概要
主にパソコンでのリッピング(吸い出し)を不可能にする目的で開発された。
元々CD-DAには「SCMS」なるコピー防止フラグがあり、MDやDATへのデジタルコピーは子世代のみ可能としていた。だがパソコンのリッピングソフトはSCMSを無視するものが多く、加えてCDに収録されている楽曲を無劣化で取り込むことができるようになった(昨今の件では後述)。
この音楽データをWinnyなどファイル共有ソフトを用いてインターネット上に流したり、海賊版CDの販売が増加したりといった事例が増加したので、日本ではMD等以外への録音が出来ない様、それに対抗するために開発されたのがCCCDである。
しかしその技術は、あまりにもお粗末なものであった。
手法
意図的にエラーを記録し、エラー訂正が正常に動作しないようにするというのが基本である。通常のCD-DAプレイヤーであれば、訂正が不可能であっても補正機能である程度補完することができる。一方でパソコンなどデジタルモードのCDドライブは、誤り訂正が上手くいかずに正しく読み出せないのである。またフェイクTOC(偽のトラック目次)を用いるといった強引な技術もある。
このような技術的背景から、CCCDはCD-DAの規格外であり、「COMPACT disc DIGITAL AUDIO」のロゴが付けられていない。
EUで発売されたCCCDにはこれに加え、SCMSフラグを用いてMDやDATに複製できないようにしたものもある為、昨今では配信リリースのみとなるパターンが普遍的となっている。
一方でパソコンで再生できるよう、専用の再生ソフトと全曲分の圧縮された音声(通常はWMA)が同梱されている。これらはWindows以外には対応しない。
主な規格
- カクタス・データ・シールド(CDS)
イスラエルのミッドバー・テクノロジーズ社が開発。バージョンは100、200、300があり、日本では主にバージョン200が利用された。バージョン300の愛称は「セキュアCD」。
- レーベルゲートCD(LGCD)
ソニーミュージックジャパンが、CDS200を基に開発した。音質向上が図られ、パソコン向け音源はソニー独自のATRAC3に置き換わっている。
LGCD1では、インターネット接続がないとパソコン向けの音源は再生できなかったが、改良版のLGCD2ではその必要が無くなった。
- Alpha-Audio
- エクステンデッド・コピー・プロテクション(XCP)
英国のファースト4インターネット社が開発。米国ソニーBMG(現:ソニーミュージックアメリカ)が採用。セキュリティ問題を引き起こした。
問題点
- エラー訂正やフェイクTOCのために、制御機構へ過剰な負荷が掛かり、プレーヤーが早死にする。
- 再生できたとしても傷のついた音声情報であるため、音質は通常のCDより低下する(と言われているが、この辺りは個人の主観によるため、一概に音質が悪いとは言えない)。
- ハードを製造する企業は「規格外のディスクであるため再生の保証はできない」、ソフト側も「プレーヤー故障の責任は負わない」との無責任な姿勢を貫いた。
- 例えばソニーミュージックから発売されたソフトは、親会社・ソニー製のプレイヤーでの再生の保証はされない。
- 勝手にパソコンへプレイヤーがインストールされる。これはセキュリティの観点から問題である。
- そもそもドライブによっては吸い出せる場合がある。
これらの理由から、レコード会社毎の温度差が大きかった。大手では主にエイベックスや東芝EMIが推進し、ユニバーサルミュージック、ワーナーミュージック、キングレコードなどは導入はしたものの消極的で、更には導入しないメーカー・レーベルもあった。
後年にiPodなどのデジタルオーディオプレーヤー(DAP)が普及した際、リッピングできないCCCDの曲はDAPへ入れられないといった更なる問題(日本ではMD等へのダビング専用)も発生した。
XCP
米国ソニーBMGから発売された「Extended Copy Protection」(XCP)はルートキットの技術を取り入れているため、セキュリティホールが発生するという事件があった。これを悪用したコンピュータウイルスも出回ったという。
CD-EXTRAとの兼ね合い
CD-EXTRAとは、1枚のCDに音楽プレイヤー用のデータとパソコン用のデータを、セッションを分けて記録する規格である。
CCCDはEXTRA規格を半ば悪用した形であり、当初は両者が共存できなかったため、CCCDを回避するためにEXTRA規格で発売された作品がある。後にCCCDとパソコンデータを共存させた、EXTRA規格外の作品も発売された。
ミュージシャン・アーティストの反応
タワーレコードのデジタルミュージックガイド 第4回 ─ CCCDってなに!?も参照。
- 奥田民生氏はCCCD(レーベルゲートディスク)を容認するようなコメントを発表したが、これはCCCD強制に対する諦めとも取れる。実際に発売されたのはシングル3本であるが(後にCD-DAで再発)、いずれもCCCD対策としてアナログレコード、DVDミュージックを同時発売した。アルバム「LION」がCD-DA、SA-CD、DVD、アナログの4種類あるのはこれの名残。
- すぎやまこういち氏は著作権保護の観点から容認していたが、再生機器を壊す可能性があると明らかになり、「CCCDはリスクが大きいので、これに代わる新技術の登場が待たれる」との立場に転じた。
- 吉田美奈子氏は当初、「音質ではなく音楽を聴いてほしい」と、音質の劣化はやむを得ないとの立場であった。
- テイ・トウワ氏は「民生機レベルでは音質の劣化は問題ない」との立場であった。
- 山下達郎氏は「音質に欠陥を生じさせるいかなる要素も認めないので、CCCDでは出さない」と自身のラジオ番組で公言した。
- ASIAN KUNG-FU GENERATIONは所属するキューンミュージックに説明を求め、説明会に出席した。CCCDには賛同できないという立場であったが、メジャーでのシングルはCCCDで発売された。メンバーである後藤正文氏は後に「胸が張り裂けそうな思いだった」と回顧している。
そして終焉へ
日本では2004年にソニーがレーベルゲートCDから撤退。それを皮切りに、他のレーベルが2004~2005年辺りに次々と弾力化や撤退を始めた。その後も推進していたEMIは2005年8月以降、CDS300を採用していたが、これも2006年で販売が終了した。エイベックスはレンタル商品のみ、2006年末まで採用していた。
然も昨今のWindowsOSのディスクドライブではWindows Media Playerでレーベルゲート読み出し非対応となる為、簡単に取り込める様になってしまった...。
現代では新品は発売されていないが、中古市場やCDレンタル店には残っている場合があるので注意が必要である。
メーカー・レーベル一覧
国内に限って記述する。
採用実績がある
- エイベックス …BoA「Every Heart -ミンナノキモチ-」で、日本で初めて参入。
- 東芝EMI(現:ユニバーサルミュージックLLC・EMIレコーズジャパン) …ジャズやクラシックなど音質が重視される作品も、原則CCCDで発売された。
- ソニーミュージック …「レーベルゲートCD」なる改良版を発売。親会社ソニーはCD-DAの規格の策定元だが、どういうわけかCCCDに参入した。
- ポニーキャニオン …アーティストの意向で弾力的に採用。上記3社ほどではないが、CCCDタイトルは多い方であった。
- ワーナーミュージック …導入のタイミングは早かったが、CCCDで発売されたタイトルはあまり多くはない。
- ユニバーサルミュージック …各アーティストの意向で、池田綾子「LIFE」、CHAGEandASKA「STAMP」の2作品のみ発売。
- キングレコード …「売上高の上昇が見込まれなければ即廃止」という条件の下、陰陽座「鳳翼麟瞳」のみ発売(後にCD-DAで再発)。
- ビクターエンタテインメント …「K2」なる音質向上技術を引っ提げて参入(CCCD K2)。採用は弾力的であった。
- テイチク …弾力的に採用。当時はビクター傘下であったため、CCCD K2として発売。
- フォーライフ …一部アーティストが採用。
- ゾンバレコード(BMGジャパンへの吸収を経て現:アリオラジャパン) …ニック・カーター「Now Or Never」のみ(BMG合併後にCD-DAで再発)。
- ラストラム …BEAT CRUSADERS「BEST CRUSADERS」のみ(後に「1999-2003 LASTRUM YEARS CDVD BOX」にてCD-DAで再発)。
採用実績がない
上記2社はそれぞれ系列のプレス工場にCCCDの設備があったが、これは他社からの製造依頼に応えるため設置されたと思われる。
その他…
余談
後年になって「プラチナSHM」ディスクが発売された。こちらはCCCDのような無理やりなコピーガードはないものの、反射面に白金を用いているため、レッドブックで定められた反射率の要件を満たさず、規格外である。そのため発売元の一つであるユニバーサルミュージックは、「ハイエンドCD再生機用ディスク」と表現している。