※:メイン画像はモチーフ馬がゲート難持ちで知られるセイウンスカイ(ウマ娘)。ちなみに彼女を押しているのはキングヘイロー(ウマ娘)。
概要
競馬においては、競走馬はコース上に置かれた発馬機に設置されたゲートに入れられて待機し、そこからスタートする。
このゲートに入る際、ないしゲートからスタートする際に何らかのトラブルを抱えることもあり、そうしたゲート入りやスタートに関連する難儀を「ゲート難」という。
ゲート難には大きく分けて
- ゲート入りを嫌がる(メインイラストのセイウンスカイなど)
- スタートが苦手で出遅れやすい
の2パターンがある。
そもそも馬という生き物自体が狭いところを嫌うので仕方ない一面もある(それをどうにか調教で落ち着かせる)のだが…
ゲート難を抱えていた有名馬
スイープトウショウ
2005年、39年ぶりに牝馬による宝塚記念制覇を成し遂げた女傑…なのだが、わがままな性格で気に入らないことがあると梃子でも動かなくなるという気性難だった。そのため、24戦中4戦で枠入り不良。その全てで発走時間を遅らせている。ゲートへの移動すら嫌がり、ライバル馬についてきてもらいようやくゲート入りしたり、2005年の天皇賞(秋)(106年ぶりの天覧競馬だった)では本馬場入場時にごねて動かなくなり、返し馬を中止させた挙げ句係員に引っ張られてゲートに向かい、やむなく下馬した騎手の池添があとを追いかけるという事件もあった。ゲート試験を受けた回数は4回にも及ぶ。
2006年の有馬記念(ディープインパクトの引退レース)ではディープを差し置いて盛大にごねてしまい、ゲート入りしただけで歓声が上がったとか。なお、当然のごとく発走時間は4分遅れた。
ブチコ
日本初の白毛のGⅠ馬・ソダシの母。引退の理由がなんとゲート難。
というのも、2016年のマリーンカップではゲートを破壊して飛び出し負傷し競走除外。
続く麦秋ステークス(1600万円下戦)ではゲートをくぐって脱走し、ラチに激突。また負傷し競走除外となった上、このとき騎手のクリストフ・ルメールを振り落として骨折させている。
最後は2017年1月の雅ステークス(1600万円下戦)でゲートをくぐろうとして破壊し外枠発走になる(結果は4着)、という事件を起こしている。
あまりのそのゲート難ぶりは、ファンからゲートをブチ壊すから『ブチコ』なのでは?と言われたほど。結局、最後は再調教はブチコの負担が大きいとして陣営の方が諦めてしまった。
だが、2017年1月にゲート難で引退し、即その春にクロフネを種付けた結果、翌2018年春に生まれたのがソダシである。世の中何がどう転ぶかわからない、まさに塞翁が馬の事例である。
ゴールドシップ
ご存じ白いアイツ。
ゲート入りを嫌がって後ろ向きに入ったり、目隠ししたりとあの手この手でゲートに入れていた。しかしゲート入りしても一筋縄では行かないのがゴルシたる所以。2014年の天皇賞(春)ではゲート内で熊のような咆哮をあげ、2015年の宝塚記念では隣の馬にイラついたのか、ゲート内で立ち上がって大きく出遅れ大惨敗という事件を起こした。
ただ、それ以外は出足が悪いくらいで酷い出遅れ癖があるわけではない。強いて言えば関節の弛さとやる気のなさから来るテンの悪さが目立つだけである。
なお、上記のやらかしを反映してかウマ娘のゴールドシップは実装キャラで唯一育成ストーリーで『ゲート難』を取得できてしまう。しかも2023年8月に実装された新衣装の固有スキルが「出遅れると効果が増す」というとんでもない仕様になっている上に進化スキルの1つに『ゲート難』相当の効果が付与されてしまっている。
セイウンスカイ
気分屋な性格。
1998年のジュニアカップの際にゲート後ろで立ち止まったところをスターターにステッキで叩かれたことが原因で極度にゲート入りを嫌うようになってしまい(立ち止まる癖は新馬の頃からあったらしく、同じように止まったところを叩かれたので「ゲートに近づくと叩かれる」と思って近づくのを嫌がるようになったと調教助手が語っている)、ゲート前で暴れることは日常茶飯事になってしまった。
ゴールドシップのように、スタートでの出遅れや大きなやらかしこそなかったが、1999年の天皇賞(秋)では枠入りを5分に渡り嫌がった上、厩舎と発走委員の間で責任を巡って揉めてしまい1ヶ月の出走停止になってしまったことがある。ウマ娘でもアニメでゲート入りを嫌がる姿は再現されており、メイン画像もまた彼のウマ娘版である。
デュランダル
短距離路線を歩み、その名(聖剣「デュランダル」に由来)に違わぬ末脚を武器にGⅠ3勝した名馬。
これまではゲートに入れるのに一苦労する馬だったが、デュランダルの場合はその気性の荒さからゲート内で落ち着くことができず、出遅ればかりになっていた。デュランダルの追い込み戦法は出遅れ癖が直らなかったことが原因でとられた苦肉の策である…。
短距離戦の場合、追い込み戦法は絶対不利とされるが、それでもデュランダルが活躍できたのは鋭い末脚を発揮できたためだった。
ビアンフェ
2022年現在現役で活躍中の短距離馬。
2020年のスプリンターズステークスにおいてゲートインを盛大に拒否。鞍上の藤岡佑介騎手が下馬せざるを得なくなるほどにゴネ、発走時間を6分も遅らせることになった。
この結果、1ヶ月の出走停止と停止期間満了後の発走調教再審査を食らったうえ、ついに男の一番大事なものを失う羽目に…
こうしてセン馬となったのだが、翌年のスプリンターズSでもゲート入りを拒否。大きく立ち上がって騎手を振り落とす姿がテレビ中継で全国のお茶の間に放送される事態となった。
今回は2分発走時間を遅らせ、1か月間の出走停止とトレセンではなく、開催競馬場での調教再審査を課されることになった。
ルーラーシップ
出遅れが日常茶飯事なGⅠ馬。例の白いアレのアレまでは、彼が出遅れの代名詞的な存在だった。
その出遅れの酷さと能力の高さはラストランである2012年有馬記念で特に印象に残るだろう。
種牡馬としても好調な彼だが、やはりと言うか、出遅れがちな産駒が多い。
サイレンススズカ
史上最速の一角としても名高い快速逃げ馬。
デビュー2戦目の弥生賞において、騎手を振り落としてゲートをくぐって出て来てしまうということをやらかしている。
調教師の話では、懐いていた厩務員が居ないことを寂しがって出て来てしまったのではないかとのこと。仕切り直しスタートしたはいいが、結局出遅れてしまい惨敗。目標にしていた皐月賞に出走できなくなってしまった。
その後は落ち着いてゲートでのアレコレは無くなったが、その一回のインパクトが強烈だったことと、ウマ娘において最初期から実装されていたこともあり、何かとネタにされている。
なお、古馬になってから連勝を重ねていた時期のレースを見てもらえばわかる通り、性格が落ち着いて以降のスタートは、逃げ馬らしくかなり上手い方である。
ツインターボ
ご存じ大逃げ馬。だがそのイメージに反してゲートが大の苦手。
ゲートに入ることを嫌がり、かといって無理に入れても今度はゲートが開いても出てこないという二重苦。
結局ゲート審査に4か月もかかってしまい、デビューが大幅に遅れた。デビュー後もゲート難はなかなか解消されず、途中から逃げの得意な中舘英二が主戦騎手を務めるようになったのもゲート難解消のためだった。
それでも逃げ一本にこだわったのは、臆病な性格で馬群の中で競馬ができず末脚も使えないため。またペースの早い短距離は出遅れを挽回できず、スタミナ的に長距離も無理ということで中距離に絞ってレースに使われた。