曖昧さ回避
- 『聖☆おにいさん』に登場するキャラクター。⇒マーラ(聖☆おにいさん)
- 『女神転生シリーズ』に登場するキャラクター。⇒マーラ様
- 『SDガンダム外伝光の騎士』に登場するゲームオリジナルキャラクター。モチーフはマラサイ。
- PCゲーム『神咒神威神楽』に登場する覇道神。⇒第六天波旬(マーラ・パーピーヤス)
- ネットゲーム『Hero Wars』に登場するサキュバス型のペット。
- ネットゲーム「なむあみだ仏っ!」及び「なむあみだ仏っ!-蓮台 UTENA-」に登場するキャラクター⇒マーラ(なむあみうてな)
- ネットゲーム『Fate/GrandOrder』に登場するサーヴァント⇒カーマ/マーラ
魔王マーラ
象の姿をした大悪魔ギリメカラを騎獣とする。
登場は古式聖典の一つ『阿含経』の「悪魔相応」。
インド神話愛の神・カーマとも関連付けされることから、カーマ・マーラともされる。その名は「殺す者」を意味し、死の擬人化であるともされている。漢訳では「魔羅」「天魔」「波洵(はじゅん)」「悪魔」と書かれる。
漢字の【魔】はマーラを音訳するために創られたとも云われており、その意味では文化的側面にも強い影響を与えたといえる。
仏典や経文では「自在天」とも称される。しばし大自在天と混濁されやすいが、大自在天はインド神話の三柱神の一角であるシヴァを原形とし、マーラとは別の存在である。
マーラは天道と欲界の最高位に位置する他化自在天の王であるともされる。他化自在天とは欲望に囚われた生物が六道を輪廻する欲界という世界群の中で最高位に位置する天道のそのまた最高位の世界であり、下位の世界の全てを自在に操れる存在の住む世界であるという。すなわちほとんど全能の神のような存在であり、仏教でいう天帝に当たる帝釈天が住む忉利天は同じ天道でも遙かに下位の世界である(他化自在天、化楽天、兜率天、焔摩天、忉利天、四天王天の順に下位になっていく)。
これらの意味で、マーラは天魔もしくは第六天魔王、魔王とも呼ばれ、煩悩を持つ存在全ての頂点に立つ悪魔にして魔神である。
しかしマーラといえど、欲界よりさらに高位の存在には手を出せない。仏教の世界は欲界、色界、無色界、からなり、その輪廻を離れて仏陀となれる。マーラは、仏陀はもちろん無色界(煩悩も物質も越えた精神的存在の世界)や色界(煩悩はないが物質に囚われた世界)にもその支配を及ぼすことが出来ない。また、天界の存在すなわち天人である故、寿命はある。人間でいうと90億年を越えるともいうが、不老不死ではないのである。
こうした煩悩の化身たるマーラにとって、釈迦の覚醒は自身の滅びにつながる(煩悩を打ち消す「智慧」を世に広めることができる)ため、それを阻止すべくあらゆる妨害策に打って出ていく。
最初は三人の美女を指し向け、釈迦を情欲や物欲で籠絡しようとするも失敗。次に数々の恐ろしい怪物たちを送りこんで恐怖で屈服させようとするが、怪物たちが釈迦に近づきたがらずに失敗。さらに岩石や武器の雨を降らせ、世界を暗闇で覆って見せても、釈迦は一切動揺しなかったため失敗。最後は自ら巨大な円盤を掲げて襲いかかるも、その円盤が花輪となってしまい、とうとうマーラは敗北を認めて立ち去ったのであった。
釈迦はマーラの退散を以って仏智に至り、覚者となった。
それはマーラが「死の擬人化でもあることを踏まえると、「いずれ訪れる“死の運命”を受け入れる」という、単純に思えて生命として非常に困難な覚悟を得たことを意味するところでもあろう。
我ら凡夫は「生きる意味」に執着するも、「死」という現象を本能的に避けてしまう。それは生物であればごく自然な思考であり、何を恥じることもない事実である。
だが同時に、「生きる意味」に執着するあまり、いつか訪れる結末を拒絶して永遠を求めてしまうのは、この天魔の囁きに絡めとられている証拠ともいえる。
いずれにしても、マーラとは自分の中にある「欲望」と「本能」そのものであり、それに克つことで新たな境地が見えてくるのかもしれない。
キリスト教でも、教祖のナザレのイエスが山籠もりの最中にサタンに誘惑されるも、それを拒絶して退散させる場面が「マタイの福音書」4節に存在する。
後に、日本では修行者のあいだで煩悩の象徴とされる男根を、マーラの存在に引っかけて「魔羅(まら)」と呼ぶようになり、現在でも隠語として使用されている。