどという馬鹿げた行為を世界有数の国家の政府や軍部が認めると考える方がどうかしていると思うのですが。
ゲームや映画・漫画などのサブカルチャーやオカルトの世界では、「タイムスリップから宇宙人との接触まで、とにかく訳のわからない事があればとりあえずエルドリッジのせいにしておけばいい」と言う風潮がある。まるでB級映画やパルプマガジンにおけるナチスの扱いそのままである。石ノ森章太郎あたりが陰謀論とからめてよく使った。下記は近年有名な例。
SPRIGGAN:忘却王国にて行方不明となったエルドリッジが登場。行方不明となったエルドリッジの存在は隠蔽されており、同じアメリカ海軍の艦長も詳細は知らなかった。
メタルギアサヴァイヴ:レーダーへの不可視実験ではなくワームホール転移実験が行われたという設定になっており、ディーテ( 異世界 )側から開かれたワームホールと繋がってしまった。
アズールレーン:駆逐艦として実装。放電できたり、艤装や服装が近未来的だったりと他のキャラクターとは一風変わった特徴を持つ(が、瞬間移動はできない)。
ゼノギアス:冒頭に登場する星間移民船の名前がエルドリッジ。オカルト的に明らかに悪意を持ってネーミングされている。設定的には恒星間航行船フィラデルフィアが存在していて、その同型であるフィラデルフィア級恒星間航行船の1隻。
フィラデルフィア・エクスペリメント:1984年にアメリカで制作されたSF映画で、実験の結果1984年の世界とつながりが生まれ、時空にひずみが生じてしまう。
妖魔夜行:最終章「戦慄のミレニアム」の事件の発端として登場し、この世界で妖怪が誕生する理由と絡められている。
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