作品解説
五島勉が1973年に著しベストセラーとなった『ノストラダムスの大予言』を原作にしたパニック映画。
原作がノストラダムスとその予言の内容を紹介する本だったため、主人公は先祖代々ノストラダムスの『諸世紀』を研究しているという環境学者で、その家族や娘の恋人が公害や環境破壊による災害に巻き込まれる様子を描く。そのためか、ノストラダムスも恐怖の大王も登場しない。
作中の公害問題や環境破壊について、脚本のアドバイザーの1人だった西丸震哉(当時・農林省食品総合室長)の影響を受けた結果、極端に悲観的・災害的な内容となった。なお特撮映画では珍しい文部省(現:文部科学省)の推薦映画である。
特撮
前年に『日本沈没』を手がけた中野昭慶により、爆発シーンを中心に特撮シーンがふんだんに登場する。
赤潮のシーンは東宝特撮伝統の寒天を用いたが、普段は青く着色するところを食紅で染めて表現した。沼が干上がるシーンは、沼のセットの下で火を焚いて本当に蒸発させ、熱帯の海が凍り付くシーンには25tの氷が用いられるなど、リアリティを追求したシーンが撮影された。
一方でリアリティを追求しすぎた結果、「超紫外線の影響で山火事が発生する」シーンの撮影中に高温でミニチュアが炎上。一旦鎮火したが、翌日に再び着火して第7スタジオが全焼する撮影事故になった。なお、作中の焼け跡に雨が降るシーンは、全焼した第7スタジオの焼け跡で撮影された。
キャスト
出演者も豪華で、主演の丹波哲郎や助演の由美かおるに加え、志村喬や平田昭彦、小泉博といった東宝特撮の常連出演者が出演した。
意外なところでは、納谷悟朗がアナウンサー役で顔出し出演したほか、プロデューサーの田中友幸も会議のメンバーとしてカメオ出演した。東宝特撮の大半を手がけた田中Pだが、映画に出演したことはほぼ無い。
封印作品に
経緯
本作は1974年8月3日に公開された(同時上映は『ルパン三世』初の実写化作品である『ルパン三世 念力珍作戦』)。しかし興行がほぼ終了した11月、放射能が降り注いだニューギニアで原住民が食人鬼化するシーンと、核戦争後の地球で人間形のミュータントが争うシーンが被爆者に対して、被爆者団体と反核団体から差別的という抗議が起き、12月に核戦争後のシーンを削除したバージョンが上映された。結局、本作は1974年の邦画部門の興行収入第2位を記録した(第1位は前年に引き続き『日本沈没』。なお前年の第2位は舛田利雄が監督した『人間革命』で、3作いずれも丹波哲郎が主演および助演した作品である)。
1980年11月3日にテレビ朝日の「ホリデースペシャル」で核戦争後のシーンをカットしたバージョンが地上波放送されて以降、テレビ放送はされていない。また1986年にVHSとレーザーディスクの販売予告があったが、これが中止されて以降、オリジナル版はソフト化も配信もされない封印作品となった。
なお、企画されていた続編『ノストラダムスの大予言Ⅱ 恐怖の大魔王(仮題)』の制作も中止された。
正規の視聴方法
1980年に発売された予告編集ビデオ『特撮グラフティー4』にある本作の予告編(食人鬼シーンはそのまま)が、国内で発売された正規のソフト化作品である。
本作の特撮シーンが流用された作品は多く、『惑星大戦争』(コンビナートや原発、首都高速の爆発シーン)をはじめ、『84ゴジラ』(首都高速の爆発、ミサイルの発射シーン)や『ゴジラvsモスラ』(氷山の崩壊シーン)に流用されている。
国外ではパラマウントがソフト化している。ただし英語版のため英語に吹き替えられているほか、食人鬼のシーンのほかにもカットされたシーンが複数ある。
冨田勲によるサウンドトラックは、公開直後を初め何度も発売されている。
非正規の視聴方法
あくまでも違法行為を奨励するものではない。
1998年、グリフォンというメーカーから「東宝の協力を得た」とする本作の音声を収録したドラマCDが『獣人雪男』と共に発売され、翌1999年にはセプトというメーカーから再発売された。この頃から、本作の本編を収録した海賊版のビデオソフトが流通するようになり、それまで書籍でも紹介されていた本作の情報が重版でカットされるなどの影響が出ている。
海賊版の動画は、動画サイトにアップロードされることがある。ただし無許可のアップロード著作権法違反である。