概要
外見はイナゴ状で、見た目はトノサマバッタやサバクトビバッタに似ているが、実際はフキバッタ亜科に属する昆虫。
大きさはおよそ2㎝ほどで、その名前の通りロッキー山脈東側斜面を繁殖地としていた。
このロッキートビバッタは19世紀、いわゆる西部開拓時代に人類史上最悪の蝗害を齎した恐るべき大害虫として知られている。
その数は推定12兆5千億匹、広さは51万平方㎞(日本の1.3倍)、総重量は2750万tにまで及んだとされる。この数は「史上最大の動物の群れ」としてギネスブック世界記録に認定された。
ロッキートビバッタは旱魃が起こる度にそれをトリガーとして爆発的な繁殖を繰り広げ、その都度畑や牧場が襲撃され、通った後には夥しい糞と死骸だけが残される。更に異常な個体数によるストレスもあって気性も荒くなり、植物だけではなく革製品や羊毛と言った動物性の素材にまで襲い掛かり、人間の服にまで嚙みついてくるほどであった。
その結果として数億ドル単位(現在の日本円で言うと数千億円規模)の被害が及んだため、開拓民たちは爆弾や液体燃料まで使用して焼き殺したり、塹壕を掘っておびき寄せて生き埋めにしたり、馬2頭の間に板を通してブルドーザーならぬホッパードーザーを作ったり、終いには食べたりしてこれらを駆除しようとしたが、むろん戦術的勝利を幾ら重ねようが、数の有利不利がひっくり返る事は無かった。
各州政府もこれには頭を抱え、特別法を施行して懸賞金を賭け、バッタ駆除を州民の義務として罰金を設けたりといった対策案を練るほどであった。
しかし、しかしである。何故かこのロッキートビバッタ、1877年の大発生を皮切りに徐々に生息数が減っていき、それから四半世紀もしないうちにプッツリと途絶えてしまった。あれほどたくさんいたロッキートビバッタは19世紀末には殆ど姿を見かけない幻の昆虫となり、生存個体の目撃は1902年を最後に途絶え、2014年には絶滅種に認定された。
ここまで多くの個体数を有していた生物が絶滅したのであれば大抵は大規模な気候変動や地殻変動と言った環境の変化、あるいは人間の乱獲(例:リョコウバト)が考えつきそうなものだが、ロッキートビバッタに関しては皆目見当もつかないというのが実際である。
ロッキートビバッタは繁殖拠点に強く拘るライフサイクルを持っていたとされ、入植者による西部開拓(アメリカバイソンなどの乱獲)でそれが失われてしまった事が原因とする説があるものの、そうなると異常発生の説明もつかなくなる。少なくとも10兆を越える数が生存できる環境が1877年までは残っていたわけで、短期間でそれを全て破壊する事は不可能だろう。と言うかそれが出来れば、蝗害があそこまで拡大していないだろうし。
「実は絶滅しておらず世代交代を重ねるうちに普通のバッタに進化した」という論もあるが、残念ながら現存する標本から採取されたDNAは現在発見されているアメリカのどのバッタとも一致しないので、その説も怪しい。
本当に何だったんだこいつは…。
なお、20世紀後半では地球温暖化の影響でロッキー山脈を覆う氷河が溶け、「グラスホッパー氷河」と呼ばれる氷漬けの死体も数多く発見された。
関連動画
関連項目
仮面ライダー1型ロッキングホッパー:ロッキートビバッタをモデルとした仮面ライダー(メイン画像右)。本タグのほぼ全てを占める。