曖昧さ回避
概要
インドネシア・セラム島のヴェマーレ族に伝わる神話に登場する豊穣の女神。
伝承によれば、原初、アメタという男が持ち帰ったココヤシの花に彼の血が滴り生まれた少女で、様々な財宝を排便する不思議な力を持っており、これらの財宝のおかげでアメタは大金持ちになった。
ある時、ハイヌウェレは9夜続くマロ踊りの際に踊りを舞いながらこれらの財宝を村人たちに配った所、彼女の超自然的な力を気味悪がった村人たちに捕まり、生き埋めにされた上に踏み殺されてしまった。
この事態を知ったアメタは彼女の死体を掘り出し、多くの断面に切り刻んで舞踏広場のあちこちに植えると、不思議な事に今まで地上にはなかった未知の植物ヤムイモとタロイモが生じて、それ以降彼らの常食物となったという。
類似する神話
ドイツの民俗学者アードルフ・イェンゼンはこの女神の名前を取って、作物が神の死体から生まれるという特性が類似する神話の総称を『ハイヌウェレ型神話』と命名した。
日本神話で該当する例は次の通りである。
- ウケモチ
- 口から食物を吐き出してツクヨミを持て成したが、下品さに怒ったツクヨミに殺されて死体が家畜や作物に変わった。
この他にも地母神の排泄物や分泌物から神や道具が生まれたり、神や人間の死体が世界を構成するパーツや特定の動植物になる神話は世界中に存在している。後者は「死体化生神話」と呼ばれ、ハイヌウェレ型神話も広義では後者に属する。
- イザナミ
- 死の間際に吐瀉物や排泄物から神を生み出した。ハニヤスヒメはその一人である。
- プルシャ
- インド神話における原初の巨人で体の各パーツから神々や人間を含めた世界の全てが生まれたとされる。
- パールヴァティー
- 自分の垢から商売と学問の神ガネーシャを作り出した。
- ティアマト
- メソポタミア神話の地母神。マルドゥークに敗れ、体のパーツを世界の材料に使われた。
- ユミル
- トゥナ
- 盤古
- トラルテクトリ
- ハロアナカラウパリリ
- セドナ
- イヌイット・エスキモーの神話に登場する海の女神。地域によって細部は違うが、カヌーから海に突き落とされ、船べりにしがみつくも指を切り落とされ、そこからアザラシ・鯨などの海獣や魚といった主食が生じたというのがセドナ神話の大筋である。
- パチャカマック
- ウワプ/ウワブ/ウアブ(Uab, Chuab)
- パラオの巨人。焼死した死体が島となった。
- フミノドゥン(Huminodun)
- ボルネオ島のカダザン・ドゥスン族に伝わる伝説。創造神キノインガンとスムンドゥの間に生まれた一人娘であるフミノドゥンという美女が飢饉に苦しむ人々を救うために自らを生贄に捧げ、死後に自身の姿を様々な作物に変えて人々に恵みをもたらした。フミノドゥンの肉は米、頭部はココナッツ、骨はタピオカ、足の爪先はショウガ、歯はトウモロコシ、踵はヤム芋となった。
- マンザシリ(Manzasiri)
- モンゴルの巨人。両目は太陽と月、血は大地を流れる水、体は大地、内臓の熱は火となった。
- リ(Li)
- 中国のプーラン族の伝説に登場する犀に似た巨獣。漢字では“立”と表記する。グミヤー(顧米亞 Gumiya)という神がこの巨獣の体から世界を創った。皮は天、肉は大地、脳は人間、四肢は天を支える柱となった。
『ゴールデンカムイ』第91話でもギョウジャニンニクとオオウバユリの精霊が糞を食わせたというアイヌの昔話が語られている。
関連タグ
タンタンコロリン:柿の妖怪。糞を食べさせようとする話が伝わっている(勿論、その糞は柿の身のメタファーである為、食べても問題ない)