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ダノンデサイル

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だのんでさいる

2021年生まれの日本の競走馬。主な勝ち鞍は2024年東京優駿(日本ダービー)(GⅠ)で、その他にも同年の京成杯(GⅢ)を制した。

生い立ち

母トップデサイルは現役時代GⅠ2着2回。社台ファームが輸入。本馬は4番仔で父にエピファネイアを迎えている。22年セレクトセール1歳にてダノックスが約1.4億円で購入。冠名「ダノン」に母の名を合わせて命名された。栗東・安田翔伍厩舎へ入厩。厩舎でのあだ名は「茶太郎」。

競走馬時代

2歳(2023年)

10月、東京競馬場芝1600mの新馬戦でデビュー。鞍上として横山典弘が騎乗し4着。続く10月28日の鞍上継続で2戦目(京都芝1800m)に挑み勝ち上がりを決めた。以降も横山典が騎乗し、同馬の主戦となった。11月25日の京都2歳ステークス(GIII)で重賞初出走。後団待機から、直線では上がり最速タイの末脚で追い込んだものの、シンエンペラーの4着どまり。2歳を3戦1勝で終えた。

3歳(2024年)

年明けは京成杯から始動、5番人気(11.5倍)に推されたダノンデサイルは8枠14番。横山典はスタートから促していき、コーナーインまでに外目の5番手を確保した。そのまま道中を運ぶと、最中直線では外から豪快に差し切り。重賞初制覇とともに、クラシック戦線へ名乗りを上げた。横山典弘は、自身の持つJRA最年長重賞勝利記録を55歳10か月23日に更新した。

その際、別の意味で注目を集めてしまったのだが、それは後述に譲る。

皐月賞 相棒のための決断

前年のソールオリエンスの軌跡をたどるように皐月賞へ直行。ホープフルSを勝った牝馬レガレイラ、2歳王者ジャンタルマンタル、そのジャンタルマンタルを共同通信杯で下したジャスティンミラノなど多士済々のメンバーが揃った。メンツが故に、主な勝ち鞍が京成杯の彼は少し格下と見られたか、17頭立ての11番人気。とはいえ、昨年は京成杯から直行したソールオリエンスが皐月賞を制しており、横山典自身も京成杯の際、前日は京都競馬場で騎乗していたにもかかわらず、同レースの騎乗のために中山へ移動。しかも、中山での騎乗は京成杯のみという騎乗予定から、ダノンデサイルに対する期待が行動に現れていたなど、複数の情報から期待するファンも少なからずはいた。

全馬が馬場入りを終え、輪乗りしてゲートインの開始を待ち始めたその時、鞍上の横山典弘はダノンデサイルの脚を止め、スタッフに声をかけた。幾度かゲート裏を往復し、再び止めた。そしてしばらくして場内アナウンス。

「16番ダノンデサイルは馬場入場後馬体に故障を発生したため競走から除外いたします」

アナウンスと共に横山は下馬。ダノンデサイルはスタッフに引かれ、自ら歩いて馬場を後にした。横山は一生に一度の晴れ舞台でも、馬に無理をさせず競走しないことを決断したのである。ファンは落胆したものの、横山典弘の過去の出来事もよぎり、最悪の事態を回避したことから責める声はなかった。

その後の取材でこの時の出来事の詳細が語られたが、この件は後述に譲る。

日本ダービー 決断に答えた相棒

翌日の診察で右前脚に打撲があり、これが元で跛行を起こしたものと診断。跛行によりスタート直前での競走除外となってしまったが、症状は軽く、翌週にはトレーニングを再開できる程度であった。立て直しに入り、日本ダービーへ向かうことを選択。競走は京成杯以来約4ヶ月ぶり、力関係も測りきれず、単勝46.6倍の9番人気に落ち着いた。ただ、1週前追い切りで横山典弘が騎乗し、ものすごい動きを見せており(6F79.6-3F35.1-1F11.0)、追い切り派や穴馬狙いの馬券師が目をつけていたというが、多くのファンは知るよしもなかった。

今度は何事もなくゲートイン。3枠5番から抜群のスタートを決め、横山は押して積極的に前へ出していく。末脚自慢のエコロヴァルツがハナを主張する展開になったので前に行かせインの3番手を確保。内ラチを沿うような進路を取りつつも外のジャスティンミラノと並ぶような形になる。前残りを見越して早めに動いた馬が外から追い抜き、ジャスティンミラノが4コーナーで仕掛けてもインで動じず、3,4番手で直線を向く。

残り400m、逃げたエコロヴァルツが力尽き空いた最内1頭分のスペースを突いて一気に先行馬をかわしていく。外からジャスティンミラノも抜け出してきたが叩き合うどころか残り100mからは完全に競り落として独走態勢。最後まで末脚は鈍ることなく、決定的な2馬身差をつけてゴール板に飛び込んだ。

同馬としては当然ながら初GI制覇。それどころか、馬主のダノックスは3歳クラシック初制覇。ダノンシャンティで初GIを手にして以降、マイルGI戦や2歳GIでは何度か勝利を手にしているものの、3歳クラシックではダノンプレミアム、ダノンキングリー、ダノンベルーガらの有力候補でも届かなかった。そのクラシックの悲願をダービーの大舞台で晴らしてみせたのであった。

横山典弘騎手はダービー3勝目にして、JRA最高齢でのGⅠ制覇と史上最年長のダービージョッキー記録を更新し、安田翔伍調教師はダービー初制覇どころか、中央GⅠ初制覇。彼の父安田隆行は騎手時代にトウカイテイオーで日本ダービーを制しており、変則的での親子制覇となった。

タービー後は秋に備えて放牧に出され休養。7月に菊花賞へ直行するローテが発表された。

菊花賞 苦難のレース

前年2023年のダービー馬タスティエーラが挑んだのと同様に、ダービー・菊花賞の二冠に挑んだ。三冠馬を除けば、1973年のタケホープ以来51年ぶりの達成が懸かり、単勝2.9倍の1番人気に推された。

2枠4番から好スタートを決めたデサイルは内ラチ沿いの好位を確保。先頭を見据えつつレースを進めた。

しかし、外枠のエコロヴァルツがハナを奪ったのを皮切りに、1周目ホームストレート~2角にかけて起きた先頭が次々に入れ替わるという激しい鍔競り合いが展開。2角では9番手にいたデサイルだが、その影響で失速。さらに内ラチでポジションを取っていたこともあり、馬群に包まれる位置になってしまい苦しい展開に。結果的に4角に入るときには馬群での最後尾となる16番手までに後退。4角後に外に持ち出し直線での追い込みに懸けたが、そこからでは間に合わず、アーバンシックの勝利の中で6着止まり。レース後の横山典騎手は「かわいそうな競馬になってしまった。1周目はいい位置を取れていたんだけど、2周目で次から次に…。誰が悪いわけじゃないんだけど、とにかく流れが悪かった。」とコメントを残した。

次走は同じく鞍上横山典騎手で有馬記念に出走予定。ここでは2021年度ダービーシャフリヤール2022年度ダービー馬にして秋古馬三冠リーチでラストランとなるドウデュースといった先輩ダービー馬も出走するため、前年同様複数世代のダービー馬が共演することになる。

余談

令和のうんこたれ蔵

京成杯を勝利したダノンデサイルだったが実はレース中にボロ(排便)をしていた。

パドックや本馬場で馬が排泄するのはごく当たり前の光景であり、パドックを見たことがある人はわかると思うが、周回中に歩きながら馬がボロをしているように排泄自体は珍しくなく、それを臭い汚いと言っていては競馬場になど行けない。ただ、2コーナーから向正面にかけ、尻から後方に向かって馬糞を排泄しているのがはっきり中継カメラにも捉えられていたが、「走りながら」している映像を捉えられたのはある種レア映像である。レース後、安田調教師は自身の公式X(旧twitter)にて「レース中にウンコしたとか言われてますけど実際は、、、しました」と、異例の申し開きが行われることとなった。

そのため、ネットではミドリマキバオーに掛けて「リアルうんこたれ蔵」と言われたりもした。

そして、マキバオーも(カスケード同着だが)日本ダービーを勝利していたため、ますます「うんこたれ蔵」と呼ばれるようになったようである。

皐月賞での跛行について

当時、馬場入りの時点でも外見から跛行に関する症状が現れておらず、しいて言えば、馬場入り後の返し馬の動く気配が薄かったことぐらいだが、逆に言えば、それぐらいしかなく、後述の川田騎手ですら結果的に気付いたというレベルであり※、むしろ、競馬場から厩舎へ戻るべく馬運車に乗るまでも何事もないぐらいであった。ところが、到着後に馬運車から下車する際、降りるのを嫌がるほどの状態となり、脚に問題があることがここで判明。これによって出走を回避したことが正しいことが証明された。また、横山典から申請され、出走中止を選んだが、異口同音であの時点で気づけたのは驚異的であった語られている。

※同レースでジャンタルマンタルに騎乗していた川田将雅騎手もダノンデサイルの異常が発生したことには気付いた模様(netkeibaにて連載中のコラムより)。

ただ、川田騎手もゲート裏でダノンデサイルを見た瞬間に分かったらしいが、それは横山典が異変を口にしてからデサイルを凝視して初めて気づいたというレベルだったらしく、他の関係者より早く気付けたという点ではトップジョッキーにしか分からない何かがあったのだろう。

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